三遊亭圓生音源データノート

くやみ−1

1.TS-02866A2

2.1960.6.2,NHK

3.20:00

4.CS.20AG-736

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、毎度この、噺の方へは、ァーッ、変った奴が引き合いでございますが。えー御夫婦なぞで、おかみさんが大変この、ォーッしっかりしております。「あのおかみさんはどうもなかなか男勝りで、ェー偉いよ」なんてな事を言ってね。もっともまァこの良く言うから男勝り、悪く言いますと、ァー御亭主を座布団同様、尻に敷くこのォ、嬶天下てぇ奴でね。こういう亭主は人のいい方で「あの人はいいねぇどうも、何を言ってもにこにこ笑っていて結構人だよ」なんてんでね。まァ良く言うから結構人で、はっきり言うと、ォー馬鹿でございますがまこういうその、えー、おかしなのが、ァーッ、噺の方の材料で「何をしてるんだねぇこの人はァ。お入りこっちィさっさとさァどこをのそついてるんだねぇ。方々捜していたんだよ。大変な事が出来ているんだよ。旦那がお亡くなりなんだよお店のゥ。まァ本当にびっくりしちまったじゃないの、すぐに行かなくちゃいけないからお店へ行っといでよ。ねぇ、ちょいと、…ちょいと。ちぇっ…じれったいねこの人はもそもそしてんねぇ。亡くなったんだよっ」……

6.レコードのデータには1960年頃としか表記されていないが、番組調査の結果、元の録音はNHKラジオの6月2日に放送された物と思われる。演目総覧には良く放送で掛けていたとあるが、晩年には殆ど掛けていない。

7.CS.20AG-736 DISC COPY

8.圓生壮年期のライヴとして没後発売された5枚のアルバムの一つ。いずれも貴重な録音だが、この『くやみ』もこの録音しか残っていない。

くやみ−2

1.TS-12707C1

2.?,

3.27:58

4.なし

5.出囃子 中の舞

えー、ェーッ、ようこそ、ォーッ、お運びでございまして、えー誠に、ェーッ有難い事でございまして。『くやみ』と言う、えー、ウーッお噺でございますがまァ、くやみと言うと、ォーッ申し上げるまでも無く人間が死んだ時に、えー述べるもんでございますが。あんまり生きている間に述べられると嫌なもんで。もっともあたくしは一遍、生きた仏様へ、おくやみを言った事がありましたがどうも実にやりにくいもので。えー、盲人になりました、柳家小せんと言う、えーこれはまァ、ウーッ、明治時代から、ァーッ大正へ掛けまして、大変人気がありました人で。えー若い、ィッ噺家なぞはあこがれの的だなんてぇ事を言いましてわたくし共、このォ小せん師匠の所へ、噺の稽古ォに随分通いまして、何しろ、オーッ、大変この、いい男でございましたが、(白湯を啜る)吉原の方へだいぶ、ゥーッ、ウー通いましてね、勿論廓噺が大変上手かった。やはり商売上、ォーッ、経験をしなければならないと言う、あまり商売熱心なあまりに、えーエヘッ、悪い病気を引き受けたんですか、このォ、ォーッ両眼が、ァーッ見(め)えなくなりまして。白底翳と言う。……  ……<小せんの今晩死ぬ〜噺家の通夜>……  ……まァ全く我々同様なんてぇ事を良く言いますが、もう世の中をついでに生きていると言う様なね、ぼやーっとした奴が、アーッ我々の方の、立てもんと言う訳で「何をしてるんだねこの人は。どこへ行ってたんだよゥ。大変な事が出来て方々捜していたんだよ旦那が亡くなったんだってさ、まァびっくりしちまったじゃないか、お店にもすぐに行かなくちゃいけないしさ、おくやみに行っといでよ。ねぇ、ちょいと、亡くなったんだよ旦那が」……

6.どこかの落語会の録音らしい。

7.東海ラジオ 源兵衛太助寄席の旅 放送録音 1997.3.30 園部氏ライブラリー

8.

くやみ・解説

「圓生百席」の補遺として、没後5枚のLPとしてCBS・ソニーから貴重な録音が発売されたが、これはその中の一席である。寄席などでは良く掛けていたのかも知れないが、実の所は放送でも記録が少なく、今になってもこのLP盤のみの音源しか出て来ない。その点では非常に貴重な記録であり、このLPも一枚二千円と当時としては高かったが今となっては貴重盤となっている。この「くやみ」の様な噺はやはり落語独特の薮睨みの世界で、いわゆる穴探し物である。真面目に見ていれば考えもつかない事を斜に見つめる事によって笑い飛ばすのである。ストーリー的な要素が無ければ漫談と同じになってしまうがこの「くやみ」の様に筋立てがあればきちんとした落語になる訳だ。大体冠婚葬祭をねたにしてしまうのが落語らしい。この「くやみ」や「胡椒のくやみ」の様にどこかに潜む人間の本音を、笑いに変えている所が、講談や浪曲には無いのである。春風亭柳昇の一連の新作物もこの精神に通じるところがあ。米丸の新作との違いはそこであり、米丸の新作がちっとも面白くないのもそう言った精神が皆無だからである。落語に常識など求めてはいけないと私は思っている。正しい落語の聞き方とは、常識を理解する人がその常識をひっくり返す事により笑いを巻き起こすにあると思う。冠婚と葬祭の違いはあるが、春風亭柳昇の「結婚式風景」はこの「くやみ」や「胡椒のくやみ」の精神を持ちどこかに潜む人間の本音をさらしている為におかしいのである。冠婚葬祭と言うたてまえの塊の様な場所で本音をさらす事の快感なのである。

時代設定:江戸から明治。

舞台:与太郎宅。お店。

登場人物:与太郎、そのおかみさん、くやみの客数名。

ベストテイク:選択の余地無し。

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