IC-T90使用レポート




メモリースキャンの速度は10〜12ch/s程度。とりあえずストレスは感じないレベルですね。なお、高い周波数や低い周波数をランダムにメモリすると6ch/sほどまで速度が落ちてしまうそうです。
サーチはかなり速いほうだと思います。20ch/s程度出ているような様子です。
トーンスキャンは他の無線機と同様にやや遅めです。

販売店で確認をとりましたが汎用のシガー電源ケーブルで12V供給することや安定化電源で13.8V供給はできないようです。
仕様では、DC5.5〜11V接続可(外部電源端子)となっており、専用のシガレットライターケーブル(CP-19)を通す必要があるとのこと。ジャックは同じですが保護回路が入っておりCP-19以外で電源供給した場合、機能ストップするらしいです。
特にモービル運用される方はこの意地悪な仕様に留意する必要ありですね。
また、付属の充電器ではリチウムイオン充電池の充電完了まで15時間もかかります。しかも充電中は本体の使用ができなくなるため、事実上使い物になりません。\4,500程度する別売の急速充電器は必須のようです。

アルカリ電池で使っていたところ、たった5時間でドロップしてしまいました。送信したのは5秒だけです。ただ、メモリ登録したり機能・操作確認するなど常に何かの操作をしていましたのでキーライトがつきっ放し状態だったことは補足しておきます。
また、1650mAhのニッケル水素充電池でも6時間30分しか持ちませんでした。いくらなんでも短すぎます。
電池がなくなると電源が勝手にオン・オフを繰り返すのですが、この時電源キーを押しても電源がきれないのです。電池ケースを強引に外すしかなかったんですが、これって想定事項なんだろうか?


メモリバンクは18個まで使えるので通常では困ることはないと思われます。これはIC-T90を選んだ理由の一つになっています。サーチ登録も25組までできるものよし!
対抗他機種と比較し2波同時受信がないなど地味な印象を受けるかも知れませんが、オートモード・オートステップ機能がある点なども含め、正に「電波も出せる広帯域受信機」となっています。

スキャンの開始は基本的に「MODE」キーの長押しのみでOK。しかし、バンクの切り替えはバンク番号をキーボードに入力するのではなく「BAND」キーを何回か押して目的のバンクに移動していくという面倒くさい操作になっています。
メモリ登録の操作は従来の常識を覆すものになっています。バンク番号はメモリの属性の一つとして登録することになります。
例えば149.71MHzをメモリバンク「C」として登録したい時はアドレス001にその周波数を入力した後にバンク番号「C」を指定することになるわけです。
1バンクあたり100個までという制約はあるものの、従来のように1バンクあたり何chと固定的に定義されていないのでメモリを効率的に使用することができます。
書き込みが完了した際にアドレスが自動的に繰り上げることができるなどIC-R2にもあった気の利いた細かい配慮がきちんと継承されているようです。

これから性能面について記述していきます。
140〜142MHzで144〜147MHzの強烈なイメージ受信が発生しており、152MHz前後の数箇所で内部発振も確認できました。
ほぼ全帯域でトップクラスの感度をもっているようです。
ただ付属アンテナはアマチュア帯重視の特性みたいなので留意する必要がありそう。
感度比較のテスト結果は以下の通りです。

<アンテナをD130にした場合>
128.6MHz: C710 = AR8200MKII > IC-T90 =AX400B(微差)
352.55MHz: IC-T90 = AR8200MKII = C710 = AX400B(差異は感じられず)
380MHz: IC-T90 = C710 > AX400B > AR8200MKII
420MHz: IC-T90 > C710 > AX400B > AR8200MKII
853.875MHz: IC-T90 > AR8200MKII > AX400B >> C710

<付属アンテナを使用した場合>
128.6MHz: AR8200MKII > C710 > AX400B > IC-T90
381.075MHz: AR8200MKII > C710 > IC-T90 = AX400B
421.675MHz: IC-T90 = AR8200MKII > C710 = AX400B(微差)

UHF帯に関して言えば混変調にかなり強い方と言えるでしょう。これは特筆ものです。
自宅の環境では他の受信機が348、468MHz帯あたりでダメージを受けるのが一般的だったのに対して見事に何事もないかのように平然としているのには予想外の結果で驚きました。

例によって耐混変調実験を行いました。微弱な380MHz波を受信している状態で至近距離から435MHz、300mWの電波を浴びせながら近づいていきました。
以下は完全に受信不能になった時の距離です。
IC-T90:20cm
AX400B:50cm
AR8200MKII:200cm
よって結果は C-T90 > AX400B >> AR8200MKII

ところが一方で主に150MHz帯で混変調と思われる現象が多発しております。
謎の無変調でスケルチが開いたり、ビートを伴ったり、はっきりテレビ音声とわかるカブリだったり…。
付属アンテナでは発生しないようですが、AR8200MKII付属のロッドアンテナや自宅の外部アンテナ、モービルで自動車電話型アンテナを接続すると耐えられないようです。

こちらの環境において混変調で潰されている周波数は以下の通り。
(★印は現在メモリ登録してあり直接被害を受けているもの)

146.06MHz
146.66
147.22
148.07
148.35
149.35
149.53
149.61 ★
149.63 ★
149.65
149.69
149.71 ★
149.73 ★
149.75
149.99
150.69
151.25
151.49
151.55 ★
151.61
152.69
152.71
153.69
153.71 ★
153.73

この他に120MHz帯でもチラホラある模様です。

これだけあると正直ちょっと使えないです。メインワッチの消防波だけに自分にとっては致命傷もの。他の受信機(AR8200MKII、AX400B、C710、VR-150、IC-R2、MVT-3400など)ではこの周波数帯ではなかった現象です。

150MHz帯で微弱な常時発報波がないので厳密な感度比較はできませんでしたが、感度が異常に良すぎるようにも感じましたし、もう少し感度を下げてでも混変調が発生しにくく調整を行うべきではないかと思った次第です。
メーカーに調整をお願いしたのですが見事に断られてしまいました。
UHF帯でかなりすばらしい性能を発揮しているだけにこれが改善されればお薦め受信機(無線機)にできるのですが…。

IC-T90は付属アンテナオンリーの使い方だと最高の性能を発揮する仕上がり。
一方で社外製の長いハンディーアンテナをつかったり、モービルアンテナにつなげたりするととたんに150MHz帯に甚大な影響を受けるモロさが露呈する有様。
感度至上主義には個人的には疑問も残るのですが、IC-T90はそういう意向の製品であるということです。
フィールドで外部アンテナを使わない用途では最強の無線機ですので、そういう使い方がメインの方にはイチ押しです。

それから、エアーバンドのAMでは他の周波数(FM)と比較して極端に音量が小さくなる不具合があります。他のジャンルと混在したスキャンを行うと問題が顕在化しますので要注意です。





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