ロバート議事規則 簡単マニュアル

 

20072008ライオンズクラブ国際協会

330複合地区会則会員委員会作成  

委員長 久 津 間   康   允

このマニュアル作成にあたって

ライオンズクラブでは、国際理事会からクラブの委員会にいたるまで、全ての会議に関する進行や手順は、特段の定めがない限り、最新版のロバート議事規則に従うこととされています(国際付則第9条第5項()、クラブ付則第8条、複合地区年次大会議事規則標準版第11項、地区年次大会議事規則標準版第12項)。

そのため、ライオンズクラブの運営要綱や地区役員必携等にはロバート議事規則に関する説明や、ライオンズクラブ議事規則(一例)が掲載されています。

しかし、残念ながら、プロトコールの高い方が主催する会議でさえ、ロバート議事規則に従った運営がなされていない場合に多々遭遇します。

その原因を考えると、日本人が純粋に議論をすること自体に慣れていないため、議論すること自体を批判や非難と誤解してつい感情的になってしまい、結局、議論を避けることが相互理解や友愛であるかのように思い違いされているほか、ロバート議事規則自体も複雑で、運営要綱や役員必携の解説も抽象的で難解なのも一因ではないでしょうか。

そこで、今期、当委員会では、具体的で分かりやすく、誰でも直ぐに会議の進め方をイメージできる、ロバート議事規則の実践的なマニュアル(手引き)が作成できないものかと検討することにしました。

その結果、詳細な解説は大幅に省きましたが、今までの解説書にはない、あなたが議長となったときに、どのように会議を準備し、進めれば良いかがある程度イメージできるものになったのではないかと思います。

このマニュアルの作成にあたっては、インターネットにより得られた資料のほか、ロバート議事規則の入門書である「民主主義の文法」(ドリス・P・ジマーマン著、立木茂雄監訳)を中心に参考にしましたが、是非、複合地区のホームページからダウンロードして活用していただければ幸いです。

1.まずは、ロバート議事規則の基本的な精神を押さえてください。

ロバート議事規則の精神は、

@ 多数者の権利

A 少数者の権利

B 個人の権利

C 不在者の権利

という4つの権利の保護です。

    @は、多数決原則に現れています。

    Aは、動議提案者の他に一人でもセカンド(あくまで議題として討論することに賛同することで、議題の内容に賛成かどうかは関係ありません。)があれば、議論の対象として取り上げられることや、少数者の権利を制限するには、事前の通知と3分の2以上の賛成を要件としていることに現れています。

    Bは、個人への名指し攻撃、あるいは特定人物のプライバシーにふれることは禁止されます。

    Cは、委任状や不在者投票として保護されます。

 

2.次に、ロバート議事規則の原則を覚えてください。

 @ 一時一件の原則

一度に一つの議題しか討議することができません。(例えば、時間と場所と方法を一度に討論し、決議してはいけないということです。)

A 一事不再議の原則

一度決定した議題は、掘り起こして同じ議題を再導入してはいけないという原則です。(ただし、異常な状況を前提とした特別な手段による場合は別です。その場合は、3分の2以上の賛同者が得られて再審議可能になります。)

B 多数決の原則

過半数とは、棄権(票)を除き、投じられた票数のみを勘定し、賛成者が半数を超えることを意味します。(例えば、賛成11、反対10、棄権3の場合、投じられた票は21票のため、過半数は11となって可決となります。また、7人の委員会で出席者が5名の場合、2人が棄権をすると、賛成2、反対1でも可決となります。)

C 定足数の原則

会議の定足数とは、会議を開催したり決議するために必要な投票権を持つ構成員の数をいいますが、特別な定めがない限り、構成員の過半数です。

 

   会議は、以上の4つの権利と4つの原則を頭に入れて運営しましょう。

 

3.会議開催前の準備について。

会議の成功は事前の準備にあります。次の点を確認しましょう。

@  予定議題の確認と整理、会議資料の準備をします。

→ 議程表(式次第)を作成します。

      A 開催日時、開催場所、設営者を決定します。

B   開催日までの期間を確認して、開催日時、開催場所、予定の議案等を記載した開催通知を発送(発信)します。

 

4.議長として、議事運営をする上で一般的な留意事項について。

   @ 公平無私であること(議長は、できれば意見や表決を控えること)
   
A   議案の整理は正確を期し、議論の焦点を定めること(何が今審議の対象かを明      確にすること)
     B  無秩序な発言を統制し、バランス良く発言をさせること(賛成・反対の意見が分     かっている場合には、交互に発言をさせること)
     C  節度を保つこと(むやみに強権的な議事進行をしないこと)
     D  議事規則に精通すること

5.議長による(一般的な議程表に基づく)会議の進行手順について。

@ 事前に書記を決定しておきます。

   
A   定刻前に定足数を確認します。(定足数は規約によりますが、一般的には構成     員の過半数(2分の1ではありません。)とされています。)
     B    定足数が揃っている場合には、時間厳守にて、「定足数が揃いましたので、こ     れより・・・会を開催します。」と開会を宣言し、会議を開始します。
     C    開会の挨拶等の開会儀礼が終了した後、書記と議事録署名人を指定して議事に     入ります。(議事録署名人は定めないケースもあります。)
     D   最初に前回議事録の朗読者を指名して朗読してもらいます。
     E 議事録が朗読された後、「議事録に訂正はありませんか?」と議場に諮り、な     ければ、「議事録は、読み上げられたとおりに承認されたものとします。」    (訂正された場合は、「訂正されたとおりに承認されます。」と承認(訂正)を     得ます。
     F  予定した報告がある場合は、順序に従って各報告者に報告を求めます。
     G  報告に対しては、「今の報告に何か質問はありますか?」と議場に確認し、質     疑が終了したら「報告のとおり了承されました。」と述べて次の案件に進みま     す。
     H    全ての報告事項が終了した後、「それでは、第○号議案を上程します。」と     述べて議題の取り上げ宣言をして、議案審議に入ります。(議案審議の整理の仕     方は次項を参照してください。)1つの議案審議が終了した後、「続いて、第     ○号議案を上程します。」と議題の取り上げ宣言をし、順次議案を審議してい     きます。

    1.議案審議は、特別予定議事(例えば委員会委員の選挙など)があれば、最初      にその審議をします。
    2.次に、前回からの継続議事があればその審議をします。
    3.一般予定議事があれば、その審議をします。
    4.新規議案があるかどうかを構成員に問い、セカンドされる提案があれ          ば、その審議をします。
    I   全ての議案審議が終了した後、書記に議事の要約・確認を発表させるケースも      あります。(次回、議事録確認を行うので、必ずしも必要的ではないと思われます    。)
    J    各審議が終了したら、できれば次回の議事日程を確認し、連絡事項を伝えます。   K    最後に閉会をします。閉会そのものも一つの動議なので、「会合に掛ける議案は     以上です。異議がなければ本日はこれで閉会にしたいと思います。」と議場     に諮り、全会一致によって、「異議がないようですので、本会は、これにて     閉会いたします。」と宣言します。

 

6.議案(動議)審議の整理の仕方。

  ロバート議事規則は、議案(動議と同義です。)の種類や内容を4種25項目に動議リストとして分類し、その審議をすべき順序の優劣、セカンドの必要の有無、修正の可否、可決する場合の割合等を定めています。

  一応、動議リストを参考までに末尾に添付します。これを全て暗記すれば良いのですが、一般的にはそこまで必要はないと思われます。

  そこで、以下のように大まかに把握して整理をすれば足りると思われます。

@    議題の取り上げ宣言をして予定議案の上程するのにセカンドは不要です。(予定議案としたこと自体、既に2人以上が審議に賛成していることが明らかだからです。)

A    討論に際しては、最初に提案の趣旨を提案者に説明させます。

B    これに対し、「質問、意見を求めます。質問または意見のある方は、挙手(起立)をしてください。」と発言を促します。(構成員は、議長から発言権を取得して初めて発言することができます。従って、構成員は「議長!」と述べて、議長から発言権を取得するのが儀礼とされています。)

C    議案の審議中の構成員の発言には、質問、意見、動議があります。そこで、議長は、発言者の趣旨が明らかでないときは、質問か、意見か、動議かを確認する必要があります。また、動議である場合は、構成員に分かりやすいように、どのような動議であるかを明確にします

D    動議には、閉会休憩を求める優先動議のほか、主議案を前提にした審議終了審議短縮延期委員会付託修正等の補助動議、また、議事の進行手続に関する付随動議があるので、そのどれであるかを判断し、現に審議中の主議案と全く無関係な内容を主議案とする新たな動議は、議事を混乱させるものとして却下します。

E    動議の場合は、ほとんどの場合セカンドが必要です。適切な動議に関し、議場から、「セカンド」の声があれば、セカンドされたことになります。セカンドの声がなければ、「○○という動議が提案されました。セカンドされる方はありますか?」と議場に問いかけます。なお、一般的な動議でセカンドが不要なのは、優先事項(例えば、「発言者の声が聞こえません。」とか、「配布資料を受け取っていません。」等)と動議の取下と考えておけば足りると思います。

F    動議にセカンドがなければ、「ただいまの動議は却下します。」と宣言し、セカンドがあれば、本来の主議案の審議をひとまず置き、討議可能な補助議案延期委員会付託全体の委員会への持ち越し修正不定期に延期)については、「○○という動議はセカンドされました。よって、○○について討議をします。」と動議の取り上げを宣言して、主議案より動議について討議をすることになり、改めて、動議の提案者に提案の趣旨に関する発言の機会を与えます。その他の動議は、実際にはほとんど討議不可能と考えて差し支えないと思われますので、直ちにその動議の採決を行います。(但し、発言時間を制限するような審議短縮の動議については、発言の長さと、いつ採決を行うかについての修正は可能ですので注意してください。)
なお、動議は、議長による取り上げ宣言前であれば撤回できます

G    討議における発言者の発言は、同一の動議について2回までとされており、2回目の発言は、他の発言者が一通り発言した後を原則とします。(なお、同一の会議で2回ではありません。)

H    動議について討議が終了したら採決をします。動議を可決するには、原則として過半数の表決が必要です。但し、構成員の権利を制限する内容の動議、すなわち、審議打ち切りによる採決の動議や、発言時間を短縮する動議は、3分の2の賛成が必要です。
採決の方法は、挙手、起立、声による投票(ボイスボウト)でも構いませんが、採決の方法も一つの動議ですので、採決方法についての構成員から動議が提出されなければ、議長は、「採決方法は挙手(起立、ボイスボウト)で構いませんか?」と問いかけ、全会一致の方法により、「賛成の方は挙手をしてください。」、「反対の方は挙手をしてください。」と述べて、数を確認します。
仮に、採決の方法についての動議(例えば、無記名による投票用紙による投票等)が提出されれば、これについてセカンドを求めて、過半数の意思により投票方法を決定します。

I    動議の結果如何にかかわりますが、動議の採決後、主議案に戻って討議をし、同様の手順を繰り返します。

 

7.議事録の整理の仕方。

  議事録は、できる限り簡潔に書かれるべきとされています。作成上の注意点は次のとおりです。

  【記録すること】

@        全て採択された議案と、却下された動議

A        動議を申し立てた人の名前

B        報告を行った全ての構成員の名前(役職)

C        選出された、あるいは指名された全ての構成員の名前

D        投票における賛否のそれぞれの得票数

  

【記録しないこと】

@         討議経過や個人的な意見

A         議案についてセカンドした人の名前

B         撤回された議案

C         報告書の内容(報告書は議事録に添付される。)

  議事録に記載する事項例

@        会合の種類・組織の名称

A        会合の行われた日時・場所

B        会長・書記の出席の有無(代理の場合はその氏名)

C        定足数に達したこと

D        会合の開会宣言時刻

E        前回議事録の承認及び修正

F        報告事項

   報告者の氏名と、当該報告に関連して決定した案件

G        全ての主議案

H        議事進行への疑義または異議の有無

I        重要な連絡事項(演説の要約は不要)

J        閉会と閉会の時刻

K        書記の署名

L        承認を得た日または訂正をされた日