三遊亭圓生音源データ
掛取萬歳−1
1.TS-02507C2
2.1968.12.21,TBS,人形町末廣,「土曜寄席」
3.39:42
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェッ、毎度我々がこの陰気陽気と言う事を、ァ申し上げますが物の陰陽と言う、こりゃァまあ何にでも有ると言いますが、ァッ一寸手を出しましても、上を向けて、陽になりましてこれをその伏せると陰になると言う。ァ喧嘩と言うものはあれは陽でございますから…… ……<喧嘩陰陽〜祭り陰陽>…… ……ま色々陰気陽気がありますが四季でございますね。えー、『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。ゥえーまごつきと言うのはこの十二月大晦日と言う。まァ今はそういう、ぇー、大晦日の、ォァーなにがございませんが。えー以前はどうもその大晦日と言うのはなかなか大変。(白湯を啜る)どういう訳で、大晦日がそんなに、賑ったかと言うとこれはそのお買い物は、今の様に、方々デバートやなんかいらっしゃるんでは無く、大抵は御町内うちでございます。この町内に住んでいれば、えー脇の町内へは、買わないと言う。又他ィ買いに行くと評判が悪いン「えーあいつ安いからてんで向うィ買いに行きましたよ。付き合いの無い嫌な奴だね」なんてな事を言ってね、人に悪く言われる。ま少ゥし位は、品物が落ちてもその町内の物を買うと言うのがまァ一つの義理でございまして。まァそりゃァ顔が利きますから「勘定をねぇ済まないが来月で」「えー結構でございます」なんてんで。で来月払おうと思った奴が、又翌月に伸びると言う。ぇこれが段々押せ押せンなりまして、一年の皺寄せと言う大晦日。こりゃァ大変なもので。まァあたくしの、子供の時代、えーまだまだこの大晦日に、ま商店で寝ると言う、お宅は少のうございまして、大抵夜明け頃までは、商売をなさいます。えー足袋屋さんだとか下駄屋さんなぞでも、大変でございましてね。何もそんなに押し詰まって買わなくてもいいとおっしゃる方も有るかも知れませんが。まやはりその、色々やり繰り算段てぇ奴でね、えー噺家の、女房なんぞは大変でございますよ。大晦日はこの質屋へ行きましてね。もう三時間から四時間位向うで粘って。…… ……<紋付き入替え〜川柳づくし>…… ……アー、大晦日になって、えー急にそれ、あたふたしている者が幾らもあったもんで「ちょいとどうするのお前さん。お前さん。やだねこの人は鼻糞ばかりほじくってんだね。どうするつもりだよ」「うるせぇなァ…。何を」「何をじゃァないよゥ。大晦日だよ今日は」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那) `芝居(酒屋の番頭)>…… ……サゲ=「見ねぇ。喜んで行っちまったよ」「まァ、お前もよっ程」「何もお前(めえ)が気取る事は無ぇやな」…掛け取りでございますがお時間が参りました様で……
6.人形町末廣からの生中継の録音。
7.TBS TV 土曜寄席 放送録音 1968.12.21
8.枕もたっぷりの良い録音であるが、枕をたっぷり演り過ぎた為か肝腎の萬歳が入っていないのが残念。
掛取萬歳−2
1.TS-02575B1,VT=TV-39059-1
2.1973.12.26,TBS,国立小劇場,落語研究会第70回
3.38:26
4.パイオニア.EE-004(LD)
5.出囃子 正札附
えー、年の瀬と申しますが、ウー追い追い、ェーッ押し詰まって参りまして、えーしかしまァ昔と違いまして、今は、アアッ、大晦日になってまごつくなんと言う事は、もう皆無ございませんが。えー、あたくしども覚えましても、大晦日と言うとこりゃァもう、ァー戦の様な騒ぎで。お商人なぞはまァ、とにかく、ゥー寝ると言う事は、ございませんで。大抵、夜、夜明かしでございましてね。えーお店の前なんぞはもうこの黒山の様な人だかりがして、ぇ足袋を一足買うにも、大晦日まで、えー、押し詰まって買うと言う。でもっと何故早く買わないんだとおっしゃるかも知れませが、で早く買える方は宜しい訳なんで。でつまりィ、どうにもこうにもならないのがあってね(白湯を啜る)いよいよせっぱ詰って、もうこれだけはしょうがないからと言うんで、えぇ買いにお出でンなる。もう売る方も買う方も目の色を変えまして、えー明け近くまで、ェーごたごたしていようと言う訳で。えー、また、ァーッ、借金取りと言うものが来ますがこれもなかなか大変なもの。えー、年の瀬ンなると、この借金取りと言うものは実に困ったもので。えーどういう訳でああいう鳥が飛ぶんですかな借金鳥(取り)と言う。えー、こっちはまァ、取りに行った事は有りませんが取られに来た事は随分、経験がございますが。一年の締め括りだと言う訳で。えーそれと言うのはお買い物が今の様でございません、大抵、ェッ町内うちでものを済ませると言う。まァ、遠い所へ買いに行ったりなにかすると評判が悪い「どうもあいつは嫌だね。えーっ、わざわざお前脇町内まで買いに行く事は無(ね)ぇやねぇ。どうせ同しな商売が、町内にあるんだからそんな思いをしなくっても、少ゥし位高くても我慢をするがいいやな」なんと言う。えー大変評判を悪くされまして。えー義理がありますからどうしても、間近なとこで、お買い物をなさると言う訳で。(白湯を啜る)従って顔が利きますから「まァ今勘定は困るんだが、来月でぇどうだろう」「へえーっ宜しゅうございます」なんてんで。でぇ向うでも、信用して待ってくれる。でこれが来月ンなってはやらはァ、払えればよろしいんですが、えーもう一月延ばし、もう少しと言う奴が、段々段々こう押せ押せンなりまして、いよいよ大晦日と言う。…… ……<川柳づくし>…… ……「どうするんだよちょいと。お前さん。ちょいと。ゥンこの人は呑気だねぇ、鼻糞ばかりほじくってんだね。どうするんだよ」「うるせぇなァ…。何を、え、何を」「何をじゃァないよゥ。大晦日だよ今日は」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.国立小劇場、落語研究会の録音。
7.TBS TV 落語特選会 放送録音 1988.12.26
8.萬歳まで一通り入っているが、枕は余り調子が出ていない。なんと高座から4日後の1973年12月30日に「年忘れお待ちかね名作寄席」で放送、1988年に再放送された。
掛取萬歳−3
1.TS-02570C1
2.1976.11.20,横浜教育文化センター,横浜落語会第2回
3.29:47
4.To.TY-60024,ZF23-314(CT)
5.出囃子 正札附
えー、先月から引き続いてまた、ァーッ雨でございまして。えー御当地はあたくしは大変、懐しい土地でございまして。本当のあたくしの初舞台と言うのは、横浜でございまして。…… ……<新富亭の思い出話>…… ……えー昔からこの良く陰気陽気と言う事を申します。ものの陰陽と言うこれは何にでもありますが。えー『春椿、夏は榎で秋楸、冬は、梓で、暮れは柊(しいらぎ)』と言う。これが本歌でございましてこれをその、捩りまして、式亭三馬と言う人が、『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮はまごつき』と言う。えー狂歌を読みましたが、ァー暮のまごつきと言うのはもう間近ンなりまして、十二月大晦日と言う、こらァ大変な厄日で。今の方がお聞ンなって何が、大晦日がそんなに大変なのかと、不思議にィ思うでございましょうが。ま大抵お商人なぞは夜明け頃までは、えー御商売をしていらっしゃいまして、(白湯を啜る)宵の内から早く寝るなんてぇ訳は、無いんで。えーとにかくゥ、大変ですな商売とそれからあの、勘定を取ると言う。えーどうしてそんなに勘定を取るのが忙しいのかてぇと、こら前々から押せ押せンなりまして、以前は脇へ、買いに行ったり何かすると評判が悪かったんで、一つ町内にいれば、えーその品物があればそこで買うと言う訳で、「あそこはどうも高いから」なんてんで、他へ行ったり何かすると「嫌な奴だね。えー、ウー脇町内まで買物に行きやがったてんで、義理を知らねぇ奴じゃねぇか。いいじゃねぇか何も少ゥし位の事は我慢をして町内で、買物するがいいがどうもあいつは嫌な奴だ」なんてんで。悪く言われますので、まァどうしても、ゥー自分の間近で、物を買うと言う訳で顔が利きますから「今月は具合が悪いんだが、来月で」「へえーもう結構でございます」なんてんで。向うも勘定を待ってくれる。大変都合が宜しい。ぇー翌月ンなって払えば何の事は無いが、どうも具合が悪いからもう一月待って貰いたいてんで、でこれが段々こう押せ押せンなって、いよいよこのどん詰まりのじょう大晦日と言う。こらァ大変で、えー取る方も取られる方も必死(しっし)でございましてね。 …… ……<川柳づくし>…… ……「どうすんだよちょいとお前さん。ちょいと。嫌だねンこの人は鼻糞ばかりほじくってんだ。どうするんだよ」「うるせぇなァ…。何だいどうするどうするって」「今日は大晦日だよ」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.横浜落語会の録音。冒頭で昔の横浜の寄席の話をしている。義太夫を抜き、芝居の部分を下座無しで簡単にして時間を縮めて演じている。
7.To.TY-60024 DISC COPY
8.簡略形であるが、枕など調子の良い高座。
掛取萬歳−4
1.TS-02857B3
2.1960.12.26,東横劇場,年忘れ東横落語会
3.28:10
4.CS.50AG-906
5.出囃子 正札附
えー、ようこそ、ァッ、お運びでございまして、えー、お陰様で、ぇー、先月の、東横落語会で、えー、受賞を致しまして、えーこれは、ァッ、お客様方の皆お陰で、ございまして。えーいくら一生懸命に演りましても、聞いて下さいますお客様が、えー悪いと、悪いとなんてぇと、申し訳がないが。えー、これはまァ、ァーッ、圓生が受賞致しましたのは、東横のお客様のお陰とあたくしはもう、信じておりますので、えー、決してお世辞ではございませんで、まとにかく、東京中ですぐった、みなもう聞き上手のお客様ばかりでございます。えーまその御礼として、何か差し上げようとォも考えましたが、かいってまァそれでは失礼にあたるから、えー何かま頂戴した方がが良かろうと言う事に、ィーッ、決まりました。えー、有難う存じましてこれから厚く御礼を申し上げます。…えー、今晩は、臨時の会でございまして、えー年忘れと言うので、大喜利に、ィーッ「関所」と言うのを演りまして、みな、ァ芸を演ろうと言う訳でところが、生憎あたくしが、また、芸術座の方へ、えー生捕られまして、今俳優でございまして。えー、ェーッ、今度はテアトル賞を取ろうと言う訳で。…エヘヘッ、…… ……<大喜利に出られない言訳>…… ……ま陰気陽気と言う事は、毎度噺家が申し上げておりますが。陰陽は何にでもあると言いますが。四季で、陰気陽気がございますね。『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』なんと言う。まごつきと言うのはあの大晦日と言う。我々ンとっては誠に厄日でございましてね。川柳に『大晦日首でも取って来る気なり』なんてぇのがある。「どうもあすこのうちは図々しいよいつまでたったって払やしないいやいけないいけない今夜あたしが行くあァ、誰が何と言っても今夜取って来ますかから、もしいけなければァ首でも何でも持って来るから」なんてんでね。どうも大変な意気込みで、お出掛けンなりますが。また、ァー払う方でもしゃァしゃァしたもんで「しょうがねぇやね、無(ね)え物を持ってこうったってそうはいかねぇやねアーッ。まァ首でも何でも持ってってくれ」なんてんでね。『大晦日首で良ければやる気なり』なんと言う。こう言うアーッ世の中には自棄な奴があるもんで「ちょいとお前さんどうすんだよ。ちょいと。何だい鼻糞ばかりほじくってさァ。どうするんだよ」「うるせぇなァ…。何がどうするん」「大晦日だよ今日はさ」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.東横落語会の録音。前回の東横で「首提灯」で芸術祭賞を受賞している。義太夫がカットされている。
7.CS.50AG-906 DISC COPY
8.音が痩せているが、若々しい高座である。
掛取萬歳−5
1.TS-02925D1
2.1960.12.24,NHK,鈴本演芸場
3.29:47
4.Col.FS-7144,CHY-9056(CT)
5.出囃子 正札附(別の録音を継いである)
えー、ェッ、毎度この陰気陽気と言う事を、ォーッ、申し上げますが陰陽と言う、まァこのゥ、ァーッ、何事によらず、そう言う事がございまして四季で、ェッ、陰陽があると言う。『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。まごつきと言うのはこのゥ、ォッ十二月の大晦日と言う。我々にとっては誠に厄日でございましてね。えー取る方も、ァッ夜っぴてこの、えー方々お金を集めて歩こうと言う。『大晦日、首でも取って来る気なり』なんと言う川柳がある。「ええっあすこのうちはねぇ図々しくてよこしませんよ駄目だよアーいやァお前が行ったって駄目だあたしが行くからあっ。今夜は何と言っても金を取って来るから。ウーン愚図愚図したらァあたしは首でも何でも持って来るから」なんてんでね。ハァ大変な意気込みでお出掛けンなりますが。また、ァ払う方でもしゃァしゃァとしたもんで「まァしょうがねぇやアーッ、無(ね)え物を持ってこうったってそうはいかねぇやなアーッもう、どうせしょうがなきゃ首でも何でも持ってってくれ」なんてんでね。『大晦日首で良ければやる気なり』なんと言う。随分こう言うその、ォーッ自棄ノやんぱちな奴がありましてね。我々の方のこれが材料で「ちょいとお前さんどうするんだよ。ちょいと。…だ汚いねこの人は鼻糞ばかりほじくって。どうするんだよ」「うるせぇなァ…。何が」「何をじゃァないよ。大晦日だよ今日は」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.「掛取萬歳…4」の東横落語会の録音の前々日の録音に当る。死んだ振りの部分を簡単にして、他の部分を全て演じている。義太夫、芝居共に鳴物入りである。
7.Col.FS-7144 DISC COPY
8.余り録音状態の良くないエアチェック・テープからの復刻であるが、30分で掛け取りの部分を全て演じている貴重な録音。
掛取萬歳−6
1.TS-02936C1
2.1975.9.3,1976.4.1,2,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第三十九席」
3.49:15
4.CS.SOGZ-135,SR.SRCL-3817(CD)
5.出囃子 餅つき 受囃子 一つとや
四季を詠みました歌に、『春椿夏は榎で秋楸、冬は梓で暮れは柊(しいらぎ)』と言う。えこの歌を捩りまして、式亭三馬と言う人が、『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。えー誠に上手い事を言いましたが。暮のまごつきと言うのは、言うまでもなく十二月大晦日と言う。まあ今でも大晦日と言うものは、大変だなんてぇますが昔とは比べものになりませんで。えぇーあたくしども覚えましても、一時二時頃に寝るなんてぇのは早い方。どうしてそんなに遅くなるのか、やはりま色々そのゥ、買物だとかごたごたしておりましてね、あたくしのゥ、知っている所に…… ……<足袋屋の話〜馬樂立て籠もる>…… ……えー、そんな事は我々の方では、朝飯前の事で。「困るじゃァないかねぇー。何とかして返して」「いやハァンねヘッ返してくれったってねぇ、銭が無いんですよ」「それじゃお前さんあんまり義理が悪かろう。ねぇ、ほんの、五六ン日だってぇから貸したんじゃァないかそれがこんなに長くなっちまって大晦日に払えないじゃァ困るン」「いや困るったって、あたしも銭が無くて困ってるン」「チェッ、ン当にお前さんてぇ人はどう言う訳なんだね。えー。あたしゃァねあれは自分のもんじゃ無いんだ人の物なんだ。あの金が無きゃァあたしゃァねぇ、申し訳に首でも縊らなきゃァならないん」「まァー、ここんとこは何とかそんな事にでもしといて頂きたいン」なんてんでね、まァ世の中には図々しい奴があるもんですが。『掛け声に嘘を付く棒さすまたや、取ったやらぬで明かす年の夜』、『掛け声も、提灯の弓押し張りてきたなし返せ返せとは言う』、『味噌漉しの底に溜りし大晦日、越すに越されず越されずに越す』なんと言う。なるほど上手い事を言ったもんで。えー、どうしても越せないったって、時間が来ちまえばどうしたって厭でも応でも、元日ンなってしまうんですがさて、それまでのやっさもっさが容易じゃありませんでね。川柳なぞにもありますが。…… ……<大晦日内儀傷寒だと脅し〜川柳づくし>…… ……「ちょいとお前さんどうすんだよゥ。ちょいとォ。チュッ、もう焦れったいねこの人は、鼻糞ばかりほじって、どうするの」「うるせぇなァ…。何だいどうするどうするって」「今日は大晦日だよ」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語1」に収められている。録音年月日が何日かに別れているのは、下座とのからみを別々の日に録音した為と思われる。
7.CS.SOGZ-135 DISC COPY
8.さすがに「圓生百席」だけのことはあり、下座総出演で全ての掛け取りを演じている。
掛取萬歳−7
※放送の演題は「掛け取り」。
1.TS-02980B1
2.(1969.11.28),NHK,スタジオ,客なし,「芸能百選」
3.28:29
4.なし
5.出囃子 なし
えー、ェッ、毎度この、陰気陽気と言う事を申し上げますが。物には陰陽と言うものが無いと、ァーッ、いけませんで。えー一寸としてこの、手を出しましても上を向けて陽で、伏せるとこれが陰になりますが。喧嘩と言うものはあれは陽でございますから…… ……<喧嘩陰陽>…… ……えやはりこれが陰気陽気でございますが。えー、四季で、陰陽があると言いますが。『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。まごつきと言うのはこの十二月の大晦日と言う。えー、なたがたの方にはまァ覚えがございますまいが、こなたがたの方は身にしみて経験がありまして。えー『味噌漉しの、底に溜りし大晦日、越すに越されず越されずに越す』と言う。上手い事を言ったもんで。ま今は、えー、大晦日で、勘定がどうも何して困るなんと言うのも、少なくなりましたが以前は、えー、お買物は大抵町内うちで済ませる訳で。でぇー、脇町内へ買いに行ったりなにかすると「どうもあいつは嫌な奴だねぇ、えー、いいえあすこが高いからてんでね隣町ィ買いに行きやがる。義理を知らねぇ奴だよどうも。ああいう奴は付き合えねぇ」なんてんでね。えー大変悪く言われますのでまァ少ゥし位は高くても、町内内で、えー、同しとこィ住んでんだから、ァー、買ってやろうと言うような訳で。まァ従って顔が利きますから「今月は勘定が具合が悪いんだが」「いえいえ。えーっ来月で結構でがす」「そうかじゃァ、来月に払いますから」で品物を借りて来る。えー払おうと思うとどうも具合が悪いから「もう一月じゃァ一つ延ばして貰えないかい」これが段々押せ押せンなりまして、いよいよこの大晦日。一年の締め括りと言うので、こりやァ大変で。…… ……<川柳づくし>…… ……こう言うのが我々の材料で「どうするんだよちょいと、お前さん。ちょいと。ゥン汚いねこの人は鼻糞ばかりほじくって。…何をするんだねぇ。汚いじゃないかァ。どうするつもりだよ」「なんだい、何をどうするん」「何をじゃァないよゥ。大晦日だよ今日は」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜芝居(酒屋の番頭)>…… ……サゲ=「見ねぇ。気取って帰(けえ)っちゃった」「まァ、お前もよっ程」「何も手前(てめえ)が気取る事は無ぇやな」…御馴染みの掛け取りでございます。……
6.NHKのスタジオでの収録で、客はいない。芝居で切っている。下座に杵屋栄三衛門、福原鶴助、福原鶴一郎、杵屋栄二、藤舎呂声、望月太八といった本職を従えての高座である。
7.NHK TV 芸能百選 放送録音 69.11.28 佐藤氏ライブラリー
8.萬歳が入っていないが、さすがに芝居の部分はみっちりと演じている。
掛取萬歳−8
1.TS-02981A2
2.(1969.12.31),TBS,「大晦日お好み寄席」
3.24:13
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェッ、毎度この、陰気陽気と言う事を申しますが。えー、まァ物には、ァーッ陰気陽気が無いと、いけませんもので。えー「これからどうだい一つ、アーッ遊びに行こうじゃねぇか」なんてな事を言う。え、向こうへ行って、綺麗な、婦人を何して、ェーッわっと騒ぐなんと言うこれがその陽気ンなりまして。でいよいよ帰る時に、「割り前はいくらンなるい」なんてぇ事ンなるとね、これはもう陰気ンなりますが。まァ、ァー何事にも、ァ陰陽はあると言いますが。えー四季で、陰気陽気がありまして。『春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。まごつきと言うのはこの十二月大晦日と言う。えー今はそういう事は無くなりましたが、以前はこの大晦日と言うものはなかなか大変でございまして。まァどちらの、商店でもみな、えー夜っぴて、ェーッ商いをすると言う訳で。まァ何でそんなに差し迫って行くのかてぇとつまり色々都合がありましてね。えー払う物や何かの、ォー何を、致しまして、それからまァ、金がこれだけ残ったから、ァーッ、買いに行こうと言うので。夜明け近くになりましてやっと買物が出来るなんと言う。えー、大晦日と言うものは一年の皺寄せと言いますが。昔は町内内で、物を買いますが、ゥエー顔が利くから「今月は具合が悪いが来月で」「えー結構でございます」なんてんで。で来月払おうとするがどうも具合が悪い。押せ押せンなりましてこれが大晦日になる。…… ……<川柳づくし>…… ……「お前さんどうするの。ちょいと。何だいこの人は鼻糞ばかりほじくってんだな。どうするんだよ」「うるせぇなァ…。何をどうするんだ…」「何をじゃァないよゥ大晦日だよ今日は」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)>…… ……サゲ=「おぼつかないーっ」「おぼつかなんだらあかんやないか」…追い追い掛け取りが参ります、お噺でございますお時間が参りました様で、失礼を致します……
6.録音年月日は不明。大晦日の特番で放送されている。
7.TBS R 大晦日お好み寄席 放送録音 1969.12.31 佐藤氏ライブラリー
8.義太夫で切れる珍しい録音であるが、義太夫は下座入りで演じている。
掛取萬歳−9
1.TS-02983B2
2.(1974.12.15),NHK,スタジオ,客なし
3.34:45
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェッ、追い追い、ェーッ押し詰まって参りまして。この十二月の大晦日と言うものは、えー、あなたがたには余りィ、ィーそういうことは、ァこざいますまいがもう、こなたがたにとりましては、ァー身に覚えがあってね。えー、大変な、アーどうもその、厄日でございますな大晦日と言う。でどうしてそんなに、大晦日に、ェえらいことになるかてぇとこりゃ前々から、勘定が押せ押せンなりまして、今の様に、デパートへ行って、買物をするなんと言うんでは無く大抵御町内で、えぇ顔見知りでございますし、「どうだいー今月、一寸勘定が具合が悪いが、来月に延ばして貰えたら」「えーえー、もう結構でございます」なんてんで。で向こうも知っているから、そりゃ融通をしてくれる。ところがその翌月、払えれば何の事は無いんですがどうもこの、ォ具合が悪いから「もう一月延ばして貰えないか」これが段々段々押せ押せになって、いよいよ大晦日と言う事になる。アーこらァもう戦の様でございましてね。ぇー勘定取る方取られる方も共に必死と言う訳で。…… ……<川柳づくし>…… ……「どうすんのお前さん、ちょいと。ちょいと。なんだねこの人はまァ、鼻糞ばかりほじくって。どうするつもりだよ」「うるせぇなァ…。何をどうすんだ…」「何をじゃァないよゥ。今日は大晦日だよ」…… ……<死んだ振り〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.NHKのスタジオでの客なしでの口演。全編を演じている。
7.NHK TV 放送録音 1974.12.15 佐藤氏ライブラリー
8.義太夫と芝居の下座も本格的に演じている。
掛取萬歳−10
1.TS-02986C2
2.1965頃,ビクター,スタジオ,客なし
3.25:22
4.V.JV-125,JV-1293,SJV-6553,VCK-527(CT),VCK-3038(CT)
5.出囃子 曲目不明
毎度この陰気陽気と言う事を申しますが。物の陰陽と言う四季にございますが、『春浮気夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。十二月の大晦日でございますがもう我々の方は、ァッ身にしみて経験がありますよ。「ちょいとお前さんどうするんだよゥ」「何を…」「何をじゃァないよゥ大晦日だよ」…… ……<狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜義太夫(大坂屋の旦那)〜芝居(酒屋の番頭)〜萬歳(三河屋)>
6.ビクターの一連のスタジオでの録音。レコードの片面に収める為に枕がほとんど省かれている。
7.V.JV-125 DISC COPY
8.義太夫と芝居の下座は本格的に演じられている。
掛取萬歳−11
1.TS-12534C1
2.1966.12.18,TBS,人形町末廣,日曜寄席
3.24:07
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、昔からこの、陰気陽気と言う事を申しますが、物の陰陽と言うものは、ァーッ手の裏を返してあると言いますが上を向けると陽、伏せると陰になりまして。喧嘩と言う物はあれはどうしても陰の手を持って行かないと、ォッ収まりがつかない…… ……<喧嘩陰陽>…… ……四季で陰気陽気がございますが,『春浮気夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつき』と言う。この十二月の大晦日と言うのが誠に厄日でございましてね。えー『大晦日、ァッ首でも取って来る気なり』なんと言う、川柳がありますが「あすこのうちは図々しくってよこさないんだいぇ今日はあたしが催促に行きますから。どォーもうよこさなければ首でも何でも持って来るから」なんてんでね、大変な勢いで出掛けます。また、ァーッ、払う方もしゃーつくなもので、『大晦日、ァッ、首で良ければやる気なり』なんと言ってね、「もう、首でも何でも持ってってくれ」なんてんでね、少し自棄っぱちンなってんのがある「どうすんだよちょいとお前さん。…ちょいと。…ンだねぇこの人は鼻糞ばかりほじくってんだねぇ。どうするんだよ」「うるせぇなァ。…何をどうするン」「何をじゃァないよ大晦日だよ今日は」…… ……<死んだふり〜狂歌(家主)〜喧嘩(魚屋)〜芝居(酒屋の番頭)>…… ……サゲ=見ねぇ、気取って帰(けえ)っちゃった」「まァ、お前もよっ程」「何も手前(てめえ)が気取る事は無ぇ」…お馴染みの掛け取りでございますがお時間でござい……
6.人形町末廣からの生中継の録音。時間の関係で途中で切っている。
7.TBS・TV 日曜寄席 放送録音 都家歌六師ライブラリー
8.芝居の部分に下座が入っている。
掛取萬歳・解説
この噺こそ際物、暮になると必ず出てきた噺である。10数本の録音が有るが、レコード用のスタジオ録音物を除けば全て暮の録音である。現在でも多くの人が、借金の断りの部分を演じているが、圓生師の様に延々と演る人は少なく、まして萬歳まで演る事はほとんど無い。『掛取萬歳』とするからにはサゲは萬歳が出ないとまずいが、『掛取萬歳…1』の様に時間の都合で演じなかったものもあり、私の場合、圓生流に演じたものを、たとえ萬歳まで演じてなくとも『掛取萬歳』とし、軽く演じているものを『掛け取り』として別けている。全ての内容をフルセットで入れているのは百席の録音だが、義太夫で本当の太棹を入れた物や、歌舞伎の下座を呼んで演じたものなど、夫々趣向に凝っていてバラエティーに富んでいる。しかし、本格的にやればやるほど堅苦しくなってしまう様な感じがするのも事実で、寄席の下座を工夫して演じる程度にしておいた方が逆に気楽に楽しめる様な気がするのだが、いかがだろう。
時代設定:江戸時代。
舞台:長屋の八五郎宅。
登場人物:八五郎、その女房、狂歌家主、喧嘩好き魚屋の金さん、義太夫好き大坂屋の旦那、芝居狂の酒屋の番頭、萬歳好き三河屋の旦那。(時に欠席の場合有り)
ベストテイク:全て演じていてライヴと言う事では『掛取萬歳…2』だが、余り調子が良いとは思えず、肝腎の萬歳のサゲ近くで細かな言い違いがあるのがまずい。雰囲気は『掛取萬歳…1』と『掛取萬歳…3』が良いが、1は萬歳が抜け、3は義太夫が抜けてしまっている。