三遊亭圓生音源データ
梅若禮三郎−1
※(上)のみの口演
1.TS-02529B3
2.(1974.11.14),TBS,TBSホール,「ゴールデンワイド・ラジオ寄席」
3.25:34
4.なし
5.出囃子 正札附(テープ)
えー、梅若禮三と言う、お噺でございますがこの人(しと)は、元能役者で、えー将来は、ァーッ、誠に、ゥーン立派なものになろう、また当人も、ォッ第一人者になれると言う、ま、ァーッ自信もあり一生懸命、エヘッ精進をしておりましたが、ふとした間違いからこの人(しと)が賊になりまして、しかし悪い事はしても、貧乏人をいじめるなんてぇ事はありませんで、大名屋敷、ァッ或いは物持ちから金を取っては、貧乏人は随分助けたと言う。ましかし、何時の世になりましても貧乏な人(しと)と言うものは多いもので。神田鍋町に、家主が万蔵と言いましてその店に住んでおります、(白湯を啜る)小間物屋の利兵衛と言う人が、三年腰が抜けて、だどうにもなりませんで、女房のおかのと言うこれが誠に貞女で、ぇー亭主の世話をしては、手内職をして、ェッなんとか養おうというんですが。…… ……サゲ=ハァー丁水をしている所を親子もろとも召し捕りンなりまして、これから番屋に引かれてお白州、お調べという訳でございますが、お時間が参りました様でございます。この辺で失礼を致します。
6.発端から栄吉召し捕りまでの上のみの口演で、下は演じていない。
7.TBS R ゴールデンワイド・ラジオ寄席 放送録音
8.このような公開録音で梅若禮三郎の様な大作を出すのは珍しい。
梅若禮三郎−2(上)
※上・中・下口演の(上)
1.TS-02921D1
2.(1966.11.15),TBS,スタジオ,客なし,「落語への招待」
3.24:22
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、梅若禮三郎という、えこの人はァッ、元能役者でございまして、ま芸質も良し、将来はこの道で立派なものになれると、自分も、ゥー芸道に精進をし、またァーッ他の者も望みをかけておりましたがふとした、事の間違いから『アーもう、俺はこの道では所詮、立派なものになる訳にいかない。いっそ太く短く暮らそう』と言うので、この人が賊になりまして。しかし悪い事はしても、決して貧乏人をいじめるなんてぇ事はしない。大名旗本屋敷から金を取っては、困る者に、施してやったという。まその頃、この禮三郎に助けられたという者は随分ございまして。神田鍋町に、家主が万蔵という、長屋がありましてこれに住んでいる、小間物屋の利兵衛と言う人が、誠に、…人物はよろしいのでございますが、どうもこの、三年越し腰が抜けて、どうにもしょうがないン。ま今で言えば法明院へ頼んで、政府から補助を頼むというんでしょう昔は、もみぐらと申しましてこれを二度も、願って出たという。そういう訳ですから、誠にどうも、うちの中も苦しい。女房のおかのというのがこれが大変貞女で、病人の世話をし、手内職をしておりますが、女の内職位な事で、病人を一人抱えてなかなかやっていけるものじゃァない。…… ……サゲ=とうとうここで、召し捕りになりましてこれから番屋のお調べでございますが、また次回に申し上げる事に致しします。
6.上中下の3回に分けての口演で、上では発端から栄吉召し捕りまでを演じている。
7.TBS R 早起き名人会 放送録音 1987.9.12
8.「早起き名人会」での再放送で、細かい部分の間が復活した。
梅若禮三郎−2(中)
※上・中・下口演の(中)
1.TS-02921D2
2.(1966.11.22),TBS,スタジオ,客なし,「落語への招待」
3.24:02
4.なし
5.出囃子 正札附
前回に引き続きまして、梅若禮三郎の、お噺でございますが。魚屋の栄吉という奴が、吉原の池田屋という女郎屋から、土手へ出る。お加役の、勘兵衛という、手先にッ、補縛をされまして、田町の番屋へ引かれて来て。「えー、縄付きを一人お頼申します」「へぃっ、いらっしゃいまし。…… ……サゲ=こういう事となりますと、気の揃うのが、江戸っ子でございまして、ターッ、長屋の為だってんで、商売もおっぽり出してこれから一同揃って、垢離場へ参ります。さて、これからどういう事にあいなりますか、また、来週に引き続いて申し上げる事に致します。
6.中では、番屋の取調べから長屋の場面を口演している。
7.TBS R 早起き名人会 放送録音 1987.9.19
8.
梅若禮三郎−2(下)
※上・中・下口演の(下)
1.TS-02921D3
2.(1966.11.29),TBS,スタジオ,客なし,「落語への招待」
3.24:41
4.なし
5.出囃子 正札附
引き続いて、梅若禮三郎のお噺でございますが。長屋の者が揃いまして、両国の垢離場という、昔はここに垢離茶屋というものがありまして、着物を預けて、川へ入りますが。まァ暑い時なら、ちょいと川へ入ってね、ウーボチャボチャやっているのも、ォー大変おつなもんですが、こりゃァどうも十二月の末てんですから寒い盛り。ハァたまったもんじゃありません。それでも長屋の為だてんでみんな震えながら「ゥワゥワゥワゥワゥワ…… ……サゲ=これからまた一軒行って飲んで、利兵衛には二十両この男には五両の金をやりまして、これからすっかり支度をして、北町奉行島田出雲守様へおそれながらと訴え出まして、貞女、おかのを助けるという、梅若禮三郎でございます。
6.上中下の3回に分けての口演。下では垢離場から居酒屋の場面を演じている。
7.TBS R 早起き名人会 放送録音 1987.9.26
8.「早起き名人会」の再放送で、一部オリジナル放送でカットされていた部分が復活している。
梅若禮三郎−3(上)
※上・下口演の(上)
1.TS-02929C1
2.1973.12.3,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「人情噺集成」
3.63:27
4.CS.SOGZ-16(初出),FCLY-2,FKLY-2(CT),FKLA-157(CT),SR.SRCL-3899(CD)
5.出囃子 楼門五三の桐 受囃子 おかしみ〜立ち廻り
昔はこのォ、無筆という。つまり読み書きの出来ないという人(しと)は、あたくしの子供時代に随分おりましたもので。「あの人は字が書けないんだよ」なんてぇン。ゥーそうは見えない立派な人の様で、ま、無学な者が、多かったもので。えーそこへいきますともう今日では、大学を出るなんと言うのは、ざらでございます。昔はあの人は大学を出たなんてぇと珍しい様に思ったン。えー、ところが、どういう訳でございますかこのォ、罪の意識なんというものは、昔の方が、あたくしはあったと思う。えー、人の物を盗る事はいけないとか、人殺しは、悪い事だという。ンな事は言わなくたって分っていそうなもんですが。ところが今日では、人の物を盗り、ごまかし、殺すなんという事を、平気でやる人が増えて来たというように思いますが。ま昔からこの、えー、…物を、盗む。こりゃァ幾らもありましたもので古くは、袴垂保輔(やそすけ)、或いは熊坂長範、石川五右衛門なんというこりゃァもう、その道の、えーナンバーワンでございまして。…… ……<石川五右衛門の逸話>…… ……ンーとにかく、盗人というものは、昔から今まで種が、絶えないと言う。悪い事でございますが。えーしかし、同し悪い事を致しましても、情けの有る、賊というものがある。今の、泥ちゃんてぇものはどうも、そういう事は、ぇ皆無でございまして、どうも運転手の、首を締めて、千五百円盗って、エヘッ罪ンなるなんという、こういうのは実に馬鹿げた事でございます。えー梅若禮三郎という。でこの人は元能役者で、芸質も良し、将来はこの人はいいものになるだろう、アー芸が伸びていったら大した者になろうという、評判も良し、当人もどうかして、自分の芸というものを、完成さしたいというので一心にやっておりましたが、ある時、老女の役が付きましたがどうもその歩き方が上手くいかない。いくら演って見ても年寄りにならない。…… ……サゲ=生憎おかわがあったのを踏み潰しちまう。いやどうもその臭いのなんのって、捕り押さえる所だがあんまり臭いんで思わず知らず自分の鼻ァつまんで「ウーン、神妙に致せーッ」てんでさあ、長屋中は引っくり返る様な騒ぎでさて、どういう収まりにあいなりますか、続いて申し上げる事にいたします。
6.「人情噺集成」の中の一席。これを元にした速記が中公文庫「圓生人情噺(上)双蝶々」に収められている。上では、利兵衛宅への踏み込みまでを口演している
7.CS.FKLA-157 CT COPY
8.
梅若禮三郎−3(下)
※上・下口演の(下)
1.TS-02929D1
2.1973.12.4,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「人情噺集成」
3.54:16
4.CS.SOGZ-17(初出),FCLY-3,FKLY-3(CT),FKLA-158(CT),SR.SRCL-3900(CD)
5.出囃子 あほだら 受囃子 猩々合方
さァ捕り方が来たというので、長屋はえらい騒ぎで。「今利、利兵衛さんのとこへ、何だってねぇ、役人が」「うーん。驚いたねぇ。びっくりしちゃった」「何だってまたあんな病人の所へ、捕方が来たんだろう」…… ……サゲ=これから、もう一軒小料理屋へ上がりましてこの男に十分に、御馳走をしてやり、五両の金を、別に二十両包んでこれは利兵衛への、見舞金としてこの男に預けます。これから、すっかり、下帯から腹巻、半紙手拭と、支度をいたしましておそれながらと、北町奉行島田出雲守の屋敷へ訴え出て、貞女、おかのを助けるという、梅若禮三でございます。
6.「人情噺集成」の中の一席。これを元にした速記が中公文庫「圓生人情噺(上)双蝶々」に納められている。下では長屋の場面から居酒屋の場面までを演じている。
7.CS.FKLA-158 CT COPY
8.
梅若禮三郎−4(上)
※上・下口演の(上)
1.TS-02937C1
2.1978.11.28,西武劇場
3.51:57
4.WP.L-6123W,LKW-6001(CT),WMJ.WPC6-8337(CD)
5.出囃子 曲名不明
えー、梅若禮三郎という、お噺でございますが。ンー、昔はまァこのォ、ァー字の読めないなんという。えー、噺家仲間には、ァー随分ありましたもので。えーそうかと思うてぇと、ォッ何だか訳が分らない、人間が、ァーッぞろぞろしておりまして。えー、楽屋にあのゥ、出物帳と言うものがございまして我々は、掛け持ちを致します、甲の、席から乙の席へ行きまた丙へ行くという。みんな入れ替わりますから、前に誰が何を演ったか分りませんので、ちゃんと、ォッ楽屋帳と言うものが、あって、その名前の上に噺の題名が書いてある。−ァー何と何が出たなてぇ事が直ぐに分る。ぇーあたくしが、ァーッ未だに記憶しておりますのは、このゥ、上がろうてんで帳面を見ると、数字で、『三五十五』と書いてあるんですが、…… ……<山号寺号〜四代目柳亭左樂の話>…… ……けれども、罪の意識てぇものはみんなあったんで。えー人殺しをするてぇ事は悪い事で、それから人の物を盗る、泥棒するのは良くないこったてぇ事は、みんな知っておりましたが。近頃はァ、ァーッどういうもんですかね。えー大学を出た方が人殺しをして、決して罪だと思っていないなんという。不思議な人か出るもんですが。えー、物を盗り、人を殺すという事はこりゃえらい罪悪なんですが、えーそういう事が段々どうもそれ、薄らいでくるというのは、おかしな世の中ンなりましたもので。(カット)梅若禮三郎というこの人は、元能役者で、まその道で、こりゃァ後々立派な者になるだろう、あの人はどうも芸質がいいと言うんで、評判でございまして当人も、なかなか芸熱心。でぇ、ある時、老女の役が付きまして、ところが歩いて見るとどうしても年寄りに見(め)えない。…… ……サゲ=生憎あなた、おかわがあったこいつを踏み潰しちまう。いやその臭いのなんのと言ったら、いきなり、押さえる所なんだがあんまり臭いんで思わず鼻ァつまんだ「ウーン、神妙に致せーッ」てんでやァどうも、長屋は引っくり返る様な騒ぎさて、どういう収まりにあいなりましょうか、一息ついてまた、申し上げる事にいたします。
6.『梅若禮三郎…3』のライヴ盤と言った録音。同じく、利兵衛宅への踏み込みまでを口演している。(カット)で枕をカットしてある様だ。
7.WP.L-6123W DISC COPY
8.全編を通しているライヴ録音は、現在この録音だけである。東横落語会で通しで演じた記録があるが、録音の所在は不明である。
梅若禮三郎−4(下)
※上・下口演の(下)
1.TS-02937D1
2.1978.11.28,西武劇場
3.49:38
4.WP.L-6124,LKW-6002(CT),WMJ.WPC6-8338(CD)
5.出囃子 あほだら
えー、引き続いて、梅若を申し上げますが。えー長屋の者はもう大変な騒ぎで。「おい、今何だってな利兵衛さんの所へ、お捕方が来たってねぇ」「そうだってぇびっくりしちゃったよゥ」「何だってあんな病人のとこィ」…… ……サゲ=これからもう一軒小料理屋へ入りましてこの男に十分に御馳走をして、五両の金をやり別に二十両、これは利兵衛への見舞金として、どうか、渡してやってくれとこの男に言付けましてこれから、身なりから、手拭半紙、下帯腹巻とすっかり、用意をいたしまして北町奉行へおそれながらと、お訴えに及び、貞女、おかのを助けるという、梅若禮三でございますが、どうやらお時刻にあいなりました様でこの辺で、御免を致します。……(受囃子)……有難う存じます、どうぞ、お忘れ物のございません様にいらっしゃいます様、有難う存じました。……
6.下は長屋の場面から居酒屋の場面までを演じている。
7.WP.L-6124W DISC COPY
8.
梅若禮三郎−5
1.TS-12532A1
2.TBS(?),スタジオ,客なし,寄席の広場
付:対談、三遊亭圓生・鈴木治彦
3.58:49,対談 3:01
4.なし
5.出囃子 正札附
梅若禮三郎という、ゥーッお噺でございますが。この人は、元ォー能役者でございまして、芸質も良し、将来はこの道で立派な、者になれると言うので当人も、なかなか芸熱心でございましてある時、老婆の役が付きまして、えーところが、どうしてもこの、歩き方が、年寄りにならない。色々工夫をして見たがどうも上手くいかない。ぇ神に願うより仕方がないと言うので神田明神へ三七二十一日の願掛けを致しまして。…… サゲ=ここで、梅若禮三郎がすっかり、支度を整えまして、北町奉行、島田出雲守様へ恐れながらと、訴えて、出まして、貞女、ぇーおかのを助けると言う、梅若禮三郎でございます。お時間でございます。
対談:鈴木「どうも師匠お疲れ様でございました。この梅若禮三と言うお噺は余り伺った事が無いんですけども」圓生「滅多に演りませんしね」鈴「そうでございますよねぇ」圓「えぇ」鈴「本当はもっと長い噺なんでございますねぇ」……
6.上下通しの録音であるが,スタジオでの客なし録音である。途中をはしょって短くまとめ ている。
7.都家歌六ライブラリー
8.『寄席の広場』と言う番組の録音で、鈴木治彦が対談の相手をしている所から、TBSの録音と思われるのだが、大渕氏の番組調査の記録にも該当する番組が無く不明である。
梅若禮三郎・解説
全編通しで演ずると1時間半以上を要する長編人情噺である。この梅若禮三郎と双蝶々が筋が似ている所が多く混乱している人も多いことと思われる。だいたいこの様な長い噺の場合は、放送等では切れ切れになってしまうこともあって、敬遠されがちだが、幸いにも梅若禮三郎の場合は、レコードを含め4つもの録音が残されている。可能性としては、東横落語会で演じた録音が残っていると思われるのだが、現在のところは未発表のままである。上下或いは上中下に別けて演じているが、いわゆる切れ場は必ず面白い所でサゲており、上を聞けば下を聞きたくなる様に工夫されているのは、当り前の様だがやはり流石と言う他は無い。
時代設定:江戸時代。
舞台:神田鍋町万蔵店、鎌倉河岸、吉原池田屋、田町の番屋、両国垢離場、居酒屋両国。
登場人物:元能役者梅若禮三郎、神田鍋町家主万蔵、万蔵店小間物屋利兵衛、女房おかの、隣に住みし博奕打ち魚屋栄吉、吉原池田屋主人、吉原池田屋喜助、女郎花岡、揚屋町お加役勘兵衛、岩倉宗左衛門、捕方連、万蔵店月番、長屋の連中(焼接屋藤右衛門他)、屑屋連中。
ベストテイク:やはりライヴで、「梅若禮三郎…4」