途端、ぞくりと背筋を駆け抜けたのは紛れも無い快感で、体を支える太股から力が抜けて腰が沈むと、また奥を抉られる結果になった。
 一度達して敏感になった体は、それだけで悦んでいる。引き抜かれた際に奥から零れ出た精液が太股伝う、その感触にさえ。

「ん…、やぁ……。また……?」

 内に入ったままのものが再び硬くなっていくのを感じて、たまらずにシャアは首を振った。自分から腰を揺らめかせていることを、自覚もしていなかった。

「……シャア…」

 恥ずかしそうに頬を染めて、片手でドレスを押さえて胸を隠しもう片方の手でガルマの背に縋りつく。シャアのブルーアイズは潤みきって、律動のたびに涙を零していた。自分を抱いているのが誰なのか、正気を飛ばした彼はわかっていない。
 泣きながら縋り付いてくるシャアは可愛かった。まるでどこかの姫君のようだと思うのに、その体は見た目を裏切って淫乱そのものだ。たどたどしい動きであるにも関わらず、巧みに男を誘ってくる。ゆっくりと、焦らしながら、的確に追い詰めてきた。おそらくシャア自身もたまらない愉悦を感じているのだろう。じれったそうな甘い声を漏らしながら、くちびるは嬉しそうに緩んでいる。

「ん……、ん……。あっ……ふ、……」

 総帥、と呟きが聞こえた。その途端甘やかな雰囲気は吹き飛び、胸が妬けつく。そうしろと言ったのはガルマであり、シャアはそれに惑わされているにすぎない。わかっていても醜く煮え滾るような衝動を押さえることはできなかった。今、君を抱いているのは、誰だ?
 乱暴にドレスの中に手を差し込んで、双丘を鷲掴みにする。

「あっ、やぁ――っ」

 強引に、力ずくで揺さぶられて、反射的にシャアが逃げをうった。両手でガルマの胸を押しのけようとする。それがかなわないと知ると、拳を作って叩いた。力が全く入っていないので痛くもなんでもない。

「いやだ、やあっ、痛い―――…っ」
「シャア、シャア…もっと、だ」
「も、もう、ムリ……。は、んっ」

 いやいやをするように首を振ると、ぱさりと頬にかかった髪が汗で張り付いた。
 キスをしようとガルマがくちびるを寄せると、シャアは嫌がって顔を背けた。カッとなってさらに奥、これ以上ないほど深いところまで突くと、ひっとシャアは息を吸い込んで脅えた。

「ゆ………」

 震えるくちびるが、懇願する。

「ゆ…して、ください……。いやだ………」

 ぽろぽろと泣きながら、虚ろな瞳がガルマを映し出す。シャアは切なげに眉を顰め、瞼を閉じると、呟いた。

「………け、て…、ガルマ……」
「………っ」

 思いがけない言葉に息をのんだ。ガルマ、と囁かれた瞬間、急速に満たされて、ガルマは達した。
 体ではなく心が満たされて快楽を得ることができるのだと、ガルマは始めて味わった。
 まだ達していないシャアは体内に注ぎこまれたものに絶望したように、顔を歪ませた。2度、3度、ゆっくりと抜き差しをして、あやすようにシャアのそこに指を絡める。先ほどとはうって変わった優しい愛撫にシャアの頬は快楽に染まり、まぎれも無い嬌声をあげて、シャアは達した。

「―――………」
「シャア?」

 かくりと傾いだシャアの背を抱きとめてみれば、彼は気絶していた。脱力しきった、人形のようにくったりと無反応なシャアの体から自分を引き抜いて、仰向けに寝かせる。シャアは青ざめ、苦しげに呼吸をしている。セックスで気絶させてしまうなんて。ガルマは罪悪感に襲われた。

「シャア…」

 酷い抱き方だったと、自分でも思う。こんなにも自分は嫉妬深い男だったのか。シャアに否定をされて頭に来たのはもちろんだが、最中に抵抗をみせたこともかなり来た。思い返してもシャアがセックスに否定的だったことはない。キスを拒まれたこともない。彼はずっと、顔を見ないように瞳を伏せていた。あれは、相手をギレンだと思い込んでいたからではないだろうか。
 睦言のように名前を呼び、確かめるように背や胸を撫で、くちびるを寄せる。好きだ、と囁く。それは、誰にでも与えられているわけではないのだ。

「ごめん、シャア……」

 はしたなく開いたままの肢の間はしとどに濡れて、さらにガルマを受け入れたそこからは蜜を零している。ガルマは身なりを整えると、シャアの体についた精液を拭き取った。ドレスに染み付いてしまったものはどうしようもないが、背中が切り裂かれている以上もうこれを着ることはないだろう。
 わぁっと遠くの部屋で喚声があがったのが聞こえた。ギレンの演説が終わったのだろう。
 ガルマには、このままシャアを放って出て行くつもりはなかった。ギレンに渡すつもりは無い。涙の痕が痛々しいシャアの目元を拭う。シャアはまだ、反応を示さない。
 シャアにはとても言えないが、あの暴漢はまさにシャアを狙ったものだった。ガルマも名前を知っている、宇宙軍の大佐の、その部下だと男は供述した。ドズルをそそのかしてシャアに女装をさせた張本人だ。目下、出世頭であるシャアを疎ましく思っていたその大佐が、日頃の鬱憤を晴らそうと計画した。それはある意味成功であり、ある意味失敗でもあった。シャアに女装をさせても、それがシャアであることを皆の前で暴露しなければ、それこそ意味が無い。その大佐にしても『ドルシネア』を名乗る女がシャアであることの確信がもてず、だからこそ部下に命令してドレスを切り裂かれた。シャアが攻撃を回避してしまったため背中しか見えず、しかもその後ギレンが連れ去ってしまい、彼は未だにドルシネアがシャアである確信が持てないでいる。おそらくギレンの演説が終わった今、まっすぐにこの医務室へと向かっているだろう。彼がここに着くのが先か、それともギレンが先か。どちらをとっても危険であることに変わりは無い。

「シャア、シャア…?」
「ん……」

 ぴくり、とシャアは瞼を震わせた。ぼんやりとした瞳がガルマを捕らえると脅えた色を見せたが、目の前にいるのがガルマだとわかるとほっと微笑した。



ギレンは陵辱系、ガルマは甘々系なのが好みらしいです…。

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