京急車両紹介

2100形

編成 8両編成(4M4T)
組成略号 8E
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 三相かご型誘導電動機 190kW
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御(東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
走行距離の増大により足回りの老朽化が懸念された2000形の後継として、平成10年に登場しました。600形の車体をベースに2000形の2ドアを踏襲し、側窓に固定式の熱線吸収複層ガラスが用いられているのが特徴です。また、前面非常扉を装備している事から2000形で果たせなかった泉岳寺乗り入れを実現しており、製造当初から計画にあった定期運用における都営浅草線への乗り入れこそは実現していませんが、同線へのアクセス性が向上しました。
高性能化とコスト低廉の両立を目的に外国製品が随所に用いられており、発車時に音階を出すことで広く有名なシーメンス製(ドイツ)GTO-VVVFインバータ装置をはじめ、車内面ではドア間の座席にエクネス製(ノルウェー)を採用。京急初の転換式で、乗務員室からのスイッチ操作により一括転換が出来るものです。座席の向かい合わせをしないことを前提にシートピッチを850mmに詰め、座席数の増加を実現しました。また、モケットにはボーゲサンズ製(スウェーデン)が用いられています。なお、このうち制御装置については保守面に課題が残るとして、平成20年より東洋製IGBT-VVVFへの更新が始まり、途中から並行して施工された室内更新も含め平成27年に完了しました。
日中に設定された泉岳寺折り返しのA快特に専属で充当されるほか、朝ラッシュ時はB特快で羽田空港へ入線、また夕ラッシュ以降は座席指定列車であるウィング号にてそれぞれ活躍しています。東急、川重製。

編成表

1000形1890番台

編成 4両編成(2M2T)
組成略号 4L
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 全閉外扇三相かご型誘導電動機 190kW
制御装置 SBD-VVVFインバータ制御(東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
座席指定列車であるウィング号の更なる座席数増加のほか、イベント列車としての使用を見越した車両として令和3年に登場。公募により選出されたLe Ciel(ル・シエル)の愛称を持ちます。1800番台をベースに車体には全塗装をまとい、レーザ溶接の採用によりストレート車体とされたことでアルミ車と比較してもそん色のない外観を実現。1000形を名乗りながら、ほぼ新型車両と呼ばれる所以となっています。
車内はL/Cシートが設けられ、車端部にもこれが設置されたのは本家の近鉄を含め初のケースとなります。また京急初となるトイレ(洋式および小便器)が設けられ、これまで仮設トイレを設置することでカバーしていたビール列車における充当が令和4年より始まりました。
当初は平日夜間および土休日の運用はありませんでしたが、本数が増えてくると平日朝以外は本系列以外の4連と組み南行の急行でも活躍。原則として羽田空港・浦賀寄りに連結され、遭遇は比較的容易となっています。総合車両製。

編成表

1000形1800番台

編成 4両編成(4M)
組成略号 4V
車両性能 設計最高速度:120km/h
起動加速度:3.3km/h/s
減速度:3.5km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 三相かご型誘導電動機 155kW
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御(東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
1000形ステンレス車4連(以下、4V)をベースに前面を貫通扉としたバリエーション車両で、普通から都営線直通を含めた快特までフレキシブルな運用に対応できる車両として平成28年に登場しました。足回りは実績のある4Vを踏襲していますが、車体側面には京急の伝統ともいえる赤と白の塗装をカラーフィルムにより復活させ、ステンレス車ながらその地の部分を大幅に減少させました。当初はハンドル訓練も兼ねて京成線へも乗り入れましたが、ほどなくして快特などへの増結車や南行の急行にシフトしています。総合車両製。

編成表

1000形(ステンレス車)

編成 8両編成(6M2T)、6両編成(4M2T)、4両編成(4M)
組成略号 8V(8両編成)、6V(6両編成)、4V(4両編成)
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 三相かご型誘導電動機 155kW
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御(三菱、東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
旧1000形の大量代替に向け、京急初のステンレス無塗装化を軸とするコストダウンを図ったモデルチェンジ車として、平成19年に登場。形式に変更はなく、車番もアルミ車からの続番となっています。車体側面は単調なカラー帯ではなく、カラーフィルムの面積を他社局の車両と比べて広げることで従来の塗装車のイメージを残しています。足回りは国産製が用いられたほか、車内は車端部を含めオールロングシートに改められました。このほか、運転士の安全性向上を目的に運転台が150mm上げられ700形以来となる高運転台を採用。また、非常用の避難はしごも装備されました。一部を除き8連は東急(総合車両)製、それ以外は川重製で幕板部の雨どい付近や車端部において車体の製造工法の違いが見て取れます。

編成表

1000形(アルミ車)

編成 8両編成(4M4T)、4両編成(2M2T)
組成略号 8V(8両編成)、4V(4両編成)
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 三相かご型誘導電動機 190kW
制御装置 IGBT-VVVFインバータ制御(東芝、東洋)
MOSFET-VVVFインバータ制御(三菱)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
600形に続く一般形車両で、平成14年に登場しました。2100形の3扉版といえる車両で、同系列でも名高いシーメンス製(ドイツ)のGTO-VVVFインバータ装置を本系列でも継続して採用。京急線内のみならず、歌う電車の名を都営線や京成線にも広めました。1000形を名乗るのはこれが2代目で、運用開始からしばらくの間は先代と同時に運用されていたこともあり、今日でも多くは新1000形と呼ばれています。平成28年の1401編成を皮切りに走り装置の機器更新が進められ、当初は京急にしては珍しく東芝製が用いられましたが、後期施工分では順当に東洋製となりました。8連においては、1001編成が平成29年に機器更新を伴う車体更新を受け、以降8連を中心に進められています。これも手伝ってシーメンス製の走り装置は徐々に姿を消すこととなり、GTO-VVVF編成は令和3年に消滅。次いでIGBT-VVVF編成も令和4に消滅し、2100形を含め24年に亘ったシーメンス製の足回りの系譜が途絶えました。東急、川重製。

編成表

600形

編成 8両編成(6M2T、4M4T)
4両編成(2M2T)
組成略号 8F(8両編成)、4F(4両編成)
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:83=5.93
主電動機 三相かご型誘導電動機
120kW(3次車まで) 180kW(4次車)
制御装置 GTO-VVVFインバータ制御(東洋、三菱)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
京急では老朽化した旧1000形の置き換え用として1500形を導入していましたが、初導入から10年近くが経過した平成6年、時代に適合する車両としてこの新型車両が導入される運びとなりました。前面は3次元曲面での設計をはじめ、向かって左側にオフセットしたプラグ式の前面非常扉など、バルーンフェイスとも呼ばれる現在の車両に通用する新しいスタイルとされました。
地下鉄に乗り入れる車両としては珍しく全席をクロスシートとし、更に前期の編成では混雑時に一部を2人掛けから1人掛けに変更できる可動座席が導入され、公募によりツイングルシートと命名されました。
平成17年より混雑緩和を目的にロングシート化が行われ、同時に車椅子スペース設置などのバリアフリー対応改造も行われました。更に平成21年より更新工事が開始され、ワイパーカバーには1000形などと同じく"600"のスリットが入れられたほか、補助排障器の形状変更や冷房装置の交換など外観面での変化が目立っています。いずれも現在では全編成で完了しています。東急、川重製。

編成表

1500形

編成 8両編成(6M2T)、6両編成(4M2T)
組成略号 8S(8両編成)、6S(6両編成)
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比15:82=5.47、14:83=5.93(GTO車)
主電動機 三相かご型誘導電動機
120kW(GTO車) 155kW(IGBT車)
制御装置 GTO-VVVFインバータ制御(東洋・三菱)
IGBT-VVVFインバータ制御(東洋・三菱)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
老朽化した1000形の置き換え用として、昭和62年に登場した系列です。乗り入れ協定に基づき、京急では初めてT字型のワンハンドルマスコンを採用しました。最初の20両は鋼製車体として製造されましたが、昭和63年以降はアルミ車体を採用しています。更に、平成2年からは制御装置がGTO-VVVFインバータ制御に変更され、電動車は1700番台に区分。新たに補助排障器も取り付けられ、外観のイメージが変化しました。外観は、前面非常扉にプラグドアを採用した他、800形でも実績のある窓周りを一段くぼませたデザインが採用され、その周囲は黒色に塗装することで各々の窓が一体的に見えるよう凝らされています。
平成13年より更新工事が開始され、平成21年に全編成で完了しました。また、6両編成の不足に伴い組み換えが実施され、6Mと4M2Tの編成とされました。しかし、後者は電動車減少による出力低下が懸念されたため、制御装置の更新工事が平成18年から開始され、出力を増強。平成27年に全編成で完了し、1000形と同等の性能が発揮されるようになりました。
8連は都営線直通への充当が多く、6連は1000形とともに普通に充当。4連はラッシュ時の増結や日中の普通にてそれぞれ運用されましたが、こちらは令和5年に廃車となりました。東急、川重製。

編成表

2000形(引退)

編成 8両編成(6M2T)
組成略号 8MT
車両性能 設計最高速度:130km/h
起動加速度:3.0km/h/s
減速度:3.5km/h/s(常用)、4.0km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比19:80=4.21
主電動機 直流複巻電動機 120kW
制御装置 界磁チョッパ制御(東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
旧600形の代替を控えた当時に長距離旅客サービスの向上を狙い、昭和57年に登場した系列です。サービス料金が不要ながらも有料特急車両を思わせる内装や120km/h運転に向けた均衡速度の引き上げ、そして主電動機の出力向上で電動車の減少による経済性追求が設計思想で、登場の翌年には鉄道友の会よりブルーリボン賞を受賞しています。前面デザインはこれまでと一線を画するくの字型の流線型を採用し、フラッグシップ車としての意匠が凝らされたほか、連結器には京急初となる廻り子式密着連結器(電気連結器付)が採用されました。
長らくは快速特急を中心とした優等列車で運用されましたが、走行距離の増大により足回りの老朽化が懸念され、後継として2100形を製造。合わせて、車両中間にドアを増設しロングシートを基本とする格下げ改造が平成10年から3か年で行われ、塗装も他の一般通勤車と同様のものとされました。
1000形の増備に伴い平成24年から廃車が始まり、その中で迎えた就役30周年を記念し2011編成が登場当時の塗装とされ通常運用で活躍。平成30年3月に同編成も引退を迎え、36年に亘る活躍に幕を閉じました。

800形(引退)

編成 6両編成(6M)
組成略号 6M
車両性能 設計最高速度:100km/h
起動加速度:3.5km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
駆動装置 TD継手式平行カルダン駆動方式
歯数比14:85=6.07
主電動機 直流複巻電動機 100kW
制御装置 界磁チョッパ制御(東洋)
制動装置 電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)
ドア数の増加や加減速度の向上による普通列車のスピードアップを目的に、昭和53年に登場した系列です。前面は左右対称ながらもこれまでにない斬新なスタイルとされ、見た目がよく似ていることからダルマのあだ名で親しまれました。車内の窓枠には他社に先駆けてFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が採用されているほか、京急初となる界磁チョッパ制御、全電気指令式ブレーキ及び回生ブレーキを導入。これらの優れた技術が鉄道友の会に評価され、翌年のローレル賞を受賞しました。
当初は3連で製造されましたが、線内で6連が運転される機会が増えたことを受け、昭和57年より中間車3両を製造。6両固定編成も登場し、最終的には全編成が6連とされました。登場時は、現在の2100形などと同様に窓周りを白色とする車体塗装でしたが、それが当時の優等列車専用塗装とされた昭和57年より塗り分けを現在のものへ変更し、昭和59年に完了しました。
平成6年から始まった更新工事も全編成で完了し、原則として本線の普通運用でのみ見られましたが、平成23年から廃車が開始され、最後の検査出場で登場時の塗装にリバイバルされた8231編成も令和元年6月に引退しました。