三遊亭圓生音源データ
御神酒徳利−1
※上・下に分けて口演
1.TS-02515A1
2.(1973.1.25,26),ニッポン放送,ニッポン放送スタジオ,「演芸大行進」
3.43:53
4.Ca.C13G-0027,C18G-0326,PN.(20P-2032),PC.18P-60022(CT),PCCG-00066(CD)
5.出囃子 正札附
えー、昔からこの、間がいいとか悪いてぇ事を良く申しますが、えー人間と言うものは一つ間がいいと、ォッ、また、とんとん拍子に行くと言いまして、表へお出ましんなり、(白湯を啜る)自動車へ乗りたいなと思うとタクシーがそこへすうっと、来て止まる。でこれへ乗りまして、交差点の手前まで、「あァー、ゴーストップん所でありゃ引っ掛かるな」と思ってるとこれがすうっと青ンなりまして、えー行く先々、青で、ノーストップで向こうへ行って、料金を払って降りようとすると、足元に、五千円札が落ちていたり。自動車に乗っかって、儲かったなんまそんな事しちゃいけませんけれど。ンーまァ人間は間が良くなければいけませんでその言葉に因んだごく、お目出度いお噺で。馬喰町一丁目に刈豆屋吉左衛門と言う、旅籠がございまして。えー取締り、と言う訳でございますが。このォー、刈豆屋には、将軍家から拝領をしたと言う、えー銀の葵の紋の付きました御神酒徳利が一対ございまして。昔は大変この葵のご紋と言うのは、大切に致しましたもので。も自分のうちの宝と言うので、出しますのが年に一度、十二月の十三日、えー煤取りと言うこりゃまァ年中行事でございまして今で言う大掃除。大勢手伝いの者も参りまして例年のお手伝いで「あァどうも御苦労様で、じゃお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様と音頭を取りながらバタバタバタバタ、掃除が始まる。通い番頭の、ン、善六てぇ人が、ダー台所に水でも飲みに来たんでしょうがひょいっと見ると、その大事な徳利が転がっているん…… ……(上のサゲ=まァとにかくねぇ、色んな相談はねぇ、もう時間も来た様だから、ね、明日の晩に続いてあたしがゆっくり話をするから」……拍手 下=「だけども大丈夫かなァそう」「−大丈夫かって、うーんとにまァお前さん男の癖に憶
病だねえ……
6.ニッポン放送の「演芸大行進」の公開録音。上が終っても圓生は高座を降りず、ディレクターの代わり高座の上から手を回して拍手させたと言う。この録音はその後何回か再放送されている。
7.ニッポン放送 演芸大行進 放送録音 1973.1.25,26
8.当方のライブラリーに残っている録音は上と下を編集して一本にしてある。上記タイムは編集したタイムである。上のサゲと下の頭は佐藤氏ライブラリーのオリジナル放送録音から採った。
御神酒徳利−2
1.TS-02611B1
2.1976.11.29,TBS,国立小劇場,落語研究会第103回
3.43:40
4.パイオニア.EE-012(LD),SCHWAN.SRVT-3918(VT)
5.出囃子 正札附
えー、昔からこの、えー運がいいとか悪いとか言いますが、また、ァーッ、間のいいと言う「あの人はどうも、間がいいねぇ」なんてな事を言ってね、えー、人間は間が悪くちゃァいけませんで。まいい事があればとんとん拍子にそれからそれへとまた、いい事も重なると言う、ゥー訳でございましょうが。えー、昔このォ、馬喰町に旅籠屋と言うものが、ずらっと並んでおりまして。えーこれはまァ他にはございませんで、えー、『御百姓宿』と申しまして、(チン)八十二軒でございますか、えーこれの取締りをしておりますのが、刈豆屋吉左衛門と言う。(白湯を啜る)この人は、家康公に、ィッ三河の国から付いて、江戸と言う所へ参りまして「旅籠屋渡世のお許しを願いとうございます」と言う。でそこで、えー御神酒徳利、葵の紋の付きましたものをこれをその戴きまして、自分のうちの宝であると言うので、昔はまァこの葵のォー、ご紋の入ったなんと言うものは、大切(だいせつ)に致しましたもので。出すのも年に一回でございまして、十二月の十三日、仙洞御所を始めとして煤取りと言う、今で言う大掃除。こりゃもう年中行事でございますので。刈豆屋へ大勢手伝いに来る。「例年のお手伝いで」「あァどうも御苦労様で、じゃァ皆さんお願い申しますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様てんで音頭を取りながら、陽気にこの掃除が始まりまして。と、(ポン)通い番頭の、善六てぇ人が台所ィ出、まあ水でも飲みに来たんでしょうが見ると、大事なその、御神酒徳利が転がっているん……
6.国立小劇場の落語研究会の高座。レーザーディスク化されている。落語研究会では、第10回にも口演している。
7.TBS・TV 落語特選会 放送録音 1977.4.30
8.御前口演のお陰で、長編にもかかわらずあちこちの落語会で演じているので録音の数が多い。
御神酒徳利−3
1.TS-02974A1
2.1972.1.14,NHK,イイノホール,東京落語会第151回
3.33:27
4.Po.POCN-1132(CD)
5.出囃子 正札附
えー、人間はこのォ、ォーッ、運がいいとか悪いとか申しますが、やはりその、ンー今の言葉で言うと『ついている』なんてぇ事を言いますが。えー、間がいいと言う、まそういう時はとんとん拍子に後から後から、えーいい事が続くと言う訳でございますが。えー、この、ォーッ間がいいと言う言葉に因みました、お目出度いお噺でございますが。馬喰町一丁目に、刈豆屋吉左衛門と言う、ァーッ旅籠屋がございまして、ェ昔はこの江戸に出ました者は、(白湯を啜る)馬喰町でみな、ァ宿をとったものだそうで。『八十二軒御百姓宿』と言うものが、定められておりまして、えーまァ刈豆屋はその、ォーッ取締りと言う様なもので。ここのうちに、ぇー銀の御神酒徳利が、一対ございましてこれは、将軍様から、拝領した品である、葵の御紋が付いていると言うので、あらァ大変大切に致しまして。出しますのは年に一度でございまして、十二月の十三日、煤取りと言うまあ今で言う大掃除で。こりゃまァ年中行事の一つでございますが。大勢、手伝いが参りまして、「例年のお手伝いでございます」「あァどうも御苦労様で、じゃァ一つお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様てんで音頭を取りながら、掃除が始まりまして。通い番頭の善六てぇ人が台所ィ出てひょいと見ると、どうした事か大事なお徳利がそこィ転がっているん…… ……サゲ=こんなに鼻ァ槇んだ日にゃ鼻ァ無くなっちまう」そんなに鼻ァかめやァしないが。これから大阪(おおざか)ィ参りまして不思議に、算盤でまた娘の病気が直ると言う、御神酒徳利でございますが、お時間が参りましたようで……
6.東京落語会の高座。神奈川宿までの口演である。
7.Po.POCN-1132 CD COPY
8.1972.3.5に放送された時の録音は、女房に口上を教わる所や、お鍋が荒神様を汚したという所など、かなりカットされていた。その後1979年頃再放送された時に、かなりのカットが復活したものの、別の部分の細かなカットが再び行われてしまい、この2つの録音を編集して再構成を行った。初放送時のものは約29分、再放送のものは約32分に縮められていた。しかしその後オリジナル・テープからCD化されたのでこの様な煩わしさは過去の物となった。
御神酒徳利−4
1.TS-02754A1
2.不明(1970〜1975頃),NHK,スタジオ,客なし
3.29:39
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、人間はこの、間のいいと言う事がございますが、ウーン、それに因みました極く、ァッお目出度いお噺で。馬喰町一丁目に、ィー刈豆屋吉左衛門と言う旅籠屋がございまして。えー、先祖が、家康公から拝領したという銀の葵の御紋の付きました御神酒徳利を一対、こりゃァもう自分のうちの、ォーッ家宝と言うので、出しますのも年に一度、十二月の十三日、仙洞御所を始めと致しまして、煤取りと言う、ま今で言う大掃除でございますが、こりゃまァ、ァー大家でございますから大勢手伝いに、「例年のお手伝いで」「あァどうも御苦労様で」目出度目出度の若松様と音頭を取りながらバタバタ掃除が始まる。通い番頭の善六てぇ人が、台所ィ水でも飲みに来たんですかひょいと見ると隅の所に、大事な徳利が転がっている…… ……サゲ=こんなに鼻ァかんだら鼻が無くなっちまう」ンなに鼻ァかめやしない。これから、大阪ィ参りまして不思議にこの占いで病気が直ると言う、御神酒徳利でございますが、お時間でございます。
6.スタジオでの収録で客なしである。時間の関係で、神奈川宿までの口演である。
7.NHK TV 放送録音 佐藤氏ライブラリー
8.
御神酒徳利−5
1.TS-02843A1
2.1975.1.28,東横劇場,東横落語会第169回
3.44:55
4.AP.KSZ-2089(CT)
5.出囃子 正札附
えー、お寒い折りでございますが、御贔屓を頂きまして有難く、ァー御礼を申し上げまして。えー、昔から良く「あの人は運がいい人だ」なんてぇ事を言いますが、まァこの運と言う物は、ァーどういう所に有るもんでございますか、えーなかなか、ァーッ目に見えないもので。それを掴むと言うことは、なかなかこれ難しい訳で。えー、あたくしの、ォッ、小さい時分でございましたが、ゥーン、間のいいと言う言葉が流行った事がある。「なんてぇ間がいいんだろう」なんという。えー流行り言葉としても大変景気のいいもので「間がいい」と言う。でその言葉に因みました、お目出度いお噺でございますが。馬喰町一丁目に、刈豆屋吉左衛門と言う旅籠屋がありまして。(白湯を啜る)ま今は何処れへ参りましても旅館と言うものは、えー自由に建てられますが、昔はそういう訳にはいかなかったんだそうで。ぇー馬喰町と言う所に、宿屋と言うものは、固まっておりまして『八十二軒御百姓宿』と言う。えー刈豆屋と言ううちはまァその取締りの様なもので、将軍家から拝領したと言う、銀の葵の紋の付きました御神酒徳利が一対ある。昔はこの葵のご紋と言うものは大変、大切に致しましたもので。もう自分のうちのォー宝であると言うので、出しますのが年に一度と言う。十二月の十三日、仙洞御所を始めと致しまして、煤取りと言う、ま今で言う大掃除でございますが、こりゃまァ年中行事の一つで。大家でございますから大勢手伝いの者が来る。「えぇ例年のお手伝いでございまして」「やァどうも御苦労様で、じゃ一つお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様と音頭を取りながら景気良く掃除が始まって。通い番頭の善六てぇ人が、水でも飲みに来たんですか台所ィ出てひょいと見ると、大事なお徳利てぇのがそこィ転がってるん……
6.東横劇場・東横落語会の高座。東横落語会では1962年1月にも口演している。
7.AP.KSZ-2089 CT COPY
8.この噺は、主だった落語会の録音がずらりと揃っているが、これはその中でも圓生師に不思議とはまる東横落語会の録音。
御神酒徳利−6
1.TS-02882A1
2.1977.1.21,横浜教育文化センター,横浜落語会第4回
3.46:41
4.To.TY-60023
5.出囃子 正札附
えー、お寒い折でございますが、御贔屓を頂きまして有難くァッ、御礼を申し上げまして。えー、独演会と言うので、えー、東京でやっております特殊の会は、何かこう一つの、ォッ型に決っておりますので、えーそれではお飽きが参るだろうと思いまして、えー時折は、ァー独演会とか二人会、ま色々にィ、形を変えた方が、えーその、ォーッ会毎に、様が変わると言う訳でございますが。えー良い塩梅にまァ、御当地へも、こういう結構な会が出来ましたので、えーこれからどうぞ一つまァ、ァー宜しく、ァ御贔屓を願いまして。人間と言うものはそのォ、運不運なんてぇ事を言いますが、あの人は運のいい人だとか悪いとか。えぇーっ間がいい人だとか悪いとかま色々でございますが。何でもその、ァーッ間のいいと言う事は結構だが、えー一つ間違うてぇと、もういい事がこの、ォーございませんでね。えー一寸、車で、急ぎの用があるからと言うんでお出ましになる。…… ……<信号の運不運>…… ……タクシー代を払って、千八百円儲けたなんという。えぇーっいえこりゃ内緒の話でございますけれど。まそう言う間のいい時と悪い時と言うものは幾らもありますもので。えー今晩申し上げますお噺は、この間のいいと言う、大変御目出度い事でございまして。馬喰町三丁目に、(白湯を啜る)刈豆屋吉左衛門と言う、旅籠屋でございますが。えー当時は、江戸ィ出ました者は皆この、馬喰町へ宿をとったもんだそうで。家康公が江戸城、ウーンあれへ入城になりまして、でこれから江戸と言う土地が開けるという、三河の国から大勢、付いて来た者がありまして、夫々功の有る者を呼び出して褒美と言うので、刈豆屋の先祖も、付いて参りましたので「何かその方望みがあるか」と言う。「いえ、えぇー別にこれと言う望みはございませんが、江戸もこれから追い追いに開けて参りますが、旅籠屋と言う者がございませんので、こちらへ出ました者がさぞ不自由を致す事でございましょうから、旅籠屋渡世のお許しを願いとう存じます」と言う。ぇそこで、えー『八十二軒御百姓宿』と言うものを決めまして、まその取締りと言うものを、この刈豆屋が言いつかりまして。えー、このうちに、将軍家から拝領したと言う、銀の葵の紋の付きました御神酒徳利が、一対ある。まその当時、葵のご紋と言うてぇと大変大切に致しましたもので。自分のうちの宝であると言うので、出しますのも年に一度と言う。十二月の十三日、仙洞御所を始めとして、煤 謔閧ニ言うものを致します。今で言う大掃除。大家でございますから大勢手伝いの者が来る。「例年のお手伝いでございまして」「あァどうもみなさん御苦労様で、どうぞ一つお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様てんで音頭を取りながら、掃除が始まりまして。で通い番頭の善六てぇ人が台所へ、水でも飲みに来たんですかひょいと見ると、大事な徳利がそこィ転がっているん……
6.横浜落語会「圓生独演会」の録音。馬喰町一丁目が、この日は三丁目になっている。
7.To.TY-60023 DISC COPY
8.枕の部分から細かく演じている。横浜落語会へのメッセージはもう少しあった様だがカットされている。
御神酒徳利−7
1.TS-02898A1
2.1967.1.14,TBS,人形町末廣,「TBS名人会」
3.45:12
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ昔からよくこの、運がいいとか悪いと言う、ま人間はァッ、運が悪いと言う事はいけませんが。しかしィ、ィーどういう事が、えー本当の運なんでございますかこりゃ一寸、分りません事で。えー後で考いて「アーあの時が、俺の、ォー運だったのか」なんてぇ事が、あるもんでございますが。(白湯を啜る)まあ下種の知恵と、ァー猫の金は後から、ァー分るなんてぇ事を言いますけれども。ンーしかし、この運を、上手く掴まいるか掴まえないかと言う所で、人間と言うものが、ァ幸不幸がございますが。えー、まァこらァ色々、ォー運と言うものもあるんだそうで、上運だとか中運だとか、ァー下運なんと言いまして。…… ……<運について>…… ……ンー、兎に角、ま人間と言うものは、ァッ間のいいてぇ事を言いますが、「あの人はどうも間のいい人だねぇ」なんと言う。まァいい事が出来ますとそれからそれと思わぬ、その、ォー幸がわいてくると言う。えーその、言葉に因みました極くお目出度いお噺でございますが。馬喰町一丁目に、刈豆屋吉左衛門と言う旅籠屋がありまして。ま今はどちらへ参りましても旅館はございますが、昔は江戸ィ出ました者は、馬喰町で皆宿をとったものだそうで。えー徳川家康と言う方が三河の国から、江戸へ、御入城になりまして、三河の国から、お供をして参りました者も多くございまして。ぇ夫々功の有る者を呼び出して御褒美と言う。刈豆屋の先祖も、ゥ一緒に参りましたので、「その方も何か望みがあれば叶えて遣わすが何なりとも申せ」「有難う存じまして、あたくしは別にこれと言う、望みはございませんが、江戸と言う土地が追い追いこれから開けて参りまして、ぇーこちらへ出て参りました者が旅籠屋が無い、無いと、行き暮れて難渋を致しますのでどうぞ、旅籠屋渡世のお許しを願いとうございます」「ン、げに神妙である」と言うので、えーこの時に御褒美として、銀の葵の紋の付きました御神酒徳利を、一対頂きまして。で昔はこの葵のご紋と言うものは大変大事にしたものだそうで。えー自分のうちの宝であると言うので、エエーッ、これを出しますのは年に一度でございまして。仙洞御所を始めとして、えー煤取りと言うものを、十二月の十三日に致します。今で言う大掃除。昔は煤掃き、あるいは煤取りと申しました。大家でございますから大勢手伝いに参りまして。「えー例年のお手伝いでございまして」「あァどうもみなさん御苦労様で、じゃ一つお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様てんで音頭を取りながら、掃除が始まる。通い番頭の善六てぇ人が、まァ台所へ、水でも飲みに来たんでしょうが、ひょいと見ると、その大事な御神酒徳利が、転がっているん……
6.人形町末廣からの生中継で放送されていた「TBS名人会」の録音。「早起き名人会」 で、1982.2.20,27に再放送された。
7.TBS TV TBS名人会 放送録音 野口氏ライブラリー
8.「早起き名人会」で1963〜64年の録音と言っていたのは誤りである。
御神酒徳利−8
1.TS-02925C1
2.1974.10.21,CBS・ソニー,スタジオ,「圓生百席第十五席」
3.51:36
4.CS.SOGZ-113,FCLY-1,SKJB-25(CT),FKLY-1(CT),FKLA-95(CT),22KG-157(CT),
SR.SRCL-3815(CD)
5.出囃子 笹や笹々 受囃子 煤掃き、目出度目出度の若松様
昔からこの人間は、運不運と言う事を申しますが、まァその人の、生まれつきもございましょうがやはり、これと言う時に運を掴むと言う人が、出世をすると言う。ぇ肝腎なとこで取り損なったりなにかする。まこれはやはり、えーその人の持って生まれたものもございましょうが、あたくしの子供時代に、「なんてぇ間がいいんでしょう」と言う言葉が、大変流行った事がありましてね。ぇ一寸した冗談に「まァなんてえ間がいいんでしょう」なんてな事を言って。ぇ人間と言うものは間が良くなくちゃァいけません、いい事が出来ればそれから次から次と、ぇー重なって来ると言う訳で。ぇその言葉に因んだと言う極く、お目出度いお噺でございまして。馬喰町一丁目に刈豆屋吉左衛門と言う、旅籠屋がありまして。うーん昔はこのォ、江戸ィ出ました者はみんな、馬喰町へ宿を取りましたもので、ぇぇ『八十二軒御百姓宿』と言うものが決っておりまして。ぇこれは、徳川家康公が、三河の国から江戸へ、御入城になります。三河の国から大勢付いて来た者もございまして、刈豆屋の先祖も、「何かその方望みが有らば、叶えてつかわそう何なりと申せ」「はい、有難う存じまして。あたくしはこれと言うー望みはございませんが、これから江戸と言う土地が追い追い繁盛して参りますと、行き暮れて、旅籠屋がございません為に難渋を致しますのでどうぞ、この渡世をお許しを願いとう存じます」「ン、げに神妙の至りである」と言うので、刈豆屋吉左衛門と言う者がまァ旅籠屋の取締りと言う様なもので、馬喰町へその業を許したと言う訳で。ンーこの時に、将軍家から拝領致しました銀の葵の紋の付いた御神酒徳利が一対。昔はこの葵のご紋と言う物は大変大切に致しましたもので、自分のうちの宝であると言うので、出しますのが年にたった一度、ぇー十二月の十三日、仙洞御所を始めとして、みなこの煤取りと言うものを致します。今で言う大掃除。刈豆屋も大家でございますから大勢手伝いの者が来る。「例年のお手伝いで」「えー手前もお手伝いに上がりまして」「やァどうも御苦労様で、じゃァどうぞ一つお願いしますよ」「へいっ」目出度目出度の若松様と音頭を取りながらバタバタバタバタバタバタ掃除が始まる。通い番頭の善六てぇ人が、台所出てひょいと見たン。水でも飲みに来たんですが。ォーの、大事なお徳利がそこィ転がっている……
6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語3」に収められている。
7.CS.FKLA-95 CT COPY
8.
御神酒徳利・解説
御存じ、御前口演演目。サゲが大変おめでたいという事で選ばれたそうだ。この噺も、柳派と三遊派と少々内容が異なり筋立てが異なる。柳派のものは先代桂三木助と当代柳家小さんが演じている。神奈川の宿で『先生が紛失した』とサゲるもので、圓生のものは人物設定が異なり、大阪まで行き大成功となる。もっともサゲは圓生師の創作だそうで、元々はどんなサゲだったのかは榎本滋民氏の領域である。御前口演以来落語会での注文が多く、また同様に放送での注文が多かった為に長い噺なのに各落語会の音がずらりと揃っているのは嬉しい。私ごとだが、神奈川宿で女中の出身地が川井村になっているが(圓生全集で河合村となっているのは誤り)これはうちの親父の田舎であり現在の旭区川井本町、『三ッ沢壇林』で鳴る寺の鐘は私の家の近くの豊顕寺の鐘であり、この辺妙に身近に感じる噺である。
時代設定:江戸時代。事件は十二月十三日に起った。
舞台:馬喰町一丁目刈豆屋吉左衛門宅、番頭善六宅、神奈川宿新羽屋源兵衛、大阪鴻池宅。
登場人物:刈豆屋吉左衛門、通い番頭善六、その女房である熊谷先生の娘、鴻池の支配人、刈豆屋下女おなべ、新羽屋源兵衛、新羽屋おかみ、新羽屋女中、新羽屋源兵衛が地守正一位稲荷。
ベストテイク:御前口演した位なのでアベレージは非常に高く、どれも良い出来。あえて選ぶとすれば、御前口演直後に放送録音され、客にも恵まれた「御神酒徳利…1」を採る。