三遊亭圓生音源データ
鰻の幇間−1
1.TS-02773B2
2.1974.7.29,東横劇場,東横落語会第163回
3.39:17
4.To.TY-60034,ZF20-407(CT)
5.出囃子 正札附
えー、お暑い中を、ァッ、御贔屓(しいき)でございまして有難く、ァーッ御礼を申し上げまして。えー、エェーッ、(カット)幇間持ちという今はお若い方は、幇間持ちてぇのはどんなもんだなんてんで、ェー御存知の無い方もございましょうが。あるにはありますが随分数も少なくなりました様で。えー、まァ、ァーッお席へ出まして、ゥーン、芸者衆と一緒に騒いで、ま酒を飲んで、唄を歌い踊りでも踊って、陽気に騒げば、一人前の、ォッ幇間持ちだと思っておりましたがそう言うもんでは無いんだそうで。えー平場(しらば)と言いまして、お客様と差しになって話をしても、決して相手を飽きさせないという。ォりゃァなかなか難しいもので。えー大体まァ男が男の機嫌をとると言うお色気抜きでございますからこりゃ難しいもので、えそれに、右と思うもんでも向こうが左(しだり)だと言えば『いゃァごもっともでげす』なんてな事を言う。何でもその向こうの機嫌を損じない様。面白く遊(あす)ばせ、様という訳で。えー吉原で誰とか、ンーあるいは柳橋、新橋葭町赤坂なんという、(白湯を啜る)まァそこで何の某という、幇間持ちンなれば決してもうそういう事はありませんが。どこにも籍の無いこの野幇間という。えーこういうのはもう何でも顔さえ見れば取り巻こうと言う。お客を取り巻く事を『釣る』と言いましてね、えー、往来で取り巻くのを丘釣り、そのうちへ行くのを穴釣り、何でも向こうを魚に見立ててね、えー取り巻き損って逃げられる「あァいけねぇヘヘ。釣り落としちゃった」なんてんでね、お客をだぼ鯊か何かと間違えている。えー天麩羅蕎麦一杯から客にしようなんというどうもそれたちの悪いのが「ヵーッ(バサッ)、暑いねぇどうも、あァあしょうがねぇなどうも、馬鹿アツですなこらァ。ァー。『言うまいと思えど今日の暑さかな』なんてぇがなァ。こう暑くなって来るってぇと、我々は上がったりだなァ。……
6.東横落語会の録音。この時が初演であった。
7.To.TY-60034 DISC COPY
8.穴釣りの件から入っている。
鰻の幇間−2
1.TS-02918C1
2.1974.7.29,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第五席」
3.51:09
4.CS.SOGZ-105,SR.SRCL-3805(CD)
5.出囃子 お前を待ち待ち 受囃子 何をくよくよ川端柳
昔からこの、たいこもちと言うものがございまして、幇間と言う。えー男芸者とも申しますが、こりゃァなかなか難しいもので。男が男の機嫌をとって遊(あす)ばせようという、お色気抜きでございますから、ぇ客がまァどんな無理な事を言おうとも、決してそれに逆らわないよう、自分が右だなと思っても「左だよ」って「えーっごもっともでげす」なんてな事を言って。何でも向こうを機嫌よく、遊(あす)ばしていこうというこりゃァまァ、幇間持ちでございますが。ゥーンこの「鰻の幇間」という噺は、あたくしは柳家小せんという師匠に、えぇ稽古をいたしまして、この人(しと)は、大正八年に、亡くなっております年三十八でございましたか、えー、亡くなりました、文樂さんなぞも、得意として演っておりましたが。大抵この噺は、小せんから、出ましたもので、ゥーンその以前には四代目の圓生が演ったという話を、えーこれは勿論、聞いただけでございますが、ァーどういうものか、えー分りませんが。ま今残っておりますのは大抵小せんの、系統ばかりで。でこの幇間持ちを呼んで遊(あす)ぶという。今のお若い方は、何でそんなに男が男を呼んで遊(あす)ぶかという。唯そのお座敷を賑やかに、浮き立たして、踊りを踊るとか唄でも歌って「ワッ」と言えば、一人前の幇間持ちかなんてぇとなかなかそういうものではございませんで。えー、お客様の方で、遊(あす)びつけた方は紙入れを預ける。仮に百万円持ってってこれを残らず使おうと言うんですが、御自分で持たず、幇間持ちへ「お前(まい)に、会計の方は任せるよ」「へいッ、承知致しました」てんで、ぇこいつをこう懐へ入れて、…… ……<幇間持ちの仕事についての解説〜博多の幇間持ちの実例>…… ……しかしまァ、吉原で誰洲崎で某、えー新橋、赤坂、葭町柳橋、そういう盛り場で、何の某という、幇間持ちならば決してもうそんな事はありませんが、俗に言う野幇間てぇのがあってね。ゥー何でも知ってる人(しと)の顔を見れば無闇に取り巻きたがる。でこういうのは客を取り巻く事を『釣る』ってぇましてね、ゥー往来で取り巻くのを、岡釣り、そのうちへ押しかけて行くのを穴釣りなんと言う。向こうを魚に見立てているんで。エヘヘ。取り巻き損って逃げられると「あァいけねぇェヘ、釣り落としたァ」なんてんで。お客をだぼ鯊か何かと間違えている。「暑いねぇどう…。ハァー。今日はこら堪らねぇや暑い。あァア『言うまいと思えど今日の暑 ウかな』てぇが全くだなァ。こうなった日にゃァ我々野幇間は上がったりだなァ。……
6.圓生百席の録音。この録音の直後に東横落語会で初演している。
7.CS.SOGZ-105 DISC COPY
8.珍しいネタが、同じ日の録音で2テイクだけとは実に奇妙な事である。
鰻の幇間・解説
桂文樂の十八番だったところからか、晩年は殆ど演じていなかったが、文樂没後東横落語会で演じた。若い頃にはよく演じていたと言うが、この時が初演と言っても良いであろう。しかし、この東横落語会で演じた後、他の会や放送等で演じた記録の録音が無く、客の前で演じたのがこの一回、レコードの録音が一回、計二回の記録が残されるのみである。しかもその二回が同じ日の録音である。即ち、東横落語会で初演同様のこの噺を当日の午後、リハーサルを兼ねてスタジオで録音をとり、その足で東横劇場へ向って喋った訳である。『圓生全集・追悼編』に収められている速記は東横落語会で演じたものが元になっているが、枕の一部がレコード化に際しカットされているのが分かる。小せん学校のものだそうで、文樂のも圓生のも出所は同じとの事だが、聞いた印象はかなり異っている。この辺が我々には楽しいところであるが、文樂は別格としても、柳好、志ん生といった噺家程の個性が感じられないのは私だけだろうか。
時代設定:明治・大正時代。
舞台:蔦芳川、若菜屋、路上、鰻屋。
登場人物:野幇間一八、蔦芳川宅女中、若菜屋女中、先のうちの人、手習いをしている子供、八年もいる鰻屋の女中、下足番。
ベストテイク:ライヴと言うことで、「鰻の幇間…1」