2004年9月

色の博物誌・黄 地の力空の光
07/17-09/08 目黒区美術館

▼「黄色の存在−地の力・空の力」「黄色の意味と価値」「黄色の色材」というテーマに沿い、美術工芸品、鉱物、絵具・染織原料などを展示。様々な角度でもって黄色を切り取る趣向。大まかな流れは前回までを踏襲。

▼「地の力」は、大地、鉱物、植物がキーワード。栗田宏一「Soil library 1000 yellows」は、全国の土の集合体、そして色彩の集合体。村岡三郎、若林奮は、鉄の武骨さに硫黄の黄を効かせた彫刻。
「空の光」は、そのまんま黄と光。伊庭靖子の水分と光を含んだ果肉とか。高島野十郎「菜の花」は、街中の空き地に咲くが如く。周囲から、ぽっかり浮いてます。いい意味で。
黄は皇帝の色という意味合いから、衣装、景徳鎮の黄色い皿、ガラスなどの展示も。

▼身近であり、根底にある「色」。テーマがシンプルな分イメージが膨らむし、最小限のテーマにより展示品に幅が出る。越境した展示はまさに博物誌風でした。そして、ありそうでなかったテーマと見せ方が、あるとき斬新で、時が経つと少々マンネリで、まあまあそれはお家芸ということで続いてきたシリーズも今年で最終回。何のかんのいっても、全シリーズ面白かったです。完。(09/04)




建築のフィギュア展 −プライベート・プロダクツ−
09/01-11/20 INAXギャラリー1

▼建築や街並みの模型を「建築のフィギュア」と呼んで紹介(INAX webサイトより)。景観模型、世界遺産ペーパークラフト、フォトモ、無彩色セラミックミニチュア、スノードームを展示。

▼小さな建物大集合。趣味的な楽しさを持った、フォトモ(糸崎公朗)とセラミックミニチュア(藤沢みのる)が、特に印象に残りました。フォトモは、写真+飛び出す絵本+トマソンという名の薬味少々。日常の街並みが、一歩外した感覚で立ち上がってきます。セラミックミニチュアは、近代の名建築を再現。精巧さの中にぬくもりが垣間見られます。手作り感と、作品に「わが家」が入っている所が魅力的。看板建築があるのも良し。(09/04)

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
巡回:12/03-2005/02/18 INAXギャラリー大阪




名和晃平展 −0409・サイエンスフィクション−
09/01-09/28 INAXギャラリー2

▼会場全体をシアターのように使い、水槽と映像を使った最新作を制作。(INAX webサイトより)

▼光を吸収する泡、透過する泡。増殖と消滅を繰り返す泡、時を止めた泡。形態をひっくるめ、全てが対比の妙。乱暴に形容すると、前者が黒で後者が透明なのですが。黒い方は、生理的部分にちょっかい入れてくる感じ。皮膚の水疱を針で突くとか…ちょっと違うか。とにかく引き止められ、見入ってしまいました。透明な塔?は、見る角度により後方の映像が写りこみます。それがまた、泡泡の粒粒で重複のコラボレーション。意味不明。というより、会場全部ひっくるめて見ろよという。

▼この作品は、PixCellというシリーズ?の一環なのでしょうか。それとも、独立してる?画素と細胞の合体がPixCellらしいのだけど、あの泡はこちらにあたるもの?と、?マークを過剰に付けつつ終了。(09/04)




海をわたった華花 −ヒョウタンからアサガオまで−
07/13-09/12 国立歴史民俗博物館

▼海をわたってきた華花と、それらが、あるいはそれらと一緒になってわたってきた文化や物が、日本の生活文化にどのように影響を及ぼし、また、どのように変質を遂げていったのかを考える。(会場内チラシより)

▼まずは、旧石器時代から現代にいたる植物の渡来史。各地の遺跡から出土した種子、平城京出土の多岐にわたる植物遺体や野菜木簡、江戸時代の園芸・奇品ブームの資料など。えらく昔から植物が流入、平城京からはモモ・メロン・ウメ・ヒョウタン他多数の種やら何やらが出過ぎ…多種多様が海を越えてきたのか。という事実が赤裸々に語られておりました。時代が幅広いだけあり、考古学の空気が濃厚。 江戸部門には若冲筆「野菜涅槃図」の立体模型もあり。その様子はこちらで。

▼次にメロン、ヒョウタン、里芋、桃と梅、朝顔、菊を取り上げ、突っ込んだ話を。現物、美術工芸品、図譜、写真などをまじえつつ、渡来時期、種類、用途等について紹介していました。種類の多様さを確認。雑草メロンは可愛らしい。あと、江戸時代の朝顔押し花に感激。花が今のより小ぶりで、変化具合もきっちり残っていたり。

▼その他、「謎と幻の華花」「日本の植物、西欧にわたる」など。謎と幻〜部門にて取り上げられたセンノウ。絶滅したと考えられていたそうですが、1995年のTV放送にて存在が確認されたそうです。て、TVネタになる位なのに絶滅ってどういうことよ。

▼展示はよくまとまっていたと思います。展示品を見つつ、説明を読むと理解できる仕組み。それと、最も古い記録があるという、ヒョウタンの充実度が印象に残りました。古さに比例したのかのような出品数。すべての時代にまたがり、出没していました。で、縄文の頃から加工跡ありという。切断したり、漆を塗ってみたり。やはり使ってみたくなるのか。時が経ち、「現代のヒョウタン文化」として現れた面々は、みうらじゅんが嬉々としそうな加工になってましたが。いやげもの。ピカチュウひょうたんとか。(09/12)




歸空庵コレクション 日本洋風画史展
08/21-10/24 板橋区立美術館

▼構成は、「一 桃山の洋風画」「ニ 長崎の洋風画」「三 京都の洋風画」「四 江戸の洋風画」。最後の章が最も充実しており、秋田蘭画、司馬江漢、亜欧堂田善がまとまった数見られます。司馬江漢と亜欧堂田善は、周辺画家の作品もあるのですが、妙な感触のやら妙にぶっ飛んでるのやら多種多様。よく集めてます。

▼桃山時代の連作「西洋風俗図」…羊が何故かチワワサイズとか、陰影のついた達磨図、川原慶賀他による蘭人図、銅版画、眼鏡絵など、他にも色々。作品が面白いし、洋風画の歴史も一巡できる。ここの美術館ならではのノリと企画で楽しめました。3度の展示替の内、1度目を逃してしまったのが残念です。(09/18)




琳派 RIMPA展
08/21-10/03 東京国立近代美術館

▼展示替があったので再び訪問。構成や全体の雰囲気は、前と変わらず。

▼気になった作品を列挙。尾形光琳「松島図屏風」:波の山の連なりと、渦がドラッギーです。元も見たい。俵屋宗達「蓮池水禽図」:蓮の葉がふわふわしています。宗達の作品では、たらしみを堪能。本阿弥光悦筆 俵屋宗達下絵「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」:目線の動きとともに鶴が飛びます。合間に文字が躍る。酒井抱一「月に秋草図屏風」:風流。蔓が描く線が効いてます。菱田春草「落葉」:「落葉はここが素晴らしい」みたいな文章を読むと、一応は納得。でも、作品を前に気持が動くかというとそれは別物。「黒猫」は、ひげ部分の毛穴を確認。小林古径「鶴と七面鳥」:なんで七面鳥?(09/24)




ピカソ展 躰[からだ]とエロス
09/18-12/12 東京都現代美術館

▼1925〜1937年に焦点を当て、ピカソの「変貌の時代」を紹介。

▼前半部は、絵画と彫刻の間を行き交う様が見てとれます。シュルレアリスムに傾倒した「アナトミー」にも、彫刻の味わい。
そこかしこに漂っていたエロスの香りは、マリー=テレーズコーナーを契機とし、濃厚になっていきます。マリーを描いた作品は何枚もありました。が、好みの香りではありませんでした。ここら辺のみ妙に色彩豊かです。若い肉体を前に、ピカソ高揚。色奮発(嘘)。次の「闘牛からミノタウロスへ:愛と暴力のかたち」では、ネガなイメージ炸裂。殺人、暴行、斬首。苦痛と無理強い、征服、死の果てにエロスが手招き。マりー=テレーズは表皮、こちらはその皮を剥ぎ露わになった内臓。つーか、この場面でエロスを感じるのはまずいような。最後は「エロスの変貌:創造の根源」。ここに女性の股間の連作があるのですが、三角地帯を指差す男児と、その手を引っ張りそそくさと立ち去ろうとする父の図が見られました。

▼テーマに添いつつ見ると、いけるのではないかと。しかし、作品自体は微妙な感があったり。「闘牛からミノタウロスへ:愛と暴力のかたち」が、個人的に気に入ったのだけど、気に入らない人の方が多い気もするし。やっぱり微妙かも。(09/25)




花と緑の物語展 近代フランス絵画―印象派を中心として
07/17-09/26 東京都現代美術館

▼19世紀中頃から20世紀前半の40人の画家による名品70点余を、6つのテーマに構成。(同展チラシより)

▼植物画好きには嬉しい展覧会。「田園の叙情詩」「花の素顔」「モネ−水辺と緑」「楽園の花と緑」は、全体を包む雰囲気良し。緑あふれる風景を歩き、花々の色彩やモネの睡蓮に漂い、最後は熱帯にワープ。作品単位では、シダネル「離れ屋」の夢と現実の狭間、マルケ「風景」の何でもなさと好みの色の同居具合。この辺りに惹かれました。目当てのルソーも、やはり良かった。

▼流し気味だったのが「アルカディアの庭」と「街の麗花と緑」。画中の女性他が少々目障り。純粋に花と緑を楽しみたい気分だったもので。作品自体が悪いわけではありません。別の展覧会で見たならば、気になることはなかったかと。(09/25) グッズ売場に花の種がありました。展覧会の特性を生かした商品。


[常設展]東京都現代美術館

▼日本の美術、世界の美術─この50年の歩み 7月15日〜9月26日
常設展だけに、いつ行っても見られる御馴染みの作品が多いです。「再考 近代日本の絵画」展に出てた作品も。

▼現代日本の横顔:柳 幸典《ヒノマル・コンテナー(ヤマトUMULUS TYPE\)》
鉄製コンテナを模した箱。そこへ一人ずつ入り、内部を覗く構造。入るまで少し待った。何が待ち受けているのかわからない。期待が高まる状況設定だったのですが、あっけなく終了しました。これだけかい。ええと、実は「この作品は、ヒノマル=日本が、¥マークとともに世界のなかで大きな存在感を持っていた時代に発表されました。10年後の現在から見ると、無限に虚像を増殖し続ける¥マークが、実質を伴わなかったバブル経済のもろさを反映しているようにも思えてきます」ってことらしいです。あぁ、空虚な感じは伝わってきたかも。これだけかいという。

▼特集展示:駒井哲郎の銅版画 もれる光と魚と。叙情的な。ちょっとクレー入ってる。タイトルが文学青年。
特集展示:荒川修作 この方の作品を見るたびに、「モンガイカンの美術館」が浮かんできます。そしてそこに書かれた荒川評にうんうん頷く自分がいる。空手強くないっすよね荒川修作。

▼以下、とりとめなく書き留めてみます。 今井俊満:色使いが何故か癇にさわる。菅井汲:日本へのアプローチ。団扇や家紋を連想させる作風。いたってシンプル。フランク・ステラ「クォスランバ」:1964年作。まだまだ前面に張り出しません。立体化、微塵も無し。この辺りのステラが好きです。三木富雄「EAR」:耳の不思議な造形に目が行く性質。なので、「耳」に魅入られる感覚はわかるような気がします。感覚の種類は異なると思いますが。三木富雄の耳に囲まれたいという、個人的希望あり。どこかで耳展を開催してくれないかと。なんか、以前、松濤美術館でやったことあるみたいなのですが。(09/25)




大兵馬俑展 ―今、甦る始皇帝の兵士たち
09/25-2005/01/03 上野の森美術館

▼日本初公開となる「文官俑」「百戯俑」「残俑」や兵馬俑を一堂に展示。また、1級文物を中心に、秦の時代に使用されていた兵器、儀式用の器など合計134点の展示品を紹介。(同展チラシより)

▼最初に、地下坑を再現した展示。土の上に兵馬俑が並んでいます。工夫は認められますが、もっともっと並べ、迫力を強化して欲しかったです。傍らの現地写真と比べると、空しさ倍増。通路の脚元部分には、掘りたてを再現したと思しき展示もありました。バラバラ状態の兵士が、土に埋もれ気味。他の展示は、一番上の記載通り。色彩が微かに残る俑、柄が金製の鉄剣、馬用金製装飾品が印象に残りました。

▼始皇帝の文化や、全体像を紹介するという意味においては、多分正解。しかし、個人的には拍子抜けな展覧会でした。大兵馬俑展ということで、多量に持って来ているのではと期待していたのに。中に格下げ。(09/26) 期待の仕方がおかしいのかも。




[常設展]東京国立博物館

▼平成館企画展示室 特集陳列「中国宋時代の彫漆」 9月7日〜10月3日
犀皮香合の層の重なり、デザイン感覚溢れる文様、花鳥の可愛らしさを楽しみました。細部がポイント。よーく見ると、実に繊細で吃驚。線と層が織りなす宇宙空間へようこそ。

▼本館は9月1日にリニューアルオープン。ゆとりの空間と椅子増殖が、展示数の低下に直結。してませんか?展示室が妙に広々してるような。

▼本館2階:日本美術の流れ
仏教の興隆 飛鳥・奈良 9月1日〜10月3日
コントラスト重視の展示になりました。薄暗い室内で、仏像にスポットライト。
国宝室「普賢菩薩像」 9月1日〜10月11日
以前から好きな作品。截金を確認。ところで、この部屋はリニューアル後も健在なのですね。
宮廷の美術 ―平安〜室町 9月1日〜10月3日
「平治物語絵巻(六波羅行幸巻)」は面白いです。「片輪車蒔絵螺鈿手箱」は、流水に浸かる車輪文様。名品です。名品ですよね。僅かに乗りきれない部分はあれど。
屏風と襖絵 ―安土桃山・江戸 9月1日〜10月11日
大画面部屋が誕生。対青軒印「松図屏風」、狩野探幽「山水図屏風」、池大雅「楼閣山水図屏風」3作が見られました。対青軒印は宗達が使用した印章。言われてみれば、金地に点々と配置された松を、人に置き換えたら「舞楽図屏風」になるかも。ならないかも。
書画の展開 ―安土桃山・江戸 9月1日〜10月11日
久隅守景「許由巣父図屏風」と、狩野山楽「許由洗耳図」の並びが良いです。ネタ系で気になったのは、立原杏所「葡萄図」。「酔った勢いで描いたら重文」とのこと。豪快な葡萄です。あとは、光琳&乾山の父・尾形宗謙の「和歌巻」があったり。異彩を放っていたのが、小田野直武「人物図」。陰影と衣服の皺表現が、他の展示品との間に一線を画しています。
浮世絵 ―人びとの絵姿 9月1日〜9月26日
以前はジャンル別展示でしたが、これからは日本美術の流れに身を任すようです。浮世絵は衣装との絡み展示。江戸の風俗描写を意識しています。多分。懐月堂安度「遊女と禿図」が、肉筆で肉厚線でふくよかに彩られていてよかったです。

▼2階:企画展示 特集陳列「肖像画」 9月1日〜10月11日
江戸時代の俗人男性の肖像画を中心に、鎌倉から室町時代の作例を加え構成。渡辺崋山「坪内老大人像画稿」は、描写に関する試行錯誤が見られる一品。足の向きを何度も描き直したり、紙を貼りつつ手に修正を加えたり。そういえば、『ピカソ 躰とエロス』展の出品作「青いアクロバット」にも、描いた跡があった。伝谷文晁「近世名家肖像図巻」は、名士46人の肖像画巻物。内10人を見ることが出来ました。ぬーぼーとした笑い顔に見覚えあり…木村蒹葭堂、谷文晁40歳寿像など。文晁は巨人の上原似。「八代目市川団十郎死絵 涅槃図見立」は、100種以上出ている死絵のひとつ。団十郎遺影を前に、涙を見せる女たち。変わり涅槃図仕立て。あとは、徳力善雪「雪舟像」があったり。江戸時代の作。

▼本館1階:ジャンル別展示 歴史資料 特集陳列「田中幸穂氏寄贈」 田中房種博物図譜資料 9月1日〜10月11日
水産博覧会の資料がツボ。ミニサイズのカニ、トクヒレ干物、シロウオ、車海老の塩漬け。て、加工品か。生ものは腐るし。
近代美術 ―絵画・彫刻 9月1日〜10月11日
小林古径「出湯」:細く長く開いた窓。その隙間からのぞく緑。長方形の外の世界は、掛軸のような漫画のコマのような。出湯より先に目が行ってしまうのですが。いいのか。この作品は、一旦画面を洗い落とし、大正10年春に再び描いたのだそうです。

▼東洋館と法隆寺宝物館は、時間切れでまわれず。端折ったつもりなのに、だらだら文になるのは何故。(09/26)






topback