三遊亭圓生音源データノート
後家殺し−1
1.TS-02523B1
2.?,TBS
3.22:47
4.なし
5.出囃子 正札附
えーっ、ェーッ、色々この、お好き好きというものがございますが。甘い物をお好きになりまた、ァーッ、辛い物がいいと言う、お好みが、ァッ、ございますが。まァ音曲でも、清元とか常磐津、ァ長唄、えーああいうものは、江戸の芸でございますが、ァッ義太夫と言う、こりゃァもう何と言いましても、ォー関西が本場でございますが。えー、大阪あたりでは以前はこの、旦那方が、ァッ、随分お道楽に、浄瑠璃をお演りンなりまして、えー、一つのものを二十年三十年と、磨きをかけて、一段、或いは二段位でございますがあんまり数を増やさないで、えー一生懸命にそれを稽古をする。ですから、文楽座の太夫で今度は、ァッ何が出る、えーあすこの旦那が大変にお上手だから、一つそれを伺って来ようと言う商売人が、素人の所へ頭を下げて「どうぞ一つ旦那、あれを聞かして頂きたい」と言う稽古に行ったと言うぐらい。らどうもこう言うのはもう素人離れがしていると言う方でございましょうが。えーなかなか盛んなもんだったそうで。「おい、いるかい」「誰だオーッ、珍しいな上がん、えー上がんねぇな」「ウーどうも御無沙汰をしていやァちょいと来ようと思ってんだがなにしろどホホーも、貧乏暇無してぇ奴でしょうがねぇんだァ。えーおかみさんは今日は、いないのかい」「ンーンーうちのはね、叔母が、今日は一寸塩梅が悪いてんでェ見舞いにィ出掛けてね」……
6.TBSラジオの『お好み寄席』という、昔の録音を引っ張り出して放送していた番組の録音である。元は1960年頃の録音であろう。かなりカットされていると思われる。
7.TBS R お好み寄席 放送録音 1974.2.17
8.
後家殺し−2
1.TS-02795A1
2.1979.7.27,ワーナー・パイオニア,横浜教育文化センターホール,横浜落語会第32回
3.45:09
4.WP.L-8107W,LKF-2010(CT),WMJ.WPC6-8342(CD)
5.出囃子 中の舞
えーっ、昔からこの、褒め言葉と言うものが、ァーッ色々ございまして。えー、今は何か、ァー、御覧になりお聞きになり、お客様の方で、ェーッ、お気に入りますてぇとこの、喝采と言うものをなさいますが、えー昔はああいうことは無かったんだそうで、ま手を叩くのは、ァーッお茶屋でこの女中さんを呼ぶとか、或いはこの池でぇ、ェー亀の子なんぞを呼ぶ時に、(ポンポンポンポンポン)こんな事をしてね、手を叩いて。えーその他には、ァーそういう事は無かったと言う。ぇーあれはまァ、外国から、ァーッ来た物でございましょうが。古くは、褒め言葉と言う。ぇーこれはちゃんと決っておりまして。歌舞伎なぞを褒める時は、ァその俳優の、屋号を褒めまして、音羽屋とか成田屋とか、ウーンそうかと思うてぇと、ァー花火なぞン時には、あのゥ玉屋とか、ァー或いは鍵屋と言う、声を掛ける。ぇー浄瑠璃を褒めますのはそのゥ家元の土地を褒めると言う。常磐津なぞで、ェッ、何が何して何とやらと来た時に「いよっ、檜物町!」なんてな事を言う。…… ……<土地褒め>…… ……えー義太夫と言うものをお褒めんなりますのは、あれはいろんな褒め方がある。昔は『どうする連』なんと言いまして、ぇーいい所へ来るてぇと、ォー声を揃いて「いよゥよゥどうするどうするどうする!」なんてな事を言って。ヘヘッ、どうしたって大きなお世話なんですが。ねぇ打っちゃっときゃよさそうなもんですが。下っ腹へ力を入れてどうするどうする。或いは、ァー「待ってました」なんと言うこれもやはり、褒め言葉で。(白湯を啜る)…… ……<待ってました>…… ……えー昔はこのゥ、大阪の方では褒め言葉が違いましてね、後家殺してぇン。いい所があると、「後家殺し!」なんてな事を言って。ぇー、変な、褒め言葉でございますが。…… ……<娘義太夫の送り迎え>…… ……えーしかしまァ何の道でも、何の某と言うまでになる、なかなか大変でございましてまァこのお素人方でも、随分お上手な方が昔はありましたもので「おいっ、いるかい」「誰だい、アーアーアー、珍しいやな、まァお上がり、え、お上がりな」「どうも常さん居るかと思ってねぇエヘヘ、えーいやァ通りかがりでちょいと声を掛けて見たんだがいたわなァアー。えー、…おかみさんはどうしたのいないの」「え、おー、うちの奴は今日はね、ぇー親戚に病人が有るからその方を見舞いたいなんてんでね、子供を連れて出ていったんだんだ」……
6.横浜落語会の録音。この日のトリで、録音もあるのでたっぷり演じたものである。
7.WP.L-8107W DISC COPY
8.
後家殺し−3
1.TS-02831B1,VT=TV-39009-2
2.1978.5.31,TBS,国立小劇場,落語研究会第121回
3.43:59
4.Schwan.SRVT-3909(VT)
5.出囃子 正札附
えー、『後家殺し』と言う。ぇーこれは、ァーッ、上方噺でございますが、えー、ェーッ、大阪とすると、全部大阪弁で演らなければなりませんので、それではこちらの都合が誠に悪いので、えーこれを東京に置き換えて、ウウーン、申し上げる事に致しますが。ぇーまァこのゥ、ァーッ、色々、音曲と言う物もございますが、えー清元常磐津長唄、或いはまたァ、ァーッ新内、ぇこういう物はみな、江戸の芸でございますが。(ポン)義太夫と言うとこれはもう何と言いましても、ぇー上方が本場としてありまして。ぇー、こちらィこのゥ、文楽座の引越し興行なぞで、折々、手前も拝聴する事がありますが誠に結構なもので。えーあの義太夫を褒めると言う、今はあのゥ、ォー、お客様がお気にィ召しますと、こう、喝采を致します。拍手喝采と言う。ところがあのゥ、あれは明治になってから、喝采と言う物が出来ましたものでその以前は、手を叩くと言うのは、ぇー調子を、こう取る、つまりまァこの、オーなんてんですか、ンー、お酒のお替りや何かで手を叩いて、女中さんを呼んで、命じる、或いは人を呼ぶ時に手を叩くと言う。その他はございません。えー褒め言葉と言う物がありましていいとこが有ると、声を掛ける。ぇ常磐津を褒める時には「檜物町!」なんてぇ。えー、きよまた、清元ならば「浜町!」なんと言う。声を掛けると言う、これはなんでございますが。義太夫の方は、このォ「待ってました」と言う褒め言葉がありましてね。…… ……<待ってました〜どうする連>…… ……大阪へ行きますと褒め言葉が違います。何と言うてぇと、いい所があると、「いよっ、後家殺し!」なんてんでね。えー、変な、褒め方、言葉が…。後家殺してんですがね。えーこちらの聞く方が聞くとおかしい様ですが向こうは、いい所があると後家殺しと言う声が掛かると言う、ゥえーその時代のお噺で「おいっ、いるかい」「誰だい、おーォ、珍しいね、オー、えっ、上がったらいいじゃな」「どうもすっかり御無沙汰をして、えー相変らず。どうしたい、この方、お稽古に行ってる」「稽古は、ァ欠かさず行ってる」「そうかいあたしゃもうすっかり怠けちまってね、こないだ師匠に会って大小言アー、『アーおまはんどないしたねーん』なんてんでね、ぇー叱られちまってねぇ。ァーお前さんはなかなか熱心だねぇ、やっぱり上手い人は、アー、稽古ゥの身の入れ方が違うからねウーン、おかみさんは今日は」「え、オゥうちの奴は、親戚にィ病 lがあるんでね、その方へ見舞いに行ったんだ」……
6.国立小劇場の落語研究会の録音。没後だいぶ経ってから放映された。
7.TBS TV 落語特選会 放送録音 1985.3.11
8.1970年代に入ると、サゲで『上手い、後家殺し』と言うのをただ、『後家殺し』と言うだけにしているが、理論的にどうであれ、ただ『後家殺し』と言うだけだとこの録音の様に妙にあっさりしすぎている様に思える。
後家殺し−4
1.TS-02949C1
2.1977.8.9,CBS・ソニー,スタジオ,客なし,「圓生百席第八十五席」
3.58:10
4.CS.60AG-316,22KG-154(CT),CSTC-9014(CT),SR.SRCL-3828(CD)
5.出囃子 おくり 受囃子 「大功記十段目」から
昔はこの、ォーッ、義太夫と言うものは音曲の司と申しまして、勿論、演って難しいものには違いございませんがしかし、聞いておりましても誠に、面白いもので。えーあたくしもまァ小さい時分に、義太夫を演った事がありますが。ぇー言葉が良ければ、節の方が悪いとか、節が上手い人は言葉がいけないとか、まどちらかにそのゥ、偏るもんでございますが。まこれが両方共ととのうと言う、ま商売人は、それでなければいけないんでござますが。…… ……<床屋の義太夫〜竹本義太夫と近松門左衛門〜女義太夫どうする連〜手拍子連〜待ってました〜後家殺し>…… ……えーっ、大阪の方では、まァ何々連なんと言いましてね、『木の葉連』だとか、あるいは『杉山連』、ンーそう言った様な名前を付けて自らその天狗であると言う所を表明をして、ぇー『杉山連』、あるいは『木の葉連』、ンー、そういう面白い名前を付ける。ま東京でも、かなりにこの、義太夫と言うものは流行りましたもので。お素人方がお演りンなりましてもまた、上手い方がありましてね、ゥー、一つ物をば、十年二十年、三十年と、他のものはあんまり演らないが一つだけ、語りこんでいる。でこれはお素人でも磨きがかかっておりますから、えー相当値打ちがありまして、太夫でも今度これが出る、じゃ、あの方ン所へ行って一度聞かして貰おうなんというのがあったんで。でございますから只の素人芸とも言われませんが、なかなかそれ、ぇー熱心ででありまた上手い方もあったもんで。「おいっ、いるかい」「誰だい、おーォ、お入りこっちィ」「いやァどうも御無沙汰をして」「まァまァ、こっちへおいで、えーこっちへおいで」「いやッ、えー、すっかり御無沙汰をしているが、このォ何かい、行ってるかい稽古に、えっ、や、やってる、エッヘヘ、あたしゃもうね、ここんとこ怠けちまってね、あっ、こないだ師匠に会ったらどォもォ怒られたよ、『ォーどうしてぇ稽古に来ないんだ、そんなこっちゃァ駄目だ』なんと言われてね、エッヘヘヘヘ、えー、相変わらずゥお前さんはなかなか熱心だからねぇゥーゥーゥー。えー、おかみさんはいるかい」「え、いやァうちのはね、今日は親戚に病人があってね、その方を見舞うからてんでぇ出掛けて今留守なんだ」……
6.「圓生百席」の録音。この録音を元にした速記が集英社文庫「圓生古典落語4」に載っている。
7.CS.22KG-154 CT COPY
8.
後家殺し・解説
大阪の噺であるが大阪で演る人がいないので圓生の独自のねたの様に思われている。義太夫が不可欠な作品で、「後家殺し」の意味を仕込んでおかないといけないのでなかなか大変な噺である。しかし、声を掛けると言う風習がまだまだ芸の世界で残っていて、たとえ仕込みであっても不自然な噺にならないのは得なところであろう。「後家殺し、女殺し、犬殺し!」なんて今でも言いそうである。圓生師は晩年になってこのサゲの「後家殺し!」の部分をマイナーチェンジしたそうで、以前は「上手い!後家殺し」と演ってたのを晩年はただ「後家殺し」と変えたそうである。重語になるし間が崩れるから、と言うのが圓生理論なのだが、実際私は「上手い!後家殺し」の方が勢いがあって良い様に思える。幸いにもこのサゲに関しては二通りのサゲが録音に残っており、興味のある方は聞き比べて見ると面白いだろう。
時代設定:江戸時代。
舞台:常吉宅、伊勢屋、奉行所。
登場人物:常吉、その女房、常吉の友、伊勢屋後家よし、お奉行。
ベストテイク:「後家殺し…2、…3」が双璧。初期のサゲの物には「後家殺し…1」がある。