技法:裏彩色

「動植綵絵」に裏彩色が施されていることが、修復に際して行われた調査により判明。紅葉の裏に様々な色を用いて発色を変化させたり、雪の表裏から白を置いて濃淡を作ったりしている。白い鳥の羽に金色が入る箇所も金は不使用、黄色の裏彩色によるものだった。

その後「菜蟲譜」の一部にも裏彩色が使われていることがわかった。

余談:「菜蟲譜」に描かれたナミアゲハ、カブトムシ、モンシロチョウの寸法が動植綵絵の「池辺群虫図」と一致することも判明したそうです。

技法:筋目描き

墨の滲みと滲みがぶつかると、境目が白くなる。この性質を利用した技法のこと。本来は邪道とされるが、若冲はあえて作品に使用した。

雨龍図


「筋目描き」を用いた作品。鱗に使われていますが、大変わかり難い画像になってしまいました。


あまりにも…ですので、拡大図を。墨の面と面との間に、白い筋が浮き出ています。こちらの表現が筋目描きです。

同じ題で、龍の目が上を向いている作品もあります。

技法:枡目描き

画面を方眼に分割して、一つ一つ彩色を施していく技法。1981年、小林忠氏が、この技法を用いた作品を若冲作として初めて紹介した。否定論、工房説もある。

白象群獣図


「枡目描き」を用いた作品。画面の端から端まで1コマずつ細かく埋められています

この発想はどこから?という感じですが、四六時中絵のことばかり考えていて、ふと思いついたことは試さずにいられなかったのかな。

拓版画

若冲が用いた版画の摺り方。中国が発祥で、拓本と同じ形式で作られる。絵柄を凹版で作り、表から墨を塗っていくと、凹部が白く残り、黒い背景に絵柄が浮かび上がるように見える。

「乗興舟」(部分)


この作品は、大典と共に淀川下りをしたときのことを摺ったもの。大典は詩を添えています。

画材

最高級の絵具と画絹を用いていた。そのため薄塗りでも発色がよく、長い年月を経ても色褪せない。白い線描部分ではボリュームを出すために、金泥も用いている。黒目部分に漆を使うこともあった。

但し、伏見人形図を描く際は泥絵具を用いて素朴な土人形の風合いを出し、筋目描きの際には吸水性が強く滲みやすい中国製の画箋紙を用いて墨画を作った。

画材:プルシアンブルー

動植綵絵「群魚図」の一部にプルシアンブルーが使用されていたことが、宮内庁三の丸尚蔵館と東京文化財研究所の共同調査により判明。左下隅に描かれたルリハタのほぼ全面から、プルシアンブルーの成分である鉄を検出したとのこと。他の魚の青い部分では、群青や藍が使われていた。

プルシアンブルーは、1704年にドイツで発見された青色人工顔料。1750年頃日本に伝わり、これまでに確認された日本最古の使用例は、平賀源内の「西洋人物図」(1770年代前半)だった。「動植綵絵」の制作期間が1758年頃から1766年のため、日本最古の使用時期が早まったことになる。

題材:鶏

若冲は、庭に何十羽も飼って写生を続けた。

江戸時代、鶏は観賞用動物で、より美しさを求めて品種の改良が続けられた。それは現在まで及んでおり、江戸のいくつかの種は絶滅し、殆どの種は形を変えている。若冲が描いた鶏も、現在あまり見かけない羽色だという。

題材:野菜・果物

若冲の作品には、野菜や果物が描かれたものが複数あります。家業である青物問屋のなせる技でしょうか。主な作品に『菜蟲図』『果蔬涅槃図』

果蔬涅槃図


野菜見立て。外来の野菜も混じってるとのこと。「供養のために描いた真摯な作」という説があるそうです。

信心深い若冲が描く「涅槃」。そう考えると、軽妙な作風の奥に生真面目な思いが隠れていたとしても、不思議ではないかもしれません。

余談:芸術新潮2016年5月号に掲載されていた果蔬涅槃図の再現模型はこちらで見ることができます。(国立歴史民俗博物館・暦博展示より)






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