三遊亭圓生音源データ
蚊いくさ−1
1.TS-12513D2
2.1972.9.14(?),紀伊国屋ホール,紀伊国屋寄席第95回(?)
3.24:59
4.なし
5.出囃子 正札附
えー、ェーッ、昔からこの、碁将棋に凝ると、ォーッ、親の死に目に会えないなんと言う、諺がございますが。まァこの勝負事と言う物は、大変面白いもんでございまして。えー、パチンコなんぞをあの、お好きな方でございますと、電車ィ乗りましても、じっとしていませんであの窓枠の所をこう、しきりにこうやっていましてね。もう絶えずこの、ォーッ指を使って、練習をすると言う実にどうも、ォーッ大した精神でございまして。えーまァこのォ、博奕なんと言う物は、昔から大変喧しゅうございますが。えーあたくしはあういう事は、ァーッ、嫌いな方でございますが。…… ……<中国の博奕〜麻雀〜大手の将棋>…… ……えー、昔はこの、剣術に凝ったなんてぇ人が、良くありましたもので。えー、こりゃァまァ、お侍ならば、表道具でございますから、嫌でもおうでも、えーこりゃやらなくちゃァなりませんが、ところがその、向きが違いまして、八百屋さんだとか魚屋さんで、こりゃァ大変剣術が好きで、もう仕事を、ォそっち退けで、えー稽古に通って、うちを困らせるなんてぇのが、ありましたもんで「おゥ、今帰ったぜ」「今帰ったじゃァないよどこ行ってるんだよ冗談じゃァない。また何かい、稽古に行ったのかい」……
6.珍しい噺である。晩年はホールでは恐らくこの時しか演じていないと思われる。
7.須永氏ライブラリー→仲野氏ライブラリー
8.録音が残っていないと言われた紀伊国屋の音らしい。明らかに舞台上のマイクで採られたもので、当時の記録がこの様な形で残っているとすれば大変な事である。しかし紀伊国屋寄席の録音としては疑問の残る事があり、他の会での録音である事も十分に考えられる。しかしいずれにせよ同じ時期の録音と思われ、他に録音も残っていないので貴重である。
蚊いくさ・解説
圓生全集にも載っており、その対談でもちょいちょい掛けている様子だが、放送の記録は無く、また戦後のホールでの記録でも紀伊国屋で一回の記録しか残っていない。今回発見された音源も、元のテープの箱書には『95回紀伊国屋寄席』と書いてあるのだが、上記の裏付けからもっともと思って聞いて見たところ、疑問が残ってしまった。『95回紀伊国屋寄席』に確かに圓生はこの『蚊いくさ』を掛けている。しかし、この録音のサゲの後に続いている出囃子が『野崎』である事が紀伊国屋での口演である事をほとんど否定してしまったのである。大渕氏調査による当日のプログラムでは、圓生の出番の後は金原亭馬生の『切られ与三』他の出演者も、馬の助、正蔵、小さんで、出演順が入れ代ったと想定しても野崎を使う人はいない。当時紀伊国屋に留さん文治や小南は出ていなく、桂文樂は他界しているとなれば、この録音は紀伊国屋のものでは無いと言う結論になってしまうのである。考えるにこれは、他の会での録音、例えば、国立小劇場の落語研究会で何かの加減で演題を変更して演じた時の物か、他の単発の特殊の会で録音されたものを記録は紀伊国屋しか残っていないからと予想で箱に書かれてしまったのではないかと思うのだが…。しかし、確かにこの録音は、いわゆる『隠し録り』の類いではなく、きちんとした形で録音された物であるので、95回紀伊国屋寄席であろうとなかろうと貴重な録音である。噺は『胸肋鼠』と共に武術狂二部作と言ったもの、詰まらない事を大袈裟にするのは三軒長屋の楠運平に通じる所があり、名前は出てこないが、この久六の先生なる人物は楠運平と見立てたら面白いと思うがどうだろう。
時代設定:太平の世の中、江戸末期か。
舞台:八百屋の久六宅、剣術の先生宅、久六宅のある長屋の路地。
登場人物:八百屋の久六、その女房お光、その子供、隣のかみさん、剣術の先生。
ベストテイク:貴重なワンテイクだけである。