2003年9月

秋野不矩展 −創造の軌跡−
前期:09/06-09/28 後期:10/01-10/26 天竜市立秋野不矩美術館

▼前・後期合わせて70点。ということで、各期約35点の展示になります。それぞれ初期から晩年までバランスの良い出品。他に素描、絵本原画の展示もあります。

▼大地の匂いがする色彩にざらっとした質感、武骨な筆致。そこに洗練された感覚が加わる作風。秋野不矩が描くインドには、泥のイメージと現代的なイメージという、相反する要素が穏やかに混ざり合っている。そんな印象を受けました。
あと、引き算の美学というか、余分なものは一切画面に入れない感じ。どんどん引くごとに、川や空はどこまでも続くかのような広がりを見せ、時には抽象に足を踏み入れたりする所が興味深かったです。中でも妙に気になったのが「雨雲(1991年)」。黒く舞う雲の群れが、なぜか鳥に見えたもので。長谷川等伯の「烏鷺図」とか思い出したり。

▼インド以前、初期の作品にも見所あり。「砂上」にみられる砂浜と人物との対比、練られた構図には、作者の非凡さが既に表れているのでした。

▼作品を見ていると、なんだかとても心地良くなります。しかし、心地良さの中には、安住せず進んでいく意志が感じられるのでした。制作に関しては、晩年まで歩を緩めることはなかったのでは。と、推測(妄想)してみたりして。(09/06)




親子のための美術展 動物、アートとなる
07/19-09/07 群馬県立館林美術館

▼バルビゾン派の絵画に始まり、博物誌に表された動物、画家の想像力より生み出された動物、そして現代作家が動物の姿に託すメッセージなど、近現代美術の絵画や彫刻約100点を通して人間と動物のさまざまな関わりを見つめる。(同展チラシより)

▼今日は動物園へ行きました。絵の中に羊がたくさんいました。思わず数を数えたら眠くなりました。牛や馬もたくさんでした。昔は羊も牛も馬も今よりずっと身近な存在だったそうです。だから、絵とか版画の題材になったのかなーと思いました。ピカソの牛は、素早く描いてあるっぽいのに、形は隙なく取れててびっくりしました。ピカソはそんなに昔のひとじゃないけど。

▼彫刻もいっぱい。特にポンポンと三沢厚彦のが多かったです。三沢さんのは、みんなお尻がかわいいです。彫刻では、朝倉文夫のウサギが丸くてフワフワした質感が出ていて好きになりました。エマニュエル・コランが作った「タマちゃん」もいました。ちょっと四角かったです。

▼図鑑にいない、変な動物もいました。作者が想像して作ったのだそうです。それから、夢みたいな絵もありました。デスノスの「ノアの方舟の建造」は、綺麗な色の鳥さんや動物さんがたくさん。面白くてずっと見てました。素朴派というんだって。寺田政明の「灯の中の相談」は、犬みたいな2匹がヒソヒソ。なぜかアジの開きとリンゴが置いてありました。変なの。あと、首がオロチになってるキリンがいました。ぬいぐるみなのに触れないんだ。ボアは触れ誘惑が満々で手がうずうずしました。

▼美術の動物はすごく個性的でした。甘い感じの作品が多くて、ちょっとだけ子供にシフトしてると思いました。(09/07)

子供の日記風にしてみたのだけど…普段の文章と変わらない。嫌になるなぁ。




ロシア・アヴァンギャルドの陶芸展 モダン・デザインの実験
08/23-10/05 茨城県陶芸美術館

▼陶磁器に照準を合わせ、芸術家たちが国立磁器工場を主要拠点として生み出した作品約200点を紹介。展示は、革命前後からロシア・アヴァンギャルド終焉前までを網羅。作品は、前衛芸術を取り入れたもの、プロレタリア様式、伝統的な主題に即したもの等。また、「ロドチェンコ・ルーム・プロジェクト」もあり。

▼前衛芸術ものでは、マレーヴィチと弟子のスエーティン。幾何学模様を組み合わせ3D化し、ポットやカップ、インク壺などに仕上げています。マレーヴィチのティーセットなんて、陶磁器とオブジェの出会いみたい。加えて、形は普通で絵柄は幾何学もありまして。この系統では、黒とオレンジでまとめた、スエーティンのカップ&ソーサーが目に付きました。
幾何学と対照なのは、タトリンと弟子のソートニコフらによる「有機的形態」な磁器。曲線を生かし手に馴染む形になっています。面白かったのは、ソートニコフによる「子供の最初の食器」。形はまるで卵、先には吸い口。10個組で籠に収まっていました。

▼インパクト大賞は、革命・労働関連。皿の周りを囲む文字は、やる気満々のスローガン。パッと見綺麗で油断してると、鎌やハンマーやレーニン入り。陶器の人形を愛でつつタイトル見ると「活動家」。歯車文様や禁酒文なんてのもあるし。凄いわ。

▼目玉のひとつである「ロドチェンコ・ルーム」は、日常生活をトータルデザインがコンセプト。ロドチェンコがデザインしたテーブル、ティーセット、衣服が展示されていました。全て再制作したそうです。中でもティーセットは、デザイン画のみだったものを初めて形にしたとのこと。それぞれに細かな工夫と拘りが見られます。

▼どの陶磁器にも、優れたデザイン感覚が息づいていました。美しい色彩や造形も大変魅力的で、欲しくなった作品多数。買えませんが。(09/15)

「ロドチェンコ・ルーム」のカップ&ソーサーは、販売されていたらしい(限定もので2万円)。行ったときは完売で、見本だけ置いてありました。
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巡回:10/21−11/30 滋賀県立陶芸の森陶芸館




[常設展]板谷波山記念館

▼生家、生前使用していた作業所、展示館で構成された施設。出身地、茨城県下館市にあります。

▼生家はごくごく普通の和風建築。波山が東京美術学校に入学するまで過ごしたそうです。意外に小ぢんまりとしたシンプルな作り。すぐにひと回りできます。窓が多く風通しが良さそうでした。作業所は東京田端にあったものを移築したとのこと。 展示館は素描、素焼が結構多いです。表面を彫ったまま、中途で終わっているのがあったり。あとは、制作の際使用した道具や愛用品など、資料的な展示が多かったです。

▼面白かったのは、自らが考案したという竹下駄。青竹踏みの縦バージョンみたいな感じです。人との関わり合いが見えるのは、「瓜生岩子刀自像」。波山夫妻の仲介人を彫った作品で、本人に贈るため、恩師である高村光雲に作ってもらったそう。変わった所では文化勲章や、奥様が収集したかんざしの展示がありました。なぜに妻のコレクション?

▼完成作の展示は少ないし、名品っぽいのもあまりありませんが、初めて作った花瓶は、記念碑的作品という意味で価値があるかも。全体が緑色で、芭蕉の葉に模した表面に立体的なカエルがくっついている一品。少々稚拙な作りですが、愛らしく仕上がっていました。それから、濃い紫色で覆われた作品があり意外でした。天目茶碗も見かけたり。

▼生家の所でも書きましたが、全部通してもすぐに見終わります。あと、作品を見るというより、波山像を確かめるという感じ。それはやはり記念館だから?(09/15)




伊庭靖子展 ―まなざしの行方―
09/01-09/27 INAXギャラリー2

▼クッションのふくらみや微妙なしわ。プリンやプラスチックの椅子の角に写りこんだ、光や周りの風景。日常のどうでもいい風景の、これまたどうでもいい細部を浮かび上がらせた不思議な絵画です。素材狂いが高じ、質感に魅入られるまま描いたら出来ちゃった。そんな経緯で生まれた画風のように見えますが、真相は不明。素材感以外切り落とした、何もない画面が潔いです。

▼多分、好き嫌いが分かれる作品なのではないかと。プリンのユルユル感が気になる人だったら、気持ちよくなれると思いますが。私は結構好きです。(09/22)




ウッドワン美術館所蔵 近代日本の絵画名品展
09/10-09/30 日本橋高島屋8階ホール

▼110余点の展示。近代以降の日本画・洋画界を、とりあえず展望できます。有名作家による作品は、あらかた押さえてある感じです。個人的には、洋画の方が充実してるように見えました。

▼ゴッホの「農婦」を6600万、岸田劉生の「毛糸肩掛せる麗子肖像」を3億6000万で落札。うーん、金の話題ばかりの美術館だな。「麗子像」見たら、さっさと帰ろうと思いつつ訪問。ところが、案外楽しめました。

▼日本画は、福田平八郎が3点見られたことが個人的収穫。あとは、片岡球子が描いた北斎像はここで持ってるのかー背景は「山下白雨」ですねとか、小倉遊亀の静物画「偶作」は小品だが色彩が良いとか。

▼洋画は、藤田嗣治による壁画「大地」が目立ちまくり。巨大な作品で、ブラジルの雰囲気たっぷりの群集+動物たちが画面一杯に描かれています。しかし本当はもっと巨大だったそう。藤田はもう1点、面白い作品がありました。こちらも群集?系で、テーブルの端から端まで、魚介や肉、野菜、ワインなどで埋め尽くされています。2点共、猫が描かれていて、さすがは藤田。
他に気になったのは、小出楢重の絶筆であり奇妙な世界広がる「枯木のある風景」、画面手前の雑草の描写が目に付く高橋由一の作品など。それから、綺麗系が好みの方には、黒田清輝の「木かげ」がおすすめです。

▼目当ての「毛糸肩掛せる麗子肖像」は、東博所蔵の「麗子像」の1年前に描かれた作品。両作品は構図が酷似しており、どちらも毛糸の肩掛けを着用しています。
ウッドワン版麗子像は、1年の月日が表れたかのような作風。東博版に較べ、表情、描写共に初々しいです。その代わり、妖艶さは薄いかな。あと、肩掛けの素材感は、東博に軍配が上がるかも。でも、よく描けているし、真に迫ってもいました。
あ、特別展示・ゴッホの「農婦」も有り。ゴッホか、ゴッホなのか、ゴッホなんだね。終了。(09/22)

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巡回:10/30−12/07 福岡県立美術館
2004/01/02−01/19 京都高島屋
2004/01/28−02/16 なんば高島屋
2004/02/28−03/21 松坂屋美術館




円山応挙 障壁画
金刀比羅宮表書院

▼こんぴらで美術鑑賞2作目。応挙の晩年に描かれた障壁画です。行ったときには、襖四面が大阪に出張していました。 1作目は若冲の花丸図でした。

▼鶴之間、虎之間、七賢之間、山水之間、上段之間の順に眺める形。互いに脈略なく描かれたようでいて、実は一筋の流れがみられる構成。瀑布図における流れ、襖を彩る水の眺め。そう、ポイントは水です。
加えて、書院の造りはもちろん庭までも構想に含めつつ、綿密に練られた空間。京都で制作したとは思えんです。構成力の勝利。

▼全体を味わってこその作品(と言いつつ、正確には全部見てないのですが)。現地体験がベストかと思われます。それから、書院内には森寛斎、邨田丹陵の作品もありました。(09/30)




三十六歌仙展
11/03まで 金刀比羅宮宝物館

▼寛永19年に讃岐高松藩となった松平頼重公奉納の宝物として、従来あまり目にふれることのなかった「三十六歌仙図」を全作品展示(公式サイトより)。こんぴらで美術鑑賞3作目。

▼勢揃いです。絵は、狩野探幽、狩野尚信、狩野安信が描いてます。困った。あまり印象に残りませんでした。冷泉為恭による「三十六歌仙像模本」など、周辺作品も展示されていました。

▼同館では、コレクション展も開催しています。こちらは常設のようです(展示替えあり)。メインと思われる十一面観音立像は、平安時代作。一木造で結構大きいです。雰囲気がちょっと怖い。隣りの阿弥陀仏は、磨耗が進んだ状態での展示。こちらも、原型を留めてないという意味で怖い。他に、狩野派の小品など。いや、もっと色々展示されていたのですが。強制終了。(09/30)




高橋由一作品展
金毘羅庶民信仰資料収蔵庫

▼高橋由一をたくさん見たいなら、金刀比羅宮へ。こちらでは、27点もの作品が展示されています。コレクションは量だけではなく質も高い。噂の?「豆腐図」、鱗の表現が目に付く「鯛図」、「鮭」を髣髴とさせる荒縄の表現「鱈梅図」、御当地作品「琴平山遠望図」他、静物画、風景画、肖像画とまんべんなく見ることができます。

▼作品は、質感や写実への拘りが核と思われます。でも、それだけじゃないな、というのが今回の感想。由一の注視する感覚と眼差しが作品に存在している。ひいては、由一の視線を通して作品が、かつて存在した物や風景が見えてくる。視線を借りられたり、追体験できる所が、大変気持ちよくて好きだと思った次第です。というか、再確認しました。
身近な題材や表現もツボに入りまくり。なまり節描いてるよー、竹の皮描いてるよーとか。「浅草遠望」みたいに、前景にリアルな雑草を持ってくる所とか。

▼不思議なのは、欠点が欠点に見えない所。「読本と草子」に同居する、下から見上げたちょうちんと、上からの視点で描かれた読本。「豆腐図」の豆腐は、水分抜け過ぎで実は豆腐らしくない。「貝図」の表面がゴツゴツした貝は、固くでこぼこな感じを出そうとして、こんもりと絵具が盛られひびが入っている。おかしな所、失敗気味な所、試行錯誤してる所が、魅力につながっているのはなぜでしょう。これぞ由一マジック。嘘。(09/30) いや、普通に見れば単なる欠点でしょうが。

身近な題材で静物画を描いた理由として、「高橋先生はこうした卑近な事物、つまり誰にでも、よくわかりよいものを写実的に描かれることを得意とされましたが、それは油絵を一般に広く理解普及せしめるお考えから、こうした写生ものを選ばれたことと考えます。(平木政次『明治初期洋画壇回顧』)」という言葉がしばしば引用されています。




イン / プリント ブリティッシュ・アートの新たなヴィジョン
09/13-11/16 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

▼高い技術力を持ち、数々の優れたアーティストを見いだしてきたことで知られる版画工房パラゴン・プレス。本展では、パラゴン・プレスと共に制作した現代イギリスを代表するアーティストのプリント作品約120点を展観する。(同展チラシより)

▼感想の箇条書き---1)色や見た目は良いが何も感じない。 2)パッと見、コンセプト共に普通だ。 3)パッと見は普通。解説読んで「おーなるほど。そういう意図なのか」。改めて作品を見る→気に入った。 4)パッと見で気に入る。解説流し読み。外見も中身も面白いじゃないか→かなり気に入った。 5)インパクト勝負なのか?

▼2)はデミアン・ハーストとアニャ・ガラッチョ。前者は、食物を薬のパッケージに見立てています。タイトルは「最後の晩餐」。身近でわかりやすいけど、地味でした。後者は、花を用いた作品とか虹とか好きだったりする。でも、今回は残らなかったです。
3)はリチャード・ディーコンとジリアン・ウェアリング。前者は、写真メインで片隅にドローイングが挿入されています。撮影されたものの構造を、ドローイングが説明してるのだそう。字面ではつまらなそうだが、見ると結構面白い。タイトルは「見せてお話」。後者は、様々な人たちにメッセージ入りTシャツを着せ、写真を撮ったもの。一見、記念写真だけど、実はエグいテーマが隠れています。
1)と5)は省略。4)なし。以上です。(09/30)


[常設展]丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

▼1991年開館。少年時代を丸亀で過ごした、猪熊弦一郎に関する展示を行なっています。絵画作品はもちろん、彫刻、自身がコレクションした品々も収蔵。

▼絵画は、1940年代と90年代の作品を展示。40年代の方は、マティスか?ピカソか?みたいな。厚塗りが気に掛かります。90年代は、裸婦がモティーフの作品が多かったです。年代ではっきりと分けたためか、作品の違いが際立つ形になっていました。

▼彫刻は、針金など身近な材料を使用して制作。手の中から生まれてきたような、小さくて可愛らしいものばかり。リラックスしながら作った感じで、絵画より自由度が高いように見受けられました。

▼自身のコレクションは、これまた可愛らしく、どことなく土の香りがするもの多し。作品に通じる感触を持ち合わせており、収集品から作品に到るまで、作者の感性の糸で繋がっている感じがしました。

▼屋外彫刻が、子どもの遊具になってました。黄色いのが。(09/30)




モーリス・ドニ展−愛の預言者
09/12-10/19 高松市美術館

▼油彩、水彩、素描、版画、装飾図案など、プリウレ美術館所蔵の約80点で、ドニの人間愛を基調とする華やかで優しさに満ちた芸術を紹介する。(同展チラシより)

▼面と面あるいは光と影の境目、輪郭線、色彩、型抜きみたいな模様が気になる存在。装飾的な作品を前に、ものの形や質感へ目が向くわけはなく。「絵画とは一定の秩序のもとに配された色彩によって覆われた平らな面である」という、ドニ自身の言葉が思い出されます。

▼作品は、粒揃いだったように思います。中でも「カトリックの秘蹟」がよかったかな。色が微妙に変化する様など、とても繊細に描かれており、細部まで堪能できます。物語仕立ての装飾画も見応えあり。画稿も興味深かったです。ステンドグラスの画稿は色付きで美しく、プティ・パレ美術館の丸天井装飾はフランスの美術史勢揃いで楽しい。ただ、苦手な作品も結構あって。この辺は趣味の問題ということで。すまんドニ。(09/30)


[常設展]高松市美術館

▼第3期常設展 「遊びのオブジェ」 8月9日〜10月19日
「遊び」の精神に満ちた陶芸作品22点を展示。「やきものであること」に必然性がある作品と、ない作品が同居している感じがしました。気に入ったのは、金子潤の「だんご虫」。団子というか丸みを帯びた山に、渦巻模様が描かれています。単純な形と装飾が、土の感触を持った材質と合っていました。

▼《特集展示》 彫漆 音丸耕堂
高松市に生まれた音丸耕堂の作品27点を展示。手箱、香合、屏風など。 彫漆とは、漆を塗り重ねて厚い層を作り、これに文様を彫り表したもの。なるほど、葉や波などが繊細に彫られ、立体的な仕上がり。層が重なる感覚もあります。美しい文様と、おそらく素晴らしい技法。しかし、好みかと言われるとちょっと困ります。植物、虫など、題材は好きなのですが。(09/30)






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