東急3000系

系列概要

問診

久々の新型車

東急では平成6年に製造した2000系中間車以降、8000系列の更新による既存車両の継続使用に舵を切り、しばらく車両新造のない状態が続きました。そんななか、現在の目黒線での使用も想定して登場した9000系では車両性能や乗務員室への機器設置に課題が残り、同線向けの車両として平成11年に久々の新造車として登場したのがこの3000系です。

すべてにやさしい美しい車両のコンセプトの下に製造され、車体では前面オオイ部に東急初となるFRPを採用し丸みのあるデザインが採用されました。側面は9000系の設計を踏襲しつつもビードを廃し、よりスッキリとした印象を与えています。また、新造時より補助排障器を設置しており、21世紀に入り地下化が進むも依然踏切が残る目黒線内での安全性向上を追求しました。機器面では7915Fで初採用されたシングルアームパンタグラフやIGBT-VVVFインバータ制御を本格的に用いており、後者では奇数編成に日立製、偶数編成に東芝製をそれぞれ搭載しています。冷房装置ではこれまでの分散式から集中式へ切り替え、こちらでは3009Fまでは東芝製、3010F~3012Fは日立製をそれぞれ搭載しています。

実質的な量産先行車である3001Fは当初8両で東横線に導入され、2次車の登場後に組み換えを受け全車が目黒線用となりました。現在は都営三田線、南北線・埼玉高速鉄道線へ乗り入れ活躍の場を広げており、5080系と共通運用されています。

相鉄線乗り入れに向けた8連化と改番

神奈川県東部方面線の建設が進行し相鉄線への乗り入れが現実味を帯びる中、本系列は平成11年~13年に製造されたこともあり、新造車を組み込んで8連化すると両車で車齢の差が大きくなることから、大井町線に転属するのではないかとの予想もありました。しかし、平成31年に新型車両(3020系)の3編成を含む全26編成を8両編成化する方針が打ち出され、本系列は目黒線での継続使用が確実なものとなりました。

実際に、5080系に続く格好で令和4年より中間2両の増結が開始され、最大で23年の車齢差が生まれることになりました。増結車は5000系同等の車体で、本系列のストレート断面と異なる台形断面を持ちますが、側面は全体が梨地仕上げとされ、編成美を重視したことがうかがえます。このタイミングでVVVFインバータのソフトが変更され、在来車が全電気ブレーキ(オール電気ブレーキ)に対応するとともに磁励音が変化しています。なお、それに先行して保安装置やデジタル列車無線の追設に加え、車内LED式案内装置のTIP化が令和元年から令和3年にかけて行なわれました。

車両データ

編成 目黒線・東急新横浜線8連(4M4T)
車両性能 設計最高速度:120km/h
起動加速度:3.3km/h/s
減速度:3.5km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常)
台車 ボルスタレス空気ばね台車
TS-1019(電動車)
TS-1020(付属車)
駆動装置 中実軸平行カルダン駆動方式
歯数比14:87=6.21
主電動機 三相かご型誘導電動機 190kW
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御(奇数編成は日立、偶数編成は東芝)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
保安装置 ATC-P 新CS-ATC ATO ATS-P TASC
表示装置 前面行先表示器、前面種別表示器、側面行先表示器
車内LCD式案内表示器
次車 製造年度 該当車 仕様
1次車 平成11年 3101F(以下車両を除く)
デハ3302
デハ3202
3000系初期
(デハ3202・3252は床敷物の柄を変更)
2次車 平成11年 3102F~3112F(以下車両を除く)
デハ3701
補助排障器に切り込みの小さいタイプを採用
床材の柄を変更(デハ3401を除く)
(以下の改良は3001Fにも施工)
運行番号表示器を大型化
通過標識灯を廃止
ワイパー色を黒色に変更
カーテンにフリーストップ式を採用
3次車 平成13年 3113F(以下車両を除く) 側面床下に非常用はしごを設置(既存車も設置)
運転台側ワイパーブレードを固定化
冷房装置出力を50,000kcal/hに増強
4次車 令和4年 サハ3401~3410
デハ3501~3510
※5000系18次車相当
荷棚を板状に変更
妻面化粧板を無地のツヤありに変更
貫通扉を水平式に変更し、窓面積を拡大
フリースペースの手すりゴムの仕様を変更
床敷物の材質を変更し、側引戸付近の滑り止めを省略

編成表

現行の8両編成(令和4年8月~)
かつての6両編成(平成12年1月~令和5年3月)

東横線への暫定投入時(平成11年4月~平成12年1月)

バリエーション

●目黒線所属(当時) 3101F
この編成に限っては、時を同じくして登場したY000系同等品の切り込みの大きい補助排障器を装備しています。東横線時代をほうふつとさせる8連ですが、組込車が異なるうえ改番も行われているので、当時とは似て非なる存在です。
また、3101F~3104F、3108F、3110F、3111F、3113Fは相鉄乗り入れ対応改造後も補助排障器の塗色がライトグレーのままですが、これらの編成は東急テクノシステムで施工された編成で、J-TRECで施工された編成と区別する意味合いがあるものと思われます。

 

●目黒線所属(当時) 3007F
6連時代で車外表示器は3色LED式、前照灯もシールドビームと登場時に限りなく近いスタイルだった頃です。表示が切れていますが、前面の英字表示は種別と行先で2段に分けられるものも存在し、本系列の特徴的でした。

車内

存置された妻窓を含め2000系の延長となる見つけながら、片持ち支持とされた腰掛や大型の袖仕切りに時代の進歩がうかがえます。東急車では初めて側引戸や妻戸に化粧版が張られ、見栄えも大きく向上しました。腰掛は平成26年ごろに厚みを持たせたものに換装されており、硬さは残るものの座り心地の改善が図られました。
4、5号車に連結された増結中間車は5000系6ドア車置換え中間車に準じていますが、ローバックに改められた背ずりと2020系同等のデザインに変更された床敷物が相違点です。