クラウン 五代目古今亭志ん生ベスト・コレクション 音源データ解析

日本クラウンから、1996年12月に発売になった、20枚のCD(カセットでの発売もあり)の音源を探って見ました。クラウンのCDに記載されているデータには、多少誤りがあります。また、過去に発売されたものによってはCDになったからと言って必ずしも音質が良くなったとは言えないものがほとんどで、注意が必要です。全体に今回の音源は音質が悪いものからCD化されていますが(音源提供:大貫正義氏)、それを気にするあまり過剰な後処理を行ってしまい、客席の細やかな雰囲気が失われていたり、志ん生の声が硬くなって聴き難くなっていたりしています。ノイズが多くても過去のアナログLPの方が聴きやすい事もありますので、これらの事を参考にライブラリーに加えて下さい。しかし、この音質と内容をもって「志ん生ベスト・コレクション」とするのには賛成しかねます。これは「志ん生珍品コレクション」でしょう。

CRCY-10001

女学校操競おゑんの伝(初音源)1957.3.8 NHK「演芸独演会」39:48

※「操競女学校〜おゑんの伝」が正しい演題。正真正銘の初音源で、弘文の「志ん生全集」にも載っていない。音源は大渕氏の放送リストにも掲載されているので正しいと思われる。CDは少々回転が速く収録されてしまっており、ピッチを少し落とすと当時の志ん生のトーンになる。尚、このシリーズ全般に言える事であるが、ノイズを取り除くデジタル処理を過剰にかけてしまっているため、録音全体が不自然に聞こえてしまう嫌いがある。多少の雑音があっても自然に聞こえるように処理して欲しかった。

CRCY-10002

茶金(初音源)1965.10.5 場所不明 29:27

※初音源である。茶金−6となる。データの日付の放送は無く、また病後に「茶金」の放送された記録が無い事から放送録音では無く、「牡丹灯籠」ともどもどこかの会での収録の様だ。喋り出しにある様に、トリの口演。

雨の将棋-01(初レコード化) 15:15

※既に音源は発見されていたもの。しかし、公式に発表されるのは今回が初めてである。病後の録音であるがCDにもデータは全く不明とある。CDの出囃子は別録音を付けたものであり、オリジナルには無いはずだ。

CRCY-10003

らくだ(初レコード化)1954.12.24 NHK「演芸独演会」39:57

※「らくだ-06」で、ある方より頂いた録音と同じ音源である。その方は昭和32〜34年頃の録音と記憶していると言っていたが、放送記録によると昭和29年の記録しか無い。はたして昭和29年にエアチェックが行われてたのか疑問は少々残るが、いずれにせよ、多少音質に難はあっても志ん生の元気な頃の「らくだ」で、出来が一番良い。弘文の「志ん生全集」はこの音源によっている。

CRCY-10004

三軒長屋(上)(初レコード化)  1964.3.17 NHK教育TV「古典芸能鑑賞」33:45

※「三軒長屋(上)-03」である。CDのジャケットにある1964.3.17は誤りで正しくは1964.6.7である。また、出囃子と拍手が頭に付いているが後からつないだもので、実際は客無しのスタジオ録音なので注意されたい。テレビの録音であるので音質は良いが、CDにする際に妙に中域をイコライジングしてキンキンさせてしまっており、聞き難くしてしまったのは残念だ。

後生鰻(初レコード化) 録音日・場所不明 10:50

※「後生鰻-03」で1966.10.9にNTV「笑点」で放送された音である。音がキンキンしていて聞き難いのは「三軒長屋」同様である。また回転が少々速く収録されてしまっている。同じ番組の某氏のエアチェックが残っているが、こちらの音の方が良い音である。

CRCY-10005

黄金餅 1956.3.28 NHK「演芸独演会」26:03

※「黄金餅-03」でCDジャケットにあるデータは誤りである。TBS音源、ビクター、テイチクから既にCD化されている音である。音質が悪いだけで何の意味も無い。

へっつい幽霊 (初CD化)録音日・場所不明 18:15

※「へっつい幽霊-3」で以前CBS・ソニーより50AG-904として出ていた音の復活であるが、音自体は以前のアナログ盤の方が聞きやすい。50AG-904には1957年録音とあったが、今回は不明になっている。あくまでも推定の域であるが、NHKRの1958.7.19放送分ではないかと察している。放送時間枠も20分である。

CRCY-10006

もう半分 1958.9.12 ニッポン放送 22:40

※「もう半分-01」キャニオンから出ている音源と同じだが、枕がカットされている。「もう半分-01」の枕をカットして音を悪くするとこれになる。

水屋の富 1957.5.22 NHK「演芸独演会」20:16

※ビクターからJV-1352としてレコード化され、ポリドールからPOCN-1125としてCD化されている「水屋の富-2」である。今回のCDでは1957.5.22録音となっているが、以前は1956.4.28とされていた。どちらも放送記録があるからどちらかの録音である事は間違いない。これも旧盤の方が私は聞きやすい。

CRCY-10007

芝浜 (初レコード化)1962.11.7 ニッポン放送「志ん生五夜」

※「芝浜-04」である。今回初めてレコード化された。復帰後、志ん生の自宅で録音されたと伝えられる「志ん生五夜」の1回目で、客無しの録音。

姫かたり (初CD化)1960.12.26 東横落語会 15:15

※「姫かたり-02」CBS・ソニーから50AG-901として出ていたものの復活である。同じソースによるものと思われるが、アナログ盤では僅かにハム音(ブーン)が入っていたが今回のCD化ではきれいに取れている。ただ過剰なイコライジングで声が硬くなってしまっているのが残念である。

CRCY-10008

坊主の遊び (初レコード化)1963 TBS 20:43

※「坊主の遊び-2」である。今回初レコード化された。1963.11.12のTBSラジオの放送である。CDのソースとなった録音は我々の持っていた音より状態が悪く聞き難い。

星野屋(初CD化)録音日・場所不明

※以前CBS・ソニーから50AG-905として出ていたものの復活であるが、音質は旧アナログ盤の方が良い。旧盤には1957年録音とあったが今回は不明となっている。「へっつい幽霊」と同様の推測だが、1958.7.26のNHKRの録音ではないかと思う。 

CRCY-10009

毛氈芝居 (初CD化)1960.8.30 「東横落語会」23:48

※「毛氈芝居-01」CS.50AG-901の復活である。東横落語会圓朝祭の録音である。旧アナログ盤ではハム音が混入していたが、今回のCDではそれを取り除く事に成功しているが、声が少し硬くなってしまっている。しかし、鳴り物入りの志ん生の芝居噺は貴重なだけに復活は有難い。

牡丹灯籠(序)(初音源)1965.10.5 場所不明 21:50

※今回初めて登場した音。(序)とあるが「刀屋」である。「茶金」と同じ日の録音で、どこかの会での録音の様である。

CRCY-10010

お初徳兵衛 (初レコード化)1958.04 TBS 23:42

※「お初徳兵衛-03」である。以前「早起き名人会」で放送されているが、放送では枕の弁ちゃんがカットされていたのが判明した。音質的には少々硬いがこのCDの音を残すべきであろう。

風呂敷 (初CD化)録音日・場所不明 18:13

※「風呂敷-04」でCS.50AG-905の復活である。旧アナログ盤には1963年の録音と表記されていた。病後の録音である。

CRCY-10011

宗aの滝(初音源)1959.8.15 三越落語会 27:27

※今回初登場の音。弘文の「志ん生全集」に載っている録音である。データの三越落語会と言うのは少々疑問があるが、いずれにせよ「宗aの滝」はこれしか残っていない様である。昭和30年代前半に志ん生はNHKで2回、LFで1回放送に掛けており、その時のエアチェックの可能性も高い。枕が落語会でのそれでは無い様に思えるのだが。また、このCDの音はピッチが少々低く収録されてしまっている。心持ち回転を上げると当時の志ん生の口調になる。

松山鏡 (初レコード化)1966.3.30 「志ん馬真打ち襲名披露」14:20

※「松山鏡-02」である。1966.3.30ニッポン放送の「東西演芸大会」のエアチェックである。

CRCY-10012

早桶屋 (初CD化)1959 TBS 37:37

※「付き馬-02」である。キャニオンF-7094の復活。独演会の録音らしく、電車の音が聞こえるから人形町末廣か鈴本の録音だろうが、正しいデータは不明である。当CDに掲載されている1959年TBSのデータも放送自体無く、ニッポン放送専属時期でもあり信用できない。旧キャニオン盤の出囃子は別録音に差し替えられていたが、今回のCDはオリジナル録音のものをそのまま使用している様である。比較的聞きやすい音で入っているが、オリジナルの保存状態が悪いらしく所々でテープ鳴きが起きている。

義眼 (初レコード化)録音日・場所不明 10:33

※今回初めてレコード化された初めての演題である。相当晩年の録音の様である。出囃子は別の録音の物をくっつけている。

CRCY-10013

穴どろ (初CD化)1963.11.29 「東横落語会」 32:12

※「穴どろ-02」でCS.50AG-902で出ていたものの復活。東横落語会での収録であり、世間話の枕が長い。

おもと違い (初レコード化)録音日・場所不明 13:22

※今回が初めて市販された演題。残念乍らデータは不明のままである。

CRCY-10014

藁人形 (初レコード化)1964.11.22 NHK「落語百扇」 28:11

※「藁人形-05」である。我々の所持している音はノイズが乗っていて聞き難いものだったが、今回の音は非常にクリアであり、差し替えると良い。

元犬 (初レコード化)録音日・場所不明 15:08

※「元犬-03」である。CDではデータ不明とあるが、1964.9.24文化放送「お好み演芸大会」の録音である。

CRCY-10015

唐茄子屋政談(上)(初レコード化)1956.7.2 ニッポン放送「志ん生十八番」25:27

唐茄子屋政談(下)(初レコード化)1956.7.7 ニッポン放送「志ん生十八番」26:42

※「唐茄子屋政談-8」である。我々の所持しているのはニッポン放送で再放送した時の音であるが、CDになったのは元の録音らしい。音は当然の事ながら再放送時の方が良くなっている。

CRCY-10016

お直し(初音源)1963 精選落語会 36:46

※初音源であり、「お直し-05」として登録されるべきもの。データに精選落語会とあるが、1963年に精選落語会は開催されておらず、信用の出来ないデータである。病後のどこかのホール落語会である事は違いない。

宮戸川 (初レコード化)1963 TBS 13:01

※「宮戸川-02」である。今回初めて発売される音。データは誤りで、1964.2.7のTBS「お好み寄席」の録音である。音質は芳しくない。

CRCY-10017

品川心中 (初CD化)1965.1.30「東横落語会」 32:11

※「品川心中-03」であり、CS.50AG-900の復活である。東横での病後の高座。

権兵衛狸-01 録音日・場所不明 11:08

※「権兵衛狸-01」でCS.50AG-905の復活でカットのあるヴァージョンである。だが、ポリドールから既にノーカット盤が出てしまっている今日では、音質も悪く何の意味も無いものである。1960.10.13にNHK「芸能ホール」で放送された客なしの音である。

CRCY-10018

鰍沢 (初CD化)収録日・場所不明 26:17

※「鰍沢-02」CS.50AG-904の復活である。旧盤には1957年録音と記されていた。その頃の元気な声が聞かれる。

猫の皿 (初CD化)1963.1.29「東横落語会」 21:13

※「猫の皿-02」元CS.50AG-902の復活である。病後東横への復帰第一声である。

CRCY-10019

搗屋幸兵衛 (初CD化)録音日・場所不明 24:03

※「搗屋幸兵衛-03」。これもCS.50AG-900の復活盤である。データは依然不明のままだが病後の録音である。

お化け長屋(初音源)録音日・場所不明 13:48

※今回初めて登場した音。「お化け長屋-03」となる。データ不明であるが病後の音である。下を13分で演じている珍品。

CRCY-10020

富久 (初レコード化)1963.12.29 「東横落語会」42:23

※「富久-02」。今回初めてレコード化される。病後の東横の録音で、元の録音にあるハムは取り除かれているが妙に声が硬い音で聴き難くなっている。

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