2005年
05/01 等伯の菩提寺・長寿寺蔵の涅槃図 “養祖父”無文の作
長谷川等伯の養子家の菩提寺「長寿寺」(七尾市)が所蔵する「涅槃図」の作者が、等伯の養祖父ともされる「無文」であるとして、印章を調べた東京国立博物館文化財部研究員が発表したとのこと。無文については、「等伯画説」に、雪舟から数えて五代目と称した等伯の系図の三代目にその名が記されているだけで、作品や人物像について知る手がかりはなかった。
ただ系図では、無文の名前が、等伯と養父・宗清と並列した形で三代目に記され、画説の一説には、等伯の祖父が既に京都を往来し絵画に造詣が深かったことをうかがわせる記述もあった。このため一部の研究家の間では、無文が等伯の養祖父である可能性も指摘されていた。
東京新聞。見かけたのは東京新聞のサイトですが、掲載は北陸中日新聞辺りの気もします。
05/02 根津美術館休館し改築
来年5月7日までの展示を最後に休館するとのこと。3年半後の2009年秋に再開予定。
読売新聞。「燕子花図」が長いこと修理の旅に出ていると思ったら、今度は作品をしまったり出したりする所にもテコ入れを行うようで。建物が使えない間は、他美術館に収蔵品を丸貸し→展覧会開催というパターンが多いですが、こちらの場合はどうなるのでしょう。
05/02 村井正誠記念美術館が開館
東京・世田谷の自宅跡地に開館したとのこと。自宅に残された作品を中心に、毎年展示替えしながら紹介する。暮らしていた当時のまま保存されたアトリエもあり。
毎日新聞。開館は3月から11月にかけて日曜の午前と午後2時間ずつで、1カ月前までに予約が必要とのことです。
05/02 時宗の僧の木像を修復 一遍上人か、熊本・願行寺
鎌倉時代後期の僧、一遍上人を開祖とする浄土教の一派、時宗の僧の木像が修復されたとのこと。玉名市教育委員会によると、修復された像は時宗関連の文化財の中で最古級とみられ、一遍上人の像の可能性もあるという。像は、いすに腰掛けた姿で、高さ約130センチ。
共同通信。
05/03 カビとダニ、繁殖の連鎖が壁面直撃 高松塚古墳
壁画劣化問題で、カビとダニが相互に影響して繁殖する「生物の連鎖」が石室内で起きていることが、文化庁の分析で分かったとのこと。増殖の速度に殺菌処置が追いつかず、壁画の被害は拡大の一途をたどっているそう。
毎日新聞。
05/04 尾形乾山の土地、町人らに転売 鳴滝窯跡
京都市右京区鳴滝で窯を開いた土地は、乾山の後に3人の町人の間を転売されていたという新説を、窯跡の発掘調査に参加していた立命大院生が発表したとのこと。京都府立資料館所蔵の1872(明治5)年の行政文書から、乾山が鳴滝から1712年に二条丁字屋町(中京区)に移ったあとの土地所有者の履歴を調査、「乾山−菱屋十兵衛(1713年)−肥前屋善七(1723年)−鳥居道乙老(1729年)」と町人同士で転売されたルートを突き止めたそう。さらにその後の調査で、17世紀半ばに成立したとされる「洛外図」(個人蔵)に同じ土地が「八条殿屋敷」として描かれているのを見つけ、乾山が土地を譲り受けた二条家以前に皇族「八条宮家」が所有していたことを確認したとのこと。
京都新聞。これまでの通説では、同寺を再興した百拙元養が記した記録などから、乾山が文人桑原空洞に譲渡し、空洞が元養に譲渡したとされていた。
05/04 エジプトで「最も美しい」とみられるミイラを発掘
エジプト考古庁最高評議会のザヒ・ハワス長官が率いる専門チームが、サッカラ遺跡付近で発掘したもので、古代エジプト第30王朝のものと見られているとのこと。ミイラは金のマスクをつけ、身体の覆いにはエジプト神話の神々が描かれていた。
3日付ロイター通信。写真を見ましたが、「最近、塗った?嘘くせー」感がありありで。保存状態が良過ぎるせいでしょうか。
05/05 彫刻家ブランクーシの作品、28億円で落札
ニューヨークで開催されたクリスティーズのオークションで4日、コンスタンティン・ブランクーシの大理石の彫刻「Bird in Space」が2745万ドル(約28億円)で落札され、同オークションハウスの彫刻部門での落札価格の最高記録を塗り替えたとのこと。これまでの記録は、同じくブランクーシ作「Danaide」の1815万9500ドルだった。
4日付ロイター通信。落札予想価格を800万〜1200万ドルとしていたそうです。倍以上でしたね。
05/08 大学生は入館無料 単位認定も検討 国立科学博物館
会員大学の学生が対象。加えて、博物館での活動を単位として認定する制度も検討しているとのこと。科学への関心が若い世代で薄れていることを受け、来館者の増加と科学分野の人材養成を狙う。らしい。
毎日新聞。大学生の無料制度は、徳川美術館が3年前に導入し、成果を上げているそう。
05/09 円山応挙の衣装画を寄進 ゆかりの香住の寺へ
衣装画「波濤に飛鶴」が大乗寺(兵庫県香美町)に寄進されることになったそう。
「波濤に飛鶴」は、着物の背中や袖をかたどった和紙2枚に、荒々しい波の上を飛ぶ鶴の姿が墨と淡彩絵の具で描かれているとのこと。
京都新聞。この衣装画は親族同士が民事裁判で所有権を争っていましたが、和解が成立。寄進のはこびとなった模様。元々は27点あり、内19点は贈呈済みだったそうですが、今回の衣装画を含む8点は親族によって持ち出されていたとのこと。残る7点はすでに売却され、行方不明らしい。
05/12 免震台にてぐす糸で固定 展示品の転倒防止に有効
展示品が地震で転倒するのを防ぐには、免震台に五徳(脚付きの輪)やてぐす糸などで固定する方法が有効なことが、東京国立博物館の神庭信幸保存修復課長らの実験で分かったそう。14〜15日に東京芸大で開く文化財保存修復学会で発表される。
各地の博物館に導入されている免震台は、水平方向に動いて横揺れを吸収するタイプ。横揺れが主だった阪神大震災を機に普及した。だが昨年10月の新潟県中越地震は強烈な縦揺れを伴い、展示品が免震台の上で飛びはねて転倒。十日町市博物館の免震台上に置かれた国宝・火炎型土器(縄文時代)などが破損し、免震台の効果に疑問の声も出てきた。神庭課長らは阪神型や中越型の地震波を起こし、さまざまな展示方法を比較。その結果、免震台に乗せ、てぐす糸で固定したり五徳に乗せれば、かなり背の高いものでも倒れなかった。そうです。
共同通信。
05/12 石室解体案が有力 高松塚壁画で保存対策検討会
明日香村平田の高松塚古墳(7世紀末―8世紀初め)で、国宝の極彩色壁画が劣化している問題で、文化庁は11日、今後の方針を協議。作業部会が具体的な保存方法で、大きく分けて五案を提示。その中で、壁画を石材ごと墳丘から取り出し修復保存する石室解体案を「壁画の修理など保存対策で大きな効果が期待できる」とし、他案より有効性や実現性が高いとの見解を示したとのこと。
奈良新聞。
05/12 英宝石商、13億円で落札 ウォーホル作の「リズ」
アンディ・ウォーホルが制作したエリザベス・テーラーさんの肖像画「リズ」を、英国の宝石商が670万ポンド(約13億3000万円)で競り落としたとのこと。ニューヨークのサザビーズで10日行われた競売で、5人の参加者に競り勝ったそう。
共同通信。
05/12 エドワード・ホッパーの作品、15億円で落札
クリスティーズの戦後・現代美術のオークションで、エドワード・ホッパーの「Chair Car」(1965年)が1400万ドル(約15億円)で落札されたとのこと。ホッパー作品の最高落札価格は90年の242万ドルだったが、今回はこれを上回った。また、ウィレム・デ・クーニングの「Sail Cloth」(49年)も1310万ドルで落札されたそう。
11日付ロイター通信。
05/12 神奈川県がピカソの絵競売 税金滞納で差し押さえ
県税務課によると、高額滞納をした横浜市内の会社が所有していた「顔」という1969年3月の作品で、厚紙に油彩で描かれている。縦28.3センチ、横21.6センチ。
共同通信。オークションは6月1日県庁で行われ、200万円からスタート。5月25日午前10時から下見会も開く。
05/12 川の博物館で情報発信 歴史や文化の拠点に
国土交通省は、川に関係した全国約200の博物館や資料館などにガイドを配置、散策路で結ぶなど川の歴史や文化の情報を発信する拠点に活用する方針を固めたとのこと。歴史や文化を知ってもらうことで、川への関心を高めてもらうのが狙い。当面、今夏から多摩川(東京、神奈川)と、琵琶湖・淀川流域(滋賀、京都、大阪)で取り組み、2006年度以降、全国に広める考え。
共同通信。
05/12 世界最古の鋼と判明 トルコ遺跡出土の鉄を分析
トルコのカマン・カレホユック遺跡から出土したアッシリア商人居留地時代(紀元前20〜18世紀)の鉄片が、最古の鋼だったことが岩手県立博物館の分析などで分かったそう。
世界で初めて鋼の製鉄技術を確立したのは、鉄製武器を背景にアナトリア(現在のトルコ)で強大な勢力を誇ったヒッタイト帝国(紀元前14〜12世紀)とされてきたが、さらに400〜600年さかのぼることになる。
共同通信。
05/12 安藤忠雄氏が設計 美術館建設断念
パリ・セーヌ川のスガン島に、安藤忠雄氏の設計で進めていた現代美術館の建設を断念したとのこと。
美術館の建設計画は2000年9月、フランスの大富豪フランソワ・ピノー氏とルノー社とともに発表。同氏が所有する美術品を展示し2005年に開館する予定だったが、自然保護を訴える環境団体の反対などで断念したとのこと。
読売新聞。代わって、ベネチアで購入済みの建物を現代美術館とする意向。
05/14 伊美術館、設計変更は未定 磯崎新さん
磯崎新さんは13日、自らが設計を担当するイタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館の新しい玄関の建設について「契約は解除されていないが、事業は中断されたままだ」と述べ、イタリア側が求めている設計変更については未定であることを明らかにしたそう。
共同通信。玄関の建設をめぐっては、1999年の国際コンペで磯崎さんが選ばれ、2年後に設計契約を結んだ。イタリア文化省の高官が設計を非難する騒ぎもあったが、その後着工。しかし、2002年に現場で遺跡が見つかり、建設が一時中止に追い込まれた。
スクラップ2002年7月30日の続報と思われます。進展は未だない様子。
05/14 原画返還訴訟:遺族と博物館長、和解交渉は決裂
「広辞苑」の挿絵などを描いた生物画の第一人者、牧野四子吉(1900〜87)の遺族が、川那部浩哉・滋賀県立琵琶湖博物館長に旧満州産淡水魚画の原画38点の返還を求めた訴訟で、和解交渉が13日、京都地裁であった。双方が所有権を主張して譲らず決裂とのこと。8月に結審した後、判決が言い渡される見通し。
双方とも博物館など公的機関での保管や展示を望んでいるが、所有権の帰属について溝が埋まらなかった。
毎日新聞。上記の作品、昨年展覧会で見たような。念の入った細密画なのですが。38点以外の淡水魚?
05/14 ジャクソン・ポロックの作品、見つかる
未発表作品32点が発見されたとのこと。発見したのは、ポロックを幼年の頃から知っていた映画監督のアレックス・マター氏。32点のコレクションは、マター氏の両親の遺品に紛れ込んでいたという。両親は生前、ポロック夫妻と親しくしていた。
コレクションのうち22点はドリップ・ペインティングの手法で描かれており、2点はエナメル画。残りはすべて未完成だが、ポロックが色の配置を模索していた様子がうかがえるという。
13日付ロイター通信。
05/17 杉戸絵に動物 狩野派一門の作か
解体修理中の大徳寺塔頭玉林院本堂(京都市北区)で、縁と堂内を区切る杉戸絵の復元模写が完成したとのこと。全14面のうち、損傷の激しい6面について、元絵を杉戸に残したまま、別な紙に描き直したそう。
復元した図柄は、湖面に映った月をテナガザルが樹上から捕らえようとする図と、樹木の横でジャコウネコがたたずむ図の2種類。
京都新聞。玉林院には1669(寛文9)年の狩野探幽の襖絵が残されおり、杉戸絵も同時期に狩野派一門の手で描かれたとみられるそうです。
05/17 雪舟が手本にした「四季山水図」3点を入手
10月に開館する九州国立博物館が、室町時代の画家・雪舟の代表作「四季山水図」の手本となった中国の絵画3点(各縦74センチ、横44センチ)を入手したとのこと。国外の個人から買い取った。開館後に常設展示する方針とのこと。
毎日新聞。3点は、それぞれ春、夏、秋の景色が描かれている。冬は紛失しているらしいです。
05/18 「十五代樂吉左衞門館」を建設 佐川美術館
15代樂吉左衞門さんの作品を常設展示する美術館を、敷地内に建設するとのこと。2007年3月オープンの予定。
15代樂吉左衞門館は地上1階、地下2階、延床面積2265平方メートルで、池の上に広間の茶室などを造る。また池の下には、水を通して光が入るホールや6つの展示室、露地(庭)、小間の茶室も設ける。展示は千利休の言葉「守破離」をテーマに、作品5、60点を並べるとのこと。
京都新聞。
05/19 ノグチ財団「作品展示の仕方が悪い」札幌市に移設要望
イサム・ノグチ財団の理事らが、札幌市役所を訪れ、芸術の森美術館に展示されているノグチの彫刻作品「サンダーロック」について「展示の仕方が悪く、作品が死んでしまっている」と、現在の芸術の森からモエレ沼公園への移設を、強く要望したとのこと。
毎日新聞。関連記事:スクラップ2005年4月13日
05/19 知恩院の国宝本堂修復へ 1639年の建立以来初
京都府教育委員会は、京都・東山の知恩院本堂(国宝)を修復すると発表したとのこと。大規模な修復は1639年の建立以来初めて。2011年に迎える開祖法然上人800年大遠忌の記念事業の一環。19年までに、本堂後ろの集会堂も含めて修復する計画で、総事業費は約65億円。
共同通信。現在の本堂は火災で焼失した後、徳川家光が再建した。間口45メートル、奥行き35メートル、高さ28メートル。
05/20 阿弥陀如来立像、身代わり阿弥陀像だった
左まぶたがただれたようになっている栗原市高清水の善光寺「阿弥陀如来立像」について、東北大大学院文学研究科の長岡龍作教授は「災いを引き受ける『身代わり阿弥陀像』だった」との見解を述べた。長岡教授が確認した限りでは、現存するのは国内で一体限りとのこと。立像は銅製で高さ154センチ。13世紀半ばの鎌倉時代に製作された。
毎日新聞。
05/21 「芸術テロリスト」今度は大英博物館にニセ壁画
「バンクシー」が、今度は、大英博物館に、古代人がスーパーマーケットのカートを押しているニセモノ壁画をこっそり展示したとのこと。この壁画は、「狩りに出かける古代人」の題で、今月16日に「古代ローマの英国」展示室に置かれ、18日まで3日間、だれにも気づかれずに展示されていたそう。
読売新聞。関連記事:スクラップ2005年3月25日
05/21 パウル・クレーの美術館が6月に開館
「パウル・クレー・センター」が6月20日、出生地のスイスの首都、ベルン郊外に開館するとのこと。
これまで、同市内の美術館にあった財団コレクションと、クレーの遺族の個人所有の作品を合わせ4000点を一堂に展示。さらに、約1万点の全作品が検索できるデータベースも設置される予定。設計はレンゾ・ピアノ氏が担当した。
20日付時事通信。
05/24 白虎前脚も石室の外に キトラ古墳、次は朱雀へ
石室西壁に描かれた四神図・白虎の前脚部分をはぎ取り、運び出したとのこと。壁石に固着した彩色部分をはがすのは初めてだったが、損傷はないという。壁石からはく離していた胴体部分は昨年9月、はぎ取られており、白虎図の取り外し作業は終了。6月には南壁の朱雀図に取り掛かる見込み。分割した白虎図は奈良文化財研究所(奈良市)で保管し、夏以降に接合するという。
前脚部分は周囲の絵のない余白部分を含めると縦32センチ、横26センチ。表面を和紙などで補強し、ステンレス製のへらなどを使って石壁からしっくいを切り離した。
共同通信。関連記事:「白虎や青竜が上空から案内 キトラ古墳紹介のハイビジョン映像が完成」(5月30日付共同通信)






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