前期:07/23-08/14 中期:08/16-09/04 後期:09/06-09/25 宮内庁三の丸尚蔵館

▼小さな会場に、屏風がどんと置かれていたりして。総展示数は少ないです。前・中・後期で作品がすべて入れ替わります。

▼福田平八郎の写実鯉が見られたりしました。面と色彩表現の手前地点。ちらしによると、初発表展覧会は第3回帝国美術院展覧会[特選]。前大峰「雉子沈金衣裳筥」は、羽などが細やかな線の集積にて描写されています。沈金の技が冴え。こちらは、第13回帝国美術院展覧会。(08/27訪問)

07/05-09/04 東京国立近代美術館工芸館

▼昨年開催された「動物のモチーフ」展と、作品がかなり重なっています。そのため、全体の印象も似通っていたり。目新しかったのは、鈴木長吉の「双虎置物」とか海洋堂の食玩、中島直美の透明無重力無内臓カエルの大群。「双虎置物」は、迫真の「十二の鷹」を少々柔くした雰囲気。こもっている虎が面白い。昨年見られた、杉浦非水のポスターは無し。

▼昨年も今年も出品されている、高野松山「群蝶木地蒔絵手箱」。以前から思っていたのだけど、江戸時代に作られた「蝶蜻蛉蒔絵螺鈿料紙硯箱」と兄弟船でないの。木地に、光彩を放ち乱れ飛ぶ虫たち。高野松山が、昭和の空に再び解き放ちました。(08/27訪問) 「蝶蜻蛉蒔絵螺鈿料紙硯箱」は、東博の「新たな国民のたから」に展示中。9月4日まで。

▼近代日本の美術 7月26日〜10月2日
石内都「連夜の街」
1978〜80年に撮影された連作「連夜の街」20点を展示。欠けたネオンに、こぼれ落ちたタイル。人影はなく、抜け殻と化した建物。なのに、くり抜かれたハートの型や毒々しい薔薇の窓の向こうにはまだ、息遣いであるとか汗ばんで吸い付く肌とかがうごめいているような。ところで、男根の象徴の如き作品があるような気がするのですが。

▼「現代美術−1970年代以降」には「SCAR」の連作から2点。こちらは身体というか皮膚のクローズアップ。拡がるシミや病変をイメージしてしまい、とても痛くて恐い。生理的な部分を突かれ、反動の余り目をそむける具合。

▼沈黙の声――遠藤利克 ビル・ヴィオラ キムスージャ
ビル・ヴィオラ「追憶の五重奏」(2000)は、真空の画面と絵画的陰影をもった作品。人物の動きを目で追うごとに、息がつまっていくような。喉元に動きが伝わっているのだと思う。キムスージャ「針の女」(2000-01)は、タイトルが内容を語っています。遠藤利克「欲動−近代・身体」(1997)の水は腐ってるのでは。怪しい臭いがするのですが。て、この感想は何。

▼「昭和戦前期の美術 日本画・洋画の成熟」に湯浴み系3作あり。落合朗風「浴室」(1933)には、少々ふくよかな裸婦ひとり。丸見えな脱衣所と浴室に、大道具の香りが。小倉遊亀「浴女 その二」(1939)は、プライベートな空間にけだるさが漂う感じ。浴衣の細かな模様と涼しげな色彩が、印象に残る。三谷十糸子「夕」(1934)は、2人の少女が髪を手入れしてたりされてたり。風呂あがりの清涼感。

▼吉田博「新月」(1907):画面全体が青白い月明かりで満ちている。叙情的な風景。 マーティン・パー「最後の保養地」(1983-85,1984)より3点:ゴミが漂泊する海。パンくずが散らばる売店。その狭間には、虚ろな顔。子どもは「嬉しくないなあ〜海〜ゴミ触っちゃったよゲエ〜」って顔してますが。この作品、遠目からだとベルナール・フォコンの「夏休み」に見えなくもないミステリー。(08/27訪問)

▼特集陳列「新たな国民のたから−文化庁購入文化財展」 7月26日〜9月4日
絵画、書跡・古文書、工芸と、様々なジャンルからの出展。印象に残ったのは「駿牛図断簡」の墨色。濃淡がとても美しい。曽我蕭白の「群仙図」は、何度見ても変わらぬインパクト。無二の存在ではあるのだけど、GURU GURUをカラフルにしたらちょっと似るかなーと、たわいもないことを思いました。最近。GURU GURUに色はついてないが。

▼日本の博物学シリーズ 特集陳列 災害に学ぶ 8月2日〜9月11日
「防災の日にちなんで、江戸時代の災害関係資料を展示します。当時の人々の災害に対する報道のあり方などから、その対策や心構えをご覧ください」とのこと。
安政2年(1855)10月2日におきた「安政の江戸大地震」に関する資料多し。破損・類焼の様子を地図で示したもの、倒壊する建物、火災、逃げる人々など直後の様子を伝えるかわら版など。情報を欲する側と提供する側の様子が、なんとなく透けて見えたり。今も昔も地震情報は必須。
歴代の大地震本もあり。「地震出火細見記」は、古代から安政2年までの大地震や津波等を紹介。「地震年代記」は、神代から安政2年までの紹介。見開き部分は、斉衡2年(855)の地震の際に東大寺大仏の首がもげた図。衝撃のスクープ。共に安政2年刊です。大地震に対する意識の高まりや、関心をあてこんでの出版だったのだろうなーと想像。
浅間山噴火、大坂・信濃の大地震他の資料や、八百屋お七も登場。鯰絵少々。

▼「書画の展開 ―安土桃山・江戸」(8/2〜9/11)は好みの作品多し。 鈴木其一「白蔵司・紅花・白粉花図」では、端正な筆捌きを楽しむ。中央に位置する白蔵司の黒、傍らの紅花・白粉花の鮮やかな色彩による対比も見事。英一蝶「乗合舟図」は、少し前に展示があった「雨宿り図屏風」を小さくしたような作品。質はそのままで、相も変わらず表情豊かな群集が描かれています。林十江「鰻図」は、抑圧ゼロな感じが良し。筆が走るよー生きがいいよー鰻。司馬江漢「捕鯨図巻」は、風景、捕鯨、鯨引き上げ、解体がパラパラと展開。合間に銛描写、鯨の種類や等級、付着物描写など、データが挿入されています。盛り沢山でいたれりつくせりな構成は、見るものをあきさせません。ミュージアムショップの鯨展図録を見たところ、捕鯨図は微細に描くパターンが多いよう。トリップ感覚に溢れていたのは、田能村竹田「青山白雲図巻」。山の連なりと雲海が、彼方まで誘ってくれます。三井親和「詩書屏風」は、書体各種。以前にも、この人の書で気に入ったのがあった。明快な感じがいいのかも。

▼特集陳列「手紙 ― 人と書 ―」(8/9〜9/25)に、俵屋宗達による書状が。なんでも、現存唯一の遺墨だそう。「醍醐の蒸笋(皮つき筍を釜茹でして乾燥したもの)を5本受け取ったことに対する礼状。宛所は改庵(未詳)。丸写しはどうよと我ながら思う。(08/27訪問)






topback