2004年5月

江戸時代の絵画−花鳥画を中心に−
04/02-05/09 大和文華館

▼タイトル通りの展示内容。バラエティに富んだ江戸絵画を体験できます。琳派が少々多目。

▼渡辺始興の「芭蕉竹に仔犬図屏風」は、コロコロな犬が可愛らしいことこの上なし。円山応挙以降につながるわんこ図像です。渡辺南岳の「殿様蛙行列図屏風」も可愛い。鳥獣戯画を意識している様子。筆遣いは、なぜかミリペンを彷彿とさせます。江戸にそんなものはない。若冲の「釣瓶に鶏図」は水墨画。十八番の筆捌きが見られます。

▼季節柄といえそうな展示は、「伊勢物語図屏風」と、岡田為恭による「伊勢物語八橋図」。燕子花です。「伊勢物語八橋図」は、描き表装含めてひとつの作品。画面の中の控えめな燕子花と、表装に広がる燕子花と。

▼代表的な所蔵品である「松浦屏風」もありました。遊女たちが髪を結ったり、化粧をしたり、遊んだりするの図。当時の風俗が窺えます。女性たちの首や顔に刻まれた皺、目の表情などがやけに生々しく、少々怖い。女の業が浮き出ているのでしょうか。よく言われる着物の柄の美しさも確認できました。(05/02)




白隠禅師生誕320年 「白隠 禅と書画」展
04/10-05/23 京都文化博物館

▼白隠コレクションで知られる永青文庫と、白隠が住した松蔭寺所蔵の代表作を網羅するかつてない規模の展覧会。(同展チラシより)

▼前半(大和文華館)は元気だったんですけど、白隠展の頃には身体の調子がいまいちに。そんなこともあって、少々流し見をしてしまいました。

▼「達磨図」は、ぼってり置かれた極太な墨、大胆な簡略化が印象的。それらは、画を描くというより、画を表す字を書くというイメージ。書の方面からアプローチかけてる感があります。書の展示があったので、そう思えたのかもしれませんが。一転、「座頭渡橋図」は、グラフィック感覚に溢れていたり。色々あるです。(05/02) 展示風景など(永青文庫より)


[常設展]京都文化博物館

▼庭園の名画をめぐる−京都府所蔵「京の百景」「京の四季」から− 4月10日〜5月23日
金閣寺、修学院、青蓮院など、描かれた名所が約50点。観光客にも馴染みのある風景ばかりです。「ここは行ったことあるぞ」的な感覚で楽しめました。同じ場所を描いた作品は、並べて展示。それぞれの作者を通すと、景色が変わって見えるのが面白かったです。しかし、作品そのものは可もなく不可もなく。嫌う理由もないが好きになる理由もないという。モネの睡蓮の緑バージョンが「勧修寺(睡蓮の池)」とか、汚くなった「東福寺(通天橋)」とかが目に付きました。堂本印象の「苔寺」、奥井章夫の「糺の森」はちょっとタイプ。

▼あとは、「京都府所蔵品にみる香炉と香合 4月10日〜5月23日」、「映画女優・若尾文子 4月6日〜5月30日」など。香炉と香合は、大正以降の品が殆ど。その中にポツンと金ピカの仁阿弥道八が入ってたりする。若尾文子は、ポスター、写真パネル、資料他。美しいです。(05/02)




[常設展]京都国立博物館

▼【古代-近世絵画】絵巻など 4月14日〜5月16日
師弟並列展示:円山応挙「春秋瀧図」と、長沢芦雪「那智瀧図」。画題はどちらも滝、関係深い二人。つい比べてしまいます。芦雪の作品は、片隅に人を小さく描き、滝の雄大さを際立たせる構図。「象と牛図屏風」にも見られる対比の表現です。そして、応挙の「春秋瀧図」。こちらは双幅の佳作です。季節や構図など、芦雪同様、左右それぞれの対比を意識しております。しかし、芦雪の大胆さに着地することなく、師匠は真面目で適度で繊細な仕上がりを目指す。それはそれで味わい深し。

▼【近世絵画】障屏画など 4月14日〜5月16日
雪舟「四季花鳥図屏風」:雪舟展以来です。この屏風見たのは。すぐ横には、雲谷等益による模本が展示されていました。雪舟に比べ、腕力、勢い、筆圧、男度が低いです。マイルド風味の岩が転がっていました。鶴の羽は、雪舟とは違った感じに描いてあります。ところで、上10cm程描き足しているのが謎。雪舟は、絶筆の「山水図」も見られます。

▼【特集陳列】南禅寺一切経・秘蔵詮−高麗版画・幽玄な山水表現− 4月6日〜5月16日
多くのスペースを取り、展示されていました。圧巻。 時間がなく、大急ぎでまわりました。一応、全部見れたのですが、感想は激しくダイジェストということで。(05/02)




南宋絵画 −才情雅致の世界−
前期:04/17-05/02 後期:05/03-05/16 根津美術館

▼南宋絵画にのみ焦点づけた展観。旧御物1件、国宝11件、重要文化財28件を含む国内収蔵の名品に、新出・初公開の作品を併せた約70点を展示。(同展チラシより)

▼会場は、すいてるでも混んでるでもない状態。普通に見られました。ただ、「紅白芙蓉図」「鶉図」「桃鳩図」の並びは、人が集っていました。国宝、小さな作品という合わせ技が効いたのだと思われます。

▼小画面関係は、細かな描き込みまで見きれなかったです。常々思っていた「展示ケースって邪魔くさいよねー」が、MAXに達した感が。ガラスの存在、作品との距離が呪わしい(*)。
で、見きれない分際で何ですが。李迪筆「鶉図」の鶉は、人格ならぬ鳥格を持っているかのような佇まい。眼力と表情が備わっています。あと、いい具合に膨らんでます。体が。土佐光起の鶉とは、一味違う風貌でした。光起バージョンも愛らしくて好きですが。徽宗筆「桃鳩図」は、鳩の姿から、枝ぶり、花やつぼみの位置までぴたりと決まった構図。無駄がないというか必然というか。

▼その他気になったのは、梁楷の「雪景山水図」。山部分のなぐり描き兼引っ掻き傷のような筆致がありえません。アクセントというには型破り。対比の妙を超えた、他とはまったく違う描法です。だけど、画面全体を壊しているようで壊してなく、見る側にも引っ掻き傷という名の余韻を残してゆく、不思議な作品なのでした。あと、牧谿の「漁村夕照図」「遠浦帰帆図」「平沙落雁図」は、空気感が何ともいえず。他作品では、鼻毛出してますけど。

▼豚に真珠状態を危惧していたのですが、面白い作品が多く楽しめました。日本美術への影響や繋がりなどつらつら考えたりもして。といっても、大したことは考えてないというオチをつけつつ終了。(05/05) *今回、ケース内の壁面を45cm程前に出し、鑑賞者との距離を縮めているそうです。(読売新聞丸写し)
先の大和文華館で、狩野安信「唐絵手鑑」版・「紅白芙蓉図」「鶉図」を見ました。短期間に原本と模本見られて得した感じ。

今月(2004年4月)の芸術新潮はこちらの展覧会を元にした特集。初めに掲載されていた「桃鳩図」は、昨年、小茂田青樹の摸写を見ました。小茂田は、「桃鳩図」を左右反転させたような「梅鳩図」という作品も残しているとか。本誌にはジョゼフ・コーネルのコラージュが出てましたね。
小茂田青樹筆「梅鳩図」は「桃鳩図」を左右反転させたような作品・続き
山種美術館所蔵作品「小茂田青樹/梅鳩/1925(大正14)/絹本・彩色・軸(1幅)/56.3×41.3cm」が、それに該当するのでは…と思われます。(2005/09/22記)


[常設展]根津美術館

▼4月17日〜5月16日 書画 館蔵 宋元水墨画
狩野栄川による「牧谿瀟湘八景図巻模本」など、特別展と関連付けた展示。伝牧谿、伝夏珪もあり。

▼工芸 清朝の陶磁
景徳鎮。単色でシンプルな品が中心。形や色彩を愉しむといった雰囲気。
ド派手な大皿と壺もありました。壺は「粉彩百鹿文双耳壺」といい、その名の通り、毛色や柄違いの鹿がわらわらと増殖しています。吉祥ものです。松、桃なども加え、吉祥方面をさらに強化。既に表面はごった煮状態。アク浮いてるぞ、おい。でも、そのアクが何ともたまらんのです。取らずに、くたくたに煮込む。みたいな。

▼茶道具 新緑の中で
ベトナムの陶器が加わっている所がよいです。

▼中国古代青銅器、中国仏教彫刻の展示もあり。青銅器、見飽きません。(05/05)




狐火幻影 −王子稲荷と芸能−
03/13-05/05 北区飛鳥山博物館

▼王子稲荷と稲荷の神使・狐にちなむ多彩な資料を芸能・風俗を中心に一堂に紹介(同展チラシより)。北区王子に密着した企画です。

▼展覧会は3部構成。「王子は江戸のマジカル・ゾーン」では、江戸期の王子稲荷における狐火の伝承と稲荷信仰、当時の様子や風景などを紹介。「お狐さんにあやかって」は、芸能と狐との関連性について。能、歌舞伎に登場する狐や、王子出身の女形で絶大な人気を博した王子路考に関する展示。土産の狐人形のいわれや紹介。「狐火の残像」では、明治以降の王子稲荷を紹介。

▼それぞれ浮世絵や資料を駆使し、立体的な展示がなされています。なんと狐の剥製まである。案外デカイぞ。とてもわかりやすい構成で、会場をうろついてる間に狐豆知識を仕入れられたり、王子界隈に興味を持てたりします。当時の賑わいが味わえる点も良し。過ぎ去った時代が絶妙に再現されており、めっけもんな展示でした。(05/05) 王子稲荷神社




[常設展]東京国立近代美術館

▼所蔵品ギャラリー「近代日本の美術」 3月5日〜5月16日
「約9000点におよぶコレクションの中から毎回200点以上を選りすぐり、20世紀初頭から今日に至る近代日本の美術の流れを展示」しているそう。いつ行っても出会える作品があったり、時折展示され偶然の出会いを果たす作品があったりします。安心感と新鮮さが交互に訪れる具合。
今回は、小茂田青樹の「虫魚画巻」目当てに訪問。蛙、蜘蛛の巣、魚、花々が作り出す幻想世界。視線を移すごとに場面は変わっていくのだけれど、浮遊感のようなものがずっと張り付いています。麻薬のような心地良さ。小絲源太郎「惜春賦」の独特な世界にも惹きつけられました。花瓶に生けられた芥子、ぽとりと落ちた花びらが神秘的。

▼特集コーナー 戸張孤雁
大正期の彫刻家・戸張孤雁の展示。彫刻5点と版画・素描10点。 硬質で隙のない素描から、柔らかく自由な素描と木版画へ。使用前、使用後のような、異なるタイプが並びます。変化に至るきっかけは何処にあったのでしょうか。技法からの脱却を図った結果なのか、元々の資質が顔を出したのか。個人的には、後者の方が味があり好み。小ぶりな彫刻は、柔らかな素描を生かした感じがしました。ちょっと崩れた、昔ながらの日本人の身体は、率直で強く優しい。彫刻と素描を行き来する作家像には、「特集展示 彫刻家の眼と手−素描/彫刻」においても触れることが出来ました。こちらは、木内克、アブラハム・ダヴィッド・クリスティアン、佐藤忠良、豊福知徳、柳原義達、山本豊市、若林奮の出品。

▼そういえば、岸田劉生の「道路と土手と塀(切通之写生)」が出張中でした。ないとやっぱり寂しいですね。「古屋君の肖像 (草持てる男の肖像)」「麗子肖像(麗子五歳之像)」「四季の花果図」4幅は出てましたけど。(05/14)




弘法大師入唐1200年記念 空海と高野山
04/06-05/16 東京国立博物館

▼弘法大師空海と高野山の歴史を振り返るとともに、総本山金剛峯寺をはじめ、高野一山に花開いた仏教美術の全貌を紹介。国宝・重要文化財118件を含む151件を展示(同展チラシより)。多岐にわたる時代の名品がちりばめられています。唐時代の緻密さ、鎌倉時代の写実性と躍動感など、それぞれの年代の造形美を堪能できます。

▼特筆すべきは、素人目にも明らかな質の高さ。彫刻、絵画、工芸全て、メインを張り倒せる作品ばかりです。「仏涅槃図」や運慶はもちろん、「諸尊仏龕」の小宇宙、「金念珠」のミクロに達した細やかさ、快慶「孔雀明王像」の孔雀の極太脚(そこかよ…)、中央部の傷みが勿体無い「普賢延命像」、優美な透け感「楊柳観音像」と、印象に残りっ放し。

▼制作年代にびっくりなのが、「紙胎花蝶蒔絵念珠箱」と「澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃」。平安時代作とはにわかに信じ難い。かなり下っても、なかなか見かけないバカテクさとデザインのように見えるのですが。

▼「秘宝がまるごと降りてきた。」というのが、この展覧会のコピー。それってあながち嘘でもないような。と、思える位の出し惜しみのなさ。ここまで充実した寺宝展は、滅多にないのでは。行ってよかったです。(05/15)

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巡回:10/09-11/23 和歌山県立博物館


[常設展]東京国立博物館

▼季節柄か、多数の鯉図像あり。泳いでます。帯にまで。「八橋図」(特集陳列「ものがたりの絵画」〜5/30)、「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(〜6/30)と、伊勢物語の意匠も確認。どちらも尾形光琳作。

▼桃山・江戸I 写実と技巧 3月23日〜6月30日
「写実のために技巧を凝らした工芸の数々を展示」。可動性の龍や鶉など、割と良く見かける品が並んでいます。が、テーマで区切ってあるので、少々異なる点から見れたような見れないような。他には、笠翁細工が何点か。笠翁細工とは、小川破笠の技法や意匠を匂わせる品の総称。この系統は、一度見たら忘れられません。破笠風は、近代美術の間にもありました。楽焼の鵞鳥を漆の額にはめ込んだ、三浦乾也作「鵞鳥図」(〜5/30)。凹凸感と鵞鳥の表現がちょっと不気味で素敵。

▼桃山の「能書人々」 5月11日〜6月30日
「寛永の三筆」と呼ばれる近衛信尹、本阿弥光悦、松花堂昭乗の作品他。書の造形…下絵とかあれば何とかなる。どこが何とかなるんだ?本阿弥光悦筆「芥子下絵和歌巻」「蓮下絵和歌巻断簡」は、宗達が下絵を担当。コラボレーションっつーんですか、その辺りの妙味に触れられます。

▼特集陳列 江戸の博物学 4月20日〜5月30日
珍獣系の図譜多し。博物館・動物部の図譜を見ていたら、動物園に行きたくなってしまいました。 シーボルト編「日本動物誌」は、標本、川原慶賀などによる下絵を元に作成したもの。関係ないけど、以前開催された「川原慶賀展」に行きそびれたのは今でも後悔。

▼3館同時開催による名品展 拓本 3月30日〜6月6日 書道博物館・三井文庫は4月3日〜5月30日
企画展ですが、こちらで紹介。東博分しか見てないという半端さですし。それに、いつもにも増してコメントが浮かばない。まさに「豚に真珠」。年をとるごとに、好みのジャンルや範囲は変わっていくものですが、拓本を愛でる日は来るのだろうか。えーと、初公開や原石の残っていない貴重な孤本などがあるそうです。比較の意味で、3館あるいは2館で同じ作品からの拓を平行展示しているそうです。

▼空海と高野山展:関連展示 空海筆「風信帖」(〜5/23)、「高野山天野社伝来の仮面と装束」(〜5/16)、「密教法具」(〜6/30)、新出の運慶(〜6/30)。外に出ると、鶴屋吉信が「高野山」販売。落雁っぽかったけど、食してないので断言は出来ず。ちなみに1050円。(05/15)




ルノワールに学んだ色彩と光。 山下新太郎展
04/09-06/06 ブリヂストン美術館

▼ルノワールに強い影響を受けた画家であり、ルノワール作品を日本に最初にもたらした人物でもあり、修復家・額縁収集家でもあった山下新太郎の個展。代表作約80点を展示。修復を行なった作品(ゲインズバラ「婦人像」)、額縁収集に関する資料もあり。

▼作品は、女性、家族、風景や花を題材としています。何れも、明るい色彩と光の表現に神経が注がれています。他は特になし。あーでもないこーでもないといった、創作への執着や痕跡は薄味。そのせいか、とても綺麗で素直な仕上がりです。裏を返せば、毒にも薬にもならん。凡庸さが愛しくなるパターンもなきにしもあらずですが、今回は当てはまらず。

▼家族像に関しては、作者の愛情や慈しみが感じられる分、微笑ましく受け止められました。息子を描いた「端午」とかよかったです。後ろに鯉のぼり泳いでるし。しかし、この分野も月日が経つごとに、明るい色した政治家・社長の肖像画然としてくるのは何故なのでしょう。

▼会場には、初期の「自画像」が展示されていました。それを見ると、留学してルノワールと出会ったことが、果たしてプラスになったのだろうかと。微かな疑問。留学中に行なった、ベラスケスの摸写。その成果はどこへ?とか。余計なお世話ですが。(05/15) 「東京ミュージアムぐるっとパス」を使用し、入場。パスがなければ、見ることはなかった展覧会です。その辺りが作用した感想となりました。御了承ください。


[常設展]ブリヂストン美術館

▼ヨーロッパ近代絵画と日本の近代洋画が中心。近代美術をしょって立つビッグネームが勢揃いしています。それはまるで教科書的でもあり、「初めて触れた美術」が再現されているかのようでもあり。

▼目立っていたのは、ピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」。ピカソとくればマティス…もありますが、残念ながら好みではない。マティス自体は好きなのだけど。あと、関根正二「子供」の朱は、やはり目に残ります。そういえば、ピカソも赤が効いているのだった。

▼古代美術、彫刻作品もあり。ひょろ長い猫は連れて帰りたい。(05/15)




究極の美を見たまなざし。没後世界初の回顧展 ハーブ・リッツ写真展
05/13-05/25 大丸ミュージアム・東京

▼招待券で入場。券がなければ見なかったかも。

▼代表作約110点を展示。作品の所々に、ハーブ・リッツ自身の言葉が添えられています。

▼肉体のしなやかさ、筋肉が織りなす明暗、浮き出る骨のフォルムを楽しむ。俳優、モデル、画家、作家など、ずらりと並んだ著名人の表情を楽しむ。そんな感じでしょうか。魅力は、洗練されているように見える所。見えることと事実の間には、微妙なずれが生じているという。あくまでも個人的な印象ですが。

▼時折現れるベタな小道具、大道具使いが何とも言えず。ウィトキンやバロウズなんて、笑ってしまいます。小道具で普段の芸風丸出し。(05/15) リチャード・ギアのはがきが売り切れていました。早っ。マドンナも残り僅かそうでした。




ドラクロワからムンクまで 19世紀ヨーロッパ絵画の視点
04/17-09/12 名古屋ボストン美術館

▼米国ボストン美術館を代表する19世紀のヨーロッパ絵画コレクションより、ドラクロワ、ミレー、コロー、マネ、ゴッホ、ムンクら画家37人44点の作品を通して、彼らは何を見つめ、どのように表現したのかを探ります(同展チラシより)。「古へのあこがれ」「東方へのあこがれ」「現実を見つめる」「近代生活を見つめる」というテーマに沿って、時代と絵画表現を概観。新古典主義、ロマン派、写実主義、印象派などを、さくっと紹介しています。

▼テーマは、「東方へのあこがれ」が興味深かったです。未知なる風景や衣装への好奇心、憧れと想像のない交ぜ状態を垣間見れました。動きのある荒々しい場面を迫力ある筆致で描いた、ドラクロワ「ライオン狩り」があったりします。あと、メルソン「エジプトへの逃避途上の休息」は、シュール入りの変わった絵でした。

▼作品は、満遍なく楽しめました。バルビゾン派と印象派が目に付きますが、こういう展覧会だからして割と色々見られます。バーン=ジョーンズの足枷付きお姉さんや、シャヴァンヌとか。ちなみに個人的メインは、マネの「音楽の稽古」でした。(05/22)


[常設展]名古屋ボストン美術館

▼「美への散策−古代ギリシアから現代アメリカへ」 4月17日〜12月5日
「古代ギリシア・ローマ美術〜美へのはじまり〜」「ヨーロッパ美術〜花開く美術様式〜」「アメリカ美術〜ヨーロッパから新大陸へ〜」「現代美術〜表現の拡がり〜」に分かれた展示。どうも、セクションごとに展示が完結している印象が。美への散策は分断された4つの道。それぞれ行き止まりにて終了。
唯一関連性が見られたのは、「ヨーロッパ美術」のミレーと、「アメリカ美術」のウィリアム・モリス・ハント。二人は親交を持っていたそうです。確かに、モリス・ハントが描いた「ドラムをたたく少年」は、ミレーとの関係を裏付けするかのような作品でした。全体を覆うトーンや表情に共通項あり。
作品はテーマの幅広さに比例し何でもありました。アフロディテの頭部、ロココ、ロックウッド社製の不気味な陶器など。個人的に興味深かったのは、「遠方を見渡すインディアン」。雄大な風景と、すっくと立つインディアンを広角で表しています。アメリカではないと生み出せない絵画がここに。(05/22)




県内美術館所蔵品による かながわの絵
05/21-06/20 そごう美術館

▼通常各美術館、博物館で展示、所蔵されている名画を一堂に集め、展覧する初めての試み。約60作家の作品100余点を展覧して、各作家たちと神奈川とのかかわりを紹介し、神奈川の芸術・文化風土をふり返りつつ、日本洋画の発祥をはじめとした近代日本美術の流れをたどる(同展チラシより)。テーマは、「横浜の開港と日本洋画の誕生」「岡倉天心と原三溪」「湘南が育んだ美術」「神奈川ゆかりの画家たち」。

▼「横浜の開港と日本洋画の誕生」は、当時の風景や五姓田芳柳の横浜絵、高橋由一にチャールズ・ワーグマン他を展示。異文化の流入、近代美術萌芽の様子などが一応出てたかと。ライブ感みたいなのが、ほんの少々足りない気もしますが。「岡倉天心と原三溪」は、原三溪の元に集い、援助を受けた画家について。菱田春草、安田靫彦、今村紫紅、横山大観他、近代日本画を体現した顔ぶれです。それがそのまま、原三溪が美術界に果たした役割の大きさを示しているという。金銭的育ての親っぷりとか。ここまでは、神奈川県がほんのり出ていたように思います。

▼あとは、「湘南」「神奈川」を、他の地名県名に置き換えても差し支えないような。「育んだ」「ゆかりの」は、地元色を出した美術館ではよく見かけるフレーズだし。雰囲気は合同常設展で、新味には欠けるかと。出品作家は揃っているので、見る楽しみはありますが。それにしても、神奈川出身・移住者って沢山いるのだな、てことで。

▼個人的には、高橋由一と五姓田義松による「江ノ島図」競演、岸田劉生と椿貞雄による師弟比べが面白かったです。あと、小茂田青樹の「虫魚画巻(下絵)」が予想外の収穫。この作品、横須賀市美術館(2007年開館予定)に収蔵されているらしい。(05/23) 出品美術館・博物館見ると、知らなかったり行ったことない所ばかり。本当にいっぱいあるのですね。




フェルメール「画家のアトリエ」 栄光のオランダ・フランドル絵画展
04/15-07/04 東京都美術館

▼ウィーン美術史美術館所蔵展。16-17世紀のフランドル、オランダ絵画にテーマを絞り、その時代を代表する巨匠たちの作品58点を展示。(同展チラシより)

▼夜間開館を利用。会場は思ったよりすいていました。それでも、フェルメールの前だけは、常に人垣が出来ていました。中央、最前列で見るには、しばらく待つことになります。端から斜め見でしたらすぐに出来ましたが、部分的に光ってしまいますので少々つらいです。

▼そのフェルメール「画家のアトリエ(絵画芸術)」は、大トリ。警備員付きです。他作品より、観客との距離を遠ざけてあります。特別扱いです。そりゃそうでしょうねえ。
見た感想は、「17世紀のオランダ絵画」という括りの展示では異彩放つな…と。赤い糸で結ばれているのは、ヤン・ファン・エイク。「アルノルフィニ夫妻」の鏡を覗き込むと、フェルメールが見えます。どちらも空間が気持ちよいです。

▼フェルメール以外は、ルーベンスやファン・ダイク、レンブラントでさえも、おまけ扱いにされている気がしないでもない。そんな殺生な。ルーベンスの自画像なんて、悲哀が静かに滲み出ていてなかなか良かったりするのですが。

▼さらに小品は、作品の隙間を埋める梱包材扱いかも。プチプチとかその手の。おまけを超えた。でも、プチプチをひとつひとつつぶすのが面白いのと同様、ちょっとはまり込んでしまいました。ヤン・ブリューゲルの花卉画や動物だらけの習作、サーフェリーやドンデクーテルによる動物や鳥たちの楽園、ちりばめられた寓意画などに。自然界のものが細かく画面いっぱいに描かれているのに弱い。これはもう性です。体質です。ルーベンス「キモンとエフィゲニア」も、肉の感触が気になりつつ、端っこに描かれた果実に目が行ったりして。(05/28)

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巡回:07/17-10/11 神戸市立博物館




小林孝亘展―終わらない夏
04/24-06/20 目黒区美術館

▼初期から新作に至る大型の油彩作品を中心に、これまであまり展示されることのなかったドローイングや制作ノートも展示(同展チラシより)。展示構成と作品は、初期の潜水艦、光と木洩れ日、まどろむ人々、小さな作品や制作ノート。アトリエ再現もあり。

▼大型の作品は、余裕を持たせた展示。特に、木洩れ日作品を集めた展示室が、ゆるやかで心地良し。長居してしまいました。水飲み場や家、門扉などの日常が、作者の視線でトリミングされている。個人的には、この辺りが一番好みです。わんこもいました。

▼ただ、作品数が少々物足りないというのもあって。でも、出品を増やすことと、余裕あり展示は反比例してしまうわけで。二兎を追うなということか。

▼この展覧会を見てうっすら思ったこと。私は、作者の眼と作品が持つ時間の流れに惹かれているのかもしれんです。立ち止まり、自分の周りをゆっくりと眺めるような。(05/29) 再現アトリエに置いてあった、日々のご飯とハトの巣作り写真。何でもないけど何でもなくない、こういう感覚が欲しいというのもあるのかも。ところでこれ、本人撮影ですよね?そうじゃないと、ちと成り立たない部分が。いきなり話はずれますが、アトリエ本棚の東陽片岡が気になりました。




古唐津 桃山陶芸の至宝
03/13-05/30 出光美術館

▼出光コレクションを中心に、田中丸コレクションや和泉市久保惣記念美術館の逸品を加える、約50年ぶりの本格的な展観。窯跡出土の陶片などを並べ、古唐津研究の最前線も紹介。(同展チラシより)

▼茶碗、水指・花生、茶入・香合、大皿、向付他の展示。あらゆる形状の古唐津が揃っています。花生は、花を生けた際の写真展示もあり。加えて、「宴を飾る道具立て」「古唐津と仙香|飄逸たる味わい」コーナーも設置。「古唐津と仙香vは、両者の取り合わせ。共通性のある図像と、イメージの相関です。

▼唐津は、色調と文様が渋いですね。茶の湯、わびさびというラインを辿るのは、わかるような気がします。なんて思っていたのだけど、見てる内に文様の印象が変わってきました。葦文、草花文、唐草文、流水文など、定番文様における簡略化のされ方、筆致具合が何故だかとても前衛的。やるじゃないか古唐津。あと、釉薬をかけたスタイルは朝鮮唐津と呼ぶそうですが、こちらは陶芸版アクション・ペインティングの様相。向付は、上部をぐにゃりと曲げたり、全体を変型させたりと成形に拘りを見せていたり。

▼全体を通し、創作意欲が見えて面白かったです。それと、一見静かに見えるけれど、寄ってみると躍動的なのだなと思いました。唐津って。(05/29)


[常設展]出光美術館

▼日本・中国の古美術から、小杉放菴、板谷波山、ジョルジュ・ルオー、サム・フランシスまで。多彩なコレクションを誇ります。ちなみに、蒐集の始まりは仙高セったらしい。
今回は、伝俵屋宗達「四季草花図屏風」、狩野探幽「叭々鳥・小禽図屏風」、野々村仁清「色絵芥子文茶壺」、ルオーの展示。仁清の茶壺は、いつ行っても置いてあるような。「仁清」と太字で書かれているかのような一品です。

▼ムンクの作品展示 2003年9月6日〜2004年8月
ムンク美術館からの貸し出し。「モデルのいる自画像―寄り添って」「ドイツの風景―テューリンゲン地方のエルゲルスブルグ」「最初の一杯」3点の展示。(05/30)

▼特別公開 酒井抱一「八ッ橋図屏風」 4月27日〜5月30日
恒例の展示。毎年、見に行ってます。もはや年中行事みたいなもの。同じく抱一の「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」も公開されます(今年度は3月13日〜4月25日)。 作品は、尾形光琳の「八橋図」(メトロポリタン美術館蔵)に倣っています。「茅場町の酒問屋・永岡伊三郎の依頼によって描かれたもので、その後霊巌島の鰻屋大黒屋を経て、岩崎家に伝来した」とのこと。光琳作との違いなど、見定めたりしても面白いかと思います。私は椅子に座り、ほげ〜っと見て楽しんでおります。

▼朝夕菴:館内にしつらえてある茶室。茶の湯の取り合わせが見られます。唐津が何点かありました。「古唐津」展開催中だったから?
陶片資料室:窯址や遺跡から出土した陶片を集めています。日本では、瀬戸、唐津が目に付きます。朝鮮や中国をはじめ、アジア各国の陶片もあり。それにしても、欠片になると文様や色彩がクローズアップされるような。シルエットの美しさは望めませんが、デザインなどは陶片でも充分楽しめます。展示ケースや雰囲気は、まさに資料室。というか、学校の理科室辺りが思い出されます。
ここの美術館の良い所は、ソファでくつろぎつつ皇居の自然を見られること。借景です。見晴らし良し。当たり前だが、中身は見えません。(05/29)




高橋匡太 仙川ライトアップ
05/29-05/30 シティハウス仙川

▼京都・二条城や青山・国連大学など様々な場所でライトアップ・インスタレーションを行ってきた高橋匡太。今回は、調布市仙川にある安藤忠雄建築研究所設計の集合住宅をライトアップ。

▼夜、野外、真夏を思わせる暑さということで、花火見物気分になってしまいました。間違ってるような気もします。
内容は、建物の輪郭や柱(?)に沿い、照明をあてるというもの。光により骨格が浮かび上がる感覚といったらよいのでしょうか。で、時々、所々がついたり消えたりします。見る位置を変えると、光や影の付き方も変わり、色々な表情が見られます。…なんだか、この文章ではさっぱり状況がわかりませんね。困った。ええと、個人的には、意外にシンプルだなと思いました。と、書いてますが、早い内に帰ったので、その後の展開は不明です。(05/30)






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