このページでは、Europa Universalis が扱っている時代の歴史ではなく、Europa Universalis というゲーム自体の歴史を解説します。
Europa Universalis はもともと、フランスの Azure Wish Editions という会社から出版されたボードゲームでした。
名前の通り、1492~1792年を舞台に、ヨーロッパ列強諸国が残りの世界を獲物として分捕りあうゲームです。6~8人のプレイヤーが列強諸国を担当し、列強以外の国は全て minor (小国)として扱われます。カウンター数1400。ボードゲームなのでさすがにリアルタイム制ということは無く、ターン制のゲームです。1ターンがゲーム内時間で5年を表し、1ターンをプレイするのに実時間で2~3時間を要します(1人あたり20~30分がプレイヤー人数分かかります)。1492~1792年までを再現するグランドキャンペーンだと、60ターンですから、のべ120時間以上かかるというマンモスゲームです。
我々の知っている EU2 と比べると、リアルタイム制でない点は大きな違いですが、その他の部分では概ね同じです。ミッションと勝利ポイントも、安定度のシステムも、商人と交易センター(CoT)の仕組みも、だいたいあんな感じです。EU2 でコンピュータが自動計算してくれる部分を人間が手で計算するゲーム、と考えると、いかにとんでもないゲームだったか想像できるでしょう。
当然ながらこのボードゲームのグランドキャンペーンを最後までプレイできた人は滅多にいなかったようです(短いシナリオであれば1~2日でプレイできたようですが)。
このボードゲームの権利をスウェーデンの小さなゲームメーカー Paradox Entertainment が買取り、コンピュータ化したものが、初代 Europa Universalis (EU1) です。
EU1 は、EU2 に比べて細かい部分でまだ痒いところに手の届かないところがありましたが、外見はほとんど EU2 と同じでした。EU2 との大きな違いは、「キリスト教系/イスラム教系以外の宗教は全て異教(Pagan)」「プレイできる国は英仏墺露西土などほんの一握り」「イベントが用意されているのはプレイ可能な国のもののみ、それもかなり少ない」などです。やはりボードゲーム同様「ヨーロッパ列強諸国のゲーム」だったと言えます。
EU1は、リリースされた2001年2月時点でもかなり地味なゲームで、宣伝費もほとんどかけなかったにも関わらず、Civilization に飽き足らなかった歴史ゲームファンに熱狂をもって迎えられ、ヨーロッパと北米で大ヒットしました。
ファンの間では EU1 用シナリオを自作することが大流行しました。EU1 のイベント機能は貧弱で、EU2 のようなイベントスクリプトを書くことはできなかったため、自作シナリオと言ってもできるのは初期設定を用意することぐらいでした。それでも実に多彩なシナリオが作られ、中でも IGC -- Improved Grand Campaign と呼ばれるものが人気を集めました。IGC は eu.exe 本体にパッチを当て、列強諸国だけでなく登場する全ての国をプレイできるようにしたのです。
EU1の成功に味をしめた Paradox は、同じ年の秋には早くも改良版をリリースします。これが今日の英語版 EU2 です。
Paradox は、EU1時代のIGCが人気だったことを受けて、EU2ではプレイヤーが全ての国から選べるように作り変えました。このためヨーロッパ以外の国についても扱いを格上げし、キリスト/イスラム教以外の宗教も大きく仏教・儒教・ヒンドゥー教・その他に区別しました。各国のイベントのデバッグも大変だったのでしょう。イベント用テキストファイルを書き換えれば簡単に修正できるようになりました。
ただし、システムの基本部分のメカニズム、例えば宗教と寛容度などについては、
キリスト教諸国の宗教戦争の再現に特化したEU1のシステムがそのまま使われています。
そのため、仏教と儒教が新規追加されたは良いが、仏教と儒教の間で宗教摩擦が起きたりといった非現実的な面も少なくありません。ヨーロッパ中心のシステムを無理にアジアまで拡張した、との声もあります。
しかし本当に Paradox が凄かったのはここからです。
Paradox は、EU2 を発売してそれで終わりにしたのではなく、パッチを出し続けます。
それも、バグ修正のパッチではなく、ユーザの希望を取り入れて仕様変更/機能追加したパッチを出し続けているのです。EU2 が発売されて既に2年半近くが経過していますが、いまだにパッチによる機能追加や改良が続いています。
現在 EU2 の最新パッチはバージョン1.08で、1.00に比べて例えば以下のような改良が加えられています。
また、EU1の頃と同様、EU2でもユーザはmod作成に熱中しました。
EU2ではイベントを自由に作れるようになったため、
各々が各国のイベントを作り、それをマージしてプレイする、
Event Exchange Project が発足し、数千個のイベントが新たに作られました。
Paradox もこれらのmod作成を支援しました。パッチによる機能追加でも、mod作成支援のための新機能が数多く含まれています。
2002年、香港のゲーム会社 Typhoon Games が、アジア地域での EU2 販売権を獲得し、
アジア向けにカスタマイズした Europa Universalis II Asian Chapter の開発を発表します。
後に Asia Chapters と複数形に改名されますが(シナリオが増えたためでしょう)、
これが2004年3月25日にメディアクエストからリリースされたEU2日本語版です。
現在販売されている Asia Chapters は、
開発開始当時として最新版だったバージョン、1.06bのEU2に基づいて作られています。
開発開始からリリースまで一年以上が経過したため、
残念ながらかなり古いバージョンになってしまい、
前述した1.08の新機能は盛り込まれていません。
今後のパッチでのサポートが期待されます。
また、英語版EU2用に作られたmodも、今のところ利用不可能です。
バージョンを除くと、
Asia Chapters はオリジナルのEU2と比べて以下の違いがあります。
また残念ながら、現在のところバグも多数残っています。 詳細についてはQ&Aを御覧ください。
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