三遊亭圓生音源データノート

汲みたて−1

1.TS-02829B1

2.1963.10.31,東宝演芸場,東宝名人会

3.24:01

4.Ca.C18G-0320(初出),PN.20P-2211(CT),PC.18P-60017(CT),PCCG-00062(CD)

5.出囃子 正札附

えーっ、ェーッ、毎度この、ォーッ、御婦人のお話なぞを、良く、ァッ、申し上げますがまァこの、色気のみなかみと言うと、ォーッ婦人と言う事を言いますが。えーっ、まァ今と違いまして、以前はこの、お若い方なぞは、歌謡曲なんと言う物はございませんで、えー新内とか或いは、ァーッ長唄とか常磐津、清元、ま色々ございますが。ァーッ、町内には必ずこの、稽古の、師匠と言う者が一人位はおりましたもので。ここィみんな集って、ェッ、てんでんにみなその親不孝な声を出し合おうと言う訳で。ぇーっ、こりゃやっぱりその、ォッ、男の師匠じゃいけませんでね、どうしても女の、若いお師匠さんが出来たてぇと大変評判がいい「おい、ばんさん、清元の師匠が出来たのを知ってるかいおめぇ」……  ……<女の師匠〜男の師匠〜蚊弟子〜炬燵の握手>……  ……しょうがねぇから腕相撲しよう」なんてんで、収まりが付かない。まァこういう事は、ァッ稽古所には良くあったもんで「おうおう、こっちィ入(へえ)れ」「よォ。どうしたい、みんないるな。ええ、どうしたい」「どうしたいじゃァねえ、手前にはちっとも会わねぇじゃねぇ行ってんのか師匠ンとこへ」「稽古にかいアーッ行ってらァな」「ンー行ってるたって、ちっとも手前の鼻の頭ァ見ねぇじゃねえ」「俺はなんだなァ早く行って帰(けえ)っちまうんだ」「アーそうかい。道理で手前に会わないと思ってたんだやってんのか、何だい今唄は」「えっ、唄、…唄はあれァ、ま『将門』やってんだ」……

6.東宝名人会の録音。いわゆる余一会の録音である。

7.PN.20P-2211 CT COPY

8.客も良く、ベストと思うが、噺の内容が汚いからか放送では取り上げられていないので録音が残っていないのが残念である。

汲みたて−2

1.TS-12582C1

2.1975.8.26,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第五十四席」

3.49:43

4.CS.60AG-130,SR.SRCL-3826(CD)

5.出囃子 六段くずし 受囃子 菖蒲浴衣

昔はこのォ、ォーッ、音曲師と言うものが、随分ございましたもので、一晩の内に多い時には、五六人位出ましたン。こんなに音曲師ばかり出て、どうするかと思うと、やはりそこは商売人で、前の者が何を唄ったと聞いて、それをちゃんと避けます。ま都々逸を唄った者がある、まァー都々逸位はァ一晩に二ァ人位は演りますが、大抵その後の者は、えー前の人の物を避ける。また人の唄う物は演らない様にすると言う様な訳で。えー音曲師と言えばただ唄を唄うだけだと、思し召すかも知れませんが噺家でございますからやはりこの落語が出来なければいけない訳で。ゥーンまァあたくしども覚えまして、最後の音曲師だと思いますのは、柳家、枝太郎と言う人がありまして、これは戦災の時に確か、亡くなったんでございますが。えー、元は初代圓右の弟子で……  ……<枝太郎の話〜万橘の話〜音曲噺「横根」〜音曲噺「音曲風呂」〜女の師匠〜男の師匠〜蚊弟子〜炬燵の握手>……  ……しょうがねぇから腕相撲しようよ」なんてんで。ァこう言う間違いが幾らもあったもんで。アーもう寄るとさわると、師匠の噂でもちきりと言う奴で「おうおうおう、お前(めえ)何か師匠ンとこ行ってるか」「えっ、なに、俺かおうおうおう行ってる」「行ってる。ちっとも逢わねぇじゃねぇ」「うーん、俺は宵の内に行くんだな」「あそうかァ。俺は遅いんでぇ何だ手前が丸っきり見ねえから止しちゃったのかと思ったんだ」「ウーンーン止すもんかやってる」「何をやってんだ唄は」「えっ、唄」「な何をやってんだよ」「アー、あれ、あの『将門』」……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語5」に収められている。この録音では船上での場面にお囃子を入れて、百席ならではの演出をしている。

7.CS.60AG-130 DISC COPY

8.船上の場面にお囃子を入れるのはレコードならではの面白い演出だと思う。解説に「こんな事は高座では出来ない」と述べているが、独演会などの場でこの様な演出をして見るのも面白いと思う。

汲みたて−3

1.TS-12583A2

2.1978.6.29,TBS,国立小劇場,落語研究会第122回

3.29:13

4.Te.TETR-20033(CT),TECR-20033(CD)

5.出囃子 正札附

えー、歌と言う物は、ァーッ世につれて流行るなんという、昔から、ァーッ譬えを申しますが、ゥーンまァその時々で色々な、ァーッ歌と言う物が流行りますが、今ではまァ歌謡曲と言う様な。まァー、三味線と言う物が余りこの、近頃は、アーッ、滅多に聞く事が出来なくなりまして、ぇ昔はもう往来を歩いている、若い娘さんなぞが、ァッ三味線の稽古でもしていようという。ウーまァ色々ございますが、えー清元とか常磐津長唄、えー新内、昔は端唄と申しましたが今の小唄でございますが、ま何でも教えてくれると言う重宝な師匠もあってね、これを五目の師匠なんてぇ悪口を言いますが、まどっちにしてもお師匠さんと言う者はやはりこの、器量のいい、ちょいと乙なァッ、師匠が出来たなんてぇと大変な騒ぎで、……  ……<女の師匠〜男の師匠〜蚊弟子〜炬燵の握手>……  ……離すのは惜しいから腕相撲しようか」なんてんでどうも、こういうァッ馬鹿げた事が幾らもありましたもので。アーもうこォー人が集まるてぇといつも噂で「おうおうおう、こっちィ来いよおい。どうしたい、えー、行ってるかい」「なに」「稽古だよ」「オーオーオー行ってる行ってるよ」「行ってるよったって手前(てめえ)逢わねぇやな」「アーそうだい。俺は早く行って帰(けえ)るんだ」「何だいそうか俺は遅いからそりゃ手前の面見ねぇからどうかしちゃったか思ったんだい、何をやってんだい」「何って、唄」「おう」「あれぇ『将門』」……

6.国立での落語研究会の録音。VTRの記録は無く、テレビ放映はされていない。テイチク盤で初めて世に出た音である。

7.Te.TECR-20033 DISC COPY

8.研究会のもので、時間も程良く楽しい出来である。

汲みたて・解説

放送などでは余りに露骨な汚さ故に敬遠されたのだろう。晩年に国立の研究会で掛けてたのを聞いた事もあり、寄席で聞いた事もあるので結構高座で演っていたと思われる。しかし、この噺は落語の醍醐味とも言える突然の転換の楽しさがある。発端は男の悋気で一寸色気のある噺の様に見えてるのに船上の舞台で突然「お呼びでない」船がやって来るのである。この噺に、あのクレージー・キャッツの「お呼びでない」の原点がある。映画だったらおかしいだろうとイメージするのも良いと思いませんか。

時代設定:江戸時代。

舞台:留公宅、大川船上。

登場人物:有象無象連中留公平公鉄公、与太郎、常磐津の師匠、建具屋の半公、船頭、有象無象の集めし馬鹿囃子連、真打ち汚穢屋。

ベストテイク:「汲みたて…1」と「汲みたて…3」が良い出来である。

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