新島・式根・神津島 BOOK GUIDE
『ダイバー漂流 極限の230キロ』 小泉康太郎/新潮OH!文庫/定価510円
 漂流者がよく生還すると「奇跡の生還」と騒がれるように、世間では漂流体験というものに強い関心があるらしい。この本もそんな漂流体験者の漂流体験を実録ノンフィクションに仕立てた力作。潮流の早いことで知られる新島、鵜度根でダイビングを楽しんでいた男性が強い海流にのまれ3日間海の中を漂う。漂流体験というと、ゴムボートや難破船での漂流が圧倒的だが、この話は、ダイビング中の漂流体験。浮力器と呼ばれる浮力装置の世話になったとはいえ、文字どおり着の身着のままで漂流した体験記だけに、迫力は群を抜いている。単行本は1989年5月佼成出版社より「流れる海 ドキュメント・生還者」として刊行。本書はそれを改題し加筆したもの。なお余談だが、この実話は人気番組「奇跡体験アンビリーバボー」でも紹介されたことがある。2000年10月10日文庫化

『Number ベスト・セレクションT』 ナンバー編/文藝春秋/定価1700円
 スポーツ誌に新しい境地を切り開いたことで知られる雑誌、ナンバーに掲載された珠玉のノンフィクションを集めたベストセレクション。この中にナンバー・スポーツノンフィクション新人賞受賞作品が幾つか織り込まれているが、その中の一つがこれから紹介する「SURF RESCUE」だ。日体大の学生によるライフセーバーの物語というスポーツノンフィクションとしては異色の作品。作品そのものはライフセーバーに焦点があてられているため新島はほんの少ししかでてこないが、いわゆるガードと呼ばれるボランティアのあまり知られてない内情を捉えた作品として格好の読み物となっている。当時と今では現状がかなり違ってきているので、そのまま受け止めることはできないだろうが、伊豆七島の海で活躍するライフセーバーの意識を汲み取ることのできる貴重な作品だ。単行本1998年3月発行。なお本作は文庫化もされている

『完全殺人』 西村京太郎/角川文庫/定価430円
 西村京太郎のオリジナル短編集「完全殺人」の一編「幻の魚」は伊豆七島の式根島が舞台。イシダイ釣りの虜となった男が訪れた島で殺人事件に巻き込まれるというもの。実際に島を訪れたらしく地鉈温泉や足付旅館など実在する島の名所や旅館名が顔をだす。またトラベルミステリーには欠かせない(?)男女のラブロマンスは、あの地鉈温泉で男女が絡み合うというエピソード。お約束の内容も盛り込んだある意味ケッサク短編だ。氏の長編には「伊豆七島殺人事件」、「南神威島」などの島を舞台にした作品も多いので、これもそういった島への取材旅行の過程で生まれたものなのだろう。短編1976年2月発表(単行本未収録)。1992年4月文庫化

『鍋釜天幕団フライパン戦記』 椎名誠/本の雑誌社/定価1800円
 椎名誠が沢野ひとし、目黒孝二らと作家活動に入る以前から「東日本何でもケトばす会」と称して日本のさまざまな場所でキャンプをしてたころの様子を写真と座談会形式で振り返った企画本。これを見ると第3回は三宅島、第5回は式根島だったらしい。その様子が「式根島油照りヂゴク篇」として収録されている。これを見ると当時、式根島は大浦と石白川がキャンプ地でキャンプ場には海水を真水にする装置が炊事場にあったのだが「水がまずくポリタンク1つ500円で買った」(椎名談)らしい。なお当時の「遠征隊パンフレット」もそのまま再録されているが、このパンフは椎名が作家生活に入る7年前の28歳時のものなのだが、パンフの文体は「昭和軽薄体」と呼ばれる彼独特の文体がすでに炸裂しておりかなりの驚きだ。なおこの時の騒動は「わしらは怪しい探検隊」に「ヤマダ騒動」として収録されている。単行本1999年7月刊。

『神津島・天上山に咲く花』 /山と渓谷社/定価 円
 日本百名山ならぬ「花の百名山」にもあげられるほど植生豊かなことで有名な神津島・天上山。それを証明するかのような書籍がこの本だ。山やにはおなじみの山渓から出ているこの本は……と解説したいところだが、残念ながら筆者、未見の図書である。このコーナーでは未見、未読の本を紹介することはまずないのだが、重要度が高そうなのでここで紹介。ネット上ではほとんど見かけることはできないが、神津島ではいくつかの場所で入手可能らしい。大島図書室にも置いてあるらしいので、そのうち確認したいと思います

『あやしい探検隊焚火酔虎伝』 椎名誠/山と渓谷社/定価1500円
 文庫化もされているが手元にはこれしかないのでデータが新書版になっているのはご容赦を。椎名誠の伊豆・小笠原諸島について書かれた読み物といえば、その99%が八丈島か小笠原について書かれたものなのだが、この本では「風の島ずりずら風雲録」で神津島を訪れ多幸湾キャンプ場にテントを張り、翌日、天上山登山を行なっていることが書かれている。タイトルにあるようにシーズンオフに訪れ神津名物、冬の強風にかなり参ったようだ。なお島の観光協会でもらえる天上山登山ガイドには彼も推薦文を寄せている。単行本1995年9月刊。

『伊豆七島殺人事件』 西村京太郎/光文社文庫/定価420円
 伊豆七島神津島の深海生活実験棟「海底の家」(マリーンハウス)でおこった密室殺人を追うミステリー。西村京太郎というと、電車が登場するトラベルミステリーが有名だが、初期作品では『消えたタンカー』など海を舞台にした傑作推理小説が多いことでも知られる。そういう意味では本作も期待したのだが、やはり時代が隔世の感あり。昭和47年作だけあって、現代ではアリバイにもならないようなものがトリックの核心になっていたりと興ざめではある。おまけにカバー裏の解説には「神津島」(こうずじま)なんてルビがふられてるし。う〜ん、ちょっと読んでて悲しいぞ(^^;