私がパソコンを始めたわけ
そもそもの事の起こりは20年前のファミコンにあった。 その当時一世を風靡したファミコンの「ファミリーベーシック」に夫が興味を 抱いた事のである。 それは「ゲーム」ではなくどちらかと言うとゲームを作る感覚であった。 しかしながら実際にはゲームには程遠く、「キャラクターを表示して歩かせる」 と言った類だった。 私にとっては全く訳のわからないものであり、コンピューターそのものにそれほど 興味はわかなかった。だから一緒にやろうとも思わなかった。 後になって一緒にやれば良かったんだ、と言われても私としては興味の無いことに 熱が入らないのは当然といえば当然の事であった。 そうして見せられた画面にはボールが右から左に等速度運動する、というものだっ た。 時が経つにつれ、ボールは放物線を描いて画面を左から右に弾むように動き出し、 ボールはマリオに変わった。 そうなるとこのまま黙っていられなくなった。夫にだけ出来る、というのはなんと も癪に障った。そんなに興味があるわけではないがやってみようと、夫に教わりな がらなんとかボールは画面左から右に等速度運動をするようになった。 ここで出産をすることになり私の生活は赤ちゃん一色となってしまった。 当時仕事をしていたので仕事も再開した。産休は1ヶ月しかもらえなかった。 それから二人目の子供を出産し、忙しさは倍増し日々を追われる様になっていった。 私の頭の中からコンピューターはすっかり消えてなくなり、関心はどこのスーパーの オムツが安いとか、どこの幼稚園に入れたらいいか、とか子供のことばかりであった。 そうしている間にも夫は着々と力をつけていった。いつしかファミリーコンピュー ターからFM77にかわりAV40へとマシンもレベルアップしていった。画面はマリオから将棋ゲームへと進化し、美しい花火が揚がるようになっていた。 もはやコンピューターは理解の域を超えた夫の趣味と私には映っていた。 それで別に良かった。コンピューターは私の生活に必要ではなかった。