2004年3月
▼前回とは、がらりと入れ替わった作品群。巻替もされていました。 ▼木炭による一風変わったタッチの龍図や、視点と空間の広がり具合に違和感のある山水図、酒井抱一と雰囲気の重なる「桜小禽図」、即興で描いたといわれる「竹雀図」など、試行する応挙に引っ掛かりを覚えました。色々描いて色々試してたのだなと。大乗寺の「郭子儀図」に通ずると思われる作品も、興味深かったです。これがその後ああなったのか…みたいな。それから、「七難七福図巻」の画中画が最高でした。襖絵が見物。本当は人災巻に興味津々だったのですが、福寿も良いですね。 ▼前回、「作品・資料をよく集めた」と書きましたが、かなりまめに見に行かないと、その全貌は明らかにならないのでした。そういえば。2度見ても30点以上未見という。東京展に出品されない作品もあるし。「龍門鯉魚図」とか見たかったなぁ。(03/05) |
▼II期は「京文化の担い手」「茶の湯」「琳派」がテーマ。 ▼スタンダードなテーマに良質な展示作品。どこも悪くないのに、何故か乗りきれない。達筆で「日本の美」と書かれたような雰囲気に馴染めないのかも。で、こういう突っ込み入れると、「美への理解が足りない」と返り討ちにあいそうだったり。かなり妄想入っているし、単にこちら(受け手)の問題という気もしますが。 ▼人の集まりが良かったのは、尾形光琳の「風神雷神図屏風」。人気者。相変わらず会場の半分はがらんどうでした。(03/06) |
▼「十七条憲法」制定1400年記念。献納宝物の国宝・聖徳太子絵伝をはじめ、法隆寺東院・絵殿の関連作品が一堂に会す。他、十七条憲法の最古の版木と、小野妹子が中国からもたらしたという伝承のある国宝・細字法華経も同時に展示。(同展チラシより) ▼コーナー展示で出品は7点。点数は少ないですが、量より質的な内容で楽しめました。聖徳太子関連という狙い撃ちテーマも効果的。「夢違観音」は近くで見られるし、「聖徳太子絵伝」は内容と照らし合わせながら見るとハマります。(03/06) |
▼芸術新潮で見かけた「放牛桃林図・太平有象図」が気になり訪問。しかし、展覧会のテーマは「富士山から蓬莱山へ」。鉄斎が描き続けた富士山が蓬莱山〜理想郷のイメージへと連なる様に焦点を当てているようです。こちらは牛の尻を追いかけ来てるわけで。出発点からして違うぞ、おい。会場は、熱心にメモを取る観客多し。作風がそうさせるのか? ▼展覧会は、テーマと展示作品が上手く噛み合った感じ。テーマが作品を表し、作品がテーマを表すという。「富士遠望図・寒霞溪図」をはじめ、作品自体も見応えあり。全体を通し、バランス感覚に溢れていました。 ▼目当ての「放牛桃林図・太平有象図」では、へろへろな筆致の牛たちと風景に囲まれました。脱力加減が心地良い。ところで、この心地良さは、鉄斎版・理想郷へ足を踏み入れたということなのか。教えて鉄斎。それから「柳塘銷夏図」の、水面を生かした構図と色彩が個人的に好み。風景に溶け込む感覚。解説に極楽場とあったが、極楽度は確かに高いかも。(03/07) |
▼伊藤若冲と、琳派から俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一に加え、鈴木其一他の作品を紹介。あわせて、七宝の優品も展示。 ▼休日とは思えない位にすいていました。高島屋=混むイメージがあったので意外。 ▼若冲の作品は、掛軸あり屏風ありとなかなかの展示数。掛軸を2〜3点出して終わりかと思っていたのですが、いい意味で裏切られました。「宝珠に槌図」「踏歌図」「関羽像」など、関東ではあまり見る機会のない(と思われる)作品の展示が嬉しかったです。この展覧会、「実物の若冲作品を制覇するぞ」が目標な方に打って付けかも。馴染みの深い、よく知られた作品も見られます。 ▼琳派は鈴木其一がメイン。作品数が非常に多いです。其一を一気に見られるなんてそうはないだろうし、お得な感じ。それから、若冲と琳派を並列させる際、其一との取り合わせが最もしっくり来るような。若冲と其一って、それぞれ独自の妙な感触があるし…個人的見解ですが。なので、ある意味都合の良い展示でした。まぁ、其一の師・酒井抱一は、若冲の「玄圃瑤華」を模しており、繋がりもなきにしもあらずだし。て、それなら抱一の方が近いって。(03/07) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - |
▼「(岡本秋暉は)これまで文人画家の末流として位置付けられるにとどまり、主要作品や渡辺崋山とのかかわりが知られている程度でしたが、江戸時代後期の長崎派画風を展開させた主要画家であり、その全体像を把握することに意義があります」とのこと。会場の解説には、明代絵画、円山・狩野派の古画学習も挙げられていました。 ▼これまでの位置付けを再考させる作品が集められていたように思います。長崎派云々を、展示作品によって実証するという。言われてみれば、「双兎図」には沈南蘋、「孔雀図」「雲龍図」には円山応挙、石榴などの画題には中国の吉祥画エキスが注入されてるかも。とか、素人考えが浮かんだりして。これが正しいかどうかは置いといて、テーマを意識した見方がすんなり出来たし、無理なく受け入れられる構成になっておりました。 ▼作品自体は若干微妙。今月は応挙も見ているせいか、孔雀とか少々つらいかなと。でも、羽の一枚一枚まで丁寧に描いているのを見ると嫌いになれません。「月下双鹿図」「百花百鳥図」など、気に入った作品もあったし。後期に入ると、薄塗りなど繊細さが見られるようになり、進んでる感がよかったです。(03/21) 図録 |
▼「湘南ゆかりの作家たちII」 1月20日〜3月31日 ▼特集展示 二つのコレクション−安藤好明・広津和郎/桃子の旧蔵作品から湘南ゆかりの作家たち |
▼展示は、現在の文京区〜江戸といった、地元色を生かしたもの。当時の江戸における、本草学、本草に貢献した植木屋、園芸、花名所の様子が、図譜や資料によって表されていました。「植物学へ」では、伊藤圭介から博物学と博覧会、牧野富太郎まで。こちらも、文京区からの視点を生かした構成でした。 ▼入場料100円で冊子付き。展示目録や参考文献リストも用意してあり、とても親切。加えて展示も充実していたし、おつりが来ます。太っ腹です。(03/21) |