露日♀妄想。露様と義兄兄上と妹露様の暴挙日本vs.ロシア兄上vs.妹の番外編
その後の日本君とアメリカさんです。










































 

 「にほーんっ!!」

 がしゃーん!!
 勢いよく開けた玄関扉は日本家屋の引き戸にありえない音を立てた。
 いけないいけない、いつも日本に注意されてるのにまたやっちゃったな…と何とか割れずにいる戸を今度は注意して閉めた。
 家の中に目を向けてアメリカは首をかしげた。

 「…あれっ?」

 玄関は暗くシーンと静まり返っている。
 いつもなら三ツ指ついてアメリカを迎える小さな背中があるはずなのに。
 期待はずれに口を尖らせながらどたどたと廊下を歩いた(ちなみに靴は脱いでます<説教の成果)。

 家の中も何だか暗い、気がする。
 それに静かだ。
 日本は今日は出かけるとは言ってなかったはずだけど…。
 雰囲気を読むことが苦手なアメリカでも何かゾクゾクとしたものを感じないわけにはいかなかった。

 居間にたどり着いて、やっと見知った顔を見つけてアメリカはホッとした。

 「日本はどこだい!?」
 「は?」

 日本はちゃぶ台の上にぽつんと一つだけ置かれた茶碗を見つめてピンと背筋を伸ばしたまま微動だにしない。
 どれだけそうして固まっていたのだろう、声をかけられて初めてアメリカに気付いたように顔を上げた。

 「私はここですが」
 「ううん君じゃなくて妹のほうだよ。また勲章をもらったから、見せに来たんだぞ!」

 すごいだろ!?日本(妹)もきっと惚れ直すぞ!
 何度八ツ橋に包んで断っても、めげないアメリカは妹を望むことをやめない。
 いつもははいはいとやり過ごせるアメリカの態度が今日は無性に鬱陶しかった。

 「…そのような者はいません」
 「え?何言ってるんだい?君の妹だよ?あんなに仲良かったじゃないか!」
 「そんな娘はうちにはいません!」

 アメリカに対して声を荒げてしまったのは八つ当たりだ。
 さいわいアメリカは日本の怒気は気にならなかったようで、ただ首をかしげた。

 「? ? 何言ってるんだい?隠しているの?いいとも!見つけ出してあげる」

 宝探しが大好きという子供っぽいところがあるアメリカは、日本(妹)を求めて家の中をばたばたと駆け回り始めた。
 日本の家は広い。一度焼け落ちて、建て直した時にかなりアメリカの影響を受けたのだけど、
 それでもまだ理解できないところがある。狭い敷地なのに何故か広くて暗くて…懐が深い、とイギリスは表現するのだが。
 暗闇を嫌って煌々と明るい蛍光灯をつけてもらってもまだ照らしきれない隅々には何かが潜んでいるようだ。
 日本の家に無意識に感じている恐怖を冒険心でねじ伏せた。

 「…?」

 ばたばたと走り回るたびにホコリが舞い上がる。
 整理はされているけど使われていない、まるで死んでいるような部屋がいくつもある。
 一見片付いている部屋も隅にはホコリがたまっていて、靴下の裏があっという間に黒くなった。
 きれい好きの日本には考えられない状況に、さすがのアメリカも違和感を覚えた。

 ホコリの中で駆け回っていたからか、アメリカの喉がイガイガしだした頃、
 日本はやっと客が来ていることに気がついたように、のろのろと茶を入れた。

 アメリカが真っ黒になった靴下の裏を見せると、日本は何を見せるのだというように眉をひそめた。
 だってこうなったのは君の家のせいなんだぞ?

 「こんな広い家に一人ですからね、忙しくて手が回らないので使うところだけ掃除してるんです」
 「一人って…」

 アメリカは目の前に提示された謎が解けずに口ごもった。
 確かに日本には小さくて可愛らしい妹がいて、アメリカは大好きだったはずなのに。
 しかしいくら探しても妹本人はおろか、痕跡すら見つけることは出来なかった。
 まるではじめからこの家には日本しか住んでいなかったかのように。