IC-R5使用レポート
<総括>
不満もありますが総合的に評価すると「買い」です。
コストパフォーマンスが最高です。テンキーレスでありながら操作性抜群です。
機能面はVR-150を大幅に超えました。性能もVR-150より上です。
ほぼ全てがVR-150より勝っています。
これから2万円クラスの受信機を買う人にはIC-R5をお薦めします。
筐体の割にはスピーカーが大きくかなりよい音を出してくれます。しかもかなり大きな音も割れることなく出せるので車の中でも重宝しそうです。
イヤホンアンテナはFM放送のみで使えるようになっています。
電池の持ちは新品のGPブランドの1800mAhのニッケル水素で8時間程度。途中で4時間ほどお休みを入れた場合は11時間でした。パナソニックのメタハイ1700では連続使用で8時間半でした。
相変わらず電池大喰らいのようです。でも11時間持てば外出時もほとんどの場合は電池交換の必要がないですし、自宅では外部電源が使えるので割り切って使えそうです。
本体で電池を充電できますが付属のスーパーニカド1000で充電完了まで10時間かかるようです。過充電防止のため電池を外し忘れても15時間で充電を停止する安全仕様になっています
サーチは驚異的な速さです。実際に公称通りの35ch/sの速さが出ている模様。広範囲のMCA無線帯のサーチに威力を発揮しています。
メモリスキャンは8〜10ch/s程度。特に遅いわけではありませんがVR-150の12〜15ch/s速さに及ばなかったのはちょっと残念。
操作性について。
操作体系はIC-T90に似ていて操作性はかなり良好です。
IC-R2ではとても小さかったファンクションキーが大きくなってとても押しやすくなっています。左手で持った場合は親指で容易に押せます。
多用するサーチ、スキャンはスタート、ストップ、再開、バンク移動などほとんど全てが片手で操作可能になっていました。テンキーレスであるにもかかわらずこんなに操作性が良いのはスゴイ。思わず感激してしまった次第です。
感度について。
AM放送でバーアンテナを使えますが室内では地元の民放1局のみしか入りません。ベランダに出ると大阪の局も入るようになりましたがやはり専用ラジオには太刀打ちできるレベルにありません。VR-150(すでに手元を離れて直接の比較はできませんが)のと大差ない感度だと思います。ただVR-150の方が良いと言う意見が多いようです。
●同一アンテナ(D130)での感度比較
128.6MHz:IC-R5 = AR8200MK2 = C710 > AX400B(微差)
380MHz:IC-R5 > C710 > AX400B > AR8200MK2(微差)
感度はものすごくよくトップレベルです。
●付属アンテナ使用時の感度比較
128.6MHz: AR8200MK2 > C710 > IC-R5 > AX400B(微差)
380MHz: AR8200MK2 > C710 > IC-R5 > AX400B(微差)
でもIC-R5の付属アンテナの感度は少し控えめの模様。
混変調について。
気になる点がIC-T90でもあった150MHz帯での混変調。IC-T90よりはかなりマシですがやはり外部アンテナを接続すると起こります。
あちこちの周波数で弱い無変調波を受信しているような感じになります。
スケルチをオートにしてると顕著です。スケルチをマニュアルで1〜2にすると発生しなくなる場合が多くありました
う〜ん、IC-R2ではこんなことなかったのになぁ。
簡易業務、各種業務、小エリア簡易の周波数帯では以下の一部の周波数でのみ混変調が認められました。コードレス帯では親機周波数では混変調はありませんが子機周波数(254MHz)はポケベルに潰されています。これらはいづれもアンテナD130を使った場合の話。
付属アンテナでは一切混変調はありませんでした。
MCAの800MHz帯は感度良好で混変調も一切なく快適な受信ができています。
154.0500MHz
154.2100MHz
468.7375MHz
468.8375MHz
IC-R2と比較すると混変調特性は150MHz帯、254MHz帯でやや下回り、それ以外の周波数で同等の粘り強さがあるように感じられます。
耐混変調度を比較するために以下の実験をしました。
380MHzを受信中に430MHz・300mWの電波を至近距離から浴びせて受信機に近づいていきました。
受信不能になった距離はIC-R5が90cm、AX400Bが80cm、AR8200MK2が140cmです。
よって380MHz帯の耐混変調度は AX400B > IC-R5 > AR8200MK2 と言えます。
以前行ったIC-R2の耐混変調度の結果と比較してIC-R5も順当な結果になっているような気がします。廉価受信機としては立派な成績と言えるでしょう。
機能について。
ステップに関して今後広く行われるエアーバンドの8.33kHzにも抜かりなく対応しているので安心です。
メモリは1000ch、メモリバンクは18、各メモリバンクは最大100ch、サーチバンクは25と豪華で申し分ありません。
メモリネームとバンクネームも英数字記号6文字の制限ながら登録できるのでありがたいです。
ただ、バンクネームなんですがスキャンを始めようとしてバンクを選ぶ時に即座に見れないのです。バンクネームを表示させる操作をあらかじめしておかなければならないのです。
バンクネームとメモリネームを同時表示できないので、せめてスキャン中にバンクネームを表示してスケルチが開いた時にメモリネームを表示してくれるとありがたかったんですが…。
デュプレックス通信を傍受するために周波数オフセット機能があり、VFO状態ではバンド毎(便宜上11バンドに区分けされてます)にオフセット周波数を設定できるようになっています。
この機能がかなり実用的。サーチメモリやメモリchにオフセット周波数も記録できるようになっています。
例えばサーチ、スキャンの一時停止中にSQLボタンを押すだけで周波数移動が即座にできます。以下の4種類を実際に設定してみて便利さを実感。
・救急無線の基地局(移動局へのオフセット周波数:-4MHz)
・コードレスホンの親機(子機へのオフセット周波数:-126.35MHz)
・特小(オフセット周波数:+18.45MHz)
・MCA業務無線の基地局(移動局へのオフセット周波数:+55MHz)
AOR製品のように周波数に対応してオフセット周波数がプログラムされていないのは残念ですが価格のことを考えたらこれでも仕方ないでしょう。むしろよくやってくれたと感謝しています。
空線信号キャンセラーについて。
JR無線等で使用されていないときに出ている不快なピー音をキャンセルしてくれる機能です。関東地方の私鉄の無線で出ているギャラギャラ音(NEC方式空線信号)も完全ではありませんがほぼ実用レベルでキャンセルできるようです。
自宅では複数のJRの送信所からの電波でフェージングが起きているような状態ですがピー音はちゃんと消えてくれます。
ただ付属アンテナをつけた状態で部屋の中を歩き回ると電波が極端に弱くなる場所でのみピー音が漏れました。
VR-150にも同じ機能(JRのみ)がありますがIC-R5の方が圧倒的に安定しており性能が高いとの報告が多数あります。
スキャン中の空線信号検知は一瞬でJRのch通過時にスキャン速度はほとんど落ちません。快適そのものです。これはかなりスゴイのではないでしょうか?
VR-150でしたらJRのchで毎回1秒以上止まっていたような気がします。ちなみにAR5000では2〜3秒止まってしまいます。
MSK機能について。
MCA(空き周波数を見つけて定期的にランダムに周波数が変わる)であり、かつ制御信号があるという敷居がとても高かったMCA業務無線ですが、MSK機能によって不快な制御音をキャンセルしてくれるため、より気軽に傍受できるようになりました。
この機能を搭載した受信機は初めてでとても画期的なことです。
トーンスケルチを使えばいいじゃないかとの意見もあるようですが、トーンスケルチを使うためにはまずターゲットの局を特定してトーン周波数を調べておかなければならず、そのためには空線信号を聞きながらの傍受を免れることができないはずです。
実際使ってみますと、チャンネルを変えた時や交信が終わったあとの一瞬だけ制御信号が漏れてしまっています。また、電波が弱くなくてもたまに長時間空線信号が漏れる場合もあるようです。
というわけでMSK機能は完璧ではありません。まだ改善の余地はありますがMCA業務無線を聞こうという気にさせてくれた意義は大きいと思います。
試行錯誤の結果以下の方法でほぼ完全にサーチが途中で止まってしまうことがなくなりました。
・低音がより効いているような制御音はキャンセルできないのでその周波数をスキップするように設定する。(その周波数では通話が行われないようです)
・レベルの高いノイズが乗っている制御音はキャンセルされないのですが、それらは電波強度が共通して弱いのでスケルチレベルを高くして受信しないように調整する。
それから、なんとトーンスケルチのみならずDTCS(デジタルコードスケルチ)機能も搭載しています。これはスゴイ!!
もちろんその設定もメモリに記録することでできるようになっています。
受信機としてはDTCS機能を搭載したのは初めてではないでしょうか? これは快挙です!!
最近の簡易業務無線機には必ずといってよいほどトーンスケルチとともにDTCS機能がついています。まだDTCSの利用はそれほど多くないようですが今後その利用が増えてくるのは間違いありません。
気に入らない点として以下のものがあります。
メモリにステップ周波数やオフセット周波数なども同時に記憶されるのでサーチ時にその設定がディフォルトで使われるのかと思いきや、さにあらず。その時のVFOの設定に従います。これにはちょっとがっかり。
サーチメモリのFROM(TO)周波数をVFOにコピーする操作をしないとサーチ登録時のステップ周波数やオフセット周波数なども反映されません。(これに気づくのに時間がかかった)
ちなみにVFOではオフセット周波数はバンド毎に記録されるので、そのバンドでデュプレックス通信の傍受を一種類しかを行わない場合は不都合は起こりません。
メモリchではそれに記憶されたオフセット周波数がそのまま使えるのでこれも問題はありません。
ステップ周波数に関してはオートステップとは違うステップでサーチを行いたい時に不便を感じます。
パスメモリについて。
VFOでの周波数パスをするのにどうも専用のパスメモリがないようで、普通のメモリ登録のようにわざわざそのためにメモリchを作ってパス設定を行わなければならないようです。
メモリモードにしてダイヤルを回すとVFO用にパス設定した周波数まで受信してしまうことになり、なんだかなぁという感じです。
アナログ携帯電話が傍受できた時期は制御信号の出ている周波数を膨大にパスする必要がありました。現在はその用途もなくなりパスメモリの出番が少なくなってきているのは事実ですが不恰好なメモリ構築をしてしまうことになるのにはいささか抵抗があります。
今後のロットで改善される可能性がありますが、スケルチの切れた後や操作音の後に「プツッ」と音が鳴ってしまいます。
スケルチの切れる際のその音は他人に指摘されて初めて気がついたほど小さい音です。
目立つのは操作音の後の「プツッ」ですね。なんか鳴ってるなぁくらいにしか思ってなかったのですが改善してくれればありがたいですね。
IC-R2よりいたずらに感度を上げた代償として150MHz帯で外部アンテナ接続時に混変調が起こりやすくなってしまいました。基本性能ははっきり言ってIC-R2以下です。とても残念です。
都市部の強電界で受信される方は注意が必要です。
混変調という言葉さえ知らない入門者の受けを良くするために感度をより上げてきたのだと思いますが、多くのユーザーが携帯機兼固定機の使い方をしており、そうした現実を無視したメーカーの意向に首を傾げざるを得ません。
屋外では付属アンテナで、自宅では弱い電波も拾うべく外部アンテナで受信を行うというスタイルが取りにくくなってしまいました。但し田舎在住の方は心配に及びません。
廉価ハンディー受信機にそこまで求めるか? という声が聞こえてきそうですが、IC-R2ではそれがある程度できていたのです。その性能が評価され爆発的な人気を得たことにメーカーは再認識する必要があります。
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