2017年9月29日
個人的印象による話です。
同人誌には昔からしばしばプレミアがつき、同人誌を扱う古書店で高額で販売されてきました。
思うに以前は、高額な同人誌はほぼ二種類に分けられました(この記事では1万円以上を高額とします)。一つは商業で有名になった作家さんの無名時代の同人誌、もう一つは既に有名な作家さんがイベント限定で頒布された同人誌です。
しかしここ数年ほど、古書店で急激に上の二種の条件いずれにもあてはまらない高額同人誌が増えてきたように思えます。
つまり、商業で特に有名になったわけでもない作家さんの同人誌、書店で委託されていた同人誌が古書店で高額で販売されるケースが頻繁に見られるようになってきました。
なぜこのような変化が起きたのかと考えてみると、いくつかの要因があるように思われます。
一つ目の理由として、以前のように上手い同人作家イコール商業デビューという時代ではなくなっているからではないでしょうか。
以前は「実力があるなら金銭的にも知名度向上の面でも同人作家から商業作家になるのが当然」という風潮がありましたが、最近はそうでもないという指摘があります。漫画編集者の荻野謙太郎様は、こうツイートされました。
また、同人誌作家の水無月あくあ様は、こうツイートされました。
つまり、以前は実力ある同人作家は商業デビューすることがほぼ当然だったので「上手い同人作家登場→商業デビューし人気作家に→無名時代の同人誌にプレミア」という流れになりやすかったわけです。
しかし今は上手い同人作家が商業デビューしないケースが増えたため「上手い同人作家登場→同人のまま人気作家に→無名時代の同人誌にプレミア」というケースが増えているのではないでしょうか。
二つ目の理由として、人々の情報発信能力・情報収集能力が向上し希少同人誌の情報を得る機会が増え、面白い本に人気が集中しやすくなった、ということが考えられます。
以前は、過去の同人誌の情報を得るのは難しいことでした。しかし最近はTwitter等で同人誌の宣伝をする作家さんが増えるなどし、またスマホの普及でウェブがより身近なものになり、
そういう情報もネットでたやすく検索できるようになりました。
これにより過去の同人誌への需要が高まり、値段が高騰したというのが理由の一つなのかも知れません。
三つ目の理由として、同人人口の増加が考えられます。
1996年のコミケ50で35万人、2006年のコミケ70で43万人、2016年のコミケ90で53万人とコミケ参加者は総じて増加傾向にあります(但し2007年以降はほぼ横ばいです)。
コミケ参加者が増えることと同人人口が増えることはイコールではありませんが、同人人口が増加したことにより需要が増し、以前より中古市場の価格が高騰している……という可能性はあるでしょう。
こういった要因から近年は以前では考えにくい同人誌の高騰が頻発しているのではないか、と私は考えています。
ただ念のため書いておきますと、古書店で高額となる同人誌自体はやはりごく少数です。後に有名になり、作品がアニメ化された作家さんの無名時代の同人誌でも古書店では多くの場合数百円程度です。
同人誌がそう簡単に高騰するようになったわけではないので、誤解のないようお願いします。
余談
余談ですがこのことを友人に話したところ、「本を古書店で買ってインターネットオークションで転売する行為(いわゆる「せどり」)が多いから古書店で価格が高騰したのではないか、実際にブックオフはそれで値上げしたそうだ」と言われました。
しかし、この見解には私は懐疑的です。
せどりは通常、価値の分かっていない古書店で相場より安い本を買って転売する行為で、古書店で既にプレミア価格が付いている本をせどりのために買うのはリスクが大きいはずです。
無論、同人誌を扱う古書店がネット通販をしていないなら、それをインターネットオークションでより高額で転売できる可能性はなくはないでしょう。
しかし私の知る限りもっとも著名な同人誌を扱う古書店はまんだらけと駿河屋で、それらはいずれもネット通販をしているのです。
これではせどりで利益を上げられる可能性は低く、同人誌についてはこの友人の指摘は成り立たないのではないでしょうか。
実際に私は古書店で高額となっている同人誌のヤフオクでの落札価格を何冊か調べてみたのですが、いずれも古書店での価格より低額で落札されていました。
2018年3月31日
今回も、漫画についての「私設コミックマーケット対策委員会」を更新しました。
お読み頂ければ幸いです。
ちなみに、今回のコミケであった出来事です。
最序盤に、新刊3冊(カラー本2冊とモノクロコピー本1冊)を告知していたあるサークルに行きました。このサークルは有名なサークルではなく、
行列ができたりはしないものの開場後一時間半程度で完売する、序盤に行く必要性が高いサークルです。
しかしスペースに着いてみると、机の上には本が2種類しかありません。流石にこのサークルがこんな序盤に完売するとは思えず、売り子さん(明らかに作家さん本人ではない)に聞いてみました。
私「済みません、もう一冊は完売でしょうか?」
売り子さん「ダンボールの中にあるかも知れないです」
私「恐れ入りますが、あるかも知れないなら探してみて頂いても宜しいでしょうか?」
売り子さんはいくつかある段ボールの一つを開け、中を確認し「ないですね」
私は信じられない気持ちで一杯だったのですが、ここで押し問答をするわけにも行かず残っていた二冊のみを買いました。
その後のその作家さんのツイートが、こういったものでした。
「新刊が午前で一度無くなったのですが、補充済みですので午後に来て頂ければまだ買えます」
(在庫が補充できた理由を聞かれて)「売り子さんに在庫の場所をうまく伝えられていませんでした」
薄々そんなところではないかと思っていたのですが、やはりショックです……。イベント終了後にこのツイートに気付いた私は、軽く泣いてしまいました……。
ちなみにこの同人誌、後日書店委託もされたのですが作家さんが告知する前に完売し入手できませんでした。
※2018年4月1日改稿
2018年3月31日
昔は漫画を読んでいて、こんなことを考える場合がありました。
「この漫画家さんは、美形という設定のキャラクターをちゃんと美形に描けばいいのに……」と。
しかしその後、多くの漫画を読むにつれてこう考えるようになりました。
「私には美形と思えないキャラクターでも、多くの場合漫画家さん・イラストレーターさんは自分が美形と感じるように描いているのだ」と。
その特に顕著な例として、イラストレーターのしばふ様と、漫画家のkashmir様の例を紹介します。なお、お二人を簡単に紹介させて頂くならこのような感じです。
- しばふ様:イラストレーター。ゲーム「艦これ」で多数のキャラクターデザインをされている。(Pixiv)
- kashmir様:漫画家。ギャグ系・シュール系の漫画を得意とし、著作多数。たまに同人誌も出されていて、そちらでは全年齢向けオリジナル専門だったが……。(ネコにテルミン)
私が「艦これ」でしばふ様のキャラクターを見ての印象は、次の二点でした。
- 私としてはあまり美人とは思えない女性キャラクターの割合が多い。
- 何割かの女性キャラクターの印象が、kashmir様のそれと似ている。特に伊401というキャラクター(参考:「艦これ攻略wiki:伊401」)は、kashmir様の描かれるキャラクターにイメージが近い。
無論、お二人の描かれるキャラクターが似ているからと言って何の関係もない……そう思っていたのですが。
ある時、kashmir様が出された同人誌を見て私は驚きました。それは伊401をヒロインとした、成人向け同人誌だったのです。
今までは全年齢向けオリジナル専門で描かれてきたkashmir様が成人向け二次創作本を出されたことに私は驚きましたが、しかし納得もいったのでした。
「伊401はkashmir様の描かれる女性キャラクターとイメージが近い。伊401は私には美人という印象はなかったが、kashmir様にとっては美人だったのだろう」と。
現実世界でも、どんな顔を美形と感じるかは人それぞれです。当然二次元世界でも、それは同じなのです。
余談ですが逆に、漫画家本人としては不本意ながら、自分の理想ではないキャラクターを多数派の読者の好みに合わせ、美形として描いている場合もあるかも知れません。
ある漫画家さんの描かれるキャラクターは、全体的に顔の各パーツが尖っている感じで、個性的だなぁと私は思っていました。
ところがその漫画家さんがある時始められた新連載ではその特徴がほぼ消え、個性は薄れたものの恐らく多くの読者が美形と感じるであろう描き方になっていました。
私は「絵柄を変えられたんだ、この方が受けるかも」という印象を受け、事実その作品はある程度ヒットしたようでテレビアニメ化もされました。
……が、連載が進むにつれてその作品のキャラクターの顔の各パーツはだんだん尖っていき、結局その漫画家さんの以前の作品の絵柄に戻りました。
これは、顔の各パーツが尖っていた方がその漫画家さんの美意識に合っていたからではないかと私は思っています。