三宅・御蔵島 BOOK GUIDE
『ドキュメント三宅島』 亀井淳/大月書店/定価1300円
三宅島にはかつてNLP(夜間発着訓練)空港建設問題という重要な問題に直面していた時期がある。現在厚木の米軍基地において問題となるNLPを三宅島に官民共有の飛行場を建設することで解決しようというこの計画は、島民の反対運動により建設反対という事態で収束を迎えたのだが、その経緯を詳細に追ったドキュメントが本書。最近では見られない多少堅苦しい内容の本だが、4年という年月をかけて取材した内容はタイトルの「ドキュメント」という言葉がピッタリの良質のルポルタージュ。またレイアウトも1988年という一昔前の本としては、なかなか斬新である。さすがに著者は「週刊新潮」上がりだけあって完璧な内容だ。また著作部分に本書の写真を担当した森住卓の名前も冠されていることからわかるように写真の出来もすごくいい。当時の情勢から多少内容が左寄りの内容である面は否めないが(現在なら地元の反対運動VS地域住民エゴという両面からの対立視点で描かれると推察される)、三宅の暮らしや自然、歴史などもそつなくまとめた良書として貴重な一冊であることは間違いないだろう。

『のぞいて見よう 海の中』 ジャック T・モイヤー/海游社/定価1800円
 三宅島で長年にわたり海洋生物の研究と環境保護活動に尽力していたジャック T・モイヤー。「モイヤー先生、三宅島で暮らす」など数々の氏の著作の中で、私が所持してるのはこの一冊。古書店で偶然見つけたサイン本だ。中表紙に「With my best willing !」(←英文、正確に転載してるか自信ありません^^;)というメッセージと彼のサインが入っている。内容は彼自身のこれまでの体験をもとにした水中ウオッチングのレクチャー本だが、三宅島周辺でよく見られる魚や生き物の紹介にもかなりのページが割かれており、最終章は「三宅島のエコツアーの対象として考えうる魚たち」として島の魚の紹介が行なわれている。海洋学者だけあって、彼の著作はどちらかというと堅苦しい本が多いのだが、この本は読み物と知的好奇心を満足させる内容とがほどよくミックスされていてオススメです。単行本1999年9月刊。

『木枯らし紋次郎(1)赦免花は散った』 笹沢左保/光文社/定価520円
TVドラマとして大人気シリーズとなった「木枯し紋次郎」。といっても管理人は何のことやらさっぱり(^^; かなり昔の話のようです。その記念すべき第一作は伊豆諸島、三宅島の流人による島抜けが舞台らしい。すいません。時代小説に疎い管理人、未読です。。。


『心に太陽を持て』 
山本有三//定価 円
伊豆諸島の三宅島で活火山の動きを注意深く観察していた少年。彼の地道な努力は、やがて島に迫り来る噴火活動から島民を守ることにつながっていく、といういかにも有三イズムあふれる感動小説。だが、実はこれは1951年の三宅島噴火で実際にあった話をもとにしているらしい。伊豆七島にも昭和新山のような話があったとは。驚き。なおこの話の後日談ともいうべき話も、島村英紀が『教室では教えない地球のはなし』という本の中で紹介しているらしいです。なお余談だが筆者は山本有三が子供の頃いたくお気に入りだったのだが、社会に出ると彼の訴える純粋な心などまったくありえないものだということにようやく気づくにいたり、今では彼の作品に嫌悪さえ抱いてます(^^;

『海暗』 有吉佐和子/新潮文庫/定価280円
 御蔵島は黒潮の流れる真ん中辺りに島が位置するため黒潮を意味する海暗がなまって今の島の名になったといわれる。その黒潮の別名を表題に冠した小説がこの作品だ。御蔵島が米軍射爆場に内定したというニュースに右往左往する島民の苦悩が描いた作品だが、よくある米軍基地問題のような、暗く重たい話には終始せず、平和でのどかな島である御蔵島が反対運動に取り組む様をどことなくユーモラスに描いており、この作品の魅力を一層深めている。島の人たちの微笑ましいエピソードも満載。作者は「御蔵島ではアザミにさえトゲがない」という島の有名な逸話に、ゆるゆると繰り広げられる射爆場反対運動を重ね合わせていたに違いない。ちなみに作者はこの作品を書くために、御蔵島の旅館に約1か月間滞在して取材と執筆を行なっている。当時の旅館は現在、宿泊はできないが、みやげ物屋として営業中なので、訪れることは可能です。単行本昭和45年刊。昭和49年文庫化。 

『みくらの森は生きている』 御蔵村役場制作/定価2000円
 御蔵島はスダジイ(ブナ)の巨木が多いことで有名な島だ。巨木&ブナ原生林というと、屋久島の屋久杉、東北の白神山地のブナ原生林がともに世界遺産に登録されていることからわかるように世界的にも貴重なものなのだ。この本はそんな島の貴重な自然を紹介した本である。単なる巨木紹介ではなく、木の分布図なども地図で詳しく紹介されているので、御蔵の山を歩く人には便利な本だ。なお巻末には、御蔵島唯一といってもいいほど精巧で見やすい島の全体地図が四つ折になってついている。これだけでも、かなり価値ある逸品だ。なお書店で入手しようとするより、竹芝埠頭にある売店「東京愛らんど」で購入する方が迅速かつ確実である。

『イルカの棲む島 御蔵島のイルカたち』 御蔵島バンドウイルカ研究会/定価700円
 御蔵島バンドウイルカ研究会が制作した御蔵島周辺に生息するバンドウイルカの生態、及び個体調査の研究発表の成果を一冊にまとめた内容だ。本自体は小さな冊子のような大きさだが、オールカラーでバンドウイルカが1頭ずつていねいに紹介されていて楽しい内容。こういった個体紹介はイルカウオッチングが容易な御蔵島ならではのもので、ちょっと他に類をみない貴重な本といえよう。ただし、本自体のデータは1994〜1998の5年間のものなので、最近の状況がわかりにくいのが難点。ぜひとも再び行政から助成を受けて改訂版を登場させてもらいたい。竹芝桟橋のショップ、御蔵島、東海汽船の船内自販機などで入手可能だったが2004年頃から見かけなくなった。現在は入手が難しい本の一つといえよう。1999年3月刊

『御蔵島島史』 御蔵村編/定価8000円
 御蔵島が制作したA5版1400ページにもなる島史が発売となった。行政作成の本にありがちな函入り豪華本だ。自然、歴史、現代、教育、民族、研究の六章に分け各分野での詳細が分かれている。村役場でのみ購入可。郵送も受け付けている。だが、古本マニアの管理人にいわせれば、このような行政作成の本を定価で購入するなど愚の骨頂だ。この手の本は、当然のことながら購入を希望者以上の冊数が無償で関係各所(公的関係等)に配布されている。そのためしばらくするとネットオークションや古本屋等に新品同様で出回ることが常だからだ。この本も島民に無償配布されていることなどから1年もすれば半額程度で出回ると管理人的には予想します(笑)。世は21世紀。ネット上にありとあらゆる情報が無償で手に入れられるこの時代になぜ金をかけて読まれもしない本を国民の税金で制作して村民に無償で配るのか。管理人はまったく理解できない。地方交付税交付金という国全体の税金に頼って運営しているという自覚があるなら、このような時代遅れなことはやめ、制作した本の内容をネット上で閲覧できるようにしたり、制作をCD−ROMのみとし数百円で配布するなどするというのが正しい方策というものであると勘違い行政には申し沿えておこう。2006年9月刊

※購入本に示されている定価です。現在は紹介本のほとんどの本が絶版か値上げされています。