| 小笠原諸島 その他 BOOK GUIDE |
| 『好きになっちゃった小笠原』 /双葉社/定価1575円 旅するためのガイドブックと一線を画し、そこで生きる人たちの生活や臭いを切り取ろうと独特の切り口で知られる「好きになっちゃった」シリーズの小笠原版。どちらかといえば沖縄に比べ島の文化、生き様などがあまり浮き彫りになっていない内容だが、そもそも沖縄に比べると独特の文化や風習といったものをあまりもたない小笠原を一冊の本としてまとめあげ、ここまで紹介した本は存在しないのだから、この本は存在するだけで価値がある。なお責任編集はアジア貧乏旅行の草分けの一人として知られる下川裕治。2000年5月発行。 『小笠原諸島』 日地出版/定価680円 一時一世を風靡した出版社の小笠原ガイド。全64ページと、最近の詳細系ガイド本に比べると情報量の少なさは否めないが、まあ時代が時代だから仕方ない。かわりに巻末にかなり大きな地図がついている。しかしこの地図がまたところどころに意味不明なイラストがあって使えない(笑)。手元にあるものは1984年6月発行の第二版だが、初版の記載がないので初版は不明。ただ恐らく1980年代に入ってからだろう。 『小笠原諸島』 日地出版/定価990円 上記ガイドの新版だが、手にしてビックリ。このガイドは1997年発売なのだが、前半の「歴史と風土」「動植物」といった部分は84年版とまったく一緒。ということは、少なくともここに使われている写真は最低でも15年近くも前の風景写真を平気で使ってるというわけだ。笑える。しかも本編に入ってからも宿や食堂といった写真はさしかえているものの亜熱帯農業センターや母島の沖村の街並み風景など特に支障のなさそうな写真はすべて84年版のままという作り。早い話このガイドはおがさわら丸が新型船になったので、その部分を小笠原海運提供の写真に入れ替え、宿と食事情報をちょびっと替え、釣り場ガイドのページをホエールウオッチングにし、80年代のガイドブックにありがちな旅の思い出をメモするページをマリンスポーツ情報にしただけというすごい手抜き本なのだ。1997年9月発行。 『ボニンの島から』 飯田辰彦文・榊原透雄撮影/IPC/定価2800円 小笠原の魅力をおさめた写真集。文章は小笠原への紀行文と、小笠原の魅力にひかれこの島に移り住んだ人たちを中心とした座談会よりなる。この本は、90年代前半に島を訪れた人ならかなり目にしたことがあるだろう。というのも今でこそ小笠原をメインにした写真集の類はそれほど珍しくもないが、当時は相当貴重なもので、小笠原を紹介した本のすべてはおがさわら丸に積まれショップコーナーに並んでたからだ(それでも2、3冊しかなかった)。カラーの美しい写真集は小笠原に魅了された人ならぜひとも!という写真集なのだが、いかんせん少々お高いので、僕を含めずいぶん多くの人がこの本の前でロダンの「考える人」のごとく固まっていた(^^; 最近の写真集ブームの中では多少、構成と写真が見劣りするが、小笠原の魅力のみで写真集という先陣を切り開いた貴重な写真集のひとつといえよう。1989年6月発行。 『小笠原ホエールウオッチングガイド』 サンエイテイ/定価1000円 月刊「DIVER」編集部の別冊として発売されたホエールウオッチングガイド本。小笠原近海で見ることができるクジラ、イルカの紹介や、ザトウクジラの行動パターンの紹介、生態調査報告、ホエールウオッチングの方法、ログノートのつけ方などが紹介されている。内容はまずまずだが、まだ小笠原のホエールウオッチングがそれほど人気でない時代の出版だけあって、装丁、作りが大雑把なのは否めない。本というより雑誌の付録のような本である。1991年2月発行。 『小笠原の自然 東洋のガラパゴス』 小笠原自然環境研究会編/古今書院/定価1800円 小笠原の貴重な自然、および動植物についてまとめられたポケットブックサイズの本。小笠原の自然や生物が図版資料や写真でまとめられているが、いかにも学術畑の人たちによってまとめられたという感じのものになっている。文章が固いのはまあいいとしても写真が悪すぎる。写真の撮り方に一定の方向性が見られないし、おまけに暗い写真がめちゃくちゃ多い。ちょっと残念な一冊だ。値段も小笠原関係の書籍にありがちだが相当高い。もっともこの時期はまだDTPやデジタルカメラといったものがまったく存在しないから、少数部数がわかりきった本ではある程度クオリティが悪くなるのはいた仕方ない時代なのだが。質、量ともに、こういった本が充実してくるのは、これからという気もしないではないけれど。1992年1月発行。 『写真帳 小笠原 発見から戦前まで』 倉田洋二編/アボック出版/定価3200円 江戸時代、小笠原が海外で「ボニンアイランズ」と呼ばれていた時代から、アメリカ人セーボレー家と欧米人、ハワイ人らによって開拓が行なわれた時代、さらにはその後、明治政府によって開拓が進められる時代の資料を集められた一冊。タイトルに写真帳と記されているように、戦前の貴重な写真が実に多く収録されており、資料としても超一級品の一冊だ。著者は小笠原水産センター所長をへて小笠原支庁研究員でもあった方だが、史実の収集にも格別の興味を抱いて写真の収集作業にあたったようだ。資料には写真の他に昭和10年ごろの母島沖村の民家位置を記憶を頼りに再現した地図などもあり当時の街の様子もわかります。1981年発行 『SINRA 椎名誠の小笠原大探検』 新潮社/定価780円 椎名誠が初めて小笠原を訪れたのは1996年。この時の紀行文は、ネイチャー雑誌として鳴り物入りで登場した「SINRA」の8月号の特集「椎名誠の小笠原大探検」でカラーグラビアとして特集されている。ちなみに表紙も小笠原の砂浜に遊ぶ椎名本人。特集そのものは21ページとそれほどボリュームはないが、グラビアでみせる雑誌にしては文章の多い構成でそれなりに読ませる内容だ。もっとも雑誌の特集だから、あくまでそれなりだが。惜しむらくは写真がイマイチだ。滞在中天候がイマイチだったのだろう。全体的に、どんより曇った写真が多く写真が暗め。やはり小笠原はピーカンでないと小笠原らしくない。まあ、これだけは、願えばかなうというわけではないから仕方がないといえば仕方ないのだが。1996年8月発行。なお椎名は2000年に小笠原を再訪しており、このときの様子は、「ハリセンボンの逆襲」(文藝春秋・2002年1月発売)に収録されている。 『南の島のビリビリ』 すなふきん編集部編著/すなふきん/定価1260円 いわゆる小笠原を紹介したミニコミ本。「すなふきん」は長旅の情報誌を発行していた編集部で、蔵前仁一が主催する「旅行人」の国内離島版ともいえる内容の冊子を年数回発行していた(現在の詳細不明)。本書はその集大成ともいえるもの。小笠原の案内ともいえる「南の島のブラブラ」と1997年に行なわれた「小笠原旅人フォーラム97」をまとめた「小笠原のブラブラ」よりなる2部構成の単行本。版下まで自主制作のいわゆる同人誌スタイルなので構成には難があるが、小笠原の案内や諸問題がギュッと凝縮されていて、なかなか楽しい仕上がりだ。僕は神保町の古本屋で偶然この本を見つけたのだが、流通ルートにのっていない本なので、その後も古本屋で一度見かけたのみ。入手が難しい部類の本だろう。 『長澤まさみ写真集』 斉藤清貴/学研/定価2940円 地球上最後の楽園と称される小笠原も一航海最低でも4泊5日はかかるゆえアイドル写真集の類はまだまだ少ない。その中でも異色の写真集がこの「長澤まさみ写真集」だ。長澤といえば、ご存知「セカチュー」で今、もっとも人気の女優の一人。その彼女のラスト水着写真集ロケ地が小笠原父島だったのだ。TSLも頓挫したことだし、はっきりいって後10年はこれほどの大物が小笠原でロケすることなどないだろう。内容はともかくある意味貴重な写真集だ。 『硫黄島』 菊村到/角川書店/定価円619円 芥川賞作家・菊村到の作品集。収録作の「硫黄島」が受賞作だ。戦後まもなく日本では第二次大戦を通し日本、日本人を見つめ直すという戦争文学というジャンルが確立し、大岡昇平、島尾敏雄などによって、多くの傑作戦争文学が生まれた。そんな作品群の一端であるのがこの作品だ。とはいえ現在、日本文学においてこういった戦争文学は戦後同様に一時代を画すこととなった「私小説」というジャンルとともに、あまり顧みることのないものとなっている。昭和は遠くなりにけりといったところうか。時代の流れは非情であるとはいえ、これほどまでに先の大戦といったものがないがしろにされるほど激動の時代が、ほどなくやってくるなどかつての文筆家たちにとっては思いもよらないことであったのではないだろうか。 『南鳥島特別航路』 池澤夏樹/角川書店/定価円619円 芥JTBの雑誌「旅」連載もの。編集部から「いくらでも勝手な旅を」といわれた著者は、五島列島、サハリン、白神など日本の僻地12箇所を旅する。その極め付けが南鳥島だ。昨今はネット旅行サイトに押されがちだが、JTBといえば当時は最強にして最大の旅行大手。その情報網を駆使して地球の果てまで網羅する雑誌「旅」の旅行記は、椎名誠や宮脇俊三など数々の傑作旅行記を生み出した。現代ではやや色あせたといっても過言ではない分野ではあるが、逆にいえば現在ではこのような大そうな旅行記が出版社から実現することは考えにくく、そういう意味で本書は貴重な先人の礎と考えることができるだろう。 |