三遊亭圓生音源データ

おさん茂兵衛−1

1.TS-02897B1

2.(1968.6.14),TBS,朝日生命ホール,「まわり舞台」

3.27:35

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、人間には色々この、ァーッ、妙な癖のありますもので。えー昔からよく、ゥー物を嫌う方がありまして。えー御自分の極く嫌いなものと言う。えー、今の渋谷天外と言う人は、ァーッかぼちゃが大変嫌いでございましてね、あの方はもうかぼちゃを見ると、ぇー顔色を変えて逃げ出すと言う。こりゃァもう有名なァッ話でございますが。よく、えー女が嫌いだなんてぇ事をおっしゃる方がある。また、ァーッ御婦人でも「あたしは男は大嫌いよ」なんて、勿体ない事をおっしゃる方がありますけれども。えーこりゃもう、決してそう言うァー、ァーなには無いんだそうでしてね。あたくしの、知ってる方で大変「女嫌いだ女嫌いだ」とおっしゃって、でぇお宅ィ伺った事が「こんちは」「アーアー、来たのかいさあさあ」「えー、大変。お子さんが大勢」「アーアーどうもうるさくてまァ上がりたまえ」「えー、何すか御近所の」「いゃァ、ァー近所のうちの」「え」「うちの子だよ。僕の子だよアー。六人いるんアーどうも騒々しいんでね」「旦那の皆お子様で。本当の。ン旦那は、女は嫌いだとおっしゃってる」「アー女は嫌いでねぇ、エッヘヘしかし、家内は別だ」ってそんな事は無い。ァー本当の嫌いと言うのは、こりゃまァ無いと言って宜しいんでございましょうが昔、えー深川の櫓下と言う所が、盛っておりまして、えー深川七場所なぞと申しますが。ゥーンなかなか花柳界があすこは、ァー盛ったものでございますが。(白湯を啜る)櫓下と言うのは、まだその時分に非常に、エーーッ勢いがありまして。でこの、花柳界で、縮緬浴衣のお揃いが出来ると言う。で、『中島屋惣兵衛』と言う呉服屋があって、ここへ、注文がございまして。今は縮緬、お召しと言う様な物は、主に京都(きょうとう)でございますが、えー、その当時は、交通が不便でございますから桐生で、大抵の物はこしらえたもんだそうで。『機為』と言う織屋が取引先で、(ポン)ここィ使いに出そうと言うが、ここに奉公している茂兵衛と言う人が大変これが堅い。堅いばかりじゃァない女嫌い。女がそばに来てもぞっと寒気がすると言うどうもァー変な奴があるもんで。でぇーこの男ならば、間違えが無かろうと言うので、主人から三十両という金を預かりまして、これから、桐生まで行こうと言う今のように、交通が便利でございません、いずれも草鞋履きで歩くんでございますからなかなか捗りませんもので……  ……サゲ=自分の亭主とこの人の心と比べて見たなら ホ雪と墨の相違。道ならぬ事ではあるが、茂兵衛さんと一緒にいて、どうか三日でもいいから添遂げたいと、おさんの心がここでがらりと変わりまして、手に手を取って遂電を致します。恋の馴れ初めでございます『おさん茂兵衛』と言う一席だけでございます。お時間が参りました様で……

6.朝日生命ホールでの「まわり舞台」の録音。

7.TBS R まわり舞台 放送録音 野口氏ライブラリー

  TBS R 早起き名人会 放送録音 1986.12.6 (2テイクを編集)

8.「まわり舞台」と「早起き」の放送で、相互カットが有り、2本の音源を編集して復元した録音。

おさん茂兵衛−2

1.TS-02904C1

2.1976.9.28,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百席」

3.50:58

4.CS.60AG-560,SR.SRCL-3810(CD)

5.出囃子 聖天から四丁目 受囃子 露は尾花と

昔深川を巽の世界と言ったそうで、大変に繁盛したと言うのは、江戸府内と違いまして、本所深川は川向うになると言う。つまり、幾らか、江戸から離れる。そこでぇー、向こうでは一寸こういう事もしにくいが、こっちなら良かろうと言う様な事で。えー、それが為に見世物なぞでも、西両国と言いまして、浅草側の方では、一寸憚る見世物を、本所の方では構わずやったと言う。まそんな様な、幾らかくつろいだ気分が出ると言うので、遊(あす)びなぞにはまァいいと言う訳でございましょうが……  ……<深川七場所〜深川羽織芸者>……  ……深川仲町に『中島屋惣兵衛』と言う呉服屋あってここへ、祭りについて縮緬浴衣の誂えがある。えー、今ならばァ縮緬なんと言う物を染めるには京都(きょうとう)でございましょうが昔は、地理的にそれでは遠いと言うので、主に桐生なぞへ、注文をしたもんで。えー桐生の『機為』と言う織屋が取引先でございましてここへ、誰か使いに出さなければならない。茂兵衛と言う男がいる。年はもう二十六でございますが、これが大変に、堅い人で。第一女嫌いと言う。えー、女がそばィ寄っても、ぞっと寒気のする位嫌だったという。世の中には勿体ない奴があるもんで。えぇ良くありますね男嫌いだとか女嫌いだとか言いますがね。あんまり当てンならないのもある。……  ……<家内は別だ〜食わず嫌い>……  ……えー茂兵衛と言う人が女嫌い。こりゃァもう全く、女がそばィ来ればすぐ、当人も逃げ出してしまうと言う位。「ありゃァ少し、おかしいねぇ。えー、片輪じゃァねぇかい」なんてんで。色んな事を言われるが当人何と言っても、女嫌いだと言うので、一生懸命に働いているもう、えー一二年経てば番頭にもなれようと言う訳で、主人も大変信用しております。で今度の使いにはこりゃァ茂兵衛が一番良かろうと言うので、三十両という金を持たして、江戸を発ちまして。……  ……サゲ=自分の亭主とこの人の心と比べて見たならば雪と墨の相違。道ならぬ事ではあるが、茂兵衛さんと一緒になりもし困った時は三味線を手にし門付けをしてなりと、この人とどうか添遂げたい、と、おさんの心がここでがらりと変わりまして、手に手を取って遂電を致します。これが為に上尾の三婦が切腹をするという、『おさん茂兵衛』、恋の馴れ初めでございます。

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語4」に収められている。

7.CS.60AG-560 DISC COPY

8.

おさん茂兵衛−3

1.TS-12573D1

2.不明

3.28:19

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、昔からこの、ァー良く、好き嫌いと言う事がございますが、えー、ェーッどうも、ォーッ男でいながらァッ女が嫌いだとか、御婦人でも「あたしはどうも男は好かないわ」なんという、もったいない事をおっしゃる方がありますけれども。まァ本当にその男嫌い女嫌いと言うのは、どっか、アーこら異常が無ければ無いと言って宜しい訳でございますが。えーわたくしの、ォーッ、知ってる方でございますがこの方は大変女がお嫌いで、「どうも女てぇものは汚らしい」なんてな事をおっしゃって、でそのお宅ィ伺った事が……  ……<家内は別だ>……  ……奥さんだってやっぱり御婦人なんでございますが。ぇー昔のお話でございますが、深川仲町に、『中島屋惣兵衛』と言う呉服屋がございまして、えーここの手代の茂兵衛と言う人が二十六になりますがこれがまた大変女嫌い。女がそばィ来られても、ぞっと寒気のすると言うどうも、ォー世の中には変な奴があるもんで。「茂兵衛はあいつはどっかは片輪じゃないのか」なんと言う。色んな事を言われるが当人はもう何と言っても、女は嫌いだと言うので、もう御主人大事と、商売へ精を出しております。と、深川の櫓下がまだ盛んな頃でございますので、縮緬浴衣の誂えがございまして、えーその時分が縮緬、あるいはお召しと言う様な物は京都(きょうとう)は、遠いので、主にこの、桐生なぞで染めたもんだそうでございますが。桐生の『機為』と言う織屋が取引先。でここへ、誰を使いに出したものか茂兵衛なら堅くて良かろうと言うので、三十両の金を持たし、当人も、堅いし、御主人になるべく、入費を使わない様に、ィッ道中をしたいと言うので、途中も倹約を致しまして、江戸を発って丁度三日目。……  ……サゲ=金五郎の了見と命をかけてもと言う茂兵衛さん、比べて見たならば雪と墨の相違。道ならぬ事ではあるが、これは茂兵衛さんと添い遂げたいと、おさんの心がここでがらりと変わりまして、手に手を取って遂電を致します。上尾の三婦が切腹をするという、『おさん茂兵衛』、恋の馴れ初めでございます。お時間でございます。

6.データは不明だが、1965年前後の録音と思われる。

7.都家歌六コレクション

8.

おさん茂兵衛・解説

意外に高座に掛けている回数の少ない噺である。放送の記録は現在分かっている限りで1回であるし、ホールでの記録も4回と少ない。噺そのものも、これでおしまいなのかそれとも続きがあるのかはっきりしない。古い噺で舞台が上尾と言うのも珍しい。江戸時代でもこの様な三面記事風の恋愛物と言うのは好まれていたと言う証拠であろう。何時の世も男女の仲は分らぬもの、落語や芝居が時代を越えて生きるのはこんな所からなのかも知れない。

時代設定:江戸時代。

舞台:深川仲町呉服屋中島屋惣兵衛宅、上尾宿一膳飯屋、三婦親分宅、金五郎宅。

登場人物:深川仲町呉服屋中島屋惣兵衛、茂兵衛、権十、作助、三婦親分、その子分彦、政兄ィ、金五郎、女房おさん。

ベストテイク:若干のはしょりはあるものの、やはりライヴで「おさん茂兵衛…1」を取りたい。但し、この音源は、「まわり舞台」で放送されたものがオリジナルで、「早起き名人会」で再放送されているが、「まわり舞台」の録音に放送時間の関係でカットがあり、「早起き名人会」で再放送の際、その時のテープでなくカット無しのオリジナルテープを持ち出されたのだが、こちらの放送の際も一部カットされてしまい、そのカットされた部分が夫々異なると言う大変厄介な物になってしまっている。「おさん茂兵衛…1」で紹介したテイクはこの双方を再度編集して現段階での完全復刻版としたものである。但しどちらの録音を所持していたとしても噺の筋立てが変ってしまう程の物ではないので御心配なく。

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