三遊亭圓生音源データ
おせつ徳三郎−1
1.TS-02523A1
2.不明,TBS
3.23:31
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、昔、日本橋の、えー村松町と申しますあの辺は、刀屋さんと言うものが、大変多ございまして刀剣商。軒を並べて、えー刀屋さんがずらりとあった位で「これこれ何をしているんだな。表を見ないで水を撒く奴があるか馬鹿。どォも、相い済みませんでございますまァ、えーお召し物が濡れまして」「いぇ、な…、何、宜しいんでざいます。あのゥ、刀を戴きたいと思いまして」「アーァ、えーお客様でさあ、どうぞこちらへ、気を付けて掃除をしなきゃァしょうがないゥーそっちへ行ってろ。えー、どうぞ、どうぞまあ、えー、お掛け下さいまして。お刀をへいへい。えーどう言う何でございますか」「いぇー、何でも宜しいんでございますが、どうかめちゃめちゃに切れるのを欲しいン」……
6.「刀屋」の口演である。再放送の際に何か所かカットされている様である。
7.TBS R お好み名人寄席 放送録音 1972.1.27
8.「お好み名人寄席」の放送では、テープの再生スピードが大分速くなっていた。上記タイムは修正したタイムである。
おせつ徳三郎−2
1.TS-02923D2
2.(1965.7.22),TBS
3.27:20
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、昔からこの、『恋変じて無情となる』と言う言葉がございますが。まァ無情が変じて恋となると言うのは、ァーッ少ないようで。まァお若いうちと言うものはその、ォーッ、色恋の為に、間違いが出来ると言う事は、ァッ良くあるもの「これこれ。何だな気を付けなさい水を撒くのはどうも。相い済みませんでございます、飛んだ粗相を致しまして、乾いたもので早くお拭きして」「いぇ、何、宜しいんでございます。あのゥ、刀をォ、いただこうと思って」「オーォ、お客様だ。ハッ、どうも、えー飛んだ失礼を致しさァま、どうぞどうぞ、えー、どうぞ、お掛け下さいまして。えー、お刀をへいへい。えーどう言う何が宜しゅうございましょうか、またお拵えやなにかに、お好みなぞもございまして」「いえ、そんな事はどうでもいいんです。あのう、切れる刀が欲しいんで」……
6.「刀屋」の部分をを演じている。
7.TBS R 放送録音 平河クラブライブラリー
8.55分枠の特別番組の放送での一席である。
おせつ徳三郎−3
1.TS-02928D1
2.(1967.1.31),TBS,スタジオ,客なし,「落語への招待」
3.25:43
4.なし
5.出囃子 正札附
昔から『恋変じて無情となる』と申しますが。無情が変じて恋となると言うのは余り少ないようで「おいおい気を付けなくちゃァいけないよどうも相い済みませんで。えー、着物が、お濡れンなりましたんで、あのゥ、手拭を持ってお拭き」「いぇ、宜しいんでございます。あのゥ、刀を、戴きたいと思って参りまして」「オーォ、えーお客様で。いらっしゃいませさァさァ、えーいえまだまだ、宜しいのでございます。え、さァ、どうぞどうぞ、お掛け下さいまして。えー、えーどう言うお刀が宜しいのでございましょうか、えーお拵えやなぞに、御注文がございましょう」「いえ、それは、何でも宜しいんでございますが。切れる刀が欲しいんでございます」……
6.客なしのスタジオ録音である。「刀屋」を演じている。
7.TBS R 落語への招待 放送録音 細田氏ライブラリー
8.
おせつ徳三郎−4
※レコードの演題は「刀屋」。
1.TS-12506C1
2.1976.3.31,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百六席」
3.41:06
4.CS.60AG-565,22KG-159(CT),SR.SRCL-3820(CD)
5.出囃子 待つ宵は 受囃子 有難いぞえ
昔この元禄時代に、大変に心中と言うものが多かったそうで。上方では近松門左衛門、この人が心中物を書き、また江戸の方では宮古路豊後之掾と言う人が、謡いましたのでこれを豊後節と言いました。後に、これを聞いて心中をする者が増えていかんと言うので、政府から止められたと言いますが。どうも心中と言う名前があんまりいいんで、死にたがるン。これはいっその事名前を変えたら良かろうと言う。『相対死』と言う名前を付けたそうですが。ェヘッ名前を変えたって駄目ですねこりゃァ。えー監獄が刑務所になったって拘置所ンなったって、じゃ悪い事をしないかってぇーやっぱりそうはいかないン。ウーどうやったところで、流行るてぇとどうもそれ、心中なんてぇものもしたがりますもので。えー大体この豊後節なんと言う物はどんなもんなんですか、無くなってしまった物で分りませんが。余程小さい声で唄ったらしいんですね。『蚊柱の方が大きい豊後節』なんと言う、川柳がありますが。『豊後節隣り鍛治屋で聞き難い』なんと言う。なるほど小さな声で、唄っているのに隣りで「トンテンカントンテンカン」なんてんでやられた日にゃァこいつはまァ、一寸邪魔ンなるでございましょうが。『恋変じて無常となり、無常変じて恋となる』と言いますが、無常が変じて恋となるてぇのは少のうございまして、まァ大抵色恋の間違いから、身を果たすと言う様な事が良くありますもので「あら、叔母さん、お出掛けなんですか」「あ、急いで出掛けなくちゃァならないんだよ。いいえお店行くんだよ」……
6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が中公文庫『圓生人情噺(中)』に収められている。徳三郎が身を寄せていた叔母さんの長屋の場面から演じている。レコードや出版物等では、圓生師は全て『刀屋』の名を使っているが、当方のライブラリーでは『おせつ徳三郎』、その下、刀屋として扱っている。
7.CS.22KG-159 CT COPY
8.「百席」には41分もの噺を異例として片面に収められているが、この辺の経緯がディレクターである京須偕充氏の『圓生の録音室』に書かれてあり面白い。
おせつ徳三郎・解説
「おせつ徳三郎」でも圓生師が演じるのは「刀屋」の部分である。前半は御案内のように「花見小僧」の題で演じられるが、「花見小僧」から「刀屋」までを通して演じられることは滅多に無く、圓生師も「花見小僧」は演じていない。従って本来は「おせつ徳三郎〜刀屋」と表記するべきところ、圓生師の「おせつ徳三郎」の場合は必然的に「刀屋」となる。さて、この「刀屋」には古今亭志ん生師の録音も残っているが、徳三郎が刀屋に説得される場面など、筋立てはほとんど変わらないのだが、志ん生師のものはどことなくおかしく、さほど真剣に止めに入っている様子が無いのだが、圓生師の場合はシリアスな人情噺になっている。もちろん圓生師の場合も色々とくすぐりが入っているのだが、色としてそう感じさせるのである。この様な人情噺の色合いの濃い落語の場合、この二人の噺の取り組み方やキャラクターの違いが、こんな所に良く出て来ているように思える。この事はどちらが良いだの何なのと言う問題でなく好き好みであるし、その様な違いがあるからこそ噺てぇものは面白い…、と言う事なのだが、良きライバルだった二人が結構意識して演出を変えていたのかも知れない…などと考えると妙におかしくなるがいかがなものであろう。
時代設定:江戸時代。
舞台:日本橋村松町にある刀屋店先、中木場大川端。
登場人物:大店の娘おせつ、その店の元使用人徳三郎、日本橋村松町にある刀屋主人、その連合い、刀屋の水撒き小僧、店の迷子探し人。
ベストテイク:時間的な事で丁寧な「おせつ徳三郎…2」か。