2006年
08/01 5億5000万円の展示品盗難 エルミタージュ美術館
ロシア通信などによると、総額1億3000万ルーブル(約5億5400万円)相当に上る貴金属や宝石細工、装飾工芸品などの展示物220点余りが紛失し、美術館側は内部の職員が絡んだ盗難事件とみて調査を始めたとのこと。内部の通常の点検で紛失が判明した。国立の同美術館では過去にも盗難などが相次いでいるとのこと。
共同通信。「紛失した展示品の管理を担当していた職員は点検が始まると不審な死を遂げたというが、詳しい死因などは不明」らしい。ミステリー。8月10日付読売新聞によりますと、モスクワの国立文学・芸術公文書館でも数億円相当の作品が持ち去られていたそうです。
08/02 “あおもり犬ねぷた”も出陣!
弘前市出身の奈良美智さんの作品を題材にしたねぷたが、弘前ねぷたまつり初日に現れたとのこと。青森県立美術館の「あおもり犬」や、奈良さんらが共同制作する展覧会「A to Z」をPRする前ねぷた、灯籠など30台が、7日間のまつり会期中、運行コースに繰り出すとのこと。
東奥日報。こういう記事好きなんです。
08/06 展示作品に「模写では」の指摘 万代島美術館で開催中の展覧会
新潟市の県立万代島美術館で開催中の展覧会「はばたく日本画―近代から現代へ―」で、展示作品の中に、竹久夢二の作品「壺屋の夏」(竹久夢二伊香保記念館所蔵)を模写した絵が含まれている、と美術関係者から指摘を受けていることが分かった。出品作を所蔵する佐久市立近代美術館は贋作との見方を否定するが、展覧会終了後の9月にも調査を行う考えを示したとのこと。
模写ではないかと指摘されている作品は「夕涼み」。両作品は同じ着物の女性の立ち姿が描かれ、うちわなどの持ち物も同一。背景を除き、構図はほぼ同じとのこと。
毎日新聞。
08/06 ドイツの美術館にヌード・アートが出現
デュッセルドルフのクンスト・パラスト美術館で6日、ヌード・アートで知られる米写真家のスペンサー・チュニック氏による集団ヌード・アートの撮影が行われたとのこと。ボランティアで撮影に参加した数百人のモデルたちは、館内の絵画の前や屋外で全裸でポーズを取っていた。
ロイター通信。聞き覚えのある話と思っていたら、以前にもありました。同カメラマンによる集団ヌード記事(スクラップ2003年6月9日)。
08/10 歌論書「俊頼髄脳」最古の写本、一部に藤原定家の手跡
平安後期の和歌の理論書「俊頼髄脳(としよりずいのう)」の写本が、京都市上京区の冷泉家の蔵で見つかり、財団法人「冷泉家時雨亭文庫」が9日発表した。
一部は、冷泉家の遠祖にあたる鎌倉前期の代表的歌人、藤原定家が書き写していたとのこと。写本は約60冊あるが、江戸中期が最古。今回はそれより500年以上前のもので、現存しない原本に最も近い形とみられる。
読売新聞。「俊頼髄脳」:1110年代前半、勅撰集「金葉和歌集」の選者、源俊頼が、関白藤原忠実の娘のために書いた理論書。故事や伝承を説話的に記し、今昔物語の成立に影響を与えたとされる。
08/10 NYのセックス博物館、ヒラリー・クリントン議員の胸像展示
9日、公開されたとのこと。制作した彫刻家ダニエル・エドワーズさんは、性や政治、セレブにまつわる議論が沸き起こるのを期待している。エドワーズさんは、米歌手ブリトニー・スピアーズさんの出産シーンをかたどった裸体彫刻を制作したことでも知られる。
9日付ロイター通信。ブリトニーの件(スクラップ2006年3月30日)
08/12 ゴッホの肖像画、偽物? 所有の美術館が調査へ−豪
オーストラリアのビクトリア州立美術館が所有するゴッホ(1853〜90年)の肖像画が、貸出先の英国で偽物と指摘され、美術館が調査に乗り出しているとのこと。
問題の絵画は1886〜87年にパリで描かれたとみられる「ある男の肖像画」。同美術館は1940年、英国のコレクターから購入した。現在の価値は2000万豪ドル(約18億円)以上になるという。今は英国のエディンバラの美術館に貸し出されているとのこと。
時事通信。
08/12 盗難重文、11年ぶり見つかる 鶴ケ城展示の法具や観音像
福島県会津若松市の鶴ケ城から盗まれ行方が分からなくなっていた国指定の重要文化財で、奈良時代に作られた密教儀式に使われる法具「白銅三鈷杵」(同県磐梯町の恵日寺所蔵)など3点が、11年ぶりに見つかっていたことが12日、分かった。都内の男性が所有していたとのこと。同市は本物と確認、返還に向け交渉を進めている。男性は市に買い取りを求めているという。
既に窃盗罪の公訴時効(7年)が成立しているが、県警も男性が入手するまでの経緯を慎重に調べている。
ほかに見つかったのは、県指定重要文化財で、奈良時代と白鳳時代にそれぞれ作られた銅造聖観音菩薩(ぼさつ)立像2体。いずれも県内最古の観音像という。
時事通信。続報:「会津若松の重文盗難、実は「売り込み」男の犯行」(8月17日付読売新聞) 男は、東北や関西地方などで同様の犯行を繰り返していたことをほのめかしており、被害額は数億円に上るとみられる。そうです。11年ぶりに見つかった3点は、市が保管しているとのこと。
08/15 大型スキャナーで顔料成分推定 ふすま絵など正確に後世に
ふすま絵や掛け軸などの文化財をデジタル保存しながら絵に使用されている顔料成分を推定するスキャナーを、京都大教授や大日本スクリーン製造などのグループが共同で開発した。非接触・非破壊で顔料成分を調べることができ、作者・年代の解明や描かれた当時の色の再現などへの活用が見込まれるとのこと。
顔料推定システムは、江戸時代以前の大和絵が緑青や黄土など劣化が少なく安定している鉱物由来顔料を使用していることに着目。読み取った画像に光の三原色(赤緑青)がそれぞれどれだけ含まれているか調べることなどで、データベースに蓄積した大和絵顔料の色成分と照合、推定する仕組み。顔料は琳派や狩野派など各流派、時代で特徴があることから作者や制作年代などが特定できる可能性が高いという。原画の汚れや退色などにも対応し、現在さらに精度を高めるため基礎データを収集しているという。
京都新聞。
08/16 クリムトの絵、ばらばらにオークションに…高額なため
「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像2」など4点が11月に米ニューヨークで競売にかけられる見通しになったとのこと。クリスティーズが明らかにした。
ナチスがユダヤ人実業家から没収した5点のうちの4点で、ウィーンの美術館に展示されてきたが、今年3月ロサンゼルス在住の実業家の親族に返還された。当初、親族側は5点をまとめて美術館に売却する予定だったが、高額なため買い手がつかず断念。ニューヨークの美術館が最も有名な肖像画1点を史上最高額で購入した。今回、「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像2」や風景画などほかの4点も、それぞれ独立した形で競売にかけられることになった。専門家は4点の価値を計1億ドル(116億円)以上と推定しているとのこと。
読売新聞。関連記事:スクラップ2006年6月19日
08/19 風神雷神図屏風、宗達作を光琳が敷き写し…先達に学ぶ
俵屋宗達(生没年不詳)、尾形光琳(1658〜1716)、酒井抱一(1761〜1828)という琳派を代表する3絵師が描き継いだことで知られる作品「風神雷神図屏風」をめぐり、先人・宗達の作品を、光琳が薄い紙で絵柄をトレースする「敷き写し」の技法で学び、自身の作品を描いた可能性が高いことが分かった。3作品は絵柄が類似し、17世紀前半の宗達の絵を18世紀初めに光琳が、その光琳の絵を19世紀前半に抱一が学んだとされる。
3作品を一堂に展示する東京・出光美術館「国宝 風神雷神図屏風」展(9月9日〜10月1日)のため、同館の内藤正人・主任学芸員と図録デザイン事務所が画像処理ソフトを使い、実寸と同比率で3作品を重ね合わせたところ、宗達と光琳の風神・雷神は体や衣を描く線などがぴったり重なったとのこと。光琳は宗達の絵を忠実に写し取ったとしか考えられないという。
読売新聞。
08/23 ブリューゲル親子の名作、国立西洋美術館に里帰り
16世紀フランドルの画家ピーテル・ブリューゲルが描き、長男で同名のブリューゲルが精巧に模写した「鳥罠のある冬景色」を、国立西洋美術館がベルギーの画廊から購入したとのこと。同館は実業家の松方幸次郎が収集した美術品を母体とするが、そのコレクションから散逸していた一点。
ブリューゲル(父)の原作はフランドル地方の農村を描いた名画で、ベルギー王立美術館が所蔵。長男のブリューゲル(子)は父の絵を大量に模写したことで知られている。
読売新聞。同館で開かれる「ベルギー王立美術館展」(9月12日〜12月10日)で公開されるそうです。宣伝を兼ねた記事に見えます。
08/25 唐招提寺 金堂扉板に極彩色の花文様 解体修理で発見
奈良県教委は24日、唐招提寺(奈良市)の国宝・金堂正面にある扉板の金具の下から、創建当初(8世紀後半)に描かれたとみられる極彩色の花の文様が見つかったと発表した。平安時代までの古代建築で、風雨にさらされる扉板の外側に彩色文様が見つかったのは初めて。平安時代の文献にこの彩色を指すとみられる記述があるが確認は初めて。
金堂正面には扉板(縦約4.4メートル、横約1.2〜1.5メートル)が計10枚あり、軸部分を補強する金具(縦14センチ、横40センチ)3枚の下に彩色模様があったとのこと。うち2枚は縦12センチ、横20センチ、1枚は縦2センチ、横3センチの範囲に蓮などの花を円形に並べた「宝相華文」の文様の一部が残っていた。花の中心部の花弁を緑色に、外側の花弁を白、赤、黒の縞模様で描いているとのこと。金具の下で日光や外気にさらされなかったため残ったらしい。
現在の扉板の表面にはボタンの花や唐草文様を描いた黄色や白の彩色が残存しており、今回の調査でいずれも江戸・元禄年間の修理の際に描かれたと判明。また、創建時の彩色文様の痕跡が表面に見つかり、調べた結果、直径70センチ大の「宝相華文」が扉板1枚当たり約10個描かれていたことが分かった。
毎日新聞。
08/26 国宝の障壁画をデジタル複製 大徳寺・聚光院 46面を入れ替え
安土桃山時代に狩野松栄・永徳父子が描いた大徳寺塔頭聚光院の方丈障壁画(46面、国宝)すべてをデジタル技術で複製して入れ替えることになり、25日、複製を手がける京都国際文化交流財団などが発表したとのこと。
聚光院は千利休の墓所。障壁画は5室を飾り、なかでも四季の花鳥を描いた「花鳥図」と琴や将棋で遊ぶ中国文人を描いた「琴棋書画図」は、永徳の現存するわずかな作例として貴重とされる。
複製には利休の茶室復元などを手がけた堺市の業者が出資、寄贈する。4億3000万画素の高精細スキャナーで画像を取り込み、デジタル技術で補正し、顔料系インクで印刷して障壁画に仕立てるとのこと。完成予定は来年4月。
オリジナルは京都国立博物館に寄託し、公開も検討されている。
京都新聞。
08/29 瑞巌寺本堂解体改修へ
国宝に指定されている本堂の解体修理に2008年度にも着手する方針を固めたとのこと。大改修は慶長14年(1609年)の創建以来初めてで、工期は10年に及ぶとみられる。
本堂の地下には中世に建築された瑞巌寺の前身・円福寺の建物遺構があるとみられ、発掘調査も計画しているとのこと。
河北新報。
08/29 重要文化財の修復拠点へ 九州国博が作業公開
九州国立博物館は29日、国の重要文化財指定を受けている木彫像の修復作業を公開した。国指定重文彫刻が九州内で修復されるのは初めて。貴重な文化財の修復は主に京都と奈良で行われているが、今後は九博が九州における修復の拠点となる。
九博には修復作業用の部屋が4つあり、うち3室は昨年から使用されている書画・古文書用。残る1室が、この日公開された彫刻用で、“国宝修理所”と呼ばれる財団法人美術院が修復事業に当たっている。
現在、奈多宮(大分県杵築市)所有の国指定重文「僧形八幡神坐像」「女神坐像(2体)」のほか、小武寺(おたけじ)(同)所有の同「倶利迦羅竜剣」が搬入されている。いずれも平安時代後期の木彫像で、虫食い穴などがあり、3人の技術者が樹脂の装てんなどの修復作業を続けている。
西日本新聞。
08/31 明日の神話 大阪府吹田市が壁画作品の提供申し入れ
吹田市は31日、故・岡本太郎さんの壁画作品「明日の神話」の提供を訴える要望書を「岡本太郎記念現代芸術振興財団」(東京)に送ったとのこと。同財団は「鑑賞にふさわしい場所」に無償で譲る考えだが、壁画のあまりの巨大さから二の足を踏む自治体が相次いでいた。正式な提供申し入れは同市が初めて。
毎日新聞。要望書を送ったけれども、展示場所は「まったくの白紙」らしいです。財団では、岡本さんの生誕100周年の2011年までに受け入れ地を探すことにしているのだそう。関連記事:「「明日の神話」誘致署名7万人超 長崎」(8月28日付西日本新聞)






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