三遊亭圓生音源データ

鰍澤−1

1.TS-02507B3

2.(1972.11.3),ニッポン放送,「演芸大行進」

3.22:50

4.Ca.C18G-0325,PN.20P-2216(CT),PC.18P-60021(CT)

5.出囃子 正札附

えー、『鰍澤』と言う、ァーお噺でございますが。只今ではこのゥ、ォー身延山へ御参詣になりますに、電車と言うものがありまして、ま日帰りも出来ると言う誠に便利なもので。え昔は、ァーッ何にも乗り物がございませんで、一つだけありましたのがあの鰍沢の船と言いまして、東海道の岩淵まで、流れる急流がありますが、あれは漕ぐんじゃァなく突っつく船で、船頭さんが棹をこう構えて待っている、岩へぶつかりそうになると、パッ、パッと、挿しながらこう避けまして、まァ、いい景色を眺めながらァーッ短時間で、えー岩淵まで行けると言う誠に重宝ではあるが、あすこで、命を失った者がどの位あるか分らないと言うので、昔から『乗るも馬鹿乗らぬも馬鹿』と言う、譬えがありますがまァ一度はいいが、度々は危険だから、ァーッ止した方がいいという訳で。まその他には何にもございませんで。ゥえー冬になりますてぇとまた雪の酷(しど)い所で、えー雪下ろしの三度笠と言う。廻し合羽に道中差。足拵えを厳重に、小さな振り分けの荷物と言う誠に、旅馴れた形でございしてまァ、お詣りをする順序と言うものは、大抵決っておりまして、えー青柳の昌福寺へお詣りをしてそれから小諸山へ行って毒消しの御符ゥを受け、(白湯を啜る)法論石へお詣りをして、一旦鰍沢ィ出てそれから、えー御本山へ、お詣りをすると言うこれはま順序でございますが。法論石を出ましたのがもう今の時間で言う、三時を一寸、回っておりまして、雪はどんどん降っているが、知った道でございますから、…もう、人家のある所ィ出なきゃァならないと思うが行けども行けども、更にございません段々道は狭くなるそのうち、日は暮れかかってくる。風を交えて、ピューーーッ、と言う。ハァー弱った事になったがどうしようかと、ひょいっと見ると、遥か向うにちらっと、明りが見えますが。アー地獄で仏とはこの事で、……

6.放送の時間枠に合せて、手短に演じている。

7.ニッポン放送 演芸大行進 放送録音 1972.11.3

8.短い時間で良く纏っている。客は非常におとなしく客なしのスタジオ録音の様だ。

鰍澤−2

1.TS-02601D4

2.1962.8.24,キング,キングレコード・スタジオ,客なし

3.31:44

4.K.KR-5001,KR-5120,KR-5206,CKS-209(CT),K18H-5208(CT)

5.出囃子 正札附

陰気陽気と言う事を申しますがお宗旨に、陰陽がございますが。お題目と言うものは大変お陽気でェーお念仏が陰気と言う。ぇー、日蓮上人と言う方が法華経をお拡めンなりまして、池上で、ェッ、お亡くなりになりまして。ま、えぇ関東の者は、ァッ、あすこへご参詣になれば良いと申しますがやはり、御本山まで行かないと御利益が薄いように思いまして、身延へ参りますがまァ今は、電車と言うものがァッございますので、お詣りなぞには誠に便利ですが昔は、乗り物と言う物は何にもございませんで。一つあったのが鰍沢の船と言う。東海道の岩淵まで、急流をこう下って行きます。底の平らなぺか船と言いまして。いい景色を眺めながら僅かの時間で、行かれるから昔としては大変便利ではあったが、危険な船でございますん…。漕ぐのでなく、岩をこう突っつきながら、避けて急流を下りますので、まァどの位命を、ォッ失った者があるか分らないと言うので、『乗るも馬鹿乗らぬも馬鹿』と言う、譬えがありますが。まその他に、乗物と言う物はあすこは一切無かったもので。お詣りを致しますのは大抵、順序が決っておりまして青柳の昌福寺、それから小諸山へ詣りまして毒消しの御符ゥを受けて、法論石へ行ってこれから一旦、鰍沢へ出て、御本山へお詣りをすると言うのがま順序で。雪の、酷(しど)い時分でございまして。雪下ろしの三度笠、廻し合羽に道中差、振り分けの荷物、それに、足拵えを厳重に致します誠に、旅馴れた形で。法論石を出ましたのが今の時間で言うもう、午後三時を過ぎておりますが。雪の中を、鰍沢へ出ようと行けども行けども、更に人家の有る所へは出ませんそのうち、日は暮れかかる、雪は益々、風を交えて強(つお)くなりましてピューーーッ、と吹っかけて来る奴。「さァーこんな所でまごまごしていれば凍え死にをしなければならないがどうしたものか」と、辺りを見回すと遥か向うにちらっと、明りが見えまして。地獄で仏とはこの事。……

6.LP時代になって「百川」と共にスタジオ録音として初の録音。この後、ビクターへ9席録音する。

7.K.KR-5001 DISC COPY

8.初のスタジオ録音で、慣れないせいか口調が堅い様である。

鰍澤−3

1.TS-02720B1

2.1967.12.15,NHK,ヤマハホール,東京落語会第102回

3.34:27

4.Po.CN-6515(CT),東京音楽工業.CR-1442(CT)

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、毎度この、陰気陽気と言う事を申し上げますが。えー、お宗旨に、陰ゲー、陰気陽気がございますが。南無阿弥陀仏と言う、ゥーお念仏の方は、陰気でございますが、ァーッこれがお題目と言うと、大変陽気ンなります。えー、まァアー日蓮宗と言う、お拡めンなりましたのは申し上げるまでもございませんが日蓮上人で。安房の国、長狭の郡小湊と言う所で、ェッお生まれンなりまして、……  ……<日蓮上人出生〜夢知らせ〜日蓮上人御難の記録>……  ……御入滅になりましたのは武州池上の庄、本門寺で、御入滅になりまして。であれを経宗の二ヵ寺と言うんだそうで。関東の者はわざわざ、甲州までお詣りをしなくても、…池上でいいんだと言いますがしかしどうも、本山まで行かないと御利益が薄いように思いまして、ぇーっみな、御信心の方はお出掛けンなりますが。今はこのゥ、身延鉄道と言う物が出来まして、ま横付けになって、お詣りが出来ると言う便利でございますが昔は、あすこには乗物と言う物は何にもございませんで。一つだけあったのが鰍沢の船と言う。これは東海道の岩淵まで、急流をこの下って行く。……  ……<船の解説>……  ……ま便利ではあるがどうも危険でございまして。命を失った者がどの位あるか分らない。でこの昔からこの船は『乗るも馬鹿、乗らぬも馬鹿』てぇこ、譬えがありまして、一度は乗って見るもいいが、度々乗るべき物では無いとされておりますが。えー、その他は乗物と言う物は昔は何にもございません。ましてこの雪の降る時分には、お詣りをするにも容易では無い。雪下ろしの三度笠と言う、廻し合羽に道中差、足拵えを厳重に致しまして小さな振り分け荷物と言う誠に、旅馴れた形で。お詣りをする順序と言うものは大抵決っております。青柳の昌福寺へお詣りをし、でそれから、小諸山へ詣りまして毒消しの御符ゥを受け、法論石へお詣りをし、で一旦鰍沢へ出てそれから、本山へ行こうと言うので。法論石を出ましたのが今の時間で言うもう午後、三時を一寸回っておりますか。雪は降っておりますが、自分ももう知った道で、やって来たがいつまでたっても、人家の有る所ィは出ませんそのうち段々こォう道は細くなる、日は暮れかかる、風を交えてピューーーッ、という。「…妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経、妙法蓮華経南無妙法蓮華経。ハァー、こりゃァ弱ったなァどうも、これだけ歩いているんだがらもう人家の出ると、有る所ィ出るつもォなんだけども、どっかで道を間違えたなこりゃ。チェッ、偉い事になった日は暮れかかってくるし、愚図愚図していると凍え死にをしなくちゃァならないが、どっかに」……遥か向うにちらっと、明りが見えたん。地獄で仏とはこの事で。……

6.東京落語会の録音。出囃子の終りが嵌っていないのが珍しい。ポリドールと東京音楽工業から出ているカセットは3箇所のカットがある。

7.NHK R 演芸特選 放送録音 伊東氏ライブラリー→佐藤氏ライブラリー

8.枕も長く丁寧な口演。

鰍澤−4

1.TS-02734A1

2.1958.1.22,TBS,人形町末廣

3.24:47

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、まあこのォ、ォー妙宗の方は良く、えー、身延へェッご参詣になりますが、まァ今ならば、ァー電車がございまして、横付け同様でございますから、ァお詣りをすると言っても何の事はございませんが、昔はァーッあすこはどうも、なかなかどうも交通が不便でございまして、えー鰍沢の船と言うものだけがあったそうですがその他には、何にも、オーございませんで。お詣りをする順序と言うと大抵決っておりますが。青柳の昌福寺へ、お詣りをしてそれから、えー小諸山へ詣ります。毒消しの御符ゥなぞを戴きます。法論石へ、詣りましてそれから、えー、鰍沢へ一遍出て、御本山へお詣りをすると言うこりゃァま順序でございますが。丁度、雪の酷(しど)い時分で、雪下ろしの三度笠と言う、廻し合羽に、道中差、足拵えを厳重に、小さな振り分けの荷物と言う誠に旅馴れた形で。法論石を出ましたのが、えー今の時間で言うと、まァ、アー二時をだいぶ回っておりまして昔の八ツでございすが。ぇー、雪がどんどん降っておりますが、自分も、ォッ知っている道と見えて、どんどんどんどん雪ン中を。ところが行けども行けども、人家と言う物がございませんで。そのうちに日(し)は暮れ暮れかかって来る、雪は益々酷くなる風を交えてピューーーッ。「…妙法蓮華経南無妙法蓮華経、妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。困ったなァこりゃァどうも、えへぇーっ。日が暮れかかってきたが、もォうこの位歩いているんだから、人家のある所ィ出なくちゃならないんだがなァ。道を間違えたなこりゃ。チェッ」…ふと向うを見るとちらっと、明りが見えました。地獄で仏とはこれで。……

6.人形町末廣の録音。「早起き名人会」の放送録音だが、何箇所かカットがある様子である。

7.TBS R 早起き名人会 放送録音 1981.8.1

8.圓生師のまだ若い頃の録音で口調も早い。

鰍澤−5

1.TS-02988A1

2.1975.4.16,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第六十席」

3.62:27

4.CS.60AG-135,SR.SRCL-1814(CD)

5.出囃子 心すぐなる 受囃子 滝合方

三題噺という、ぇこれは三つの題をお客様から戴いて、一席の噺に纏めると言う訳で。このォ三題噺と言うものの初めは、三笑亭可樂と言う人から、始まったと申します。ま天明時代に、烏亭焉馬と言う方が、落語と言うものをば、再興いたしまして、……  ……<三題噺の起源〜三題噺二題〜鰍澤の成立>……  ……とにかく、物の陰陽と言う物は何にでもあると言いますが、お宗旨に、陰気陽気がございます。南無阿弥陀仏と言う、お念仏これは、陰気な物としてある。南無妙法蓮華経と言うお題目こりゃァ陽気でございます。……  ……<日蓮上人出生〜夢知らせ〜日蓮上人御難の記録〜経宗の二ヵ寺〜鰍沢の船の解説>……  ……雪の降る時分なぞは、ご参詣になるにも容易ではございませんで。丁度、寒い盛りでございまして。もう名物で雪はどんどん降っている。雪下ろしの三度笠、廻し合羽に道中差、足拵えは勿論厳重に致しまして小さな振り分けの荷物。道中差を差したと言う、誠に旅馴れた形でございまして。お詣りをする、順序と言うものは大抵決っておりまして。青柳の昌福寺へ、えそれから、小諸山で毒消しの御符ゥを受け、法論石をお詣りをして一旦鰍沢へ出て、御本山へ行くと言う、これは大抵順序でございますが。法論石を出ましたのが今の時間で言うもう午後三時を、だいぶ回っておりますが。自分も、知った道であると言うので、雪を踏みしめながらやって来たが、行けども行けども人家の有る所ィは出ませんで。そのうちに、段々道らしい道もなくなり、日は暮れかかって、雪は益々、風を交えて酷くなります。(効果音:風音)「(効果音に重なって)スー…妙法蓮華経南無妙法蓮華…、ァー、スー法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙…、スー、ハァー、スーハースーハァー、妙法蓮華経スーハァー、困ったなァどうも、酷い降りンなって来たが。こりゃァどっかで道を間違ィたな。確かに、ここだと思って来たが。チェッ、こりゃァ日は暮れかかるしこんな事をしていると、野宿をしなくちゃァならないが、凍え死にをしてしてしまう。ハァー弱った事ンなったなァどうも。どっかに、人家のある所は。…フッ」遥か向うでちらっと、明りが見えたよう。(効果音消える)地獄で仏に合うとはこの事で……

6.「圓生百席」の録音。途中風音の効果音を使っている。この録音を元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語2」に収められている。

7.CS.60AG-135 DISC COPY

8.速記部分ではスペースの都合で大幅に省略しているが、本篇まで延々約30分程の枕がある。

鰍澤−6

1.TS-02999A1

2.1978.2.28,東横劇場,東横落語会第206回

3.39:47

4.V.VCK-693(CT)

5.出囃子 中の舞

えー、只今は、ァーッ、談志先生が、お目通りで。えー、ェーッ、もう先生では無いン。『あの野郎』でいいん。えー、エヘヘッ、まとにかくこのゥ、ォー、陰気陽気と言う事は、ま何にでもあると言う事を良く伺いますが。ゥーン、お宗旨に、陰気陽気があると言う。えー南無阿弥陀仏と言うお念仏は、これはまァ陰気でございますが、えー南無妙法蓮華経と言う、お題目と言うものはありゃァもう大変陽気でございますが。あの、ォーッ、法華経と言う物をお拡めになりましたのは申し上げるまでもなく、日蓮上人でございますが。……  ……<日蓮上人出生〜夢知らせ〜日蓮上人御難の記録〜池上と鰍沢〜鰍沢の船の解説>……  ……ま雪の降る時分なぞは、お詣りをすると言ってもなかなか大変で、雪下ろしの三度笠と言う。廻し合羽に道中差、小さな振り分けの荷物を肩ィ掛けまして足拵えは勿論厳重。誠に旅馴れた形で。お詣りを致しますのは、ぇー大抵決っておりまして青柳の昌福寺へ、お詣りを致しまして、それから小諸山へ行って毒消しの御符ゥを受け、法論石へ出まして、でそれから、一旦鰍沢へ出て、本山へお詣りをしようと言う、これが順序でございますが。法論石を出たのが今の時間で言うもォう、三時をだいぶ回っておりまして。ンー雪はどんどん降っているが、自分も知った道だと言うので、これを踏ゥしめェながらどんどんやって来るが、行けども行けども道らしい道がなくなり、そのうちに日は暮れかかる、雪は益々、風を交えてピューーーッと言う降り「ウーッ、スー…妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無…、スー妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経…、スー、ハァー、スーハー、困ったなァこりゃァ、えらい降りンなった。日は暮れかかるしまァ、どっかで道を間違ィたに違いない。こんな事をしてのじけを、のじき(野宿)をすすれば、ンー凍え死にをしてしてしまう。スー困った事になった。どっかに、人家のある」…遥か向うにちらっと、明りが見えた。地獄で仏と言うのはこの事で……

6.東横落語会の録音。東横劇場の記録テープからの収録だが、元の録音がレベルオーバーで歪みっぽいく聞き辛い。

7.V.VCK-693 CT COPY

8.「落語名人傑作選」という5巻組のテープに収められた一篇。元の録音に多少難があるからか、その後再発売に至っていない。冒頭にある通り、主任の圓生の前に談志が出て『よかちょろ』を演じている。

鰍澤−7

1.TS-12536A1,TV-39175-2

2.1970.2.25,TBS,国立小劇場,落語研究会第24回

3.41:04

4.パイオニア.EE-001(LD)

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、陰気陽気と言う事を良く、申し上げますが、ァーッ物の陰陽と言うものは、ま色々ございますが、えーお宗旨で、ェーッ、陰気陽気がございまして。南無阿彌陀仏と言うお念仏は、あれはまァ陰気でございますが、ァーッお題目と言う物は大変陽気で、えーっ、お広めに、なりましたのはまァ申し上げるまでもございませんが、日蓮上人と言う方で。えー、御誕生になりましたのが阿波の国、ィッ長狭の郡小湊と言う所で、(白湯を啜る)……  ……<日蓮上人出生〜夢知らせ〜日蓮上人御難の記録>……  ……御入滅になりましたのが、武州池上の庄、本門寺でございまして。えー経宗のあれを二ヵ寺とか申しまして。霊場でございますからまァ関東の者は別に、(白湯を啜る)わざわざ身延まで行かなくても、えー池上でいいんだそうですがしかし、やっぱりどうも、あすこへお詣りをしないと、御利益が薄いように思いまして、ま、御信心の方は必ず、みのるィ、身延へは御参詣になりますが。えーま大抵この、ゥー乗物と言う物が、ァッどちらにもありますがあすこはもう恐ろしく不自由なとこで。……  ……<船の解説>……  ……ま僅かな時間で、その当時、ェーッ岩淵まで来られるんですから、重宝には違いないが、一つ間違ィるとこりゃァ危のうございまして。まァあすこでどの位命を、落とした者があるか知れないと言うので、この船だけは『乗るも馬鹿、乗らぬも馬鹿』と言う譬えがありますが。一度は乗って見るもいいが度々そりゃァ乗るべき物では無いと言う。でその他が何にもございませんで。えーまずお詣りの順序と言うのは、青柳の昌福寺へお詣りをしましてこれから、小諸山で、毒消しの御符ゥを頂き、法論石へお詣りをして、一旦鰍沢へ出てそれから、御本山へお詣りをすると言うのがこらまァ順序でございますが。雪の酷い時分、雪下ろしの三度笠と言う、廻し合羽に、道中差、えー小さな振り分けの荷物を持ち、勿論足拵えは厳重でございまして誠に、旅馴れた形。法論石を出ましたのが今の時間で言うもう、二時を大分回っておりました。でこれから、鰍沢ィ出ようと言う。道は知っておりますから、歩いて見たが行けども行けども、道標も無くなり、人家は更にございません。そのうち、日は暮れてくる、追い追い風も強(つお)くなり、ピューーーッという風で、雪は益々酷くなる。「スーッ…妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。困ったなァこりゃァ。ァーッ。どこで道を間違えたのかな。確かに、道は確かだっと思って来たが。どっかでこりゃァ脇へ入った。こんなに、細い訳も無いし、困ったなァ日は暮れかかって来るが、愚図愚図しているとこりゃァ野宿をしなくちゃァならないが、こんなとこでまごまごしていりゃァ凍え死にィしてし…。お祖師っ様の罰でも当たったのか知らん。何しても早く、人家のある所へ出たい」……遥か向うでちらっと、明りが見(め)えた様。地獄で仏と言うのはこれ。……

6.国立小劇場での落語研究会の音でLD化されている。但し画像はモノクロである。

7.パイオニア.EE-001 LD COPY

8.LDの頭の出囃子は追加したもので、元の音源には無い。

鰍澤−8

1.TS-12625A2

2.1960.5.19,NHK,ヤマハホール,東京落語会第18回

3.35:06

4.無し

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、陰気陽気と言う事を、毎度申し上げておりますが陰陽と言う、これはまァ、ァーッ何にでもございますがお宗旨で、陰気陽気がございますが。えー南無妙法蓮華経と言う、お題目と言う物は大変、エーッ賑やかでございますが。でお念仏の方は、ァーッなんとなくこの陰気ンなりまして。まとにかく、ゥーッ日蓮宗と申しますが、えー得なお宗旨でございまして。であれはァーッ御案内の通りィッ日蓮上人と言う方がお広めンなりまして、本当はァーッ立正大師と申し上げなければいけないんだそうですが。えーやはりこのお祖師っ様と言う方が、何となく我々の方にはこの、ォーッお馴染みがある様に思い、思いまして。えー大師様よりはお祖師っ様と申しますが。阿波の国、長狭の郡小湊と言う所で、御誕生になりまして。……  ……<日蓮上人出生〜夢知らせ〜日蓮上人御難の記録>……  ……御入滅になりましたのが、池上の本門寺。えーあすこは経宗の二ヵ寺とか申しまして、なかなかあらたかな所でございますので。でわざわざ、身延まで行かなくても、この池上でお詣りをすればいいとおっしゃる方がありますが、やはりどうも御本山まで行かないと何かァッ御利益が少ないように思いまして。えー今はまァお詣りをすると言っても、誠にィッ便利ンなっております。電車ィ乗って、よこづなに、横付けになりますと言う。ま昔はそう言う訳に行きませんので。第一まァあんな山のある所はありませんがね、えーその癖山梨県てんですがどう言う訳ですか。大変に山のある所で。えーお詣りをする順序と言うのは大抵決っておりますが、青柳の昌福寺へお詣りをし、でそれから、小諸山へ詣りまして毒消しの御符ゥを頂いて、えー法論石へお詣りをする。それから一旦鰍沢ィ出て、御本山へ行くと言うこりゃァまァ順序でございますが。雪の酷い時分で、雪下ろしの三度笠と言う、廻し合羽に、道中差、えー山つきの脚絆に足拵えを厳重に致しまして、小さい振り分けの荷物を持つと言う誠に旅馴れた形で。法論石を出ましたのがもうかれこれ、八つ、ゥー一寸過ぎておりますから、今の時刻で言う、えー午後、二時半頃でございましょうか。でこれから鰍沢ィ出ようと言うので、自分も知った道でどんどんやって来たが、行けども行けども人家と言う物は無し、雪は段々酷くなり風を混じえて、日は暮れかかると言うわけでピューーーッ。「えー…妙法蓮華経南無妙法蓮華経、妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。ァーッ困ったなァこりゃァどうも。どこへまァ、行っていいか、これじゃァ、道も段々解らなくなって来るし、途中でこりゃァ間違えたらしいな。道標は無し弱ったなァ聞く所と言っちゃァ無いんだが。もう人家の、ある所へ出なきゃァならない時分だが、こんな事をして日が暮れて来ると、凍え死にをしなくちゃならない。困った事になっ…」向うを見るとちらっと明りが見(め)える。地獄で仏と言うのはこれでございましょうまァ安心。……

6.東京落語会第24回の録音。東京落語会での「鰍澤」の口演記録は2回ある。

7.NHK R 放送録音 「ラジオ深夜便演芸特選」 1995.10.29

8.

鰍澤−9

1.TS-12703D1

2.1956.12.1,TBS,「極楽演芸会」

3.32:41

4.無し

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、『鰍澤』と言う、お古い所でございますが。これは三題噺と申しまして、お客様から、ァーッ、お題をい、頂きまして、即席に、ィッこれをまとめる、三遊亭圓朝の作でございまして。上の方が、ァーッ圓朝の作で、(カット)えー下の方は、アー当時河竹新七と申しました、後のァッ河竹黙阿弥翁が、この『鰍澤』の下の方を、ォーッこしらえておりますが。今晩申し上げますのは、これはまァ上の方で、ェッございますが。えー題は、ァーッ『鉄砲』、それから、えー『卵酒』に、えー、『毒消しの御封』と言うんでございますがそれあんまりエッ題がつき過ぎておりますので、『鰍澤』と言うのが、ァッ一題入っているんじゃァないかと思いますがこりゃァまァ、ァーッあたしのだろうかいでございますけれ、はっきりとはわかりませんが。まァオー陰気陽気と言う、これはまァ何にでもございますが、お宗旨に、ェッ陰気陽気がございますな。南無阿彌陀仏と言うとあれは大変、ェッ陰気でございますが、えーこれがまた、ァッお題目となりますと陽気でございます。南無妙法蓮華経と言う。えーお会式となんぞと来ると誠にどうも、ァッ威勢が良ろしゅうございますが。……  ……<日蓮上人出生〜日蓮上人御難の記録〜経宗の二ヵ寺〜鰍沢の船〜山また山の山梨県>……  ……雪の降ります時分にはなかなか、ァッ道も難渋でございまして。お詣りをする、順序と申しますとまァ大抵、決っておりまして青柳の、えー昌福寺へお詣りをし、それから、小諸山へ詣りまして毒消しの御符ゥを頂いて、法論石へお詣りをして一旦鰍沢ィ出てそれから、本山へお詣りをしようと言うこりゃァまァ順序でございますが。雪の、ちらちらちらちら降っております、さなかでございまして、雪下ろしの三度笠、廻し合羽に、道中差、山つきの脚絆に足拵えを厳重に致しまして、小さな振り分けの荷物と言う誠に、旅馴れたか、形で。法論石をお詣りをして出ましたのが八つ、一寸回っておりますから今の時間で言うと、午後の二時を、一寸過ぎたと言う時分で。えー、馴れた道と見えて、どんどんどんどん歩いて来たが幾ら歩いても、人家の出る所へは出ませんで。そのうちに日は暮れかかる、雪は益々酷くなる風を混じえてピューーーッと言う「えー…妙法蓮華経南無妙法蓮華経、妙法蓮華経南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。ァーッ、弱ったなァこりゃァどうも。道を間違えたのかなァ。この位歩いたんだからもう人家のある所へ出なくちゃァならないんだが。困ったなァ日が暮れかかって来るし愚図愚図していりゃァこりゃ、凍え死にをしなくちゃならない。ハァー飛んだ事ンなったなァどうも、どっか早く人家のある所へ出たいもんだが…」ふと向うを見ると、ちらっと明りが見えます。地獄で仏とはこの事でやれ安心と、灯を頼りに来て見ると、……

6.TBSの「極楽演芸会」の録音。頭にカットが見受けられたが、元番組でののカットか再放送のカットかはわからない。

7.TBS R 放送録音 「爛漫ラジオ寄席」1998.1.18

8.

鰍澤・解説

三遊亭圓朝作の三題噺と言われるが、枕で三題噺の事に触れているのは百席の録音だけである。枕で懸命に身延詣りや、鰍沢周辺の説明をして後半の情景描写の手助けとしているが、噂に聞く圓喬師の背筋が寒くなると言った描写に近付こうとしていたに違いない。圓喬がどんなに素晴らしかったのかは、圓生師や志ん生師の話でしか想像がつかないが、圓生師の『鰍澤』でも亭主が帰って来る辺りの吹雪の描写など実に見事と言って良いと思うし、ラストのクライマックスでのテンポなどは、志ん生師や正蔵師には無い圓生独特の世界であると言えよう。しかし、百席で吹雪の効果音を入れているのはいただけない。

時代設定:身延鉄道(現JR身延線)開通以前。

舞台:甲州鰍澤お熊宅。富士川べり。

登場人物:身延詣りの旅人、元熊造丸屋月の兎花魁お熊、その亭主本町の生薬屋のしくじり者。

ベストテイク:おしなべてどれも良いが、あえて言えば『鰍澤…7』。LDにもなっている国立の落語研究会のものをベストとする。

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