東急2000系

系列概要

人に優しい車両

東急2000系は、田園都市線および新玉川線(現・田園都市線の渋谷~二子玉川間)の列車増発に向けた増備用として平成4年に登場しました。9000系のきょうだい車としての立ち位置で、1000系で採用された改良点も取り入れています。外観上では、クーラーキセが2連一体形となったのが大きなポイントです。

本系列は「人に優しい車両」をテーマに設計され、東急初となる車いすスペースを設置したほか、直通先である地下鉄半蔵門線内にも対応した自動放送装置を搭載しました。2号車および9号車では通勤電車のアメニティー向上も念頭に置かれ、無機質なデザインだった座席モケットには花柄や縦じま模様を採用し、東急沿線の名所を織り込んだ側窓カーテンも取り入れました。これらは汚れが目立つ課題が残り後年に通常品に交換されますが、今日では他社局を含めデザインを重視した座席モケットや側窓カーテンが多く見られるようになり、本系列はそれらのきっかけになったといえるでしょう。また、7人掛け座席の蹴込み板を後退させ、荷物スペースとして確保した点も現在の片持ち支持の座席に通じるものがあります。更に、三角形のガラスを2枚配置した独特なデザインの貫通扉は令和になった今でも他に例がなく特筆されるべきポイントです。

田園都市線は平成15年より、地下鉄半蔵門線を介して東武伊勢崎線への乗り入れを開始しましたが、本系列は東武線への直通設備を搭載しておらず、同線へ直通する運用には使用されていません。9000系が同時期に車内更新を始めるなか、本系列も側引戸かもい部にLED式車内案内表示器こそは設置されましたが、そのほかは平成18年ごろの検査入場時に座席を交換した程度で、大きな変化は見られませんでした。一方で、車外の種別・行先表示器は早期にフルカラー・白色LED化されています。

その後、平成28年3月には車内照明のLED化が行われましたが、施工車両にバラつきがあり、2001Fは先頭車2両のみの施工であるのに対し、2003Fは付随車を除く8両が対象となっています。その合計は15両となり、5両3本に組み替えられることを踏まえると、将来的に大井町線への転属を示唆するものとなりました。

更新と大井町線への転属

平成30年3月に2003Fが更新工事(付随車2両を除く)を受けて出場し、田園都市線での活躍が期待されましたが、同線での復帰はせず、5両編成に組み換えのうえ同年11月に大井町線でデビューを果たしました。それと並行して他の編成も営業を離脱し、更新工事を行ったうえで正規編成に組み替え、順次大井町線へ転属しています。そんな中で、本系列は9020番台への改番を受け、2000系としては平成31年2月に2001Fが改番されたことにより消滅しました。

車両データ

  未更新車 更新車
編成 田園都市線用10連(6M4T) 大井町線用5連(3M2T)
車両性能 設計最高速度:120km/h
起動加速度:3.3km/h/s
減速度:3.5km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常)
設計最高速度:120km/h
起動加速度:3.3km/h/s
減速度:3.5km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常)
台車 ボルスタレス空気ばね台車
TS-1010(電動車)
TS-1011(付属車)
ボルスタレス空気ばね台車
TS-1010(電動車)
TS-1011(付属車)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:99=7.07
TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:99=7.07
主電動機 三相かご形誘導電動機 170kW 全密閉外扇式三相かご型誘導電動機 175kW
制御装置 GTO-VVVFインバータ制御(日立) MOSFET-VVVFインバータ制御(三菱)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用) 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
保安装置 ATC-P 新CS-ATC ATC-P
表示装置 前面行先表示器、前面種別表示器、側面行先表示器
車内LED案内表示器(千鳥配置)
前面行先表示器、前面種別表示器、側面行先表示器
車内LED案内表示器(千鳥配置)
次車 製造年度 該当車 仕様
1次車 平成4年 2001F、2002F(下記車両を除く) 2000系初期
2次先行車 平成4年 デハ2201、2202
デハ2401、2402
座席下蹴込み板を後退(車端部を除く)
通路扉の窓形状を変更
7人掛け座席部に握り棒を設置
模様入りのモケットを採用(交換により消滅)
2次車 平成5年 2003F(下記車両を除く) 上記変更点を全車に採用
車外表示器を3色LED式に変更
3次車 平成5年 サハ2703、サハ2803 2次車と同様

編成表

大井町線への暫定投入時(平成30年9月~平成31年2月)
リニューアル後の10両編成(平成30年3月~9月)

田園都市線所属の10両編成(平成4年3月~平成30年10月)

東横線への暫定投入時(平成5年1月~11月)

バリエーション

●田園都市線所属(当時) 2003F
平成27年11月に前照灯がLED化され、平成29年5月に更新入場するまでの間の姿で、原型としては最後の姿となりました。それ以外にも、登場以来転落防止ホロの設置、補助排障器の設置、車外表示器のフルカラー/白色LED化、車体側面端部への注意喚起シール張り付けが行われましたが、振り返ると大きく姿が変えられることはありませんでした。
●大井町線所属(当時) 2003F
平成30年11月に大井町線で営業運転を開始しました。暫定編成が組まれていた頃の姿で、2号車にはユニットを解いたデハ2352が連結されていました。2000系として大井町線に営業に就いていたのはこの2003Fのみで、平成31年2月に9023F改番。他の編成は9020系への改番後に営業入りしているので、大井町線所属の2000系は僅か3か月に留まりました。

車内

田園都市線における混雑を考慮し、横断流送風機のラインデリア化、オールロングシートとされたほかは9000系と同等の見付とされました。2号車および9号車では7人掛け座席の仕切り板に握り棒が設けられ、それぞれ異なるタイプとなっていましたが、2003Fの増備時には2号車(写真)のタイプが採用され、後の9000系の車内更新でも取り入れられることになります。
更新後は田園都市線をイメージしたとみられる緑系の濃淡2色のモケットが採用され、ナチュラル木目調を取り入れた化粧版とともにイメージが様変わりしました。7人掛け座席の握り棒はUD手すりに換装されました。