Europa Universalis II 戦闘システム解説

EU2の戦闘がどのように判定されるのかはマニュアルにもほとんど書かれていないため、 時として戦闘結果が理不尽なもののように見えることもあります。 ここでは、公式フォーラムのFAQを元に、 EU2の戦闘システムがどのようなアルゴリズムとパラメータを元に解決されるのかを 解説します。


陸戦の流れ

EU2で陸軍同士がぶつかって戦闘が始まると、 戦闘が終了するまで、毎日以下の手順が繰り返されます。

  1. CRTの列を決定する
  2. 双方の戦力を算出する
  3. 射撃戦を解決し、双方に損害を適用する
  4. 戦闘が継続されるか終了するかを判定する
  5. 白兵戦を解決し、双方に損害を適用する
  6. 戦闘が継続されるか終了するかを判定する

つまり、毎日射撃戦と白兵戦が行なわれ、毎日両軍に損害が出て、 どちらかが全滅するか撤退するまでこれが毎日繰り返される、 という仕組です。

手順 1 : CRT の列の決定

CRTとは、Combat Resolution Table の略で、戦闘解決表という意味です (Combat Result Table -- 戦闘結果表だとする説もありますが、 どちらにしても大差ありません)。 Europa Universalis は元々ボード版ウォーゲームで、 戦闘を解決する際には、10面サイコロを振って出た目をCRTに当てはめて 結果を出していました。 サイコロの目が大きければ大きいほど良い結果で、 1だと相手にほとんどダメージを与えられませんが、 10だとかなりの大打撃を与えられる、といった調子です。

コンピュータゲームとなったEU2でも、同様にCRTが使われています。 さすがに物理的にサイコロを振ることはありませんが、 CPUが乱数を発生させ、これをサイコロの出た目の代わりに使っています。
EU2では以下のようなCRTが使われています(バージョンによって多少異なります)。

サイコロABCDE
10 ; 0.10 ; 0.10 ; 0.10 ; 0.010 ; 0.01
21 ; 0.11 ; 0.11 ; 0.11 ; 0.051 ; 0.05
32 ; 0.252 ; 0.252 ; 0.252 ; 0.11 ; 0.1
45 ; 0.252 ; 0.252 ; 0.252 ; 0.252 ; 0.15
55 ; 0.55 ; 0.55 ; 0.55 ; 0.252 ; 0.25
610 ; 0.510 ; 0.55 ; 0.55 ; 0.55 ; 0.25
715 ; 110 ; 15 ; 15 ; 0.55 ; 0.5
820 ; 115 ; 110 ; 110 ; 110 ; 0.5
925 ; 220 ; 115 ; 115 ; 110 ; 1
1030 ; 225 ; 220 ; 220 ; 115 ; 1
1135 ; 230 ; 220 ; 220 ; 220 ; 1
1240 ; 235 ; 230 ; 225 ; 220 ; 2
1345 ; 340 ; 335 ; 330 ; 330 ; 2
1450 ; 345 ; 340 ; 335 ; 330 ; 3
1560 ; 350 ; 345 ; 340 ; 335 ; 3
1660 ; 455 ; 350 ; 345 ; 340 ; 3

セミコロンで区切られた二つの数字は、前が兵力ダメージ、 後が士気ダメージを表します。

1〜16の各行はサイコロの目に相当しますが、 A〜Eの各列は「CRTの列」と呼ばれます。 実際の戦闘を解決する際には、この中のどれか一つの列で結果を出します。 見ればわかるように、Aの列がもっとも有利で、Eの列が最も不利です。 同じサイコロの目でも、敵に与える損害はAの列が一番大きく、 Eの列が一番小さくなります。
誰もがAの列を使って敵へのダメージを算出したいところですが、 やはり世の中そう甘くはなくて、どの列を使うかは勝手に選べません。 では何で決まるかと言うと、敵味方の陸軍技術レベルを比べることで決まるのです。
どの列を使うかは、EU2の場合、下の表によって決められます。

0〜89〜1314〜1718〜2526〜3536〜5051〜
0〜8[NA/A]NA/BNA/BNA/CNA/CNA/DNA/E
9〜13C/A[C/A]C/BD/CE/DE/EE/E
14〜17B/AB/A[C/B]D/CE/DE/EE/E
18〜25A/AB/AB/B[C/B]D/DE/EE/E
26〜35A/AB/AB/AB/B[B/B]D/CD/D
36〜50A/AA/AA/AB/AB/B[C/C]C/C
51〜A/AA/AA/AA/AA/AB/B[B/B]

この表で攻撃側の陸軍技術レベルを縦軸、防御側を横軸にあてはめて出したものが、 戦闘の際に使えるCRTの列になります。 /の前が射撃戦、後が白兵戦です。 NAは「射撃戦を行なえない」ことを意味します。
例えば、陸軍技術14のスペイン軍と陸軍技術1のサポテク軍が戦う場合には、 スペイン軍は射撃戦にB/白兵戦にAの列を使い、 一方サポテク軍は射撃戦は攻撃できず白兵戦にBの列を使う、ということになります。

手順 2 : 戦力の算出

お互いに使うCRTの列が決まったら、次は射撃戦と白兵戦の戦力が計算されます。 歩兵/騎兵/砲兵がそれぞれ戦力いくつ分として働くかは、陸軍技術によって変わってきます。 以下の表は、歩兵1000人・騎兵1000騎・砲兵10門あたりの戦力等を表したものです。

技術年代歩射騎射砲射歩白騎白砲白InTPCvTPArTPSize士気
MEDIEVAL ERA
01419000505004.4505004.41.51.5
11429000505004.5505004.51.51.60
21450000705004.6705004.61.251.75
31465000804754.8804754.811.75
4147500090450590450512
5148500090450590450512
614950001004505100450512
7149700510042051004201012.25
81498001010042051004201512.25
RENNAISANCE ERA
915021050100400101014006012.75
101508201001004001510240011512.75
111518501001004001510540011513
1215301001001004001511040011513
1315402001001004001512040011513
ARQUEBUS ERA
1415455001001004001515040011513.5
1515506001001004001516040011513.5
1615657501001004001517540011513.5
1715858001001004001518040011513.5
MUSKETS ERA
18160090012510040017.5190400142.513.75
191610100012510040017.5200400142.513.75
201620100012510040017.5200400142.513.75
21162511011501104002022040117014
22163611021501104002022040217014
231644110217511040022.5220402197.514
24165511051751104002522040520014
25166011052001104003022040523014
BAROQUE ERA
26167512052501254003524540528514.1
27169012053001254003524540533514.1
281700125530012540037.5250405337.514.1
29170912553501254004025040539014.1
30171412553501254004025040539014.1
31171912554001304204525542544514.25
32172312554001304204525542544514.25
33172512554001304204525542544514.25
34172712554001304204525542544514.25
MOVEMENT ERA
351730130540014042047.5270425447.50.54.5
361732130540014042047.5270425447.50.54.5
371735130540014042047.5270425447.50.54.5
381737130540014042047.5270425447.50.54.5
391743140540014042047.5280425447.50.54.5
401747140545014042052.5280425502.50.54.5
411750145545014545052.5290455502.50.55
421755145545014545052.5290455502.50.55
431760145545015045052.5295455502.50.55
441765145550015045057.5295455557.50.55
451770150555015045062.5300455612.50.55
461775150755015045062.5300457612.50.35
471780150755015045062.5300457612.50.35
481785150755017545062.5325457612.50.35
4917901757550175450653504576150.35
5017911907550175450653654576150.35
DENTELLES ERA
5117922007600175400653754076650.35.5
5217952007600190400653904076650.35.5
531798225780020040067.5425407867.50.35.5
5418012251080020040067.5425410867.50.35.5
5518052501080020040067.5450410867.50.35.5
56180925010800200400704504108700.35.5
57181225010800200400904504108900.35.5
5818132501080020040092.5450410892.50.35.5
5918152501080020040092.5450410892.50.35.5
6099992501080020040092.5450410892.50.256

この表を見ると、陸軍技術14のスペイン軍歩兵1000人は射撃50/白兵戦100、 騎兵1000騎は射撃0/白兵戦400、砲兵10門は射撃100/白兵戦50の戦力として数えられることがわかります。

こうして出た数字に、さらに以下の修正をかけます。

条件修正値
森・沼地・山にいる騎兵の白兵戦力÷2
森・沼地にいる砲兵の射撃戦力÷2
山にいる攻撃側砲兵の射撃戦力÷2

また、両軍の士気の最大値も、上の表にベースの値が載っています。 実際の最大値は、このベースの値に、宗教や破産などの修正を加えた値になります。

手順 3 : 射撃戦

両軍の使うCRTの列と戦力が出たら、いよいよ戦闘本編となります。 EU2の戦闘には射撃戦と白兵戦があり、 毎日、まず射撃戦を戦い、次に白兵戦を戦う、という形になります。

両軍はそれぞれサイコロを振ります(実際にはCPUが勝手に乱数を発生させます)。 この出た目に、以下の修正を加えます。

条件修正値
無条件+指揮官の射撃値
地形が森・沼地・山のいずれか-1
地形が山で攻撃側-1(上のと累積)
渡河してきた攻撃側-1

こうして出た値を先のCRTに当てはめて、兵力ダメージと士気ダメージを出します。 例えば先のスペイン軍が修正後の結果で9を出したら、 Bの列で9の行を見ますので、兵力ダメージ20,士気ダメージ1ということになります。
兵力ダメージは、出た数字を%と見て自分の戦力と掛け合わせ、 出た数字分を敵へのダメージとします。 戦力200の軍隊でダメージ20という結果だったら、200×20%=40ですから、 相手に40戦力分のダメージを与えます。
士気ダメージは、出た数字の分だけ直接相手の士気が下がります。 ダメージ1なら、敵軍の士気が1下がるわけです。

手順 4 : 終了判定

射撃戦が終った段階で、以下の条件が満たされていれば、戦闘は終了します。

どちらもまだやる気十分だと、次は白兵戦に移ります。

手順 5 : 白兵戦

射撃戦が終ったら白兵戦になります。 ただし、射撃戦のダメージが適用された後での開始になりますから、 白兵戦が始まる前に全滅して終ってしまった、ということも十分あり得ます。

白兵戦もやりかたは射撃戦とほぼ同じで、違うのは、 i)CRTの列は白兵戦用に出した列を使うこと、 ii)お互いの戦力も白兵戦用に算出したものを使うこと、 iii)修正は下表のものを使うこと、です。

条件修正値
無条件+指揮官の白兵戦値
地形が森・沼地・山のいずれか-1
地形が山で攻撃側-1(上のと累積)
渡河してきた攻撃側-2
騎兵優勢な側(ただし森・沼地・渡河の場合を除く)+1

騎兵優勢な側とは、相手の2倍以上の騎兵を持っている側を指します。 例えば、片方が騎兵1000騎で、もう片方が騎兵2000騎だったら、 後者が騎兵優勢な側として修正を得ます。 (註: 英語版1.08では騎兵優勢の修正が変更されたらしいのですが、詳細はわかっていません)

手順 6 : 終了判定

手順4の終了判定と同じです。これでも終了しなかったら、1日時間が経過し、 次の日にまた改めて戦闘を最初から繰り返します。

考察

EU2での戦闘を理解するためには、 兵力ダメージと士気ダメージの性質の違いを理解することが不可欠です。
兵力ダメージは攻撃側戦力の1〜60%を相手に与えますから、 そのため兵隊の数が多ければ多いほど敵に大きなダメージを与えることができます。 ところが士気ダメージは、兵隊の数に関係なく、CRTとサイコロの目だけで決まります。 ですから、士気ダメージに限って言えば、小が大を倒すということも十分あり得ます。 窮地に追い込まれたあなたがAIの大軍相手に大逆転を演じることもありますし、 逆に「どう考えても負けないだろう」と思って送り出した軍隊があっけなく負けてしまうことも 同様にあるのです。

この小が大を倒せるという傾向は、技術レベルが低いほど強くなります。 技術レベルが低いうちは、士気の最大値がたいへん低いのですが、 1ラウンドの戦闘で与えるダメージはたいして変わりません。 そのため、サイコロでちょっと良い目が1回出れば、軍隊の数や質にたいして関係なく、 先に良い目の出た側が勝ってしまうのです。
例えば、陸軍技術レベル3同士の軍隊が戦うと、 宗教などの修正が無ければ、軍隊の士気はお互い1.75です。 ここでサイコロで9の目が出れば、士気ダメージ2ですから、 軍隊の数に関係なく一撃で勝ってしまうことになります。
このように、技術レベルが低いと、やたらとランダム性の高い、結果を予測しがたい戦争になります。 数・質ともに優る軍隊で敵を攻撃しても、ほとんど半々ぐらいの確率で、あっさり負けてしまうのです。
技術レベルが上がってくると、士気の最大値も上がり、 良い目が1回や2回出たぐらいでは勝てなくなります。 これによりランダム性も抑えられ、数や質に優る軍隊がだいたい平均的に勝てるようになります。


海戦の流れ

(Coming Soon)


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