2004年
05/03 金箔の下に平安の顔−石山寺・如意輪観音坐像
江戸時代の作とみられていた「如意輪観音坐像」の金箔を修理のためはがしたところ、平安時代中期(10世紀)のもので、全国でも珍しい初期の密教像だったことが滋賀県立琵琶湖文化館の調べで分かったとのこと。
坐像は高さ56.4cmで、材質はサクラ。真言密教の教義を6本の腕で表現した六臂像。創建時の本尊の観音像は華厳宗の教義を2本の腕で表した二臂像だったそう。
共同通信。
05/05 19世紀フランス絵画展
横浜美術館と京都市立美術館で来年4〜10月に開催されるとのこと。ルーブル美術館の所蔵品73点を展示。アングル作「トルコの浴場」をはじめ、9割の作品が日本初公開となるそうです。
読売新聞。「トルコの浴場」?「トルコ風呂」?
05/06 ピカソの「パイプを持つ少年」、史上最高額で落札
初期の代表作「パイプを持つ少年」(1905年)が5日、サザビーズの競売に出品され、手数料込み1億416万8000ドル(約113億円)で落札されたとのこと。手数料を除いた落札価格は9300万ドル。絵画の価格としては、1990年に8250万ドルで落札されたゴッホの「医師ガシェの肖像」を上回り、史上最高額。
5日付ロイター通信。スクラップ2004年4月27日の続報です。
05/07 05/08 少年の彫像が吊られ、波紋広がる−ミラノ
ミラノ市内の広場で5日から、等身大の少年の彫像3体が木からぶらさげられ、波紋が広がっているとのこと。彫像は首を吊っているかのように展示されており、足は裸足で弛緩し、うつろなまなざしが遠くを見つめている。
彫像はマウリツィオ・カッテラン氏による作品。同氏は、子ども時代と暴力について警告を発することが作品の狙いであったと説明したとのこと。展示は6月6日まで。
6日付ロイター通信。続報:5月7日付ロイター通信によりますと、6日、彫像に腹を立てた男性が、取り外そうとして木から転落し、病院に搬送されたそうです。男性は、木から落ちる前に2体を取り外していたとのこと。残り1体は救急隊員によって切り離され、展示は1日で幕を閉じたそうです。
05/07 米国立美術館に米画家作品51点寄贈、公開へ
アンドリュー・ワイエスやウィンスロー・ホーマーなど米著名画家の作品の寄贈を受けたとのこと。寄贈者は美術学者のジョン・ウィルマーディング氏。以前副ディレクターを務めた同美術館のことを念頭におきながら、20年間かけて作品を収集したとのこと。
6日付ロイター通信。寄贈作品は9日から10月10日まで展示されるそうです。
05/07 唐招提寺の瓦8世紀と判明 遺構は創建当初の須弥壇
唐招提寺金堂の瓦敷き遺構で見つかった瓦は、創建当初の8世紀後半につくられたことが、年代測定で分かったとのこと。瓦敷き遺構は昨年、仏像を安置する須弥壇の石敷きの下で見つかった。
共同通信。スクラップ2003年12月14日の続報です。須弥壇南東部の煉瓦状の瓦は創建当初のもので、中央部の南側と北側の瓦は、金堂大修理が行われた鎌倉時代(13世紀)のものと判明。大修理の際、これら瓦敷きの上に、現在の石敷きの須弥壇が造られたらしいとのこと。
05/08 ブルーノ・タウトの遺品 高崎へ
約160点が、岩波書店から創造学園大学(本部・群馬県高崎市)に寄託されたとのこと。同大では、タウト資料館と命名し、遺品の展示室を設置。14日から、無料で一般公開するとのこと。
読売新聞。
05/09 九州国立博物館が完成 05年に開館
福岡県太宰府市に建設が進められていた九州国立博物館の竣工式が行われたとのこと。2005年秋に開館予定。
同博物館は「アジアとの交流の中で日本文化がどう形成されたか」をテーマに02年着工。延べ床面積は約2万8000平方メートル。
共同通信。
05/11 ダリ生誕100周年祝う カタルーニャで回顧展も
ダリの生誕100周年となる11日、生地カタルーニャ地方フィゲレスのダリ劇場美術館やバルセロナで回顧展など祝賀行事が行われたとのこと。生誕100周年を記念して、フィゲレスでは10、11の両日、街頭をイルミネーションで飾り、花火を打ち上げるそうです。
共同通信。
05/12 「化粧」落とすと平安の顔−三仏寺・蔵王権現像
鳥取県三朝町の三仏寺本堂に安置されている蔵王権現立像が、11世紀前半(平安時代中期)に伐採されたヒノキで造られていたことが、奈良文化財研究所の年輪年代測定で分かったとのこと。蔵王権現立像としては国内最古級。
共同通信。これまでは、江戸時代に投入堂本尊の蔵王権現立像(重要文化財)を模したとされていたそうです。しかし昨年、修復作業のため表面の彩色を落としたところ、宝冠の様式などが12世紀の作とされる投入堂本尊と似ていることが明らかになり、年輪年代測定を経て、平安時代の作と判明したようです。
05/13 「鼻くそ」商標取り消し
東大寺の大仏(盧舎那仏)にあやかって名付られた菓子「大仏さまの鼻くそ」の商標登録が、寺側の異議申し立てにより取り消されたとのこと。でも、まだ売ってるそうです。
読売新聞。螺髪をかたどったそうですが、なぜか鼻くそ。その前に、どこが美術関連記事なのか?という。
05/13 正倉院宝物に胡粉 最古の使用例
木彫の伎楽面3点が、カキの貝殻を白色顔料に使っていたことが分かったとのこと。
共同通信。胡粉使用は安土桃山時代以降というのが定説とされていましたが、今回の件により奈良時代までさかのぼったようです。
番外 第3回 日本・国際博物館の日
「5月18日の国際博物館の日を中心に4月末から5月末までの約1ヶ月間、世界の博物館と歩調をあわせ、記念事業を全国的に展開」とのこと。詳細:日本博物館協会
05/14 小野竹喬の掛軸見つかる−井原市
縦約1m、横9cmに農村風景が描かれているとのこと。古い雅号から、明治時代末、20歳頃の作品と判明したそうです。
中国新聞地域ニュースより。なんでも、40年以上前から使っていない町内会の行事用道具箱の中から出てきたのだとか。掛軸は、同市立田中美術館に寄贈されたとのこと。田中美術館はこの掛軸を「春暖」と名付け、6月11日から一般公開するそうです。
05/14 東大寺灯籠は国産銅中心
大仏殿前にある金銅製の八角灯籠(国宝)は、大部分に国産の銅を使って作られていたことが、鉛同位体比分析で分かったとのこと。国産銅が主流だった8世紀制作説の根拠となりうるか。
共同通信。様式の特徴などから12世紀の兵火で損傷、中世に大幅に作り替えたとする説もあるそうですが、当時は輸入銅が中心。この辺りから8世紀制作説が浮上するという。
05/15 三角縁鏡の銅は中国産か
邪馬台国の女王卑弥呼の使いが中国の魏からもらった鏡とされる三角縁神獣鏡の一部は、当時の中国鏡と材料の銅の成分がほぼ同一とみられることが、微量元素の含有比測定で分かったとのこと。主材料の銅で確認したのは初めて。
共同通信。三角縁鏡は、中国で作り日本へもたらされたか日本製かで論争中。
05/15 トルコの博物館、映画にあやかりトロイの展示を再開
イスタンブール古代博物館は14日、ブラッド・ピット主演の「トロイ」の公開に合わせ、古代トロイに関する展示を急遽再開したとのこと。展示室は資金や警備員の不足を理由に、1995年から閉鎖されていたそうです。
14日付ロイター通信。
05/15 松田正平氏死去
洋画家の松田正平氏が15日、死去した。91歳。島根県出身。84年に日本芸術大賞を受賞。代表作に「周防灘」シリーズなど。
共同通信。
05/17 橘守国作の絵馬を確認
大阪市平野区の杭全神社に奉納された絵馬が、江戸時代中期の大坂で活躍した狩野派の絵師橘守国(1679-1748)の作と分かったとのこと。裏には、大坂の商人が1741(寛保元)年、事業成功の礼に納めると記されているそう。
共同通信。橘守国は、画手本の出版で知られるが、絵画作品は2点ほどしか確認されていないとのこと。
05/18 サントリー美術館、六本木に移転
2007年春に移転、リニューアルオープンするそうです。
サントリーニュースリリースより。展示面積を現在の2倍に広げる計画なのだそう(5月19日付読売新聞)。美術館は、サントリー東京支社のお台場への移転(2005年1月)にともない、リニューアルオープンまでの間、休館予定とのこと。11〜12月の「初期伊万里展」が、今の場所で開催される最後の展覧会になるのかな。
05/18 青竜は1cm浮き波打つ状態−キトラ古墳石室
文化庁は18日、調査担当者が石室に入り、東壁の四神・青竜図部分で、しっくいが最大約1cm浮き、表面が波打つようになっているなど、壁画が危険な状態にあるのを確認したとのこと。西壁の白虎図も頭部を中心に浮いていたとのこと。また石室床面を埋めた土の中から5cm四方の漆片を見つけたことも明らかに。
共同通信。朱雀、玄武の図がある南、北の壁は安定しているように見えたとのこと。「見えた」のですね。
05/18 地方作では国内最古級の薬師如来坐像
さぬき市・大窪寺の薬師如来坐像が、天平時代末期から平安時代初期に同所で作られた可能性が高いと16日、同寺と東京芸術大美術学部付属古美術研究施設が発表したとのこと。坐像は同寺の本尊で、高さ89.3cm。カヤ材の一木造り。衣の着方が違うなど、中央(都)の仏像には見られない独特な作風が見られるそうです。
毎日新聞。同坐像は秘仏ですが、強い要望があれば公開も検討するとのこと。
05/20 村上隆さん、サトエリがモデルの写真作品発表
20日、タレントの佐藤江梨子さんを美少女フィギュアに見立てた「サトエリKo2ちゃん」を発表したとのこと。佐藤さんが演じたのは村上さんが95年から展開するフィギュア。価格は縦約40cmの小品で60万円。縦180cmの大作は未定だが、700〜800万円程度になる可能性もあるそう。
朝日新聞。6月5日まで小山登美夫ギャラリーで公開されるそうです。関連記事:スクラップ2003年5月15日
05/21 古美術店で買ったキリスト像、ミケランジェロ作と結論
イタリア・フィレンツェの古美術店で個人収集家が購入したキリスト像が、ミケランジェロの作品と判明したとのこと。15年に及ぶ調査結果から、結論を下したもの。キリスト像は木製で、高さ41.3cm幅39.7cm。十字架にかけられたポーズ。小ぶりであることから、個人礼拝用に制作されたとみられる。1495年ごろ、20歳前後の作品か。
朝日新聞。調査結果は「若きミケランジェロのための提言」という本にまとめられているそう。今年9月まで地元のホーン美術館で展示されているそうです。
05/21 希少の三角縁神獣鏡と判明 卑弥呼100枚の一つか
奈良県の収集家所蔵の鏡片が、三角縁神獣鏡の中でも3枚しか見つかっていない珍しい「九神三獣鏡」の縁部分であることが分かったとのこと。最古形式の三角縁鏡の一つで、卑弥呼が魏帝から下賜された銅鏡100枚のうちの1枚とみられている。
鏡片は長さ約8cmで、元の推定直径は約21cm。縁はやすりで削られ平になっていたが、「子孫浮」(孫と浮は裏字)の銘文があったとのこと。成分比率は一般の三角縁鏡とほぼ同じ。
共同通信。
05/25 完成500年の清掃終了−ダビデ像
ダビデ像の完成500年に合わせて行われていたそうです。昨年9月から、柔らかい和紙と蒸留水でほこりをとる作業を実施したとのこと。
所蔵しているアカデミア美術館館長によると、10年越しの調査でダビデ像の「維持管理プログラム」を策定、2年ごとにチェックし表面の劣化を防ぐとのこと。また、近く両足首の詳細な断層撮影を行い修復する予定。
24日付共同通信。関連記事:スクラップ2004年3月9日
05/26 キャパ「最期の場所」特定
写真家の横木安良夫氏がキャパが残した写真などをもとに当日の行程を特定、住民に写真を示して聞き込みを重ねた結果、死亡現場を割り出したとのこと。
読売新聞。キャパは50年前、ベトナム・タイビンで地雷を踏み亡くなっています。
05/26 浜崎あゆみが名画鑑賞にひと役−グッゲンハイム美術館展
展覧会のイメージソングを歌うそうです。CMで流れるそうです。CMには俳優・瑛太を起用。会場では大人用の音声ガイドをフジテレビの西山喜久恵、川端健嗣両アナが担当、子供用は同局の高島彩アナが担当。
サンケイスポーツ。素材クラッシャー・フジサンケイグループらしい展開です。展覧会自体は面白そうなのに。7月17日(土)〜10月11日(月)、Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催。
05/26 漆美術館が岩手にオープン
漆工芸品を専門に集めた民間の「岩山漆芸美術館」が26日、盛岡市にオープンしたとのこと。美術館では絵画やたんす、食器など漆工芸品約2000点を所蔵。展示品の目玉は、世界一大きな漆絵画という「岩手の魂」(横18m、高さ2.42m)。
共同通信。
05/27 E・テイラー、ゴッホの絵画所有権めぐり提訴
エリザベス・テイラーさんが、ゴッホの絵画の所有権を認めるようロサンゼルスの連邦裁判所に提訴したとのこと。訴状によると、テイラーさんは、ゴッホの「View of the Asylum and Chapel at Saint-Remy」(1889年)を1963年にロンドン・サザビーズで落札したとしている。しかし、同絵画の元所有者だった女性の相続人と名乗る人物4人が、絵画の返還、あるいは売却した際に得る利益を要求しているという。
26日付ロイター通信。訴状では、4人は元所有者が絵画をナチス・ドイツに奪われたと信じているが、実際は「財政的な理由で」1933年に売却した証拠があるとしているとのこと。部外者には何が何やら。
05/28 フェルメール「画家のアトリエ」再現−森村泰昌さん
フェルメールに扮してセルフポートレートを撮りつつ、謎の部分の解明に挑んだとのこと。
読売新聞。この模様は、6月6日のNHK教育テレビ「新日曜美術館」で放送されるそうです。
記事は写真付きでした。実物を見た直後の森村バージョンは、土足で入り込む悪夢(同日、展覧会に行きました)。いや、普段は森村氏の写真を見ても何ともないのですが。
05/28 田中一村の映画化中止求める
田中一村の半生を映画化する計画に対し、一村の遺族が映画化中止を求める通告書を製作者らに送ったとのこと。
映画「アダン」(五十嵐匠監督)は、奄美で画業に打ち込む晩年の一村に架空の少女アダンが絡む物語。化粧品会社DHCが出資し、榎木孝明主演で7月の撮影開始を目指している。
共同通信。遺族は一村の絵の使用も許諾せず、DHCが募集を始めたヒロインオーディションの中止を同社に求めているとのこと。このまま映画化された場合は提訴する構え。
個人的には、ストーリーを含め、あらゆる面において萎える企画です。
05/29 「佐竹本三十六歌仙」複写絵巻を発見−秋田
明治時代に模写した木版画が、個人宅で見つかったとのこと。版画は、秋田出身の画家、土屋秀禾(しゅうか)(1868〜1929)作。36人全員が18人ずつ上下2巻に描かれ、木箱に収められていたとのこと。秀禾が佐竹氏の許可を得て描き、当時数十部発行されたものと判明したそうです。保存状態は良好とのこと。
毎日新聞。今秋、秋田市立千秋美術館で展示予定。
三十六歌仙切「人麿」(佐竹本)が、「蒐集家・出光佐三のこころ」展に出品されるようです。出光美術館にて6月5日(土)〜7月19日(月・祝)
05/30 踊るサテュロス愛知万博へ
海中に二千年余り沈みながら、1998年にシチリア島沖で回収された古代ギリシャのブロンズ像「踊るサテュロス」が、2005年の「愛・地球博」イタリア・パビリオンに出展されることになったそうです。国外に持ち出されるのは初めて。
読売新聞。像は高さ約2.5m。紀元前4世紀半ばに制作され、同3世紀末から2世紀初め頃、アテネから輸送中に船もろとも海に沈んだと推測されているそう。






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