三遊亭圓生音源データ
子別れ−1・上
※放送の演題は「強飯の女郎買い」。上・中・下口演の上。
1.TS-02527C1
2.1974.6.27,TBS,国立小劇場,落語研究会第76回
3.40:03
4.無し
5.出囃子 正札附
えー、ェッ、昔とは、ァーッ、まァ、アー色々、事柄と言うものが変わって参りますが、えー、お葬式と言うものがあります。ンー、弔いてぇましてね、今では、ァーみんな弔いてぇますけども、あたくしどもが、子供ン時からみんなあれお弔いてぇまして、えーこれが随分、ァー今と様式が違いまして、えー当節はもう、あすこに、エーッ告別式があるからなんてぇと、ちょいと行って安直にこんな事をすれは、ァーッおしまいになりますけれども。ェ昔はァ大変な物で、まどうしてもゥ、三四時間は短くて掛かりましょうし、えー半日、あるいは、ァーッ遠いとこだと一ン日位潰れてしまいまして。えー、勿論、すぐその、オーッ、告別式なんてんで行くんではなく、自宅の方へ先ィ参りまして、えーそれから、向こうで、ェッ待ち会しておりましていよいよこれから出棺と言う事になる。えー素直にすうっと、決めた時間に出れば宜しいんでございますが、(白湯を啜る)中にはなかなかその、名残を惜しんで、えー、容易にその出さないなんてぇのがありましてね、ウーンそこで一時間や二時間は、ァーッ時間が延びてしまいまして。え仮に正午に出ると言っても二時頃、あるいはそれを過ぎるなんという。でこれから出ますと、途中行列と言いまして、えー、あのゥ後ィ付いて、見送りの方がぞろぞろぞろぞろ、お寺まで歩くという。…… ……<昔の葬式の話〜葬式の菓子〜出立ちの飯>…… ……それに『弔いを山谷と聞いて親父行き』と言う、川柳がありますが。これはァつまりそばに吉原と言う物がある、えー若い者をやったりなにかすると、(白湯を啜る)そういう所へ引(し)っ掛かると言うので、ンー、アー大抵お年寄りがお出でンなったもので。“弔いを山谷と聞いて親父行き”なんと言う。ウー、中には、ァーッ『弔いを麻布と聞いて人頼み』なんと言ってね。名刺かなんかを「じゃ君すまないが」なんてね…。えーそれで事を済ませようと言う訳で。…… ……<引導が済むと魔堂へ引き込まれ〜この仏様もお好きと土手で言い〜焼香の順にと洒落る大一座〜大一座黒豆のある反吐をつき>…… ……えー、しかし、まァこの、お酒を召し上がって酔うのは宜しいが、お通夜で酔っ払ったり、あるいはこの、ォッ葬式で、(白湯を啜る)べろべろンなってとろとろ言ってるなんてぇのはあんまりいいもんじゃァない「アー、いい心持ちだな。アーどうも実に今日の弔いは万歳だなこりゃ」「物事が乱暴だよえー、弔いで万歳だてやン。アーいけないいけない、熊さんだ熊さんだ呑んだくれだからありゃまたうるさいよ」…… サゲ=「そうじゃァ無ぇんだよ。腹巻ィ下地がしみ込んでらァ。これ勿体ねぇから絞り掛けてやる」「ご冗談ない…」敵娼が決まる、『子別れ』の上(じょ)でございますが、お時間でございます。
6.落語研究会で三ヶ月にわたって上・中・下口演をした時の「上」である。放送ではこの「上」しか掛かっていない。
7.TBS・TV お待ちかね名作寄席 放送録音 1974.7.27
8.三回に別けて連続口演しているが、完全なのはこの「上」しか無いのは残念である。子別れ−1・下
※上・中・下口演の下。
1.TS-12608B1
2.1974.8.29,TBS,国立小劇場,落語研究会第78回
3.24:28
4.リーダーズ・ダイジェスト.AN-9007
5.出囃子 正札附
えー、昔からこの、ァーッ嘘を付く事はいけないと良く言われますが。えーしかしまァ満更この、嘘が無いと言うと、ォーッこりゃやはり具合が悪いもので。えー、人とお付合いの上にはこりゃ多少の嘘はつきもんだと言う「おや、どうも、暫くですなどちらィお出かけですか。えっ、運動で、いゃっハハどォも、まめでいらっしゃるねぇあなたはいやァいや、それだから健康なんですよどうも。おやおや、大変お可愛いお子様。…… ……<よいしょでコーヒー〜今の内に踏み殺せ>…… ……こりゃァ喧嘩ンなる。まそういうとこに嘘は、こりゃまァ付きもんでございましょうが。『斯くばかり、偽り多き世の中に子の可愛さは真なりけり』と言う。まァ子供が可愛いと言う親の情、(白湯を啜る)こらァ昔から決して嘘のございませんもので。「どうも、お待ちどうさまで」「大変だねぇいやいや、いちいち頼んで出るのは面倒だろ」「…へっ頼んで出るったってまァそんな事はいいんですが、一番困るのはこの、洗濯もんでねぇ。アーいくらまめにしている様でもすぐに汚れ物が溜りやがって、……
6.未放送の音であるが、通信販売のレコードとして発売されていた。今では全く需要が無くなったが、8トラックのカートリッジ・テープでも同時発売されていた。当時のアモン・レーベル東京レコードが製作している。「小さん全集」に見られる細かなカットがある。
7.リーダーズ・ダイジェスト.AN-9007 DISC COPY
8.1974年6月27日の(上)、7月17日の(中)、8月29日の(下)で全篇が演じられたが残念ながら(中)の音は公開されていない。おそらく音はTBSに残されていると思われる。
子別れ−2・下
※放送での演題は「子は鎹」。
1.TS-02664C1
2.1978.5.19,NHK,イイノホール,東京落語会第227回
3.36:44
4.Po.00CN-6636(CT)
5.出囃子 正札附
えー、古い川柳に、『弔(ともら)いを、ォーッ、山谷と聞いて親父行き』と言うのがありますが、えー山谷には、ァッお寺はどっさりありますが、ァーッそばに吉原と言う、物騒な物があるために、ィーッ若い者をやって間違えが出来てはならんと言うので、お父っつぁんがいらっしゃると言う様な訳で。ま第一弔(ともら)いから、アーそういう廓なぞィ行くと言うのは、何かおかしい様でございますが。「しかしまァ今日の仏様なんぞはまだ惜しいやねぇ、歳は若いしさァ、普段丈夫な人だったんだがどう言う訳なんだろうねぇ」「人間は一寸先は闇の夜なんてぇ事を言うが全くだね。いつ何時どうなるか解ったもんじゃァないやねぇ。やっぱり、ィッ、お互いに達者な時には少しは面白い事もしなくちゃァねぇ、つまらないよゥ。どうですゥ、顔も揃っているこったし、今夜これからァ繰り込もうか」「オー良うがしょゥ」なんてな事言って。『引導が済むと魔堂へ引き込まれ』、『この仏様も、お好きと土手で言い』なんという。「今日の仏はまた女郎買いが好きだったからね。ハッ、あたしなんぞは随分誘われてね。アー今夜付き合え付き合えってんで行きましたがねぇ。まァこうしてみんな友達が、遊びに行ってやりゃァとォー何だよ功徳ンなりますよ」なんてんでね。勝手な事を言って。…… ……<焼香の順にと洒落る大一座〜上・中のあらすじ>…… ……さァ、初めて目が覚めてアーとんでもない事をしたと思う。こりゃァいけないてんで酒も断って、仕事のの方へ一生懸命精を出す様になるもともと、腕はいい人間でございますから、「まァ奴もこの頃は真面目ンなったから、じゃ、うちの仕事をさせよう」なんてぇ訳で。やっらして見るてぇといいから「じゃ、あたしの方へも頼もう」という。さ、そうなると、商売も忙しくなります。えーやはり落ち着いて来ると人間は、思い出すのは子供の事でございまして。『斯くばかり偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり』と言う。子供が゜可愛いと言う親の情愛こりゃァもう決して嘘のありませんもので。「棟梁、こんちわ。いるかね」「えー、オッ、こりゃァどうも、なんだ番頭さんじゃありませんかまァ、ちょいとお使いをよこして下さりゃァ伺ったんですがまァまァ汚ねぇとこで、お上ンなすって」……
6.「子別れ」の演題で放送されているが、「子別れ」の下の部分に上と中のあらすじを付けた構成である。市販されたテープでは「子は鎹」の演題が付けられている。
7.NHK・R 放送録音
8.「子別れ」の下を単発で演じた口演。枕の後噺全体の筋を簡単に演じてから下をきちんと演じたもの。
子別れ−3・下
1.TS-02831A2
2.1976.5.28,東横劇場,東横落語会第185回
3.24:07
4.V.VCK-857(CT),VDR-21032(CD),VICG-15061(CD)
5.出囃子 正札附
えー、ェッ、「斯くばかり偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり」子供が可愛いと言う親の情、こりゃァもう決して変わりがありませんで「じゃァ棟梁気の毒だが行って貰えるかい」「えー、良ろしゅうございます。一寸お待ちなすって下さい。あのゥ、あっ、おばさん。すいませんがねぇ今番頭さんのお供でねぇこれからァ、木場行かなくちゃァならねぇんだえー。えー、無尽屋がァ来るだろうと思うんですがねぇ、この帳面の間に、銭が挟んでありますがねぇ、えーすいませんこれ一つ、おな、お願いします、えー。いやいや遅くはなりませんからえっ、えーどうかひとつ、お願いをします。どうもお待ちどうさまで」……
6.前が押したのか、枕らしい枕もなしにすぐに本題に入っている。
7.V.VCK-857 CT COPY
8.全篇に亙りハム・ノイズがのっている。
子別れ−4・上
※上・中・下口演の上。
1.TS-02950C2
2.1976.11.9,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百七席」
3.49:22
4.CS.60AG-566,FCLY-1,FKLY-1(CT),SR.SRCL-3833(CD)
5.出囃子 三下りのさわぎ
古い川柳に、『弔いを山谷と聞いて親父行き』と言う。どう言う訳なのかてぇと、まァこのォあの辺は、ァッ、お寺は随分ございますが、そばに吉原と言う、えここィそのゥ若い方が、帰りがけに引っ掛かったりなにかする。えーそれを、警戒するために「何をアーいけませんいけませんアー。若い者をやると危ないからあたしが今日は行くから」なんてんで。お父っつぁんの方が、その送りをすると言う訳で。えーまァ昔とォ色々事柄が変わりますが、お葬式と言う様なものでもあたくしが覚えてでも、随分違いました様で。…… ……<お通夜の話〜噺家のお通夜〜見送りの話〜盛り菓子・折・小切手〜おこわ〜引導が済むと魔堂へ引き込まれ〜焼香の順にと洒落る大一座〜大一座黒豆のある反吐を付き>…… ……まァこの人間酔っ払って場所柄が悪いのがあの、お通夜で酔っ払ったりなにかしてね、アーこういうのは余り感心致しませんでね。“吝嗇な奴、哀れな酒にくらい酔い”なんと言う。「アーオーオーどうした、オー酒無いよおい持って来てくれ。何だ冗談じゃ無ぇぜおう、えー。オー俺ァ香典二千円持って来てあるんだからアー。後もう三本呑んでもいいんだ」なんてんで。何だかお通夜だか小料理屋だか訳が解らない事を言ってね。えこういうのは誠に見っともない訳で。えそれからまァ同し様なものでございますが、会葬者の酔っぱらい、これもどうも、当人だけは恐悦がってぇるが端の者は誠に迷惑で、「どォー、ハッハッハッハッ、いい心持ちだなァ、アッハ。今日ァの弔(ともら)いは万歳だねぇこりゃ」「ウフッ、冗談じゃねぇ、えー弔(ともら)いで万歳を祝すのはいけませんね。アーいけね、呑んだくれの熊さんだ。ありゃァうるさいからオウオウ、そっちィ行こうそっちィ」…… サゲ=「取り替えるんじゃねぇんだよ。褌と腹巻ィ下地がしみ込んでらァな。これ無駄なもんだから絞り掛けてやる」「ご冗談でございまして」敵娼が決まる、子別れの上でございます。
6.「圓生百席」の録音。百席では、上・中・下をそれぞれ一席としてカウントしている。この録音を元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語2」に載っている。
7.CS.60AG-566 DISC COPY
8.枕の大一座の部分で、亀谷さん京須さんが登場するが、これは録音スタッフの名で、内輪受けをしている。
子別れ−4・中
※上・中・下口演の中。
1.TS-02950D1
2.1976.11.17,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百八席」
3.30:38
4.CS.60AG-567,FCLY-1,FKLY-1(CT),SR.SRCL-3834(CD)
5.出囃子 おんことこと
一寸したはずみでこの人間という物は、どうも取り返しのつかないような事になる。こりゃまァ、普段の心掛けが肝心でございましょうが。もう面と言う字が付いたら、そろそろ気を付けなくちゃァいけないとおっしゃった方がある。幾つから付きますかと聞いたら、三十で付くんですね。三十面ってぇまして。でこれがァ四十になるてぇと「あいつもまァ、四十面ァ下げてあれじゃァしょうがないねぇ」なんてんで。四十ンなると面を下げる。また十年経って五十だと「どホォも、五十面ア担ぎやがってあれじゃァどうにも、困ったもんだねぇ」なんてんで。まァ気を付けていますがあんまり面を、下げたり担いでるのはあたくしは見た事は無いんで。そそっかしい人は電車ン中ィ置き忘れて、歩こうと思ったら見当がつかないなんてぇのは困りましょうが。こりゃァまァ譬えでございますが。人間と言う物は四十先に色気が出て、七つ下がりに降り出した雨、こりゃァどうも止まないてますな。七つ下がりと言うと今の時間で言うと午後の四時。えー止まぬはずだよ先が無いてぇ都々逸がありますが。川柳に『朝帰り、段々段々うちが近くなり』と言う。これはちょいときくと当たり前の事を言った様ですが、実にどうも穿ったもので。えーうちへ帰って、どう言い訳をしよう。こう言ったらこう言おう。ああ出たら、こう言う事に言い抜けをしようてんでちゃんと企画は立てますがね。さて段々うちが近くなると、この計画が、足元からぐらぐらっとこう崩れて来まして、うちへ着く時分には、どうにもこの、言い訳が付かないなんという。「ター、弱ったね。アーア、ぐれ出した時が良くねぇやな。弔ェの帰(けえ)りだから。嬶ァ怒ってやがんだろうな。…… サゲ=目が回るやっしょこほォーいほいって、唄が流行ったわね」「何だいこりゃ」これじゃァどうにもしょうがないと思っている元より、踏み台で来ていた女向こうから追ん出て行ってこれではならないと、酒を断って一生懸命に働く、子別れの中でございます。
6.「圓生百席」の録音。中は地味な部分であり、単独ではまず掛けられないのでこの様な通しの時でなくては演じられない。現在の所、中はこの録音でしか聞く事が出来ない。これを元にした速記は集英社文庫「圓生古典落語2」に収録されている。
7.CS.60AG-567 DISC COPY
8.
子別れ−4・下
※上・中・下口演の下。
1.TS-02950D2
2.1976.11.17,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第百九席」
3.29:04
4.CS.60AG-567,FCLY-1,FKLY-1(CT),SR.SRCL-3834(CD)
5.出囃子 めぐる日の
『子に飽くと申す人には花も無し』と言う、芭蕉と言う人の句がございますが。まァ子供衆と言うものを育てる、こりゃァ親が可愛いと思わなければ出来る事ではありませんで。えーまどんな子でも自分の子が一番可愛く見える。「どォもねぇ可愛いんでねぇ」なんてんで。あんまり顔を見て可愛くない子かありますがね。アー、親はそうは、決して思わない。ウーみんなその、えー『親馬鹿ちゃんりん蕎麦屋の風鈴』なんと言う譬えがあってね、第一あの子供をあやしている所なんてぇものは、端から見ていりゃァ馬鹿げたもんで。「オーら、どんどこどんのォどんどこどんのどんどこどんのどん」なんてんでね。子供を抱いて往来の真ん中を、踊りながら歩いてる。で子供があるからあれおかしくないんですがね、オらーあなたァ何にも子供無しで、洋服を着て、髭を生やした方が、往来の真ん中を「どんどこどんのォどんどこどんのどんどこどんのどん」「おいおい、およしおよし、もっとこっちィお寄り。危ないよ」なんてんでね。気違いと間違えられますがね。子供が可愛いという親の情愛これはもう、決して嘘は無いと言いますが、『斯くばかり、偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり』「棟梁、こんちわ。いるかね」「えっ、誰、あっ、こりゃァいらっしゃい。番頭さんじゃありませんかどうも。まァまァまァ、お上ンなすって」……
6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記は集英社文庫「圓生古典落語2」に収録されている。
7.CS.60AG-567 DISC COPY
8.
子別れ−5・上
1.TS-02985B1
2.1959.3.12,TBS,「お好み寄席」
3.25:00
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、古い川柳に、『弔(ともら)いを、ォーッ、山谷と聞いて親父行き』と言うのがございますが。えー昔とまァこのォ、ァーッ只今では、あのゥ、ァーッお葬式と言う物も大変違いまして、以前は、ァーッ会葬者には必ず、えーなにかしらこの、ァーッくれたもんでございましてね。えーおこわなぞを良く出しました。エヘン今は、えー強飯と言うと、こりゃァまァ、ァーッおめでたにばかり使いますが、えーおめでたの方はあのゥ、ァー大納言、えそれからあの小豆でございますね、赤いのが入りますが、えー、ああいうそのォッお弔いや何かの時にはァッ黒豆を入れます。でェーおこわにして、でこれを出しますが。えー入れ物はまァ、ァーッ折で、ある事もあればまた竹の皮包みで、出すという。えーお菓子の方はあたくしも良く存じておりますが。…… ……<土産の菓子・盛り菓子・小切手・葉書>…… ……そう言った様なこのォ、ォッお葬式でも、段々様式が変わって参りましたが。(カット)「どうもなんですね、人間なんてぇものはいつ何時どうなるかわからないよえー本当だよゥ。今日の仏様だってねぇまだお前惜しいやねぇ。お互いにあくせく稼いでばかりいたってしょうがないし、どうですィ一つこれからァー吉原ィでも繰り込もうか」なんてんでね。えー変なとこで無情を感じて、Pえーここでまァそのみんな、吉原なんぞへ出かけますところから、山谷見当はどうも、方角が悪いし、ェッ若い者には毒だと言うので、『弔(ともら)いを山谷と聞いて親父行き』なんと言う。えーお年寄りが大抵お出掛けんなりましたもので。えーまァこのォ、ォッ酔っぱらいてぇものは困りますが、あのお通夜やなんかで酔っ払ってるのはいけませんね。端にいる者は迷惑で、「いい心持ちだな、アッハハ。実にいいどうも今日の弔いは万歳だねこりゃ」「酷いね、へぇー弔いで万歳を祝してやン。呑んだくれの熊さんだよいけねぇいけねぇ、ありゃまたからまれるとうるさいから」…… サゲ=その代わり干し物や何かちょいちょい持って来る」「冗談じゃァねぇや」敵娼が決まるお馴染みの「子別れ」でございます。お時間でございます。
6.まだ若い頃の口演で口調が速い。(カット)に明らかなカットがある。
7.TBS・R 早起き名人会 放送録音 1989.7.16
8.この放送では単独で「子別れ・上」が出ており、連続での中・下の放送は無い。
子別れ−6・下
1.TS-02985B2
2.1967(?),TBS,「落語名人会」
3.24:29
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、昔からこの、正直に世渡りをすると言う。こらァもう一番、アーッ結構な事でございますが。ま嘘はいけないと言われますがしかしまァ、人間交際と言う物を致しますにはやはりィーッ多少は嘘と言う物が混じりませんと、やはり人とお付き合いが出来ないと言う「おや、どうも暫くでございます。どちらへお出掛けでいらっしゃいますか…… ……<よいしょでコーヒー〜今の内踏み殺せ>…… ……これじゃァ喧嘩ンなりますが。まァやはりそう言う所は嘘は必要でございましょうが。『斯くばかり偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり』。まァ子供が可愛いと言う親の情に、ゥッ嘘のございませんもので「どうも、お待たせしまして」「まァしかし棟梁大変だね」「何で」「いやァ、いちいち表へ出るのにゃァ、ァー、なんだねぇ頼んで出るのは面倒だろ」……
6.「早起き名人会」で放送されたものである。「落語名人会」で放送された音源である事に相違は無いが、番組調査によっても放送日が確定されていない。
7.TBS・R 早起き名人会 放送録音 1989.7.23
8.
子別れ−7・上
1.TS-02927D2
2.(1967.10.22),TBS,東商ホール,「落語名人会」
3.24:49
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、昔とは、ァーッ、色々、えー行事やなにかも、変わって参りましたが。ウーン、お葬式と言う物が、昔と、ァーッ只今とは、偉い違いで。えー、当節でございますと大抵、ェーッ自宅で、告別式と言う。まちょいと行って、ェッお焼香をすればそれで済んでしまいますが。えー明治の、末から、大正の初期頃までは、まだ、ァーッ昔のしきたりが残っておりまして。えー必ずあのお菓子を出しましたもので隅切りの、箱でございます。えー、これへお菓子が、三つ位入っております羊羹が一竿、それから、いまさかに、うちものと言う。こりゃ大抵決っている。でこの、お菓子を貰って、ェーッ、帰って来ようという。その以前は、えー、おこわなぞを出しましたもんだそうで。えー、おめでたい時のおこわと言うと、あれは、ァーッ、小豆でございますね、えー赤いのが入っておりますが、こういう不幸の時に出しますのは、ァッ黒豆でございまして、でこのおこわを、貰うと言う訳で勿論まァ遠い所をば、歩いて行ったりなにかしますから、おなかも空くから、ァッお弁当と言う訳でしょうが。えー、お弔(ともら)いに、エーッ、まァこの、ウーいらっしゃいますのに、やはりこの場所がありまして。『弔(ともら)いを山谷と聞いて親父行き』と言う、川柳がある。ぇ山谷と言うとそばに、ィッ吉原と言う物がありますので、若い者なぞはどうもそれ間違いを起こしていけないと言うので、えーお父っつぁんの方が、会葬に行くと言う訳で。『弔(ともら)いを山谷と聞いて親父行き』、“弔いを麻布と聞いて人頼み”なんと言ってね。「えーどこですお寺は」「えー何でも麻布絶口釜無村の木蓮寺だてぇが」「おーやおやそりゃ大変だアハハハ。とても行かれないからすいませんが名札をお願いします」なんてんでね。名刺を、ォーッ人に言付けて事を済ましてしまうなんと言う。えーこりゃァまァお弔いの風景でございますが。えーどうもあの酔っ払って具合の悪い場所と言うのは、会葬者の酔っぱらいやなにかは、ァッ具合が悪うございましてね。えー人の不幸で、いい心持ちンなっちまってね。当人だけは大変恐悦がってるが端にいる者は迷惑で。「どうも、ゲー、いい心持ちだな。実に今日の弔(ともら)いは万歳だねこりゃ」「呆れたね、弔いで万歳を祝してやん。アーいけねぇいけねぇ、呑んだくれの熊さんだよえー、ああいうのに突っかかるとうるさいよ」…… サゲ=その代わりこの人が入っていくと干し物やなんかはちょいちょい無く ネる」「冗談言っちゃいけねぇ」…子別れの上でございますがお時間でございます。
6.「落語名人会」での放送録音である。単独で上が掛かっており、連続で中・下が放送された記録は無い。
7.TBS・R 落語名人会 放送録音 1967.10.22 細田氏ライブラリー
8.25分の放送では、汁をかける所までは入らないらしく、屑屋の所で切れている。
子別れ−8・下
※放送の演題は「子は鎹」。
1.TS-12620A2
2.1968.9.13,NHK,ヤマハホール,東京落語会第111回
3.25:25
4.無し
5.出囃子 正札附
えー、昔からこの、ァーッ正直に、まこした事は無いと申しまして、まァ人間と言うものは、ァーッ嘘を付いたりなにかする事は、ァーッいけない事で。ェしかしまァ、ァーッ丸っきり嘘の無いと言うのも、ウッフンこれもなにかこの味の無いもので。やはりこの交際と言うものには、多少はその嘘が混じりませんと、オッ上手く参りませんもので「おや、どうも、暫くでございます。どちらィお出かけでいらっしゃいますか。えっ、アー運動で、どォもいつもまめでいらっしゃりますなァどうも。おやおやおや、大変お可愛いお子様で…… ……<よいしょでコーヒー〜泣いてんじゃない笑ってんだよ(「今の内に踏み殺せ」は無し)>…… ……こりゃァ喧嘩ンなりますがまァそういう所に、嘘と言うものが無いと具合が悪いもので、『斯くばかり偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり』ェ子供が可愛いと言う親の情愛に決して嘘のございませんもので。「棟梁、こんちわ」「おや、どうも、いらっしゃいまァまァお上りを」……
6.東京落語会で「子は鎹」の名で単発で掛けている。
7. NHK・R 古典落語 放送録音 1968.10.29 伊東氏ライブラリー→佐藤氏ライブラリー
8.元テープの保存状態が非常に悪く音飛びが多い。
子別れ・解説
上・中・下に別れ、通して演ずると二時間もかかろうと言う長編である。しかしながら、通しで演じられる事はほとんど無かった様である。放送の記録でも、上または下を単独で演じているものがほとんどだ。国立の落語研究会で三ヶ月にわたって演じた事があるが、それも放送でかかったのは上のみであった。その後通信販売で売られたレコードに下が収録されたものの中は日の目を見ていない。そんな訳で、通しで聞けるのは「百席」のスタジオ録音のものだけである。このような、一つの噺を幾つかに別けて演じられる噺は、私の場合、明らかに連続して口演する事を前提に行われたと考えられるものは1つのテイクとして分類する事にしている。また、単独で演じられた場合、例えば、上ならば、「強飯の女郎買い」「こわめし」「屑屋の遊び」などと、色々な題が付けられるがこれらも一切「子別れ・上」に統一している。もちろん下の「子は鎹」も同様だ。放送や落語会で使われた演題は尊重すべきであろうが、異名同噺を許すと分類や集計がややこしい事になってしまう。特にコンピューターなどを使って分類すると非常に厄介で、ここは割り切っているのが実情だ。「子別れ」と名のつく噺は合計10本の録音があるが、上の理由から全部で7テイク、内訳では上が4本、中が1本、下が5本である。 寄席などで単独に掛ける場合は笑いの多い上がどうしても回数が多い様だ。サゲを必要とせず、適当に切り上げる事ができるのも重宝なのであろう。圓生師の上でも切り場は二ヶ所あるのがおわかりだろう。続いて下の「子は鎹」である。放送では人情かがったこの部分は好まれていたようだ。しかし、近頃では「あきめくら」が放送禁止用語として引っ掛かってしまっておいそれと放送出来ないのは、ご時勢とは言え憂慮すべき事態と言えよう。この噺も「鎹」「玄翁」など、死語とは言えないまでも日常では使わない言葉がキーワードになっており、今後生活観にしみついた落語として残れるかどうか疑問が無きにしもあらずだ。
時代設定:明治の初期。学校が既に登場する。
舞台:上・葬儀場、吉原への道中、女郎屋店先。
中・熊五郎宅。
下・熊の長屋、往来、お光と亀の二畳間、鰻屋の二階。
登場人物:大工熊五郎、近江屋の隠居、紙屑屋の長公、弔い迷惑衆数名、牛太郎、女房お光、鎹坊や亀、仲裁人、年季明け女郎、番頭、鰻屋の店員、陰の出演・斉藤さんの坊っちゃん
ベストテイク:通しで演じているのは百席しかないが、スタジオ録音はどうも面白くない。上は問題なく「子別れ…1(上)」。それに「子別れ…2」を組み合わせて現在のベストとしたい。これだと抜けている「中」をあらすじとして聞く事が出来る。