三遊亭圓生音源データ

五人廻し−1

1.TS-02841A2

2.1961.12.28,人形町末廣,独演会

3.39:16

4.AP.KSZ-2085(CT)

5.出囃子 筑摩祭り

えー、ェーッ、もう一席、ェーッ申し上げまして、ェッお別れでございますが。えー女郎買いの噺をするのに、袴を履いて出てくるって、エッヘッヘッヘ、ヘッヘッ、別に何もそれほど尊いものではございませんが。えーっ、ェーッ圓生袴が無いんだろうと思われんのが、悔しゅうございますから、折角あるものですから、ァー履かして頂きました。えー廓のお噺と言う、まァこの他の物は、ァー大抵出ますが、『五人廻し』と言うものは、ァーッ全く近頃、(白湯を啜る)演る人も、ございませんし、えーお客様の方にさっき申し上げた様に、えーお若い方ではピンと来ませんで、えーっ、まァ赤線は御存知の方があるかも知れませんが、赤線になりましてからは廻しと言う物が、あったんでしょかなァ、あたくしは余り行かないから分かりませんけども。えー関東と関西と違いまして、あちらへ参りますと、えー廻しと言う物は絶対ございません昔から、えー向こうはあの「切り」と言いまして、……  ……<大阪の切りの解説〜廻しか抱き切りか〜しょいなげ〜手古鶴〜三日月振り〜居振り〜盆に薬>……  ……こういうのは居振りてぇますけども。とにかくまァその振られた時なんてぇものは、えー経験のある方は、えーげにもと思う事がございましょうが、あのねぇ嫌なものですよ。もう明け近くンなりましてね、ァー段々、オー、ォォッ腹は減って来るし、ぇー煙草は無くなる火は消える。命に別条が無いばかりと言う、大津絵がありますが、お通夜の明け方に女郎屋の明け方なんてぇものはあんまり愉快なもんじゃァないんで。「(鼻を啜る)アーァ、止しゃァ良かったな今夜。詰まらねぇ事しちゃった。今夜はン当に、止そうかなと思ったんだけどもなァ、だけどこないだは馬鹿に廻りっぷりがいいんだからなァ。初会でこの位ェなんだから、裏でも返(けえ)してやったらちょいっと、乙な事ンなるかなァと思って、ヘッ、助平了見でやって来たがいけねぇやもろに振られちゃったい。……

6.独演会での録音で、たっぷりと枕を振っている。

7.AP.KSZ-2085 CT COPY

8.

五人廻し−2

1.TS-02852A1

2.1976.11.31,東横劇場,東横落語会第191回

3.31:09

4.K.KHA-3027,CKS-297(CT),K18H-5208(CT)

5.出囃子 正札附

えー、古い川柳に、『吉原が明るくなれとうちが闇』と言う。もっともまァこの吉原と言いましても今は、ァッ町名までも抹殺されてしまいまして、えー全然無くなりましたが、あたくしどもはまァ、ァーッ吉原と言う所へ参りまして、角海老とか、あるいはまた大文字、稲本、品川楼なんと言う。こりゃァもう大店でございまして、ェーッ前を通った事はありましたけども、上へ上がった事はありませんで。その前をただすうっとこう通ると言うだけで。山河内なんと言う、あんまり、ェーッ有名なうちではありませんが、横丁へ入りましてね、でまた曲ってこうなるなんという、変な所にある女郎屋で、えーそういう所で遊びましたが。とにかくまァあすこへ行けば、誰しももてたいという訳で、『人は客、ァーッ我が身は間夫と思う客』なんという、川柳なんてぇものはうがった事を言ったもんで。『人は客、我が身は間夫と思う客』「俺は上手くいったら間夫になりゃァしねぇか知らん」なんてんでね、虻見たいな顔をしてえーどうにもなったもんじゃ無いんですがまァそれでももてる了見で、ェーッ出掛けるから面白いんで。(白湯を啜る)ところがその振られるてぇ事がありましてね。ま振ると言いましても色んな振り方があって、えー居振りだとか或いは空床だとかしょい投げ、ないしはこの三日月振りなんと言う。ぇ三日月振りなんてぇのは聞いたとこは大変綺麗ですが、宵にちらりと見たばかりと言う。えー中にはこの居振りと言う奴がある。……  ……<居振り〜盆に薬>……  ……今に来るだろうか来るか来るかてんで待つ内に、当人の方が段々疲れて来る。来るか疲れと言う。えー、どうもこの女郎屋の明け方にお通夜の明け方なんてぇものはあんまり愉快なもんじゃァないてぇが。「(鼻を啜る)アーァ、止しゃァ良かったな。詰まらねぇ事しちゃった。こねぇだは廻りっぷりが良かったんだからなァ。初会でこの位ェなんだから、裏でも返(けえ)してやったらちょいと、乙な事ンなりゃしねぇかなァなんてんで、当て事と何やらは向こうから外れるなんてぇが。えー、丸っきり女が来やがらねぇ。てっ。俺の部屋ァ段々陰気ンなって来やがン。……

6.ホール落語での標準的な録音で、程々に枕を振っている。

7.K.K18H-5208 CT COPY

8.

五人廻し−3

1.TS-12530C1 VT=TV-39033-3

2.1969.5.28,TBS,国立小劇場,落語研究会第15回

3.34:17

4.なし

5.出囃子 無し(拍手のみ)

えー、ェッ、『五人廻し』と言う、お噺でございますが。えー、ェーッ、これは、ァーッあたくしの若い時分には随分、えー演り手がございまして、近頃は、ァーッ、えー大体吉原と言うものが、ァーッ無くなりまして、えー、まァ、ァッ廓が無ければ、ァーッ本当にこの、余り面白くない噺でございまして。と言うのは、ァー、えー以前は、廓がありましたので、本当に振られた方もありまして、ウーンその実感が、ァッわいてくるという。そこに、ェーッこの噺の価値があったんでございますが。近頃お若い方はもう、ォーッそういう所は丸でェッ御承知もございませんで、誠にお気の毒な訳でございますけれども。えーっまァ、ァーッ我々のなんぞでも、女郎買いの一つもしなくっちゃァ、ァー一人前の噺家ンなれないなんてぇ事を言いましてね、あたくしなぞは涙をのんであすこへ行った事もございますけれども。えーエッヘヘ、とにかくゥ、ウー、遊びに、おいでンなりますと、まァどうかして、ェーッ女に振られたいなんと言う方はございませんで、(白湯を啜る)みなァもてると言うつもりでね、『人は客、我が身は間夫と思う客』なんという。川柳と言う物は実にうがった事を言ったもので。えー『傾城に、振られて帰る果報者』、えー『傾城に、可愛がられて運のつき』なんと言う。こりゃァまァ、ァーッ結果はそういう訳でございましょうけれども、どうかして振られて見たいと言う方はありません。まァ、ァーもてるつもりで出掛ける奴がこれがまァその、案に相違して振られると言う事も、ままあるんでございますが。勿論まァ振ると一口に言いましても色々、ォッ振り方がありまして、えー丸っきり女が、来ないという、こう言うのは空床なんてぇ事を言いましてね、あるいはしょいなげを食ったなんと言う。「どうも夕べは驚いたよ」「そうかい」「アーしょいなげェ食っちゃったァ」なんてんでね。……  ……<しょいなげ手古鶴〜三日月振り〜居振り〜盆に薬>……  ……えーまァこの、ォーッ振られた覚えの、ある者は実に嫌なもんですねあの明け方ンなって来る、もう少しで夜が明けようかなと言う。お通夜の明け方に女郎屋の明け方なんてぇものはどうもあんまり、いいもんじゃァないてぇ。「…アーァ、止しゃァ良かったな。虫が知らせたのかな。今夜は俺ァもう止そうかなと思ったんだけどもなァ。こないだは初会であんな、どうもとりなしが良かったんだからなァ。裏でも返(けえ)してやったらちょいと、『本当にいい lだわ』ってんで俺は乙なハハ奴ン、なりゃしねぇかなと思ったんだがなァ。当て事と越中褌は向こうから外れるなんてぇけどもなァ。ウーウ、もっとも夕べの夢見が良くねぇやなァ、アー芋虫の天麩羅ァ食った夢ェ見た。後で考えても嫌だね。ァー、ああいう夢を見るてぇのがやっぱり振られる前兆なんだな。俺の部屋ァ段々陰気ンなって来やがン。……

6.落語研究会の録音で、白黒ながらVTRとして残されている。

7.TBSTV おはよう名人会 放送録音 1987.12.7

8.早起き名人会で1985年12月28日放送された分には枕にカットがある。

五人廻し−4

1.TS-02856A3

2.1970.11.25,東横劇場,東横落語会第119回

3.31:09

4.CS.50AG-909

5.出囃子 正札附

えーお運びを頂きまして有難く、ァーッ御礼を申し上げます。えー、『五人廻し』と言う、もうこの、ォーッ廓と言う物は、ァーッ無くなりまして、吉原と言う町名も、ァーッ抹殺されると言う様な、誠に悲しい事件でございますけども。えー、あたくしは吉原の張り店と言う物を、ぇー、見ました。もうこれで無くなると言うので、ェーあたくしが確か十四の時だったと思いますが、えーっ、吉原へ。あの大門の、すぐそばに、大坂亭と言う席がございましてそこへ、出ておりましたので、「もう無くなるよ」てぇ事を言われて、エーそれではと言うので、えー吉原と言う所をあたくしは拝見を致しましたが。(白湯を啜る)新宿にあたくしは育ちましたので、えー廓と言う物は良く存じておりますが新宿はあの、電車通りに、ィーッありました関係で表から見(め)えない様にこォー、囲いがしてありまして、それをこういう風に入って行くと、中に花魁が並んでいる事は良く存じておりますが。吉原はあの両側にずうーっとこう、並んでいる。さァどうも実に綺麗な事成程吉原吉原と言うが、さすがにどうも、ォッ結構な事で。これが無くなるかと思いましたらあたくしは、ァッ少年でありながら実にその、えーこれが無くなると言う事を惜しんだもんでございますが。ゥーン、とにかくゥ、ゥーッ、本場は、吉原と言う。昔から、ァーッ川柳にもごさいますな、『いっそ失せるなら吉原に失せおろう』と言う。これなぞは誠に、江戸っ子らしい、川柳だと思いまして。……  ……<三日月振り〜居振り〜盆に薬>……  ……待っている、時にあの来てくれりゃァ宜しいんですが、(白湯を啜る)いつまで待ってもあの来ないと言うのは、実にそりゃァ嫌なもんでしてね。えー「来るか来るか」てんで、待つうちに段々その当人も疲れが出て来る“来るか疲れ”と言う奴で。もう、午前三時を過ぎると言う。お通夜の明け方にこの、女郎屋の明け方なんてぇのはね、あんまり愉快なもんじゃァ無いてぇ。「(鼻を啜る)ァーッ止しゃァ良かったな。…詰まらねぇ事をしちゃったなァ。今夜は虫が知らせたんだ止そうかなと思ったんだけどもなァ。ェこないだは馬鹿に、廻りっぷりもいいしよゥこれならちょいと、裏かなんか返(けえ)してやったら『あの人は本当に、頼もしいわァ』かなんか言ってなァ、乙な人ンなりゃしねぇかと思ったんだが。アーア、こうなって来た日にゃしょうがねぇやなァ。ンーン、もっとも夕べの夢見が悪かったからなァ。帝釈様と差 オ向かいで安倍皮食った夢ェ見たン。嫌な夢ェ、ねぇ。帝釈様と安倍皮を一緒に食う訳が無ぇんだからなァ。アーやっぱり振られる前兆て奴だな。俺の部屋ァ段々陰気ンなって来る。……

6.東横落語会での録音。「五人廻し…2」の六年前の録音である。

7.CS.50AG-909 DISC COPY

8.枕の張り店見物の話が珍しい。

五人廻し−5

1.TS-02944C1

2.1976.3.2,CBS・ソニー,スタジオ,客無し,「圓生百席第四十四席」

3.51:11

4.CS.60AG-121,SR.SRCL-3831(CD)

5.出囃子 新内前弾き

吉原と言う所は、今のお若い方がお考えになるのと、昔の本当の吉原、本当の吉原てぇのは無いが、えー大変そのォ、何か違うんですね、観念が。赤線区域と言う物が、昭和二十年以後にございましてこれで、えーああ言う物は、禁じられてしまった訳で、でああいうもんだろうと思うン、ンーところがそんな、ちゃちなもんじゃァ無いですね。今で申しますと、新橋辺りの一流の、お茶屋さんでございますすね、芸者をあげて、お客様を御招待(ごしょうだい)をなさいますが。つまりああ言う物が吉原にちゃんとあった訳で。それと言うのが、茶屋と言う物がありましてここで、芸者幇間持ちを呼ぶ。勿論その芸者幇間と言うのがこれがもう、江戸で一流の優った者。えー、お色気を出す訳にいかないんですねあのゥ吉原の芸者というものは。ぇそれと言うのは花魁と言うものがありますから、「あたくしの方は芸一方でございます」と言う、これが表看板。だから、絶対にもう色気を出したらあすこでは勤めが出来ないと言う。ですから吉原でこの人は芸者をしていたんだってぇと、脇の土地へ行きましても、他の者が一寸そのゥ、恐れをなしたと言う位。ナー、何でもその、心得ていなければならないと言う。吉原と言う所はなかなか喧しゅうございまして。……  ……<北州千歳寿〜格式の話〜吉原の火事〜茶屋の見識〜江戸の廻し〜振る〜しょい投げ手古鶴〜盆に薬>……  ……えー、段々このォ今に女が来るか来るかってんで待つ内にね、当人も疲れて来る。来るか疲れてぇ奴でね。えー女郎屋の明け方にお通夜の明け方なんてぇものはこらあんまりいいもんじゃァ無い。「ハッ、ハッ、ハアー、アーァ。アー。(鼻を啜る)止しゃァ良かったな。えーぇ、つまらねぇ事しちゃった。ゥーン。虫が知らしたんだな。今夜もう止そうかなっと思ったんだけども、こないだ初回(しょけぇ)にしちゃァ馬鹿に、女の子廻りっぷりもいいし、裏でも返(けえ)してやったらちょいと乙な人にでもなるかてんで、へへへっ。ハーァ、あて事と越中褌は向こうから外れるなんてぇけども全くだよ。あー。驚いたね。陰気ンなって来る。……

6.「圓生百席」の録音。これを元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語4」に収められている。枕で延々と吉原について語っている。

7.CS.60AG-121 DISC COPY

8.

五人廻し−6

1.TS-12512A3

2.?,TBS

3.24:59

4.無し

5.出囃子 正札附

えー、ェーッ、色々このお楽しみと言うものがございますが、男の第一の愉快と言うこりゃァもう、ァーッ、何と言いましても、花柳界かなにかで、ェーッ若い綺麗な婦人に取り巻かれて、「あらまァお兄さんいいわよゥ」なんてな事を言って、アーでれでれしている方が、ァッ、お父っつぁんと睨めっこをするよりは愉快でございます。えー、お若い方は、ァーッ、廓の模様なぞは御存じがございませんが、昔はこの、えー必ず、ェッ入口の所に「若い者」と言うのがおりまして「若い衆」。ま別に「若い衆」と言ったって、ェーッ歳が若い訳ではございませんで、かなりもう頭の禿げた年配の男もおりますが、みんなこれを「若い者」と申します。またの名を「牛」てぇますがね、「牛」と言う。何だか踏んづけられた様な名前で。えー大見世へ参りますとこれを「ロース」「ヒレー」なんてぇな事を言う。小見世の方では、ァッ「駒ぎり」なんなんと言うまンな事は言いませんが。……  ……<牛の役目〜おばさん〜祝儀別世辞の変化〜振り方〜居振り〜盆に薬>……  ……あなた方に、ェッまァその、ァーッ振られた方も、こん中にはいらっしゃるでございましょうが、振られるてぇのはあんまりいいもんじゃありませんからね。えー女が今に来るだろう来るだろうてんで待つ内に、段々この、当人が疲れが出て来る。来るか疲れてぇ奴でね。えー、売れ残りの木魚ォ見たいに蒲団の上ィぽこんと座って、お通夜の明け方だのこの女郎屋の明け方なんてぇものはあんまり愉快なもんじゃァ無いてぇが「ァー。(鼻を啜る)止しゃァ良かったな。つまらねぇ事をしちゃった。今夜来るの止そうかなと思ったんだけどもこないだ、初回にしちゃァ馬鹿に当たりがいいんだからなァ。初回でこのくれぇなんだからちょいと裏でも返(けぇ)してやったら、乙な事ンなりゃァしねぇかとやって来たが、当て事となんとかは向こうから外れるなんてぇが、えー丸っきり女は面ァ出さねぇや、酷いね。俺の部屋は段々陰気ンなって来やがン。……

6.1950年代後半の録音、人形町末廣か旧上野鈴本の録音と思われる。

7.TBSR 放送録音 1991.1.13 ラジオ図書館「日本の話芸」

8.口調が晩年のそれより若干早い。オリジナルの放送時に細かくカットされている様で、その名残が枕等に聞く事が出来る。

五人廻し・解説

圓生師の「五人廻し」は何故サケが無いのか。これが最大の疑問であった。圓生師は圓生全集の解説で、サゲが余りピンと来ないからおかしい所で切っていると述べている。さて、実際はどうだろう。「五人廻し」のサゲがピンと来ないと言うのには私は同感しかねる。志ん生、正蔵、可樂といった師匠連がきちんとサゲまで演じていて決してダレていないどころか、「四人と一緒に帰ってくんなまし」と言う、人をくったとんでもない落ちはむしろ秀逸であるとさえ思うからである。登場人物のそれぞれのキャラクターによる怒りの言葉の楽しみは、演者の個性が重なって非常に楽しめる噺であり圓生師のそれも十分に楽しめる設定になっているのに、何故か圓生師のそれはサゲが無いだけでいつも損をした様な気になってしまうのは私だけだろうか。林家正蔵師がたった20分で五人全員を廻してきちんとサゲまで演じた録音では満足するのに…。

時代設定:吉原に廻しが存在した頃。明治時代で設定されている。

舞台:吉原のとある遊廓。夜明けが近い。

登場人物:振られる人五人(三つの時から出入りしているお兄ィさん、火箸使いのSM気のある男、法的に責める固物男、紛失ものを探して天井に上がる男、真鍮たがの肥桶しか担がない日本橋在の江戸つ子)、四十六歳にもなる若い者(出来の良い猿などと言われる商売上哀れな身分)

ベストテイク:独演会の「五人廻し…1」が雰囲気的にもベストであろう。

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