三遊亭圓生音源データノート

首提灯−1

1.TS-02512C3

2.1972.4.8,NHK,新宿末廣亭,独演会

3.16:23

4.なし

5.出囃子 中の舞

えー、ェーッ、『首提灯』と言う、ァーッ、お噺でございますが。えー江戸と申しました時代は、ゥーンお侍と言う者が大変、ァー幅を利かしまして、往来を歩くんでも七分は侍三分が町人と言う、割振りをして歩いたんだそうで。えー七分侍が歩いて三分は町人が歩けば、ァッ噺家の通る所なんぞは無かったと見えましてね、溝板の上かなんかを這ったのかも知れませんが。まその時分には、町人が無礼を申すと無礼討ちにするなんと言う。ねー、彼は怪しからん奴だから手討ちにするなんてぇんで、蕎麦粉じゃァないから手討ちになんかされた日にゃァたまったもんじゃありませんで。えー、人が斬られたなんてぇのはもう珍しく無かったと言う。その時分に極く、馬鹿馬鹿しい噺と言うと、胴斬りにされた人が別々に奉公したてぇのがありますが。……  ……<胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇ」…馬鹿な話でございますが。ぇーしかし、人を良く斬るなんてぇ事を言いますが、(白湯を啜る)牛蒡や人参じゃァ無いからそんなに無闇に、斬れるもんじゃァなかろうと思うがしかし、刀が良くて腕前が優れていれば確かに斬れるもんそうで。ぇー人斬りの名人と言われたのが白井権八と言う人が上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いましてね、斬られた人が知らずに歩いていたてんですからいい心持ちに、唄かなんかァ……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目何てぇのは無いが。斬る斬られるなんと言うのは、僅かな言葉の行き間違えから出来る事で。相手を好まないのはこの酒と言う奴で。えー酔っ払いの内はまだいいが、これがもうはっぱらいやなんかになった日にゃァ始末が悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローりペロり出して、「アッハッハッハッハ、有り難てぇ有り難てぇ。いい心持ちだなァ。近年稀なるいい心持ちだなァこらァ、ハッハッ……

6.新宿末廣亭での独演会の録音。この噺の前に圓生が大津絵を唄っている。

7.NHK TV 芸能独演会 放送録音 1972.4.8

8.仕草が重要な噺でテレビ向き。放送でも良く掛かっている。

首提灯−2

1.TS-02584C5

2.1976.10.15,NHK,イイノホール,東京落語会第208回

3.25:23

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、江戸と申しました時代に、えー『武士鰹大名小路生鰯、茶店紫火消錦絵』と言う。これが江戸の名物だと申しますが。第一に、ィー武士と言いますが、これは別に江戸の武士が強(つお)いとか、どうと言う訳ではございますまいが大変数が多かったと言う。二百六十四大名その他、ァー旗本八万旗、御家人なんというもうその、表へ出ますと、ォーッお侍なんと言う者がもうざらにェーッ歩いていたもので、(白湯を啜る)決してもう珍しく無いと言う。ぇそれに江戸っ子と言う者が幅の利いたのは、えー大名の行列なぞがありましても、他とは違いまして、ぇー府内内と言うン、江戸の内に居る間は脇ィ寄れば宜しいと言う訳でね。これは江戸っ子の特権でございまして、……  ……<加賀か〜千住の青物市場の芋〜唐人に釣鐘〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話でございますが。ぇー人を斬るてぇ事を言いますが、そんなに、たやすくゥ人間が斬れるもんじゃァなかろうと思うけれども、本当に、腕前が良く、えー刀がこの、なんでございますと、斬れるんだそうで。えー随分器用な事を致しまして頭の上へ大根(だいこ)なぞを載せておいて、これを抜き討ちにサッとやるってぇと、上の大根だけが、割れて、頭の方には少しも傷を付けないなんと言う。勿論これはお上手な方で無ければいけませんでね、えーお下手な方にやられた日にゃァあァた、ぇーへっ大根とかぼちゃと一緒に割っちまったりなんかァして、こんな事は滅多に頼まれたもんじゃァありませんが。人斬りの名人と言われたのが、白井権八と言う人は上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言う。斬られた人が知らずに歩いていたてんですからね。いい心持ちに……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目何てぇのは無いが。ぇー斬る斬られるなんと言う事はこりゃァもう僅かの、言葉の行き間違えから出来ます事で。相手を好まなくなるのはこの酒だと言いますが。酒は一失一得とは言いながら、どうも過ちが多いと言いますが、(白湯を啜る)嫌いな方に言わせると気違い水だ、えー好きな方は天の美祿だなんてぇ事を言いましてね。えーしかしまァ酔っ払いの内はいいが、これがどうもはっぱらいかなんかになっちまう。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペロペロ出してね、側ァ通る人がうっかり欠伸なんぞをすると「何だこん畜生口を開きやがって、俺を呑む気だなこの野郎。呑めるんなら呑め」って誰が呑む奴が るもん…。こうなった日にゃァどうにも始末が悪い「アッハッハッハッハッハッハッハッハ、アァーいい心持ちだなァ、有り難てぇ有り難てぇ。近年稀なるいい心持ちだなァこりゃ。アッハッ……

6.東京落語会の録音。東京落語会では1967年と1972年にも掛けている。

7.NHK R 放送録音 1976.11.10

8.持ち時間に余裕があったのか、まくらが長い。

首提灯−3

1.TS-02716B2

2.1960.11.30,東横劇場,東横落語会第28回

3.16:00

4.CS.20AG-735

5.出囃子 正札付

えー、エエッ、相変わらずもう、ァーッ、落語の事でございまして、お罪のございませんところで、えー、お暇をいただきまして。まァこの、ォー、昔は『武士鰹大名小路生鰯、茶店紫火消錦絵』と言う。えこれが、ァー江戸の名物としてございまして。江戸っ子なんてぇともう大変エエーッ口の悪いものでございまして。まこの、ォーッ武士と言う事を、名物の一番初めに数えてございますが、お侍の数と言う物が大変多いと言うので、ェそこで、ェッ、江戸の名物になったと申しますが。ェ将軍様のお膝元と言うので、お大名の行列なぞがありましても、脇ィ寄ればいいと言うこれはまァ、他の土地から見ると江戸っ子は、ァッ幅の利いたもんでございましてね。……  ……<加賀か〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話でございますが。これらはまァ随分、馬鹿馬鹿しい話の様ですが。ぇーっ、良くこの人を斬ったとか斬られたと言う。ま牛蒡や人参じゃァ無いからそんなに無闇に斬れるもんじゃァなかろうと思うがしかし、腕前が優れて、刀が良ければ確かに斬れるもんだそうで。人斬りの名人と言われたのが白井権八と言う人が上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いましてね、斬られた人が知らずに歩いていたてんで、いい心持ちンなって鼻唄で……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目てぇのは無い。相手を好まないのはこの酒と言う奴で。酔っ払いがはっぱらいンなったりなんかァした日にゃァもうどうにも始末が悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローりペロり出してね「アッハッハッハッハ、有り難てぇ有り難てぇ。いい心持ちだなァ。ァッハハ。近年稀なるいい心持ちだなァこらァ、ハッハッ……

6.東横落語会の録音。この時の口演で圓生は、芸術祭文部大臣賞を受賞した。

7.CS.20AG-735 DISC COPY

8.現在残る最も古い録音。

首提灯−4

1.TS-02745B1

2.(1968.2.13),NHK,人形町末廣,芸能百選

3.23:45

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、色々この、昔から、ァーッ、名物と言う物がございますが。えー東京が江戸と申しました時代、『武士鰹大名小路生鰯、ぇー茶店紫火消錦絵』と言う。これが、ァッ江戸の名物でございまして。この他にまだ追加がありまして、ぇー『火事喧嘩、ァーッ伊勢屋稲荷に犬の糞』なんと言う。どうもあんまりいい名物じゃありませんで。犬の肥料なんぞが、ァーッ、どうもそれ入っておりますが。第一にこの武士と言う事を申しますが、これはまァ江戸の武士が強(つお)いと言う訳でも無いんでございましょうが、お侍の数が大変多かった。二百六十四大名その他、ァー旗本八万旗なんという。まァお侍と言うものはもう、ォー表ヘ出ればざらにィ、歩いていると言う訳で。えー、江戸っ子はまた、ァッ幅の利いたと言うのは、お大名の行列なぞがあっても脇ィ寄ればいいと言う。これは江戸っ子はそれ、ぇーそれだけにこの、ゥーン幅の利いたもので。……  ……<加賀か〜千住の青物市場の芋〜唐人に釣鐘〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話があるもんでございますが。ぇーしかしィ、よく人を斬るなんてぇ事を言いますが、牛蒡や人参じゃァないから、(白湯を啜る)そんなに無闇に斬れるもんじゃァなかろうと思うがしかし、腕前が優れた方は確かに、斬れるそうで。えー、極く、出来る方ンなりますと頭の上へ大根(だいこ)なぞを載せて、こいつを抜き討ちにサーッとやると、上の大根だけが、二っつになりましてお頭の方へは少しも傷が付かないなんと言う。勿論これはお上手で無ければいけませんで、えー、おへ、お下手な方にやられた日にゃァね、こりゃァもう大根とかぼちゃと一緒に割っちまったりなんかァして、こんな事は滅多に、ェーッ、頼まれたもんじゃァありませんが。人斬りの名人と言われたのが白井権八と言う人は上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いまして。斬られた人が知らずに歩いていたてんですからね。いい心持ちに……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目何てぇのは無い。斬る斬られるなんと言うのは、僅かの言葉の行き間違えから始まる事で。相手を好まないのはこの酒と言う奴で。えー、酔っ払いがはっぱらいンなったりなんかァした日にゃもう始末が悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローリペロリ出して「アッハッハッハッハ、有り難てぇ有り難てぇ。いい心持ちだなァ、アッハハッ。近年稀なるいい心持ちだなァこりゃ Bヘッヘッ……

6.人形町末廣の録音。

7.NHK TV 芸能百選 放送録音 1968.2.13 伊東氏ライブラリー→佐藤氏ライブラリー

8.

首提灯−5

1.TS-02825D1

2.1966.1.31,東宝演芸場,東宝名人会

3.28:24

4.Ca.C18G-0320(初出),PN.20P-2211(CT),PC.18P-60011(CT),PC.PCCG-00056(CD)

5.出囃子 正札附

えー、もう一席、ェーッ申し上げまして、お開きでございまして。風邪を暮れの内から、ァーッ、引き込んでおりまして、良くなってはおりましたが、どうも時々、ェー、調子が、ァーッ、アー悪くなりまして。えーどうもこの噺家が声を痛めると言うのは大変、ェーッ、具合の悪い物でございまして。噺家が声を痛めましたり、また、ァーッ、絵を描く方が、手を痛める、郵便配達をする方が脚気になったり、花魁が、ァーッ、…えー、…えーと言う訳でございまして。ヘヘッ、とにかく宜しく、エーッ、お聞き流しを願いまして。えー、昔からこの、江戸の名物と申します、『武士鰹大名小路広小路、茶店紫火消錦絵』なんと言う。でこの他にまだ追加がございまして、『火事喧嘩伊勢屋稲荷に犬の糞』なんと言う。どうも、あんまりいい名物はございませんが。えー武士と言う事をば一番先に謳いまして、えー江戸と言う所には、アーそんなに武士が多かったと言う訳でございましょう。ま二百六十四大名その他、旗本八万旗。表ヘ出ますてぇともうお侍と言うものはァ無闇に、ぶつかる様に、歩いておりますので。えそれに将軍様のお膝元と言うので江戸府内にいる時は、ァーこの、お大名なぞが通っても脇ィ寄れば宜しいんだそうで。……  ……<加賀か〜千住の青物市場の芋〜唐人に釣鐘〜乞食叩き〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話でございますが。まァこの、ァー人を斬ると言いますが、腕前が優れた方は、本当に器用な事を致しまして。頭ィこの大根(だいこ)なぞを載せておいて、抜き討ちにこいつをサーッとやると、大根だけは二つに切れまして、お頭の方へは少しも傷が付かないなんと言う。しかしこれはァー、腕前の良い方に限りましてね、お下手な方にやってやられちゃァいけませんからね。どうも大根もかぼちゃも一緒に割っちまったりなんかする事がある危ないから。これはまァ、ァッ、お上手な方に限るんでございましょうが。ま人斬りの名人と言われたのは、白井権八と言う人は大変上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いまして、斬られた人が知らずに歩いていたてんですからね。いい心持ちンなって……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目てぇのは無いが。まァ、斬る斬られるなんと言うのは僅かな言葉の行き間違えから始まる事で。相手を好まないのはこの酒と言う奴で。えー、酔っ払いの内はいいがはっぱらいやなんかンなって来た日にゃァもう始末 ェ悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローリペロリ出して「アッハハッハッ、有り難てぇ有り難てぇ。いい心持ちだなァ、ハッハッ。近年稀なるいい心持ちだなァこりゃ。……

6.東宝演芸場での東宝名人会の録音。

7.ニッポン放送 放送録音

8.珍しく江戸の名物を間違えて言っている。

首提灯−6

1.TS-02910B1

2.1971.10.29,東横劇場,東横落語会第130回

3.27:14

4.日本オーディオ NRC-1001(CT)

5.出囃子 中の舞

えー、…江戸と申しました、ァーッ時代の名物が、『武士鰹大名小路生鰯、茶店紫火消錦絵』と言う。これが、ァーッ江戸の名物でございますがまだ他に、追加がありまして、『火事喧嘩、伊勢屋稲荷に犬の糞』なんと言う。どうもあんまり、ェーッいい名物じゃありませんでね。どうも、ォーッ、ワンワンの肥料なぞが入っていると言う。えー第一にこの武士と言う事を申しますが、まァーこれはその江戸の武士が強い(つお)いと、言う様な訳では無いんでございましょうが。二百六十四大名、旗本八万旗と言う。まお侍と言う者が大変多かった。もう表へ出れば、ァーッ侍となんてぇ者はもうざらに、歩いておりますので、(白湯を啜る)江戸っ子には珍しくも無いもので。でそれに将軍様のお膝元と言うので、行列なぞがあっても脇ィ寄れば宜しいんだそうで。……  ……<加賀か〜千住の青物市場の芋〜唐人に釣鐘〜乞食叩き〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話でございますが。えー、しかし、…申し上げた様にそんなに無闇に、ぇー人間は斬れるもんじゃァないでしょうがしかし、刀が良くて、腕前が優れていれば確かに斬れるんだそうで、人斬りの名人と言われたのが白井権八と言う人は上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いましてね、斬られた人が知らずに歩いていたてんで……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目なんてぇのは無いが。斬る斬られるなんと言うのは、僅かな言葉の行き間違えから始まる事で。相手をこの好まないのはこの酒と言う奴で。えー、酔っ払いがはっぱらいンなったりなんかァした日にゃァもう始末が悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローリペロリ出して「アッハッハッハッハ、有り難てぇ有り難てぇ。いい心持ちだなァ。近年稀なるいい心持ちだなァこりゃ、ハッハッ……

6.日本オーディオと言う会社の安売りテープに入っている録音。パッケージには何もデータが載っていないが、音質等から音源を判定した。他社からは出ておらず、どのような経路で流れたのか不明である。

7.日本オーディオ NRC-1001 CT COPY

8.この安売りテープは『三年目』との組合せで出ており、共に東横落語会の音源で他社から出ておらず、大変お買得である。

首提灯−7

1.TS-02917D3

2.1968.11.16,NTV,東宝演芸場,東宝名人会

3.18:08

4.なし

5.出囃子 正札付

えー、昔はこの、江戸と申しまして、えーその時分の、ォーッ名物が、『武士鰹、大名小路生鰯、茶店紫火消錦絵』と言う。これが江戸の名物でございましてまだ、ァーッ追加がございまして、“火事喧嘩、伊勢屋稲荷に犬の糞”なんと言う。どうも、ォッ犬の肥料なんぞが、ァッ名物に入りますのはあまりぞっと致しませんが。えー、武士と言う事を第一に、謳ってありますがこれは江戸の武士が別に強い(つお)いと言う訳ではございますまいが。お大、エーお侍の数は大変多かったと言うので、もう表へ出ますとざらに、ェーッ、侍に出っくわすと言う訳で。それにこの将軍家のお膝元と言うので、(白湯を啜る)お大名の行列なぞがありましても、脇ィ寄ればいいと言う訳で。……  ……<加賀か〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿な話があるもんでございますが。しかしまァこの、人をよく斬るなんてぇ事を言いますが、牛蒡や人参じゃァ無いからそんなに、(白湯を啜る)無闇に斬れるもんじゃァなかろうと思うがしかし、腕前が優れて刀が良ければ確かに斬れるもんだそうで。で極く、腕の冴えた方ンなりますと頭の上へ大根(だいこ)なぞを載せておいて、こいつを抜き打ちにサーッとやると、上の大根が二つに割れて、頭の方へは、ァーッ傷が付かないなんと言う器用な事をするそうで。もっともこれはお上手な方でなきゃァいけませんでね、お下手な方にやられた日にゃァね大根とカボチャと一緒に割っちまったりなんかァした日にゃァ始末が悪い。人斬りの名人と言われたのが、白井権八と言う人は上手かったそうで、鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いまして、斬られた人が知らずに歩いていたてぇんですからね、いい心持ちんなって……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目てぇのは無いが。斬る斬られるなんと言うのは、まァこれは僅かな言葉の行き間違えから始まる事で。相手を好まなくのが酒と言う奴で。いっしゅく、一失一得とは言いながら、どうも過ちの多いもので。えーっ、はァしたたかに呑んでもう酔っ払いを通り越してはっぱらいやなんかンなった日にゃァ始末が悪い。性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローリペロリ出して「ハッハッハッハッハ。いい心持ちだなァ。近年稀なるいい心持ちだなァこりゃ、アハハッ……

6.日本テレビで放送していた東宝演芸場からの『東宝名人会』と言う番組の録音。時々この  様な落語も出ていた。

7.NTV 東宝名人会 放送録音 野口氏ライブラリー

8.白湯を啜ると妙に受けているが、前で誰かにいじられたに相違ない。

首提灯−8

1.TS-02933D1,VT=TV-39021-3

2.1968.11.13,TBS,国立小劇場,落語研究会第9回

3.22:40

4.なし

5.出囃子 なし(拍手のみ)

えー、ェーッ、昔はこの士農工商なんと言う、喧しい事を申しまして、ェッ、お侍と言うものはこりゃァもう一番、権利の有りましたもの。えー、江戸の名物と言うと、『武士鰹大名小路、生鰯、茶店紫火消錦絵』これがまァ、ァッ江戸の名物でございましてまだ、ァッこの他に追加がありまして、『火事喧嘩伊勢屋稲荷に犬の糞』なんと言う。どうもあんまり、ェーッぞっと致しません名物で。犬の肥料なんぞが、ァーッ、その中へ入っておりまして。まこの江戸の武士が別に強(つお)いと言う訳では無いのでございましょうが。えー、お侍の数と言う者は大変多かった。もう表へ出れば、ァーッ、侍にはざらにそれ、えーっ、歩いておりますので。江戸っ子と言う者はまた、幅の利いたと言うのは、お大名の行列なぞが、ありましても脇ィ寄れば宜しい。エッヘッ、江戸から出ると、道中格式となりますが、もう江戸の内にいる間は平気なもんで……  ……<加賀か〜千住の青物市場の芋〜唐人に釣鐘〜胴斬り>……  ……どうも小便が近くっていけねぇから」…馬鹿げた話でございますが。ぇー、しかし、ィーッ昔から良く人を斬るてぇ事を言いますが、そんなに、ィー、牛蒡や人参じゃァないから、ポカスカ斬れるもんじゃァなかろうと思っていたら、ェーッ、腕前が優れて、刀が良ければ確かにこれは斬れるもんだそうで。えー据物斬りなんと言う事を申しますが、……  ……<据物斬り>……  ……まァ人斬りの名人と言われたのは白井権八と言う人は上手かったそうで。鼻唄三丁矢筈斬りなんてぇ事を言いましてね、斬られた人が、知らずに歩いていたてんですからね。いい心持ちに……  ……<継ぎ目が剥れた>……  ……人間の継ぎ目てぇのは無いが。斬る斬られるなんと言うのは、僅かな言葉の行き間違えから始まる事で。相手を好まなくなるのはこの酒と言う奴で。酔っ払いのうちはいいがはっぱらいやかなんかになってね、性の悪い山っ案山子みたいに舌ァペローリペロリ出して「ハッハッハッハッハ。いい心持ちだなァ、有り難てぇ有り難てぇ。近年稀なるいい心持ちだなァこらァ。ハッハッ……

6.国立小劇場での落語研究会の録音。「おはよう名人会」で再放送され、白黒ながら貴重な  映像で楽しめる。

7.TBS TV おはよう名人会 放送録音 1987.10.7

8.音だけ聞くと決してベストでは無いと思うが、映像を伴うと気にならない。

首提灯・解説

1960年の芸術祭文部大臣賞を受賞したと言う事で、「御神酒徳利」と共に圓生師にとっては特別の演題と言える。そんな事もあってか注文も多かったのだろう、特にテレビでは演出効果もありまた時間の都合も良いので度々放送された。実際には有り得ないSF的な落語であって、笑いの一つの要素である「そんな馬鹿な」が大きなテーマになっている。「犬の目」やこの「首提灯」などは落語だから「そんな馬鹿な」で済まされている典型で、この題材をリアルなドラマや映画にしたら気持ち悪くて見ていられないだろう。そんなとこに落語という芸の凄さがある。林家正蔵師も良く高座に掛けていたが、首の取扱いについての若干の相違を互いに主張しあっていて互いに譲らなかったのが面白かった。噺は15分位の物だが、時間に余裕のある時は枕で武士の小咄を入れて楽しく演じていた。1960年の文部大臣賞を受賞した時の東横での録音が残っているが、この録音は実にさっぱりとしていて聞き方によっては投げやりにも聞ける。圓生師が確か「自棄になってサラッと演じた」と言っていたと記憶しているが、余り力まずに演じているこの録音あたりが本来の寄席での芸なのではないか、圓生師と言うととかく名人、上手と言われがちだがこんな力まないアバウトな圓生師をもっと聞きたかったと思う。

時代設定:江戸時代。

舞台:麻布と品川を結ぶどこか。

登場人物:首斬られ男、「麻布にめえる」武士、野次馬の助数名。

ベストテイク:どれも水準以上の名演であるが、独演会の録音ながらあっさりさらりとしている「首提灯…1」が好きである。それと1960年の例の音「首提灯…3」が別の意味での価値ある録音と言えそうだ。

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