三遊亭圓生音源データ

お藤松五郎−1

1.TS-02612C1

2.1968.8.28,東横劇場,東横落語会第92回

3.40:10

4.To.TY-40066

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、お暑い折からでございまして、お運びでございまして有難く、ァー御礼を申し上げまして。まァこの、昔から、ァーッ、御婦人がァー色気の水上と言う事は、ァーッ良く申し上げておりますが、とかくまァこのいい女なんと言うと、問題になりますもので。昔はこの、並び茶屋と言うものがございまして、浅草でございますとかあるいは、アー両国なぞは、ォらーもう盛んで、水茶屋と言う今で言う、まアー喫茶店(きっつぁてん)でございましょうが昔は、ァー茶屋へ休んで、このオー、お茶を召し上がると言う訳で。『水茶屋の女に惚れた腹具合』なんと言う、川柳がございますが、えーあすこにェいい娘がいるからなんてんで、えー無闇に通ってこのお茶をガブガブ飲んでね、えーそれが為にまァ、ァーッ食事はとれませんでおなかがだぶついちまって、栄養失調になったりなにかする人があったのかも知りませんが。両国の、並び茶屋で、いろはのお藤と言う、まそう当時一枚絵に出たと言う、美人でございまして。ま柳橋にいい芸者は幾らもありましたが、お藤の前へ出ますてぇとこりゃァもう、ァーまるで、太陽の前の星になってしまいまして、(白湯を啜る)鼈とお月様、線香花火と水素爆弾程違うと言う、えらい違いでございまして。えー、誠にどうも、器量も良し愛嬌があるという。で、このお藤には旦那がありまして、横山町二丁目に、店を持っております道具屋の、万屋清三郎と言うまァ道具屋と言う、今で言う骨董商でございますが昔はまァ、おしなべて皆、ァ道具屋と申しましたもので。えー、おっ母さんと二ァ人柳橋の裏河岸に住んでおりまして、空模様が悪いと言うので、店を早く終いうちへ帰って来て、仕出し屋から、二品三品取りまして、おっ母さんと二階でちびちび飲んでいたが、おふくろの方はすぐに酔いが出て「どうもあたしはね、大変酔っちまったからお前一人で飲んでおくれあたしは下ィ行くよ」おふくろは、降りて、しまいましたので、取り残されたお藤が手持ち無沙汰に一人でちびちびやっていると、雨がバラバラバラバラ降り出した。駆け込んで来たのが、菅野松五郎という一中節の三味線弾きで……

6.東横劇場での東横落語会の録音である。後半は下座が入り芝居がかりになる。

7.To.TY-40066 DISC COPY

8.東横落語会では1975年の176回でも演じているが、この録音は1968年のものである。

お藤松五郎−2

1.TS-02901B1,VT=TV-39014-1

2.1979.5.31,TBS,国立小劇場,落語研究会第133回

3.41:10

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、昔はこの、両国と言う所が大変に、盛りまして。えー、もっとも今両国と言うと、ォーッ本所の方だという、えーあすこに両国駅と言うのがございますから、両国は本所の方だけだと言う、お若い方なぞは、ァーおぼしめしがございましょうが。そうではなく、浅草橋から、ウゥーン、両国の橋の間を、ァーあすこを両国と言うン。えー本所の方は向う両国と言ったんだそうで。向う両国と、こちら側とは、またァ見世物やなにかが出まして、両方とも盛りましたが。(白湯を啜る)本所方の方は緩やかでございまして、俗に言う因果物なんと言う、えーそういうウーッいかがわしいものでも何でも、興行が出来ましたが、ところがこちら側は喧しかったと言うのは、将軍様がもし、おなりンなる様な事があると、お目障りになると言うので、ェー大変喧しいンだそうで、えー本所の方には、金猫とか銀猫と言う、これは今で言う私娼でこざいますが、柳橋の方には、えー、こりゃァまァ、芸者がおりますので、そう言った様に、向こうとこちらでは趣が違うと言う。……  ……<並び茶屋>……  ……お茶屋には綺麗な娘を並べて、客の足を引こうと言う訳で、中でいろはのお藤と言う、これは一枚絵にも出ました、美人でございまして。ンー柳橋に当時、随分いい芸者もおりましたが、お藤の前へ出るてぇと、丸でその、光を失ったと言う。太陽の前の星の様に、鼈とお月様てぇ奴でね、えぇ線香花火と水素爆弾程違うと言う。らァどうも実に、大した美人でございまして。えー勿論葭簀っ張りと言うので、雨が振るてぇとあれは商売は出来ませんで、店を終うと言う訳で。でこのお藤と言う女は、年は十九でございますが、大変に、お客様がここは入って繁盛をし、また、暮らしも贅沢でございまして、ぇー柳橋の裏河岸におりましておっ母さんと二ァ人、ウゥー、贅沢な暮らしも出来ると言うのは、お藤には旦那がありまして、横山町に店を持っている道具屋の、清三郎と言う人がある。えー道具屋と言いましても、今はあの骨董商と言うものは別でございますが昔は、いいものも悪いものも、こりゃァおしなべて道具屋さんと言ったもンで。万屋清三郎と言うこれが旦那でございますので、えーお藤は大変、他の女から見ると、お贅沢でございます。もう今日は空模様もおかしいから早く店を終おうと言うので、うちへ帰ります。風通しのいい二階で、おっ母さんの好きなものを二品ばかり取りまして二ァ人で、お酒をちびちび飲み始めたが「あたしゃ @もう酔ったよ、お前一人で飲んでおくれあたしは下で横ンなるから」おっ母さんが下へ降りちまう。どうー、どうも一人てぇのは面白くない手持ち無沙汰でどうしようかてんで、もたもたしている。雨がバラバラバラバラ降り出しまして。路地ィ駆け込んで来たのが、菅野ォー松五郎という、一中節の三味線弾きでございますが……

6.国立小劇場の落語研究会の録音である。没後テレビで放映された。全て素噺で演じている。

7.TBS TV 落語特選会 放送録音 1986.8.18

8.

お藤松五郎−3

1.TS-02909C1

2.1974.10.22,75.3.31,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第十一席」

3.55:50

4.CS.SOGZ-110,SR.SRCL-3814(CD)

5.出囃子 はれて雲間に 受囃子 巽百景〜佃

昔この両国と言う所は大変に、盛りましたもので。えー、本所方を向う両国と申します。東両国。でこちらは、西両国でございますが、西の方は広小路と言いました。向うォと言う本所方には、えー垢離茶屋なんと言うものがありまして、水垢離をする時に、ここィ着物を預けるというお茶屋なぞがある。ぇこっちには並び床、えー並び茶屋と言うものが両国で最も有名でございまして。……  ……<並び茶屋>……  ……このォ並び茶屋に、いろはのお藤と言う、年は十九でございますが、これはその当時実に評判の、美人。柳橋の芸者も、これならばという器量のいいのが、お藤と並んで見ると、丸っきり、比べ物にならない、さながら太陽の前へ出た星の如く、えー線香花火と、水素爆弾程も違うと言う。ら大変なもので。でこのお藤と言う、女は、旦那がありまして、横山町に道具屋をしております、えー、万屋清三郎と言うこれが旦那でございまして。ま道具屋さんと言うと、今では、余りいいものを売らない様に思いますが、骨董商と言いますが、えー二通りあると言う訳昔はまァ、いいも悪いもおしなべて、道具屋と申しました。でこの万屋と言うのがなかなか大きな店でございますが、この旦那が、お藤を世話をしていると言う訳。柳橋の裏河岸におっ母さんと二ァ人、暮らしておりますが、なかなか贅沢で。もう今日はちょっと空あいが具合が悪いと言うので早く店を終い、自分のうちィ帰ります。仕出し屋から気にいった物を二品三品取り寄せ、風通しのいい二階でおっ母さんとお酒飲んでいたが、ンーおふくろの方はもうすぐいい心持ちンなって「あたしゃもうとても、この上は飲めないから、下で寝るからね、お前さんあと一人でおあがりよ」おふくろに、降りられてしまったのでお藤は手持ち無沙汰、一人でこうちびちび飲んでいる。雨がバラバラバラバラ降り出しまして、路地へ駆け込んで来たのが菅野松五郎という一中節の師匠。えー三味線弾きでございますが……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語3」に収められている。後半は芝居がかりで鳴り物が入る。

7.CS.SOGZ-110 DISC COPY

8.

お藤松五郎−4

1.TS-12512C1

2.1964.8.4,NHK,スタジオ,客なし

  付:対談、三遊亭圓生・須田栄

3.52:05,対談3:58

4.なし

5.出囃子 なし

えー、昔からこの、いい女とか、ァーッ、いい男と言う。まとかくゥ、ァッ問題になるもんでございますが。えー、以前はこの水茶屋というものが、盛り場にございましたそうで。浅草とか或いは両国ゥなぞは、もっとも有名でございますが。まお茶を召し上がると言っても今の様に、ぇコーヒーだとか紅茶なんと言う物が無い昔は、えー、普通のお茶でございますなこれを召し上がる。この店にはどうしても、若い綺麗な婦人がいると、お客様の足が自然と、ァッ集まると言う訳で。あんまりどうもご婦人だって、お年を召してね、七十何歳なんてぇ事ンなって来ると、も色気の方が、ァーッ無くなりますからまァやはり、エッヘン、えーっ若い者が騒ぐてぇ訳にいきませんが、ェそこへいくとやはり、ぇー婦人は、ァーッ、十、六七からでございますね、えー大変美しくなります。えーまァこの、昔は錦絵と言う物に、出ました様な、ァーッ、水茶屋という物の女が幾らもございましたが。中で、ェーッ、最も有名なのがあの、笠森お仙なんという、ウーン、あれは大変に、ィーッ、その当時、江戸で騒がれたと言う。でこの、お藤と言う女は、両国のならじゅェー並び茶屋の中で、『いろは』と言ううちで、ぇー店を出しております。年が、十九でございますがどうもこれがまた実にいい女で。……  ……<美人の条件>……  ……ま、万事に均整がとれておりまして実にどうも、何とも言えない、美人。えー、両国の裏河岸に住んでおりまして、おっ母さんと二ァ人、大変贅沢な暮らしをしております。と言うのは、店も、勿論繁盛は致しますが、えーお藤には旦那が有ります。横山町に店を、持っております、万屋清三郎と言うのが、これが旦那でございまして。(白湯を啜る)ぇー暮らしは楽でございますから、もう今日はお天気都合も一寸おかしいなんてぇと早く店をしまって、帰って来ます。おっ母さんと二ァ人好きな物を取って、風通しのいい二階でちびちび飲んでいる。そのうちにおふくろの方は年をとっているのですぐ、いい心持ちになって「あたしゃもう嫌だよ、付き合っちゃもういられないから、下行って寝るからお前さんね、ゆっくり飲んでおいで」おふくろが下へ降りてしまう、さあお藤は手持ち無沙汰で、一人でちびちびやっている。雨がバラバラバラバラ降り出しまして、路地ィ駆け込んで来たのが、菅野松五郎という一中節の三味線弾きでございますが元は侍で……

対談:アナ「成程、ォー、今ァ聞いておりましてね、ずーっと最後まで引っ張ってかれましたが」須田「そうですね」アナ「つまりそれが遊びが無いと言う」須田「そうなんですね、まあ惜しい事に、これは自分の欲で、どうもお疲れ様……五人斬りのツケの話〜噺の重点

6.客なしのスタジオ録音。後半は芝居がかりで鳴り物が入る。

7.NHK教育TV 古典芸能観賞 放送録音 1964.8.4 仲野氏ライブラリー

8.噺の前にも須田栄の解説がある。

お藤松五郎・解説

芝居噺である。林家も演じたが、出た所は一朝師で同じである。圓生師も、芝居仕立で演じた時と、全くの素噺で演じた時と二つの演り方があった。現在3本の録音があるが、国立のものが素噺で演じられており、他の2本は鳴物入りの芝居仕立である。いずれにしても芝居噺であるのでサゲは無い。ところで、この噺に限った事では無いが、『道具が回る、鳴物入りの芝居噺にあいなります、“お藤松五郎恋の手違い”と言うお噺でございます』などと切られると、この先がまだあるようで実に歯痒い思いがするが、筋はあっても実際に噺として演られた事が一体あったのかどうか、もしあるのなら聞いてみたいのだが…。こんな思いをめぐらすのは私だけだろうか。

時代設定:江戸時代。

舞台:柳橋お藤宅。葭町佃長、米沢町草加屋。

登場人物:柳橋の水素爆弾芸者お藤、そのおっ母さん、旦那万屋清三郎、情夫菅野松五郎、幇間五蝶、幇間三八。

ベストテイク:「お藤松五郎…1」は芝居仕立として、「…2」は素噺としてそれぞれのベストとしたい。

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