林家作品と男性キャラ

注、この文章は、林家氏の成人向け漫画に関するネタバレを含んでいます。構わない方のみ、お読み下さい。

 

 

 林家氏は幾つかのジャンルで漫画を描かれていますが、その一つに成人向け漫画……いわゆる「エロ漫画」があります。
 氏のエロ漫画は、同人誌作品を除くとこれまでに六作品(いずれも読み切り)が確認されていますが、それらには幾つかの共通点があることをご存知でしょうか?

 氏のエロ漫画を見ていると、大きく2種類に分けられる事に気付きます。男性と女性の行為を描いたものと、女性同士の行為を描いたものです。
 前者に該当するのが『Vハンター』『BLADE AND MAIDEN』『特命ナース200X』『白いうさぎと黒いうさぎ』、後者に該当するのが『Vハンター』『KISS DOLL』『PINK FOREST』です。
(『Vハンター』は両方の要素を持っているため、そのように分類しました。)

 

 前者に該当する四作品のあらすじは、それぞれ以下の通りです。反転させてご覧下さい。
(付記された年齢は、管理人の私見によるものです。)

『Vハンター』
(94年11月)
少女(高校生)が、借りて来たビデオから出て来た怪人に強姦されそうになる。そこに謎の女性(20代半ば?)が現れ、怪人を倒す。少女は女性の要求する法外な代金が払えず、身体で払うことになる。
『BLADE AND MAIDEN』
(01年8月)
少女A(10代半ば?)が山賊達に強姦される。そこに少女B(10代後半?)が現れ、山賊達を斬り倒す。実はAの正体はBの持つ剣の鞘だった。
『特命ナース200X』
(01年12月)
看護婦A(20代前半?)が病院に現れた幽霊に強姦される。そこに呪術師でもある看護婦B(20代半ば?)が現れ、成仏させる。
(作中には、看護婦AとBが同期という記述があるのだが……Bの方がやや年上に見える。)
『白いうさぎと黒いうさぎ』
(02年3月)
白うさぎのシロ(10代前半?)と、娼婦として働いて彼女を養っている黒うさぎのクロ(10代後半?)(尚、二人とも耳以外は人間そのもの)。シロが一人でいたある日、彼女は自分も働こうと客をとるが、途中で嫌になって止めてもらおうとする……が、相手は止めようとしない。そこにクロが帰って来て、その客を殺す。

 如何でしょうか。
 お分かり頂けたと思いますが、いずれの作品も以下のような点で共通しているのです。
(1):男性が女性に、強姦かそれに近い行為を行う。
(2):その男性か女性のいずれか一方は、純粋な意味での「人間」ではない。
(3):別の女性がそこに現れ男性を殺して、めでたしめでたし。
(4):助ける側の女性は、助けられる側よりも少し年上(に見える)。

 (1)〜(4)のいずれも、それ自体は特別なものではありません。
 しかし、男性と女性の行為を描いた氏のエロ漫画全てにこれらの点が共通しているのは、驚くべきことではないでしょうか。

 

 次に、女性同士の行為を描いた作品を見てみます。やはり、年齢は私見です。(反転させて下さい)

『KISS DOLL』
(93年1月)
野性的で粗野な少女(10位?)が謎の女性(30前後??)の許に送られて来て、様々な躾(性的なものも含む)を受ける。少女は立派なお嬢様になって立派な紳士に引き渡されるが、少女は女性の許に戻って来てしまう。
『Vハンター』
(94年11月)
(上の表を参照)
『PINK FOREST』
(95年9月)
森を歩いている少女(高校生)の前に二人の妖精(20位? ちなみに人間サイズ)が現れ、彼女にHなことをする……という夢を見ていた彼女を、授業中であった先生(男性)が起こす。

 こちらの作品には、男女間の行為を描いたものの時ほどの共通点はありません。……が、『PINK FOREST』と『KISS DOLL』には、以下のような共通点が見受けられます。
(5):男性が登場するのはたった一コマのみで、しかもその顔は描かれない。
(6):その男性の役割は、女性を快楽/幸福から引き離すことである。

 こちらはサンプルが少ないですが……やはり、興味深い共通点なのではないでしょうか。

 

 ところで、これらの作品の性行為はいずれも、両者の合意の上での行為……要するに「和姦」ではありません。
 実際問題として、エロ漫画の読み方としては「明確な合意が無かったから強姦」という判断は正しくないのでしょうが、少なくとも上記の作品の性行為はいずれも強引にか、又はなし崩し的に行われたものばかりであり、どちらかと言えば「和姦」よりは「強姦」に近いものでしょう。

 そして、いずれの作品でも性行為を女性に強制した男性は(未遂でも)死を以ってその罪を償います。
 ……が、女性が性行為を強制した場合には決してそれは罪とは描かれず、それどころか『Vハンター』と『KISS DOLL』に於いては、その女性は相手の少女に慕われるようになります。

 少々極端にまとめると、これまでの林家氏のエロ漫画はこのような世界観を持っている、と言えるのではないでしょうか。
(7):男性が女性に性的な行為を強制する = 悪 → 死刑!
(8):女性が女性に性的な行為を強制する = 善 → 相手に慕われる
(9):幸福な女性の前に男性が現れる  = 悪 → 女性の幸福は失われる

 女性が性行為に際して男性を恐がるのは普通であり、(7)(8)のような世界観が変だとは思いませんが……それにしても、何故にここまで氏のエロ漫画に於いて、男性は許されざる存在なのか。
 私は興味深い問題だと思うのですが、如何でしょうか?

 

 数日後、林家氏のエロ漫画の新作が読めるようです。
 それがどのよう作品なのかは、無論私には分かりません。同様の世界観を持っているかも知れないし、そうではないかも知れません。
 ただ、その点についても、どうなるのかを楽しみにさせて頂くつもりです。

 

 尚、上では触れませんでしたが、やはり成人向け漫画誌に掲載された氏の漫画にはもう一作品、『オギシマ』(94年4月)があります。
 この作品は中学生の少女同士の淡い関係を描いたものであり、性的な関係とは言えない(エロ漫画ではない)と考えて上では扱いませんでしたが、男性が事実上不在の作品なので、上で挙げた世界観を肯定もしないが、否定もしない……そう考えて良いかと思います。

 

(2002/04/07公開、2002/04/23題名他一部を修正し下の文を追加)

 

 

林家氏の新作エロ漫画『ULTRA SWORD』ですが、「少女が男性(型の怪物?)に強姦されかける→そこに別の少女が現れて、男性を倒す」という基本フォーマット(?)はほぼ同じでした。

助ける少女と助けられる少女に年齢差が見られない点、男性が性器(?)を切り落とされながらも殺されない(逃げる)点は上記の共通点にあてはまりませんが、全体的にこれまでと同様の、やや独特な世界観を引き継いだ作品であるように思えます。

さらに、本作は林家氏初の続き物のようで、この設定からすると次回以降も男性は「悪」としてのみ存在を許されそうな雰囲気です。

……ジークナオン!

 

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