三遊亭圓生音源データノート

九段目−1

1.TS-02513A2

2.1969.12.9,NHK,スタジオ,客なし,「古典落語」

3.27:41

4.なし

5.出囃子 なし

えー、ェーッ、素人芝居と言う。昔は良く、ゥー芝居を、ォーッ、一つやってみようなんと言う勿論こりゃァまァ、歌舞伎狂言でございますが。ま噺家なぞも良く、えー暮なぞに、ィー芝居を致しまして、ぇどうもその、自分の本職でございませんと、平生お客様の前へ出ている商売でも、ォーまるっきり素人になりまして、オりャァもう科白は間違える、やる事はとんちんかんになると言うので、でこれが返ってまた、ァッお慰みになるんで「どうも何だね噺家の芝居は面白いよアー、今度はまァひとつ、えー『宮城野信夫』だてぇから笑って来よう」なんてんでね。悲劇を笑いに行こうと言うんですから、こりゃおかしゅうございます。えー、人様が、ァーッ泣くと言う所を、ドットッと言う、ァーッ笑いがそこで出ると言う、まそう言う所が素人芝居の面白さで。ま一番困るのがこの、…役揉めと言う。らまァ誰しもいい役をしたいと言う訳でございますから、忠臣蔵で、五段目六段目が出るとあんまり、ェッ猪だの、与市兵衛は演り手はありませんで、えー勘平と言うのはありゃァ大変、いい役でございますから、「じゃ一つあたくしが勘平を」……  ……<勘平式>……  ……ァ頭取と言う者は、こらァもう間へ入って色々困ると言う。「あっ、いらっしゃいあーどうぞどうぞ、こちらへ」「ぇどうも、遅くなりまして」「いやいやどうも急にお呼びたてをしてね」「何だか急用だから来てくれてんで、大急ぎでやって来ましたが何で」「いやァ、どうもねぇ弱った事が出来たんだァ……

6.地味な噺で、ホールでは良く掛けているが放送では珍しい演目。

7.NHK R 古典落語 放送録音 1969.12.9

8.忠臣蔵を題材にした噺の一つだが、忠臣蔵と言えど一般に馴染みが薄くなり、科白の解説などに時間を要すと圓生自身も言っているが、この手の噺は歌舞伎の盛衰と共に今後は生きていくと思われる。

九段目−2

1.TS-02849B1

2.1974.12.28,東横劇場,東横落語会第168回

3.30:30

4.K.KHA-3027,CKS-297(CT),K18H-5205(CT)

5.出囃子 正札附

えー、追い追い、押し詰って参りまして、皆様も色々御用が、ァー多いでございましょうが、そういう中を、ァー御贔屓を頂きまして、あたくしは今晩は『九段目』と言う。素人芝居では、余りィー演らないもんでございますが、勿論まァ、ァーッ素人芝居で忠臣蔵が出れば、演る所は五六七、位な所で。あたくしも、七段目の、由良之助を演った事がありまして、大変、好評でございまして、ぇーヘッヘッ、当時、團十郎がおりましたが、團十郎よりは圓生の方がずっといいなんてぇ事を、只自分で思っただけでございますが、人は何とも言いません。えーとにかくゥ、素人芝居と言いますが我々はまァ、こうして平生お客様の前へ出ておりまして、芝居へ出ても、何か、ァーッ驚かないだろうと思いますが、それが、あすこへお白いを付けて衣装を付けて出てしまうと、もうまるっきり素人同然で、お客様の顔なんぞは良く分らなくなる。らどうも不思議なもんで商売違いで。えー噺家芝居なんてぇと、もう失敗をするのをお客様の方がかいって楽しみにしてらっしゃいましてね。まともにすらすらっと演ると「どうもあんまり面白くないねぇ」なんてな事を言ってね。えー演り損なうのをお客様の方が待ってらっしゃると言う。先だって亡くなりました志ん生なぞもあの時ィ三段目のお軽を演りましたが。ぇー、あの時分には随分あの人も太っておりましたが、でーあの色々の途中の、三段目ですから踊りがあります。しゃがんだのはいいんですが、立とうと思ったら、立てなくなっちゃって、どうやってもなかなか立てない。でしょうがないから勘平のあの刀にぶら下がってこう、やっとこさと立ちましたがねぇ、当人は一生懸命に演ってェそこで、自然におかしい事が出来ますが。まァそういうその素人芝居にはおかしい事が幾らもありますが「あっ、どうも、御苦労さまで、まァ、どうぞこちらへ」「いや、えーお使いがあったんでえー、あたくしも一寸出掛けておりましたが急いで帰って来ましたが何か急用だと言う」「いゃーどうもね、困った事が出来上ったと言うのは他じゃァないが……

6.ホールでは良く掛けているが現在では唯一の録音。

7.K.K18H-5205 CT COPY

8.素人芝居の噺になると、まくらで噺家芝居の失敗談が出るがここでもそれが実に楽しい。

九段目−3

1.TS-12584C1

2.1977.3.10,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百四席」

3.43:44

4.CS.60AG-564 SR.SRCL-3820(CD)

5.出囃子 正札附

素人芝居と言う物は得て、失敗が多いと言いますが。我々がこの鹿芝居と言いまして、「どうだい一つ歌舞伎を演って見たい」なんてんで演りますが、ゥー毎度そのゥ間違ったりなにかしてね、お客様の方もその失敗を待っていらっしゃるてぇ訳でも無いが、素人らしいおかしさがあると言う。ところがそのゥ、面白く無い事がありましてね。いつでしたかあのゥ、女中にお茶をくれと女房が言うと、女中がお盆へ茶を載せて「はいお茶」ってんで出すんですが。えー二日三日目ェまでは、茶碗が上を向いていたからいい訳なん…。とある日どうした事か、茶碗がお盆の上へ伏せてあったん。でこれをそのまんま出しましたが。ぇこういうのはそのゥ、洒落にも冗談にもならないで。相手の役者が困りますので茶碗はあれは上を向いてるから、いいんですが。伏せたまんまで出された日にゃァ、こりゃもうどうにもならないと言うそういうのはその、ぇーよく言います「間抜け」という奴でね、えー失敗をした時に、そいつをハッと咄嗟の間に、取り返すと言うのは難しい事で。……  ……<満州での失敗談〜鹿芝居の失敗談二題>……  ……えー言った通りまァその、素人芝居なんてぇと、頭取ンなったりなにかァする人はもう役揉めでうるさいもので、「こんちわッ。御免下さい」「おっ、いらっしゃい」「どうも」「アーさあさあさあさあ、まァまァそこじゃ、どう、どうぞこちらへ」「えー。えー何だか急用だてんで慌てて伺いましたが」「いやァどうもね。お前さんも忙しい体で、済まないとは思ったがもうどうにもならないんでねぇ、助け船と言う訳で、呼びにやった訳なんだがねぇ」……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が、集英社文庫「圓生古典落語5」に収められ  ている。  

7.CS.60AG-564 DISC COPY

8.

九段目−4

1.TS-12599D2

2.不明

3.20:37

4.なし

5.出囃子 無し(欠)

えー、ェーッ素人芝居という、昔は、ァッ良くごさいましたもので。しかし、ィーッどうもこの役揉めと言うものが一番先ィ出ましてうるそうございましてね、忠臣蔵の、ォーッ五段目六段目となると、もうこの勘平という役を一番演りたがりましてねあたしも勘平僕も勘平なんと言うので、勘平ばかりが、ァーッ三十六人出来上がったりなんかァして。えー五段目の幕が開くと鉄砲担いで舞台へ勘平ばかりがずらりと並んだんで、見ている方が驚きましたよ「何だいこりゃァ大変に勘平が出ましたなァ」「え ー、勘平式じゃねぇか知らん」なんてね、訳がわかりませんが。えー色々どうも頭取ンなる方が骨が折れる。「さァ、こっちィお入ンなさい」「どうも、えー遅くなりまして」「いやいやどうも、お忙しい所を呼び立って誠に申し訳がないがねぇ実はどうも、金さんでねぇなくちゃならない事が出来たン」……

6.短い時間で上手くまとめている。

7.都家歌六コレクション

8.音質は余り良くないが、短くまとまった「九段目」として貴重と思われる。

九段目・解説

「四段目」「五段目」「中村仲蔵」「淀五郎」などと共に、忠臣蔵を扱った落語、または、「蛙茶番」「権助芝居」などと共に、素人芝居を扱った噺と言う分類も出来る。この様な噺は芝居の盛衰と運命を共にすると言って良く、この噺などはとりあえず忠臣蔵が題材である事に依ってなんとか生き延びた噺と言える。とは言うものの圓生師亡き後は大変苦しく、サゲも理解し難く、科白一つについても前振りが必要とあれば今後は文化財的な落語になってしまうものと思われる。この様な噺でやはり圓生師の噺で面白いのは素人芝居、特に噺家芝居の失敗談を枕で聞ける事で、実名入りで語られる大師匠連の失敗談は何度聞いてもおかしいものであった。この噺、圓生師は結構ホールで掛けているが、放送や録音は意外に少なく、ライヴ録音は東横のもの1本である。スタジオ収録のものはNHKのものと「圓生百席」の2本があるが「圓生百席」の録音は現在の所手元に無い。幸いな事に東横の音が出来も良い。国立の研究会でも掛けているので、このあたりの音がテイチクから出てくる可能性もあり、期待したいところだ。

時代設定:江戸時代。

舞台:素人芝居の頭取役、吉兵衛宅。

登場人物:素人芝居頭取吉兵衛、金さん、按摩医者小泉熊山。

ベストテイク:やはりライヴならではの「九段目…2」を採りたい。

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