桂文樂音源データ
悋気の火の玉−1
1.TS-02601B3
2.1963.10,ビクター,ビクター・スタジオ,客なし
3.16:20
4.V.JV-61,JV-1283,JL-259,SJV-6543,VCK-3037(CT),VCK-514(CT),VCK-892(CT)
5.出囃子野崎
えーっ、ェッ、相変わらず、御馴染みのお笑いを申し上げることに致します。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてえのがございます。と言ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。「俺がこんなに道楽をしてるのに、女房は厭な顔一つした事が無い。ことによったら何か出来たんじゃぁないか」何てぇのは穏やかでございませんだから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』…ェェンあんまり当てにはなりませんけど。じゃ男の方は丸っきり悋気てものは無いかってそうでございませんあるんでございますが男の方は罪がございませんな。…………<水かけ引越し相談〜旦那丸坊主>…………花川戸に、(キリキリ)立花屋さんと言う鼻緒問屋がございます。この旦那が堅い方でございましてもう女というものは、我が女房より知らないていう堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様で。ある時仲間の寄合いがございまして、その崩れ、只今で言う二次会でございます「どうだいこれから吉原へ繰り込もうての行かないか」「ァ行こう」「チェッ、俺も行くよ」「あたしも付合おうじゃないか」「おい、立花屋。おい、おまえもおいでよ」「エッヘヘ。あたしはねぇ行きたいんだけどもねぇ、えー家内がねぇ」「お前さんはねぇ何ぞ(パチン)ってと家内家内って、(白湯を啜る)そら家内は家内ですよゥ。ゥーものの付合いてぇ事を知らなくちゃいけないまあいいからおいでよ」なんてんで悪友に誘われて、吉原へ行って遊(あす)んでみると面白い。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして、さあ、この遊(あす)びの味を忘れる事が出来ない。自分の方から今度は誘って行く様になる。根が商人でございますから…………根岸の里に船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構えて。でお妾さんに、婆ァやァに、狆が一匹。昔は大抵狆でございますな。只今では色んな犬がおりますけれども、昔は大抵狆でございます。またあの若い御婦人が湯上がりかなんかでもってすっかりお化粧をして、あの派手な浴衣を着て狆を抱いてる姿てぇものは、良いものでございますな。第一御当人がお得でございます、狆を抱いておれば。引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔をしてる。あの狆を産んだんじゃないかゥーそんな事は無い。で、旦那様が月の内に御本宅へ二十日、御妾宅へ十日、お休みンなります。これを女房が気取(けど)った。……
6.
7.V.JL-259 DISC COPY
8.
悋気の火の玉−2
1.TS-02593D4
2.1967.6.10(1967.6.25),TBS,東商ホール,「角栄落語名人会」
3.CS.SOGZ-31,15AG-219,SKJZ-16(CT)
4.14:08
5.出囃子野崎
えー、ェーッ、毎回の、ォッ、お運びでございまして、有難く御礼を申し上げます。間へ挟まりまして相変わらず、馬鹿馬鹿しい事を申し上げて、ェッ、お暇(しま)を頂戴を致します。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇます。(パン)と言
ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。(ポン)「俺がこんなに道楽をしてんのに、女房はこれまでに厭な顔、一つした事が無いっていうことによったら何か出来たんじゃねぇか」なんてぇのは穏やかでございません。(ポン)だから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。(パン)これ即ち悋気(臨機)応変余り当てにはなりません(パチ)。じゃ男の方は丸っきり悋気てものが無いかってそうでございませんあるんでございますが男の方は罪がございません。…………<水かけ引越し相談〜旦那丸坊主>…………花川戸に立花屋さんて言う鼻緒問屋がございました。この旦那は堅い方でもってもう、女というものは我が女房より知らないていう堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様。(パン)ある時仲間の寄合い、その崩れ、只今で言う二次会「どうだいこれから吉原行こうてぇの行かないか」「あ行こう」「(ポン)俺も行くよ」「あたしも付合おうじゃねぇか」「お、おゥ、おゥ立花屋、おおい、お前もおいでよ」「
ェヘッ、行きたいんだけどもね、(ポン)えーっ家内がね」「お前(まい)さんはねぇ何ぞってぇと家内家内ってぇ家内は家内ですよゥ、ものの付合いてぇ事を知らなくちゃいけないよ。まァいいからおいでよ」なんてんで悪友に誘われて、(白湯を啜る)吉原ィ行って遊(あす)んでみると面白い。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして。さ今度は(こんだ)、自分がその遊(あす)びの味を忘れる事が出来自分の方から誘って行く様ンなる。根が商人でございますから、…………根岸の里ィ船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構え…。でお妾さんに婆ァやァに、狆が一匹。昔は大抵狆でございます。只今では色んな犬がおりますが、またあの若い御婦人が、
すっかりお化粧をかしましてもう、ハの派手な浴衣か何かァ着てこの狆を抱いてる姿てぇものは、良いものでございます。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。へ
ぇ引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔をしてる、あの狆を産んだんじゃないかンなそんな事は無い。(パチン)で旦那様が月の内に、御本宅へ二十日、御妾宅へ十日お休みンなる。これを女房が気取(けど)った。……
6.
7.CS.SOGZ-31 DISC COPY
8.1967年の録音だが、絶好調の見本の様なテイク。こういう文樂師の高座こそ絶品であると言えよう。
悋気の火の玉−3
1.TS-02508C2
2.(1968.8.25),TBS,「落語名人会」
3.12:51
4.YP.CR18-27(CT)
5.出囃子野崎
毎回の、ァッ、お運びでございまして、有難く、ゥッ、御礼を申し上げます。間へ挟まりまして相変わらず、馬鹿馬鹿しい事を申し上げて、お暇(しま)を頂戴を致します。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございま(ポン)す。と言ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。「俺がこんなに道楽をしてんのに、ェェーッ、女房てぇものは厭な顔、一つした事が無いんでことによったら何か出来たんじゃぁねぇか」何てぇのは穏やかでございません。だから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』。あんまり当てにはなりません。(パン)花川戸に立花屋さんて言う鼻緒問屋がございまして。(パン)この旦那が堅い方でございましてもう、ホー女というものは、我が女房より知らないていう堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様。(パン)ある時仲間の寄合い、その崩れ、只今で言う二次会「どうだい、これから吉原へ繰り込もうての行かないか」「行こう」「(パサッ)あたしも行くよ」「俺も付合おうじゃねぇか」「おうおう、おう、立花屋。おい、おまえもおいでよ」「エッヘヘヘ、行きたいんだけどねぇ、エッヘあたしはねぇ、どうもねぇ女房が」「お前さんはねぇ何ぞってぇとのー女房、そらァねぇ、女房は女房ですよゥ。ですけどねものの付合いてぇ事を(白湯を啜る)知らなくちゃいけないよゥまあいいいいからおいでよ」なんてんで、悪友に誘われて、吉原へ行ってみて遊(あす)んでみると面白い。もうどんどんじゃんじゃん、がんがんがん抜ける様な騒ぎをして、(ポン)さあ、この遊(あす)びの味を忘れる事が出来ない。今度は(こんだ)自分の方から誘って行く様になった。根が商人でございますから…………根岸の里ィ船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構えて。で旦那様が月の内に御本宅へ二十日、御妾宅へ十日お休みンなります。これを女房が気取(けど)った。……
6.枕は省略したのかカットなのか不明。狆の件は放送時間枠調整の為にカットされている様子だ。
7.TBS R落語名人会放送録音
8.悪い出来ではないのだが、所々口が回らない箇所がある。
悋気の火の玉−4
1.TS-2764D3
2.1960〜61(喉手術前?),鈴本演芸場
3.14:19
4.TH.AX-0091(初出・Cut有り),Col.FS-7123,CHY-9033(CT)
5.出囃子野崎(ドラ入り)
一杯のお運びでございまして、ェッ、有難く御礼を申し上げます。エェーッ間へ挟まりまして相変わらず、馬鹿馬鹿しい事を申し上げてお暇(しま)を頂戴を致します。落語の方は大抵みな、ァーッ、御馴染みでございまして。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございます。エェーッ、と言ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。(ポン)「俺がこんなに道楽をしてるのに女房はこれまでに厭な、顔を一つした事が無い。ことによったら何か出来たんじゃねぇか」なんてぇのは穏やかでございません。だから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』とか申、あんまり当てにはなりません。じゃぁ、アアッ男の方は余り丸っきり悋気てものが無いかってそうでございませんあるんでございますが男の方は罪(パサッ)がございません。…………<水かけ引越し相談〜旦那丸坊主>…………花川戸に、ィーッ、立花屋さんて言う鼻緒問屋がございま…。この旦那が堅い方でございまして。もう女というものは我が女房より知らない。もうォー堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那でございまして。ある日の事仲間の寄合いでございます、その崩れ、只今で言う二次会でございます「どうだいこれから吉原へ繰込もうてんだどうだい行かないか」「ああ、(ポン)行くよ」「ゥゥン、俺も付合おうじゃねぇか」「あァ、あたしも行くよ」「おいっ立花屋、お前もおいでよ」「ェヘヘ、ェヘあたしはねぇ、行きたいんだけどもね、ンー家内がね」「お前(まい)さんはねぇ何ぞってぇと家内家内ってぇんだよ、家内は家内ですよゥものの付合いてぇ事を知らなくちゃいけませんよ。まあいいよ(白湯を啜る)まあいいからおいでよ」なんてんだ。悪友に誘われて吉原行って、エェッ、遊(あす)んでみると面白い我がうちと違って。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして。さあ、このすゥ、遊(あす)びの味を忘れる事が出来ない。今度は(こんだ)自分の方から誘って遊(あす)びに行く様ンなる。根が商人でございますから…………根岸の里へ、船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構え。でお妾さんにィ、えー婆ァやァに、(トントントン)狆が一匹。(トントン)昔は大抵狆でございますな。只今では色んな犬がございますが、昔は大抵狆でございます。またあのゥ、ァーッ、年のお若い方が、この湯上りかなんかでもってこの派手な浴衣を着て、あの狆を抱いてる姿てーものは良いものでございますな。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔の…。あの狆を産んだんじゃないかンーンそんな事は無い。(パチン)…で、旦那様が、ぇ月の内に、御本宅へ二十日、御妾宅へ十日、お泊まりン(トントン…)。これをな女房が気取(けど)った。……
6.東宝盤は、旦那丸坊主の件がカットされている。
7.Col.FS-7123 DISC COPY
8.テンポが速いので、喉手術前の録音であるように思える。
悋気の火の玉−5
1.TS-2771D3
2.1959,TBS
3.10:59
4.なし
5.出囃子野崎
えー、ェーッ、お暑い所を、ォッ、一杯のお運びでございまして、有難く御礼を申上げます。(カット)て相変わらず、(パン)エェーッ、馬鹿馬鹿しい事を申し上げて、お暇(しま)を頂戴を致します。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございます。(カット)花川戸に、立花屋さんて言う鼻緒問屋がございま…。この、旦那が堅い方でございましてもう、女というものは、我が女房より知らないていう堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様で。ある時仲間の寄合いでございます。その崩れ、只今で言う二次会でございます「どうだいこれから吉原へ繰り込もうての行かないか」「あァ、行こう」「ゥーあたしも行くよ」「俺も付合おうじゃねぇか」「おいっ、立花屋。お、おまえもおいでよ」「いえエヘヘあたしはね、行きたいんだけどもねぇ、えー家内がね」「お前さんは何ぞってぇと家内家内ってんだよ、そら家内は家内ですよゥ。ものの付合いてぇ事を知らなくちゃいけませんまあいいよ。おいでよ」なんてんで悪友に誘われて、吉原へ行ってみて遊(あす)んでみると面白い。(白湯を啜る)どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして、さあこの遊(あす)びの味を、忘れる事が出来ない。さあ今度は(こんだ)自分の方から誘って行く様になる。根が商人でございますから…………根岸のさ里へ、船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構えて。でお妾さんに婆ァやァに、ぇ狆が一匹。(トントントン)昔は大抵狆でございます。只今では色んな犬がおりますな。またあのゥ、ァーッ、湯上りかなんかでもって若い御婦人が派手な浴衣かなんかでもってすっかりお化粧をして、あの狆を抱いてる姿てぇものは良いもんでございますな。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。えっ引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔をしてる。あの狆を産んだんじゃないかウーンンな事は無い。で旦那様が、月の内に、えー御本宅へ二十日、御妾宅へ、十日、お休みンなる。これを女房が気取(けど)った。……
6.一つ目のカットでは「間へ挟まりまして」二つ目のカットでは放送時間枠調整の為に枕がカットされている。
7.TBS R爛漫ラジオ寄席放送録音
8.喉手術前の録音だが、余り太い声で無く、明るい高座である。
悋気の火の玉−6
1.TS-2930C2
2.不明,TBS
3.12:44
4.なし
5.出囃子野崎
一杯のお運びでございまして、有難く御礼を申し上げます。相変わらず、御馴染みのお笑いを申し上げる事に致します。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございます。と言ってあんまり妬かないのも(ポン)いけないんだそうですな。「俺がこんなに道楽をしてんのに女房はこれまでに、厭な顔一つした事が無いことによったら何か出来たんじゃねぇか」なんてぇのは穏やかでございません。(ポン)だから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』…あんまり当てにはなりません。で御本妻とお妾さんでは妬き方が違うんだそうで(ポン)…………<旦那丸坊主>…………花川戸に立花屋さんて言う鼻緒問屋がございま…。この旦那が堅い方でございましてもう女というものは、我が女房より知らないていう、堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様。ある時仲間の寄合いでござン…、その崩れ、只今で言う二次会で、「どうだいこれから吉原へ繰込もうてんだ行かないか」「−あ行こう」「あたしも行くよ」「俺も付き合おうじゃねぇか」「おいっ、おいっ立花屋、おいっお前もおいでよ」「ェヘヘ、行きたいんだけどねぇ、ェヘッどうもねぇ、家内がねぇ」「お前(まい)さんは何ぞってぇと家内家内って、(白湯を啜る)そら家内は家内ですよゥものの付き合いてぇ事を知らなくちゃいけないよまあいいからおいでよ」なんてんで。悪友に誘われて、吉原ィ行って遊(あす)んでみると面白い。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして。さあ、この遊(あす)びの味を、忘れる事が出来ない。今度は(こんだ)自分の方から誘って行く様ンなる。根が商人でございますから算盤をはじいて考えた。こんな事してた日(し)にはいくら、身上があってもたまらない。(ポン)もっと何か安く、楽しめる工夫は無いか。さあ、身請けをしようって。昔の事でございますから、本人に話を致しまして親元身請けという事…。根岸の里へ船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構え。でお妾さんに、婆ァやァに、狆が一匹。昔は大抵狆で…。只今では色んな犬がおりますけどまた若い御婦人が、あのゥ湯上りかなんかでもってすっかりお化粧をして、ホーしてあの派手な浴衣でこの、狆を抱いてる姿てぇものは良いものでございますな。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔をしてる(ポン)。あの狆を産んだんじゃないかンーそんな事は無い。(パチン)で旦那様が、御本宅へ月の内に二十日、御妾宅へ十日、お休みンなる。これを女房が気取(けど)った。……
6.録音データが不明だが、1963〜64年頃の録音と思われる。
7.TBS R放送録音慶応大学落語研究会ライブラリー
8.保存状態が十分でなく、所々雑音が入っている。なかなか良い出来である。
悋気の火の玉−7
1.TS-2994C3
2.不明,TBS
3.12:50
4.なし
5.出囃子野崎
ようこその、ォッ、お運びでございまして、有難く御礼を申し上げます。『悋気は女の慎むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございます。と言ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。「俺がこんなに道楽をしてン女房はこれまでに、エエーッ厭な顔しした事が無い。ンことによったら何か出来たんじゃねぇか」なんてぇのは穏やかでございません。だから妬いていけず妬かないでいけずその中間をいくんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』とこの、あんまり当てにはなりません。で御本妻と、お妾さんでは妬き方が違うんだそうで…………<旦那丸坊主>…………花川戸に、立花屋さんて言う鼻緒問屋がございま…。この旦那が堅い方でございましてもう女というものは、我が女房より知らないていう、堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様で。ある時仲間の寄合いでございます、その崩れ、只今で言う二次会でございます「どうだいこれから吉原へ繰込もうてな行かないか」「あ行こう」「俺も行くよ」「わたしも付き合おうじゃねぇか」「おうおうっ、おいっ、立花屋、おいっ、お前もおいでよ」「ェヘッ、あたしはねぇ行きたいんだけどねぇ、ェーッ家内がねぇ」「お前(まい)さんは何ぞってぇと家内家内って言う家内は家内ですよゥ。ものの付き合いてぇ事を知らなくちゃいけないよ。(白湯を啜る)まあいいからおいでよ」なんてんで悪友に誘われて、吉原ィ行って遊(あす)んで見ると別世界でございます。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして御婦人が付いてるんですから。さあ、この遊(あす)びの味を忘れる事が出来ない。さあ今度は(こんだ)自分の方から誘って行く様ンなる。根が商人でございますから算盤をはじいて考えた。こんな事してた日(し)にはいくら身上があってもたまらない。もっと何か安く、楽しめる工夫は無いか。さあ、身請けをしよう。本人に話を致しまして昔の事でございますから、親元身請けという事んなり…。根岸の里へ船板塀に江市屋格子、庭を広く取りまして立ッ派な御妾宅を構え。で、お妾さんに、ィー婆ァやァに、狆が一匹。昔は大抵狆でございまして。只今では色んな犬がいる。あのまた御婦人が、若い御婦人があのこの湯上りかなんかでもってすっかりお化粧をして、この派手な浴衣を着てこの狆を抱いてる姿てぇものは良いものでございますな。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。えー、引っ立ちますからな。中には狆と同し様な顔をしてる。あの狆を産んだんじゃないかンなーそんな事は無い。で旦那様が、月の内に二十日、御本宅へお休みンなる。十日御妾宅へ、お休みンなる。こ 黷女房がけ気取(けど)った。……
6.録音データが不明だが、1960年代前半頃の録音と思われる。
7.TBS R放送録音早起き名人会1989.12.10
8.元気の良い頃の録音。喉手術前後の録音と思われる。
悋気の火の玉−8
1.TS-012686A2
2.1969.7.18,TBS,国立小劇場,落語研究会第17回
3.15:44
4.無し
5.出囃子無し(拍手のみ)
毎回の、エーッ、お運びでございまして、有難く、ゥッ、御礼を申し上げます。間へ挟まりまして相変わらず、お馴染みの、ァーッ、お笑いを申し上げる事に致します。『悋気は女の謹むところ疝気は男の苦しむところ』なんてぇのがございます。と言ってあんまり妬かないのもいけないんだそうですな。「俺がこんなに道楽をしてるんだけどもハハァ女房てぇものはこれまでに、やな顔つうした事が無いんだがねぇ、ことによったら何か出来たんじゃねぇかしら」なんてぇのは穏やかでございませんだから妬いていけず妬かないでいけずその中間を行くんだそうですな。これ即ち『悋気(臨機)応変』、あんまり当てにはなりませんけれど。じゃ男の方は丸っきり悋気てぇものが無いかってそうでござりませんあるんでございますが男の方は罪がございません。…………<水かけ引越し相談〜旦那丸坊主>…………花川戸に、立花屋さんて言う鼻緒問屋がございました。この旦那は堅い方でございましてもう、女というものは、我が女房より知らないていう堅い国から堅いのを拡めに来たような旦那様。(パン)ある時仲間の寄合いその崩れ只今で言う二次会「どうだいこれから吉原へ繰り込もうてぇんだ行かないか」「行こう」「あたしも行くよ」「俺も付合おうじゃねぇか」「おゥ、おゥ立花屋、おおいお前もおいでよ」「ェヘへッ行きたいんだけどもね、(ポン)えーっ、エヘヘッ、女房がね」「お前(まい)さんはねぇ何ぞってぇと家内が、あのねぇ、それはねぇ、女房は女房ですよ、だけどねぇ、ものの付合いてぇ事を知らなくちゃいけないよゥまァいいからおいでよ」なんてんで悪友に誘われて、吉原ィ行って遊(あす)んでみると我がうちと違って面白い。どんどんじゃんじゃんがんがん抜ける様な騒ぎをして、さあ、この遊(あす)びの味を忘れる忘れる事が出来ない今度は(こんだ)自分の方から誘、誘って行く様ンなって来る。根が商人でございますから、算盤をはじいて考えて「こんな事してた日(し)には、いくら身上があってもたまらないもっと、安くなんか楽しめる、ちょっ、工夫は無いか。「あっ、身請けをしよう」昔の事でごさいますから、本人に話を致しまして、親元身請けと言う事。根岸の里ィ船板塀に江市屋格子、庭を広(しろ)く取りまして立派な御妾宅を構え。でお妾さんに、婆ァやァに、狆が一匹。みんな昔は狆でございます。只今では色んな犬がおりますけれども、またあの、若い御婦人がこれ湯上がりかなんかでもってすっかりお化粧をして、そうしてあの派手な浴衣を着てこの狆を抱いてる姿てぇものは、良いものでございます。第一御当人がお得でございます。狆を抱いておれば。引っ立ちますからな。えー。中には狆と同し様な顔をしてる。あの狆を産んだんじゃないか、ンそんな事は無い。で旦那様が月の内に、御本宅へ二十日、御妾宅へ十日お休みンなる。これを女房が気取(けど)った。……
6.晩年の口演だが調子が良い録音である。VTRも残されている可能性がある。
7.NHKR放送録音ラジオ名人寄席1997.8.4
8.
悋気の火の玉・解説
「悋気」と言う言葉はもはや死語に近い。日常会話ではもう使われぬ言葉だろう。知っているのは落語の好きな我々のような連中だけではなかろうか。「やきもち」だの「嫉妬」と言った言葉がその代役をしている。お妾さんとか、二号さんとか言うと何か、耐える慎ましやかな女の様に考えがちだが、実際はこの噺にあるような熾烈な戦いがあってしかるべき存在のような気がする。近頃流行りの不倫なるものも、そんな熾烈な戦いをテーマにテレビで盛んに取り上げられている。世の中男と女。いつの世も同じなんですね。文樂師にもこの様な実体験が勿論あったのは、御案内の通り。その為に実にリアルな旦那と、本妻とお妾さんが描かれている。軽い噺だが、こんな『悋気の火の玉』は文樂師しか出来そうもない。また、この噺の枕が実にいい。どこまでが枕かどこから本篇か分らぬ程、溶け込んでいる。
時代設定:明治大正時代であろう。
舞台:花川戸の鼻緒問屋『立花屋』。根岸の御妾宅。浅草大音寺前。
登場人物:『立花屋』の旦那、その女房、お妾さん、その婆ァや。『立花屋』の番頭、伯父さんの谷中三崎木蓮寺の和尚。
ベストテイク:「悋気の火の玉…2」。絶品である。