三遊亭圓生音源データ

一文惜しみ−1

1.TS-02664D1

2.(1978.11.26),TBS,TBSホール,「ゴールデンワイド・ラジオ寄席」

3.23:26

4.なし

5.出囃子 正札附(テープ)

えー、昔からこの、ウゥーン、人には色々、ァーッ御気性というものがありまして。えー、気の大きい方もあれば小さい方もあり、えー派手な方がある、反対にまた、ァッ吝嗇な人(しと)なんてぇのがありまして。えー神田の三河町と申します、えー今あの小川町と言(ゆ)う所がございますねあれから神田橋へ向かいます、あの間の所が、昔、えー三河町と言いましてあの辺は人家超密でございますから、労働者の多い為に、賭博というものが盛ん。ま昔でも博奕をすりゃァ喧しかったんでしょうが、毎日の様にここで、えー勝負を争っている。で金が無くなりますと着ている物を脱いで「おう、こいつを持って行って来い」「へいっ」品物を持って、質屋さんへ行きましてお宝ィ換えて来る。「行って参りました」「ああどうも御苦労さま」今で言やァまあ、五十円とか百円とか貰うんでしょうが、昔の四文銭を一枚、くれます。でこれを博奕場の四文使いと言い…。でェこれをやっている初五郎てぇ者が、二月ばかり患いましたが、家主の世話でどうやら回復をし、「わたくしもまあ今度長患いをして大家さんのお陰で、やっと助かりましたけども、友達なんてぇものはねぇ大勢いたって誰一人、見舞に来る奴がねぇんで、えー、あっしゃァ情けねぇと思って、隣の源兵衛さんに愚痴をこぼしたところが『お前の友達が悪いんだ、えー、やくざ稼業を辞めて、今度は堅気ンなれ』と色々意見をしてくれたんでね、八百屋になりてぇと思うがどうでございましょう」……  ……サゲ=向こうでも馴れてね受取りを書いてあるン。とうとうこの終わりは、一文惜しみの百両損と言(ゆ)う百両の金で示談になったと言(ゆ)う、まだお長いお噺でございますが、お時間が参りました様でございますこの辺で、御免……

6.時間の関係で、後半をカットして演じている。

7.TBS R ゴールデンワイド・ラジオ寄席 放送録音

8.

一文惜しみ−2

1.TS-02858A1

2.1962.3.23,東横劇場,東横落語会第37回「圓生小さん二人会」

3.41:00

4.CS.50AG-908

5.出囃子 筑摩祭り

えー、ヘーッ、…一文惜しみという、ァーッお古いお噺でございますが。えー、噺家の方では、ァーッ、(カット)これを三ぼうと申しまして、えー、お客様方へ、お差支えの無いというゥ噺になっておりますが。中でこの吝嗇というのがありますが、これはまァ『ケチ』だとか『赤螺屋』『吝嗇(りんしょく)』、『六日知らず』『しみったれ』、『我利我利亡者』なんと言う、色々悪口がありますが六日知らずと言うのは、お聞きになってェお分りがございませんでどうして、吝嗇な人が六日知らずかてぇと、日(し)を勘定する時に一日二日三日四日五日と勘定する。で六日てぇとこれを開けなくちゃなりませんで、一旦もう握ったものは決して離さないという。えー随分この世の中には、ァ吝嗇な人がありまして一年中、おかずを買わないで食事をしようという、……  ……<鰻屋の嗅賃〜畠に屁>……  ……世の中には随分しみったれな人(しと)があるもんで。欲の国から吝嗇のを拡(しろ)めに来たという様なこういうその、えー吝嗇ん坊がありまして。昔この、神田の三河町に、四文使いを致します初五郎という、えー四文使いという今はそんな商売はございませんが、あの辺が人家が超密でございますので、労働者の多い為に、毎日ここでこの博奕というものを致します。まその時分でも、賭博というものは喧しかったんでしょうが、ぇー今の様に規則が行き届いておりませんから毎日、博奕をする。で、仮に負けた者が、金が無くなりますと着ている物を脱いで「おう、こいつを持ってって来い」「へい」品物を持って、質屋さんへ行ってお宝ィ取り換えてくる。「行って参りました」「ああそうかい、ご苦労さん」今で言やァまぁ、ァ、二十円か三十円も貰うんでしょうが、その時分の四文銭を一枚貰ったんで、これを博奕場の四文使いと言う。これをやっていた初五郎てぇ者が長患いを致しましたが、家主の世話でどうやら元に回復をし、「今度あっしはまァ、大家さんのお陰でようやく良くなりましたが、誰一人としてねぇ患っていても、来て呉れる奴がねぇんでええー、友達なんてぇものはどうもしょうがねぇもんだってんで……

6.冒頭にカットがある。聾がレコード化の際に問題になった為であろう。元来講釈ねたで落ちが無いが、最後まで完演している。

7.CS.50AG-908 DISC COPY

8.初期の東横落語会の録音で音質が痩せていて貧しいが、たっぷり演じている貴重な録音と言える。

一文惜しみ−3

1.TS-02910C1

2.1974.8.5,CBS・ソニー,スタジオ,「圓生百席第十二席」

3.64:53

4.CS.SOGZ-111,SR.SRCL-3801(CD)

5.出囃子 忠々太夫 受囃子 げぼう合方

昔から、『強欲は無欲に似たり』という、譬えを申します。ま、欲の無いという人はございません。えー無欲というものは無いと言っていいんだと言いますが。しかしあんまりこの欲が深すぎ、てぇのも具合が悪い。どうもこの百円の銀貨は、少し厚いから、何とかして二枚に剥がそうなんてんで、一生懸命に、爪で剥がしているうちに、ぇー銀貨は剥がれないで自分の爪を剥がしちまったりなんかするという。ぇこういうのがつまり、えー強欲と言う奴で。ぇまァまた、金と言うものは貯まると、汚くなるなんてぇ事を言いますな。えー銭の、無い人は、綺麗にパッパと使うが、有る人の方が、吝嗇になると言う。ま昔からこの吝嗇の事を、えー『しみったれ』とか『六日知らず』『吝嗇(りんしょく)』『赤螺屋』、ゥー『我利我利亡者』なんという、色んな言葉がありますが『六日知らず』と言うのは、どういう訳かという。日を勘定する時に、指(いび)で、一日二日三日四日五日と勘定。六日と言うと開けなければならない、一旦握ったものはもう絶対離さないという。でこれを随分『六日知らず』なんというまァ悪口でございますが。えぇ一年中おかずを買わずに、食事をしたという、……  ……<鰻屋の嗅賃〜奉公人減らし〜畠に屁>……  ……酷(しど)い奴があるもン。欲の国から、吝嗇のを拡(しろ)めに来たという様なハー随分吝嗇な人もあるもんで。「こんちわッ、御免下さい」「誰だ」「へいっ、あっしでござん…」「おうおう、初公じゃねぇか。もういいのか」「−へっ、有難うござん…。えーすっかり、良くなりまして」……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語3」に収められている。四文使いの説明をせずに本篇に入る。

7.CS.SOGZ-111 DISC COPY

8.一時間を超す長演である。

一文惜しみ−4

1.TS-12503C1

2.1969.6.19,TBS,国立小劇場,落語研究会第16回

3.44:36

4.なし

5.出囃子 なし(拍手のみ)

えー、ェッ、昔からこの、ォーッ、金と言うものは、貯めるもんでなく、ゥーッ、残すもんだとおっしゃった方がありますが。えー貯めても残しても、おんなしでございましょうと言ったらァーッ、いや大変違うんだと言います。えー貯めると言うのは、ま無理矢理にこのゥ、ァーッ必要な所を使わずに、えーっ金を、ォーッ貯めると言う。えー、残すと言うのは、ァーッまァ、必要なだけは使って後ィお金が残ると言うのが、本当のこの残したと言うんだと言いますが。えー、吝嗇と、倹約とは紙一重の違いだと良く言いますが、まァ世の中には随分その、ォーッ始末のいい方がありまして、ぇー一年中おかずを買わずに、食事をしたと言うん。でどういう訳でお菜が無くて、御飯を戴くてぇと前が鰻屋さんでね、向うのうちでぇ、焼いているとその臭いを嗅いでは家内中でおまんまを食べようと言う訳で……  ……<鰻の嗅ぎ賃>……  ……まァどうも世の中には随分ァけちな人が…「誰だ」「え、こんちわッ」「おーう、なァんだ、初公じゃァねぇかどうした。こっちへ上がれもういいのか歩いてえー、長患いの後だから、軽はずみをしちゃァいけねぇ。えー、ウエーーッ!。大事に、しなくちゃいけませんいいかい」「えぇどうも今度は(こんだ)大家さんにはひとかたならねぇ御厄介ンなりまして本当に申し訳がねぇ…」……

6.国立小劇場の落語研究会の初期の録音で出囃子なしの頃のもの。割とあっさりとした枕から本篇を全て演じている。

7.TBS TV お待ちかね名作寄席 放送録音 1969.11.28 仲野氏ライブラリー

8.途中に入る『三億円事件』のくすぐりが笑わせる。

一文惜しみ−5

1.TS-12585A1

2.1959.4.13,TBS,「寄席風景」

3.28:42

4.Te.TETR-20032(CT),TECR-20032(CD)

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、昔のお噺でございますが、神田の三河町と言う所に、四文使いを致します、ァーッ初五郎と言う。えー今はまァ四文使いなんと言う、そんな商売はございませんが、えー神田の三河町と申しますあの辺は、誠にこの人家超密でございますので、労働者が多いためにこの、ォーッ賭博と言う物を、毎ン日やっておりましてまァその時分でも、博奕と言う物はお上から喧ましかったんでしょうが、ま今の様に行き届いておりませんから、ァッ毎日の様にここで、勝負をしております。えー金を、ォッすっかり、取られた者が、着ている物を脱ぎまして、こいつをもって「おい行って来てくれ」「へいっ」。これを、品物を持って、ェッお宝に取り替えて参ります質屋さんで。えー使いに行って来ると「アーどうも御苦労さん」その時分の四文銭を一枚貰いまして、でこれが自分の商売だって。でこの初五郎てぇ者がァッ二月ばかり長患いを致しましたが、家主の世話で、ェーッどうやら、元になる。「まァ色々、ォー大家さんに、ィッお世話掛けまして、どうもねぇ今度ばかりはあっしは情けねぇと思ったのは、友達は大勢あっても一人として、見舞いに来てくれる奴が無えんで。それをねぇ隣の源兵衛さんに愚痴をこぼしたら『お前のそりゃ今までの商売が悪いから堅気ンなれ』って言われたんでね、色々あっしも考(かんげ)えて今度は八百屋かなんかしようと思うんですが」……  ……サゲ=一割の百両でどうかひとつ、これを示談にして下さい」「宜しい」てぇ事になりまして初めて、この裁判が落着を告げます。五貫の引き残りをお奉行所へ収めて、これが円満に治まったと言う一文惜しみの百両損と言うお笑いで、お時刻でございます。

6.まだ若い頃の高座でテンポが速い。

7.Te.TRCR-20032 DISC COPY

8.

一文惜しみ・解説

『一文惜しみの百両損』と言う、いわゆる政談物の一つであり、吝嗇の噺の一つでもある。当代の立川談志は『五貫裁き』の題で演るが同じ噺である。元々は講釈ねたなのであろう。サゲらしいサゲが無い。圓生演の「一文惜しみ」はたっぷり演ると全部で50分近くかかり、百席の録音は1時間を超える長演である。放送録音では完演しているものでも、1969年11月28日に「お待ちかね名作寄席」で放映された落語研究会第16回の録音は、余りに長演であった為当時録音していたほとんどの人のテープの最後が欠けておりなかなか全編完全な物が見つからなかった。このテイクが仲野氏のライブラリーに録音が残っていたのは、とても幸運であった。この噺に出てくる『徳力屋』が『徳力商店』として現在も神田に店を構えている。当会会員の三品氏が、以前ここに勤めておられたのは何かの因縁であろうか。三品氏がある時上司に「うちの店が落語に出て来るらしいが、その噺を聞かせてくれ」と言われ、決して良く扱われていないので返答に困った、と言うのは落語より面白い実話である。

時代設定:お金の相場からこれは江戸時代に限る。

舞台:神田三河町家主太郎兵衛宅、質屋徳力屋万右衛門宅、奉行所。

登場人物:八百屋とらばーゆ初五郎、家主太郎兵衛、神田三河町質屋徳力屋万右衛門、同番頭忠兵衛、名主・五人組、奉行一同。

ベストテイク:問題なくこれは「一文惜しみ…4」である。

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