尋ね漫画家・天野妖二

 漫画誌を読んでいると「おおっ!? こんな新人が出てきたのか!/こんな漫画家がいたのか!」といった 出会いがしばしばあります。私にとってそういう出会いは漫画を読む最大の喜びの一つですし、漫画好きと呼ばれる人種が 揃いも揃って漫画誌を何十誌も(時には百誌以上を)チェックしている(※注1)のは、 そういう理由もあるのではないでしょうか。

 私がある時、「ホットシェイク」(富士見出版)という成人向け漫画誌を読んでいると、それまで知らなかった天野妖二 という作家の作品が目に止まりました。その作品は独特な絵柄の、大変魅力的なもので、私は「これは!」と思い以後その 作家に注目することにしたのですが、その後しばらくその雑誌を見逃したところ、もう二度と氏の新たな作品を見ることは ありませんでした。
 これがその作品『Phantasmagoria』(ファンタズマゴリア)の冒頭の一コマです。
冒頭の一コマ

 私はこのサイトの開設して2年ほど、自己紹介のページで氏の情報を求めて来ましたが、何も情報は得られませんでした。 それどころか、Google で検索してもヒットするのは私のサイトだけというお寒い状況(※注2)。
 このままでは悲しいので、この場で氏の作品を紹介しつつ、改めて皆様の情報を募ってみたいと思います。

 その天野妖二氏ですが、高い画力かつ一種独特の絵柄を持った漫画家です。絵柄は幻超二氏に似ている、 と言うか明らかに影響を受けていますが、よりシンプルに、よりポップな絵柄になっていて、はっきり言ってしまえばモロに 私の好みなのです。

 女性キャラの可愛さ(漫画絵としては「綺麗」に分類されるかも)、体つきや背景の描写からうかがわれる画力の高さも さることながら、もっとも印象深いのがその絵柄です。ご覧の通り、スクリーントーンを全く使わず、黒塗りを過剰に使う 絵柄なのです。登場する女の子二人
 私はスクリーントーンを全く使わない絵柄にしばしば大ハマリするようでして、例えば寺田克也氏、木崎ひろすけ氏、 石川雅之氏、あびゅうきょ氏、冶島カロ氏などのそういう絵柄に強く惹かれるのですが、天野妖二氏の絵がまさにそれ。 もうド真ん中ストライクなのです。

 無論、絵柄の評価というのは好みで決まる部分が大きく、この絵が必ずしも誰もに受け入れられるものとは思いませんが、 恐らくは少なからぬ方に魅力を感じて頂けるのではないでしょうか。

 常識的に考えれば敢えて全くスクリーントーンを使わないメリットは別にないわけで、少しだけ使おうがどんどん使おうが 問題ないとは思うんですが、それでも敢えて全く使わない方の漫画は、魅力的であることが多いように思います (※注3)。
 このことは、スクリーントーンなしで綺麗に漫画を描くにはかなりの画力・技量が要求されることと無関係ではない気がするのですが (※注4)……どうなんでしょうか。Hシーンの一コマ

 尚、氏の作品について、絵以外の部分はどうなのかと思われるかも知れませんが、これについては判断は困難です。 一話ごとに読み切りのエロマンガで、ストーリーや人物描写をどうこう言うのはまず無理ですし。ただ、個人的には雰囲気は 大好きですし、エロとしても個人的には可愛らしくて良いと思います。
 登場するモンスターもさりげなくオリジナリティがあり、しかも愛嬌があってイイ感じなのではないでしょう か。何気にキュートなモンスター

 ……正直、天野氏はもう漫画界を去られたのだろうとは思います。しかし、今もペンネームと絵柄を変えて活動を続けて おられるのではないのか? だとしたら、既に名の知れた作家になっている可能性もあるのではないのか? 少なくとも、 一時期は同人誌などで作品を発表されていたのではないのか?……という思いを捨て切れません。

 この絵柄でピンと来た方、氏についてご存知の方、どうかご連絡下さい。

現在分かっているデータ

ペンネーム
天野妖二(YOUJI AMANO)
作品リスト(いずれも「COMICホットシェイク」掲載)
漫画『Phantasmagoria』第一話(93年10月号)
漫画『ピーチセルズ』及び表紙イラスト(93年11月号)
漫画『魔女アリッサ』(94年6月号)
漫画『Phantasmagoria』第二話(95年1月号)
その他
上記の93年10月号がデビューとのこと。
現在活躍中のエロ漫画家に「あまの・よ〜き」という方がおられるが、無関係と思われる。

注釈▼

※注1……確かに実際に単行本派の漫画評論家なんかもいますが、やはりそういう人は少数派で あるように思います。

※注2……例えば、同誌で同時期に連載をされ、そして恐らく同時期に消えられた綾野麗氏(この方も上手い) は、検索すれば それなりにヒットするのに……。まあこの方は結局単行本を出されているのが大きいのでしょうが。

※注3……ただ、スクリーントーンを全く使わない漫画家が皆、試行錯誤の結果敢えてスクリーントーンを使わないことを選んだのかと言うと、 そうでもないようなのですが。上でも触れた石川雅之氏なんです が、02年11月17日の日記によると、 氏は(デビューして既に5年になる)この日まで全くスクリーントーンを使用されたことがなかったそうで……。

※注4……尚、当然ながらスクリーントーンを使った漫画を否定する気は毛頭ありません。 ワンポイント的に使うのもページを埋め尽くすほどに使うのも漫画家の自由であり、いずれのタイプにも当然上手い絵・魅力的な 絵は存在します。
 また、それまでスクリーントーンを使っていなかった漫画家がある時から使うようになっても、それでその絵の魅力が減じるとは 思いません。

尚、今回の画像は、「COMICホットシェイク」(富士見出版)95年1月号P,157,160,167より引用させて頂きました。

2002/12/20公開、2003/07/03最終更新

追記▼

 2005年5月2日、W・Tさんから天野妖二=幻超二ではないか、というメールを頂きました。 W・Tさんは幻超二氏のファンサイト「F4E 別館」を紹介し、 幾つかの理由を挙げられました。ご本人の了解を頂き、以下にメールの一部を転載します。

(略)天野妖二は幻超二の使っていたペンネームのうちの一つなのではないかと思いました。以下に推測の理由を挙げておきます。

<推測の理由>

 確かに興味深い指摘ではありますが、いくつかの点からこの説には疑問があり、 私はW・Tさんに以下の返信をしました(一部抜粋)。

(略)「天野妖二は幻超二」との推測ですが、率直なところ私としては違うように思えます。W・Tさんは私の紹介記事でしか天野氏をご存知ないかと思うので、よく分からない話になってしいそうですが……。

 結局はW・Tさんも「単行本を読み返してみたところ、やはり違うなぁと感じました(頂いた2通目のメールより)」とのことで、 やはり「天野妖二=幻超二」というのは正しくないと考えてよさそうです。

 ただ、W・Tさんへの返信でも述べたのですが、天野氏が幻氏のアシスタントをされていた、といった可能性は 大いにあるかと思います。両氏の関係についてご存知の方、ご連絡を頂ければ幸いです。

2005年6月27日追記