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食事は美味しい方がいい。真理であろう。誰がまずいモノをわざわざ好きこのんで食べるだろうか。かく言う速水ももちろん美味しいものが好きである。白く盛り上がったほかほかのご飯、ほどよく焦げめが付いた脂ぎったサンマwith大根おろし、鍋いっぱいにぐったり煮てあるひじきの煮付けエトセトラ。挙げていけばキリがない。
だが待て。我々はそんな自堕落な食生活を送っていていいのであろうか? 旨いものが好き、そんなことは35億年前に海中でうろうろしていた単細胞生物がすでに成し遂げているのである! 以来海中でぶざまに泳いでいたセファラスピス、シダの葉を貪り食うアマルガサウルス、洞窟の中で生肉を噛みしめるピルトダウン人に至るまで「旨いものが好き」という原則は何ら変化していない。
これでは我々はなんのために奇形とさえ呼べる巨大な大脳新皮質を持っているかわからないではないか。いやしくも人類は万物の霊長である。食事をするにもその自覚を持って、ホモ・サピエンスとしての責任感とともに咀嚼せねばならない!
むろん、ただまずいものを食べればよい、というわけではない。そのような安易な解決は巨大な大脳新皮質にふさわしいとは到底言えない。だが、ヒントはある。誰かが言っていたように「冒険小説の魅力は登場人物達がまずそうな食べ物を旨そうに食べるところにある」のだ。
ここでは、フィクション、ノンフィクションを問わずそんな新たな食生活の地平を模索していこうと思う。いまは諸君もなんのことやら分からないだろうが、必ずや賛同者が現れることを確信する。人類の未来はここにおいてほかはない。
ここに我々は大脳食法を厳かに宣言する。
咀嚼せよ! 味覚せよ! 飲み下せ! 舌で喰うな大脳で喰え!
いまや畏れるものはなにもない。