三遊亭圓生音源データ

居残り佐平次−1

1.TS-02548C2

2.1968.8.22,キング,キングレコードスタジオ,客なし

3.29:32

4.K.KR-5076(初出),KR-5099,KR-5222,CKS-204(CT),K18H-5207(CT)

5.出囃子 騒ぎ

えー、吉原にこの、ォー古い譬えがございますが、『上は昼来て夜帰り、中は夜来て朝帰る、下下の下の下が居続けをする』と言う。それから下がるとまた、ァ居残りをするなんというこうなっちゃァもういけませんが。若い者なぞが集まりますもう大抵、えー出る話が決っている「おい、どうだい久し振りにィ、遊(あす)びに行きてぇと思うがどうだい」「いいねぇ」「付き合うかい」「ァあーん。何しろ行きてぇんだが、懐が秋の暮れンなっちまってどうにもしょうがねぇんだァ。安いとこでもいいから」「じゃ俺に任して貰って、今夜品川へ繰り込もうと思うがどうだい」……

6.枕も最少限にして、端折りながらサゲまで演じている。

7.K.K18H-5207 CT COPY

8.サゲまで一通り演じているが、短く上手く纏めている。

居残り佐平次−2

1.TS-02744A1

2.1977.3.18,横浜教育文化センター,横浜落語会第6回

3.41:56

4.To.TY-60021,ZF23-311(CT)

5.出囃子 中の舞(「待ってました!」の掛け声)

えー、…「待ってました」何と言う。えー、女性か何かが声を掛けてくれると…、大変宜しいでございますが。えー、ぇー『居残り佐平次』と言う、お古いお噺でございますが。えー遊(あす)びに行きましてこの、勘定が足りない時は、ァーッ、馬が付いてくる、あるいは居残りをするなんと言う(白湯を啜る)、まこういうのは余り、体裁のいい話じゃありませんが。えー吉原と言う所に、ェー、妙な譬がありまして、『上は昼(しる)来て夜帰り、中は夜来て朝帰る、下下の下の下が居続けをする』と言う、諺がありまして。ゥーンまあ居続けなんぞをするというのは、余りィ上等なお客様では無いと言う、えーましてこのォ、ァ居残り何てぇのは余りィ名誉な話じゃありませんが。ゥーンまあま若い頃はその無鉄砲な奴がありましてな「行こう行こうよえー、遊(あす)びに行こうよ何を銭が無(ね)えいいよォ向こう行きゃァどうにかなるよ」何てんでね、で、どうにかなればいいんですがね、どうにもならない場合(ばやい)があるてぇと、まどうも甚だ、妙な事ンなりますが、若い者なぞが集まるもう大抵出る話も決っておりまして「おい、ま話は済んだんだがこのまんま別れるてぇのも何だがどうだい一つゥ、出掛けるかい」「えぇ」「いや遊(あす)びに行こうかてんだよ」「遊(あす)びィ。えっへへへへ…、えーいいねぇどう…ええ行きたいね」「行きてぇねってィ行きゃァいいじゃねぇ」「行きゃァいいったってよゥ、銭がありゃァ一も二も無く、何するけれども何しろ懐が秋の暮れと来ちまってるからどうにもしょうがねぇんだよ。えー安いとこでもいいから、一つゥー出掛けてぇんだがどどこへ行くんだい」「南の方へ押し出そうかてんだどうだい。気が変ってまたいいだろ」「南てぇと品川、……

6.枕は短いが端折らずに全編を演じている。

7.To.TY-60021 DISC COPY

8.客にも恵まれ乗った高座である。

居残り佐平次−3

1.TS-02759A1,VT=TV-39071-1

2.1977.9.25,TBS,国立小劇場,落語研究会第113回

3.42:11

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、吉原と言う所に、古い譬がございまして。えー『上は昼(しる)来て夜帰り、中は、夜来て朝帰る、下下の下の下が居続けをする』と言う。しかしまァ若い時は、何とかして遊(あす)びたいなんと言うので、中には無鉄砲な奴がありましてなァ「い、何をえーいいよいいよ銭が無くたってよう、向こう行きゃァどうにかならァな」何てな事を言ってね。えーどうにかなれば宜しいんですがどうにもならない場合(ばやい)があるこういうのがま、えーそういう不体裁な事になりますが。ま若い物なぞが集まる大抵出る話が決っている「どうだいおい、ぼんやりしてぇてもしょうがねぇが一つゥこれから繰り込もうてんだか付き合うかい」「えー」「遊(あす)びに行くんだよ」「…いいねえ、えー、えへへっ、いや行きてぇのは山々なんだが何しろ、懐が秋の暮れなっちまってるからどうにもしょうがねぇんだが。えーちょいと安直なとこでいいから、投げ込みかなんかで」「まままァ、こうしよう。えーみんなにィ大した事はいけねぇがなァ……

6.国立小劇場の落語研究会での口演。落語研究会では、25回にも掛けている。

7.TBS R 早起き名人会 放送録音 82.5.29,6.5

8.この録音には観客の一人として参加している。VTRも収録されており、長らく未放映であったが、1990年の4月に放映された。

居残り佐平次−4

1.TS-02832A2

2.1974.10.30,東横劇場,東横落語会第166回「圓生独演会」

3.45:56

4.AP.KSZ-2033(CT)

5.出囃子 中の舞

えー、昔はこの、諺とか、ァッ、えー流行り言葉色々、ォーッ面白いものがございまして。えー『おこわにかける』なんと言う、言葉がございまして。えーおこわにィかかるってのは何の事と思っておりましたら、あれはそのゥ、相対間男なんだそうで。今は間男と言っても、ォホ、お若い方なんぞは、御存知がないでしょうが、つまり御亭主のある、御婦人が、他の男と、三角関係を結んだ場合(ばやい)に、えーこれは罪になりまして、ぇ、お侍ならば、女敵と言いまして、二ァ人を斬っていいという。ゥえー重ねておいて、ぇ四つにするとか、八つにするなんてぇ事を言う。ゥえーもっともまあそのゥ、ォオーッ本当に出来る場合(ばやい)もあれば中には、御亭主も承諾の上で、そういう事を仕組むという、でこういうのがあったんだそうで。それを、相対間男とかあるいは美人局なんと言いますな。……  ……<電話交換局〜美人局の方法〜『おおこわ』からおこわ〜女郎屋をどうして無くした〜圓生さんの伯父さん>……  ……とにかく若い者なぞが集まりますと、今夜は一(しと)つ繰り込もうなんてぇ話がすぐ纏まるもんで「どうだい、久し振りだが一つゥー、ィ付き合わねぇか今夜」「え、何だ遊(あす)び。いいねぇ」「いいねぇって行くかい」「行きたいけれども何しろ懐が秋の暮れンなっちゃってんだどうにもしょうがねぇんだよ、まァ安い所でもいいから一つ投げ込みで」「おいおい、じゃこうしよう。えー、気を変えて南ィ押し出すんだがいいかいそれで」「南ィってぇと品川、オォーっ結構、……

6.東横落語会の独演会で演じたものだけに、枕も長くたっぷりしている。枕で数箇所のカットがある様である。

7.AP.KSZ-2033 CT COPY

8.分り難いサゲを枕で仕込んでいる。年代的にも「圓生百席」の録音に近く、枕も近似している。

居残り佐平次−5

1.TS-02899C1

2.1975.2.24,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第二十八席」

3.57:40

4.CS.SOGZ-125,22KG-162(CT),FCLY-1,FKLY-1(CT),CSTC-9011(CT),SR.SRCL-3802(CD)

5.出囃子 官女 受囃子 だまされ合方

居残り佐平次と言う噺でございますが。この、サゲというものを、前々からよく分らなかったんでございます。まだいたい落とし噺で、落ちの事を、先へ申し上げるてぇと、甚だ不利なんでございますが、この噺の落ちが『おこわにかける』という。これが、大正の半ば頃にあたくしは柳家小せんという、えー後に底翳(そこし)で、目が潰れてしまいましたが、仲間では盲の小せんと言っておりまして、でぇー、このお方からあたくしは教わったんですが。だいたいどういう訳なのか、その意味がァ誰も知った者が無かった訳で。いっそォサゲを取り替えようかと言ったんですがどうも、適当なものもなし、演っておりましたが。やっと知れましたのが、このゥ、『おこわにかける』と言う事は、姦通罪でございますな。今は姦通と言ってもそれも、お若い方は御存知がない。ぇつまり御亭主のある御婦人が、他の男と関係をする、いわゆる三角関係を結んだ場合(ばやい)、亭主の方から訴えますとこの姦通罪というものが成立をする。……  ……<女敵〜『おおこわ』からおこわ〜相対間男〜美人局〜電話交換局〜美人局の方法〜吉原が無くなった〜圓生さんの伯父さん>……  ……ゥーンまァとにかく、遊(あす)びにいらっしゃろうという、えーこりゃァもうちょいと、若い者なぞが集まりまして、ぇーどうのこうのと話をしている「どうだい今夜あたり」なんてぇ事に、なりやすいもので。「どうだいこれから一(しと)つゥ繰り込もうと思うんだが付き合わねぇかい」「えー」「だァ遊(あす)びに行こうてんだよ」「アァーねぇ、うん」「なんでぇ気がねぇじゃねぇ」「いぇ気のねぇって事(こた)ァねぇがね、何しろまあ、チュッ行きたくたって銭が無くっちゃァしょうがねぇやなァ。懐が秋の暮れンなっちまってるからどうにもしょうがねぇんだァ。まァ安いとこでもいいから一つゥ、投げ込みってぇな事にしてな、万事そっちに任して」「あァ、よよしよし。えー今夜あたりは一(しと)つゥ、気を変えて南ィ押し出して見ようかと思うがどうだい」「南ィってぇと、品川。ぉおーっ、……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語1」に収められている。

7.CS.(FKLY-1) CT COPY

8.

居残り佐平次−6

1.TS-02914D2

2.不明

3.27:22

4.日本オーディオ.NRC-1003(CT)

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ色々この、お楽しみというものが、ァッございますが、男の第一の、ォーッ愉快と言うとこれはもう何と言いましても、花柳界かなにかでェ、女の子に回りを取り巻かして、「あらまァちょいとお兄さんいいわよゥ」なんてな事を言ってね、ァーでれでれしている方が、ァッお父っつぁんと睨めっこをするよりは大変面白いもので。ォどうしても一ン日が二日になりますが。まこの遊(あす)びにおいでンなりましても色々、ォッ区別がございますが、えー昔の古い諺に、『上は昼来て夜帰り、中は夜来て朝帰り、下下の下の下がァ居続けをする』という。えーこういうァー昔は諺がありまして、えー居続けをするのはまだよろしい方でね、ェ酷いのになりますとこの居残りなんてぇのがありましてね、えー勘定が足りなくて帰れないなんというのはどうも、誠に困ったもんでございますが。「どうだいみんな、えー。ぼんやりしてねぇで今夜付き合わねぇかい」「何を」「遊(あす)びに行こうてんだがどうだてんだよ」「遊(あす)びィ。ヘッヘッ、有難てぇなァどうも、いゃァ行きてぇんだけども何しろどうも懐が秋の暮れになっちまってしょうがねぇんだよ、寂しいンだが一つゥどっかィ、投げ込みで連れてって貰いてぇんだがどっかねぇかい」「どうだい一つゥ、ン気を変えて南ィ押し出そうてんだが付き合うかい」「南ってぇと品川かいオーッいいったってぇ……  ……サゲ=ちょいと居のどーん!」「へぇーィッ」「十一番さんでお座敷ですよッ」「へぇーいッ。よっ!どうしましたい大将その後は誠に失礼を(ポン)よいしょッ!」って何だか訳が分らない。居残りが二階を荒らす佐平次の半ばでございます。お時間でございます。(拍手)……

6.録音データが不明だが、1960年前半のTBSラジオの放送の物と思われる。時間に合わせて途中で切っている。

7.日本オーディオ.NRC-1003 CT COPY

8.日本オーディオのカセットは、テープ速度が馬鹿速でコピーされている。記載したタイムは、回転を修正して採ったものである。

居残り佐平次−7

1.TS-02918D1

2.(1967.5.9),NHK,「芸能百選」

3.41:48

4.なし

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、昔からこの、お楽しみというものが、ァーッ、色々ございますが、ま男の第一の愉快と言うと、ァーッこりゃァまあ何と言いましても、花柳界かなにかでェーッ金をふんだんに使いましてね、若い婦人に取り巻かれて「あらちょいとお兄さんいいわよゥ」なんてな事を言って、でれでれしている方がこりゃもうお父っつぁんと睨めっこをするよりは、ァ大変愉快なもので。勿論まァ廓というものが、ァーッ今は無くなってしまいまして、えー、江戸時代にはまァ吉原と言う所が、遊(あす)びの本場となっておりましてその他に、えー江戸の、四宿と申します品川に新宿板橋千住という、ぇこれはまァ大変繁盛致しましたが中で、品川と言う所は、ァ海を控えまして、これはまた一寸趣がァー違ったもので。えー勿論お若い方はあのゥ、ィ品川に海があるかなんかは、ァーッ知らないでしょう。ゥフッ、海なんざァ今見(め)えませんが。えーっ、(ポン)以前はあのゥ、東海道、ォー下り線でございますが列車が、下りの方のこう、列車が止まりますてぇと丁度、ェ波打際でございまして、ぇー石垣(いしがけ)ンなってそこィこう、水がチャブチャブチャブチャブ、ゥー打ち寄せていたもんで、海が良く見(め)えたんですが。あたくしはまァ、ァーッ三十六ですがそういう事をどうして知ってるかと思う、不思議なもんで。えーまァ昔とは色々、事が変わって参りましたが。えー以前、人をその、ォーッ、「おこわにかける」と言う言葉がありましてね、これはまァいんちき、今で言うペテンにかけたと言う様な事を「おこわにかけた」と言う。どういうとこでそういうァ言葉が出来たものかあたくしは良く存じませんが(ポン)、「おこわにかける」と言うのはあの、胡麻塩でございますね、えー胡麻が、黒い物で、塩は白い物。えー相手が目を白ッ黒するから、えー「おこわにかける」なんてぇ事を言ったんじゃないだろうかという、こらまァあたくしの、ォー解釈ですからあんまり当てにはなりませんが。まァとにかく、ゥァーッ若い者が集まると「どうだい今夜あたり出掛けようか」なんてぇ相談が持ち上がる。ま金があって遊(あす)ぶのはよろしいが中には、金が無くて遊(あす)ぼうなんというァーッ、酷(しど)い奴がある。「どうだい今夜出掛けるかい、えー何を銭がねぇいいよーッ無くったっていいやな向こう行きゃどうにかならァな」なんてんでね。まどうにかなればよろしいがどうにもならない場合(ばやい)がある。ぇこう 「うのがァッ馬を引っ張って来るとか居残りをするなんてぇ、あんまりどうもそれ、いい話じゃありませんが。「なァおい。久し振りでこうして顔を合わして、ただぼんやりしていてもしょうがねぇが、今夜あたりどうだい繰り込むかい」「えぇっ」「遊(あす)びに行こうかてんだよ」「…いいねぇ、行きたいねぇ」「なんでぇ行きたきゃ行きねぇね」……

6.芸能百選の録音。人形町末廣からの中継らしい。

7.NHK TV 芸能百選 放送録音 野口氏ライブラリー

8.時間があるので、枕をたっぷり振り、サゲの仕込みも十分してからサゲまで完演している。

居残り佐平次−8

1.TS-12697A1

2.1970.4.27,TBS,国立小劇場,落語研究会第26回

3.37:51

4.ぎょうせい.「鑑賞古典落語・下」(CT),Cr.CRCY-10064(CD),CRTY-10064(CT)

5.出囃子 無し

えー、ェーッ、昔はこの吉原の事を、ォーッ、『北廓』と申しましたそうで。北に当たると言うので、ェーッ『北国』とか『北廓』、えー品川を『南ピン』、南に当たると言うので、えー『南ピン』と言ったそうでございますが。えー、しかしまァこのォ、お遊びの本場と言うと、ォーッ、吉原でございますが、あそこに面白い、ィッ諺がありまして、えー、お客様の、お遊びになる、(ポン)つまりィ、上中下でございますが。『上は昼(しる)来て夜帰り、中は夜来て朝帰る、下下の下の下が居続けをする』と言う、えー諺がありまして。まァ居続けなんぞをするのは、ァーッ野暮の骨頂としてありましたもので。勿論まこの居続けと言うのは、金を使って、ェーッそこでお遊びになるんでございますが、まそれでさえも悪く言われる。もっと酷(しど)いのはこの居残りをするなんてぇのがありましてね。えーあるいはその付き馬を連れて来るなんと言うもうこうなりましては、えー遊びどころじゃァございませんがしかしまァ若い者が集まったり何かする、もう大抵出る話も決まっておりまして「おい、こうやってェ話が済んでぼんやりしててもしょうがねぇが、久し振りに、遊(あす)びに行きたいと思うがどうだい付き合わないか」「遊(あす)び。有難えなァどうもいや行きてぇんだけどもよゥ、何しろ懐が秋の暮れなっちまってるからどうにもしょうがねぇんだが。まァ安いとこでもいいからァどっか一つ行きてぇじゃねぇ」「気を変えて南ィ押し出そうてぇんだがどうだい」「南てぇと品川。らァいいとも」……

6.クラウンのCDには、1957年11月14日のTBSとあるが、どう聞いてもその時期の物では無く、国立小劇場の落語研究会の響きである。出囃子が無いところから落語研究会第26回の録音と判定した。1970年5月27日に放送された、「お待ちかね名作寄席」のものと思われる。

7.Cr.CRCY-10064 CD COPY

8.

居残り佐平次・解説

誰かが、落語の三大悪として、この「居残り佐平次」と「付き馬」「突き落とし」を挙げていたが、そのいずれもが廓の無銭飲食と言う共通点を持っている。落語の三大悪などと言う評価は出鱈目がつきものの落語の世界にとって、正しい評価とは全くと言って良いほど言えない事であるが、そのどれもが大成功をおさめてしまうあたりが落語らしくて大変愉快である。いくらのんびりしていた江戸・明治・大正時代とは言え、なんぼなんでもこんなに上手くいく訳が無いだろうし、実話があったのかも知れないが、だいぶ誇張して大成功のストーリーに仕上げられたに違いない。こんな風にタダで遊べたらいいなァ…、と言う羨ましさが、笑いを誘う訳である。しかし、この佐平次の様な人物がいたなら、誰しもうまく乗せられてけむに巻かれてしまうに違いない。幇間連中がぼやくように、困った奴なのだがどこか憎めない奴である。確かに倫理的には悪い事なのかも知れないが、そんな事を考えさせられる暇もなくトントンと運ばれて行き、聞いている我々も演者にけむに巻かれる位でないといけない。圓生師のこの噺はあの陳腐なサゲまで演じると最低40分掛かる為、時間制限のあるラジオの公開録音やLP片面と言った録音は途中で切っている。『居残りの半ばでございます…』と切られると、やはりサゲまで聞きたいと思うのが人間人情。サゲの分り難さから言えば、それはそれでかえって良いと思うのだが、このサゲは榎本滋民氏の解説がどうしても必要である。圓生師の他にも志ん生師のこの噺も別の味があって楽しかったが、志ん朝、小三治をはじめとした当代の噺家の「居残り佐平次」も楽しい。圓生師のこの噺はそう言った意味では「お手本」とでも言うべきだろうか。

時代設定:「一円の割り前」とある様に圓生師は明治・大正時代として設定している。が、本来は江戸時代の噺とした方が正しいだろう。官権の存在した明治・大正時代にこれだけの事を堂々とは幾らなんでも出来そうに無い。

舞台:品川遊郭の大見世。

登場人物:佐平次率いる無銭登楼軍団総勢5名(佐平次の他は名前も分らない)、若い衆(源どん、鉄どん、亀どん、兼どん、他)、花魁衆(紅梅、八千代、他)、紅梅さんとこの勝っつぁん他客多数、、頭が胡麻塩の旦那。

ベストテイク:「居残り佐平次…2」が客に恵まれ楽しく聞ける。

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