系列概要
非常扉が付いた8090系
東急8590系は、当時東横線で活躍していた8090系を、将来のみなとみらい線への乗り入れに対応させるべく製造された、いわば代替先頭車として昭和63年に登場しました。計画されていた同線は地下路線であった事から、前面には貫通式の非常扉が設置されており、従来の8090系とはイメージが変化しています。また、編成のMT比を向上させる目的で、全車が電動車として製造されました。当時は9000系の増備途中であったこともあり、5本分となる10両を製造。側引戸窓の支持方法や座席間に仕切り板を設けるなど、同系列に準じた仕様が盛り込まれているのが特徴です。製造後は8090系の組み換えが始まり、東横線には8691F~8695Fの5本を用意。余剰となった車両は5両編成に組み換えられ、大井町線の8090系として10本が転属しています。転々とする所属
東横線用に製造された本系列ではありましたが、平成9年3月のダイヤ改正で同線の所要本数が減少したことより、8694Fと8695Fが営業を離脱しました。前面に非常扉を備えたほか機器類は8500系と共通であったことから、前者の編成が10連に組み替え、検査と転用改造を行った上で同年8月から田園都市線・新玉川線で営業運転を開始。さらに平成13年には8693Fが東横線から離脱。当編成からねん出した中間車2両を8695Fに組み込み、同年5月から田園都市線で営業運転を開始しました。その後、平成15年には5000系が導入されたことから順次東横線に復帰しています。古巣に戻った本系列でしたが、東横線では5050系による置き換えの対象とされ立場を追われることに。平成17年7月の8691Fの営業離脱を皮切りに、より古い8000系に先行して同線からの撤退が進み、最終的には8691F~8693Fが大井町線に、8694Fおよび8695Fは田園都市線に転属しました(中間の組込車両は前回時と異なります)。なお後者においては、編成数の少なさが災いしたのか前面貫通扉窓にⓀのステッカーを貼り付け、東武線に乗り入れない限定運用とされました。
そして時は過ぎ、東横線では副都心線への乗り入れに向けて9000系が置き換えられる運びとなり、平成21年以降順次大井町線に転入。それに伴い大井町線所属の編成は玉突きにより、平成25年6月までに全編成が営業運転を離脱しました。
田園都市線での活躍
それ以降は田園都市線に残った2本20両のみが活躍を続け、いずれも年内に重要部検査が行われました。とりわけ8694Fは前面の赤帯の張り直しに加え、窓周りの黒色が塗り直され、綺麗な姿を取り戻しています。その後、平成26年9月に補助排障器(8500系後期設置分並びに8090系の秩父鉄道譲渡向けと同等品)が設置され、表情が変化しました。字幕表示器の幕ズレや、それの蛍光灯が切れたままの放置が散見されるようになった平成30年には2020系による置き換えが始まり、平成31年2月27日のA40Kを以て8694Fが営業を離脱したことにより、8590系は(8590系の編成として)足掛け32年の歴史に幕を閉じました。本来の目的であったみなとみらい線への乗り入れは2年半に留まり、とりわけ8694Fと8695Fにおいては田園都市線での在籍が(活躍の機会こそ多くはありませんでしたが)その多くを占める結果となりました。
車両データ
編成 | 田園都市線用10連(8M2T)、大井町線用5連(4M1T) |
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車両性能 | 設計最高速度:120km/h 起動加速度:3.3km/h/s 減速度:3.5km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常) |
台車 | ボルスタレス空気ばね台車 TS-1010(電動車) |
駆動装置 | 中空軸平行カルダン駆動方式 歯数比16:85=5.25 |
主電動機 | 直流複巻電動機 170kW |
制御装置 | 界磁チョッパ制御(日立) |
制動装置 | 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用) |
保安装置 | ATC-P 新CS-ATC |
表示装置 | 前面行先表示器、前面種別表示器、側面行先表示器 |
次車 | 製造年度 | 該当車 | 仕様 |
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20次車 | 昭和63年 | デハ8691~8695 デハ8591~8595 |
8590系初期 |
編成表
田園都市線所属の10両編成(平成9年8月~平成15年3月、平成18年8月~平成31年2月)大井町線所属の5両編成(平成17年11月~平成25年6月)
東横線所属の8両編成(昭和63年9月~平成18年8月)