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この一冊で企業がよみがえる
第五章 企業再生の実際を学ぶ
「理屈だけでなく実際を」の声に応えて松下の中村改革をとりあげます。本章では「あなた自身の目」で松下の中村改革を評価出来るように、改革の着手からの経過をまとめて見ました。中村改革をひとつの生きた事例として、あなた自身が毎日の新聞・雑誌の中から松下の経営を見つめながら、中村改革の評価をあなた自身で行ってください。
044 聖域への踏み込み販売体制大改革
松下と言えば販売店網の充実が高度成長期の大きな財産でした。一万九千にものぼる系列販売店は最盛期には全国二万七千店も存在し松下の大量生産・大量販売の立役者として幸之助の水道哲学(良い物を安く水道のように)を支えた聖域でした。
そこにメスを入れた中村改革は「やる気のある販売店だけをサポートする」販売店網に対する大改革と営業人員の削減という思い切ったものでした。
従来は販売店網に対しての営業ルートが事業部制の弊害で複雑であったために営業マンの数も他社に比較して多めでした。
そこで百以上の事業部を十四の事業ドメインと二つのマーケット本部に再編成する過程で三年の間に五千人近い営業マンを削減する挙に出ました。当然のことながら従来のような営業活動を続けていたのでは大幅人員削減により販売に悪い影響が出るのは目に見えています。販売店を切り捨て量販店に軸足を移すのかと噂されました。
販売店の責任者であった当時専務の戸田副社長は全国をくまなく歩いて実情を自分の目で確認しています。各地で販売店と激論を闘わせる課程で発見したのは努力する販売店と、開店休業状態の販売店でした。また世間一般の常識である「販売店から量販店へ」の潮流も、調べてみると量販店も販売店と同じく売上を伸ばしているところと減少させているところの二極分化が目立っていました。
前年同期比で売上二桁増の店と二桁減の店の比率は量販店も販売店も略同じ数字だったのです。そこで松下の販売店政策も「平等から公平へ」と大きく舵を切りました。すなわち努力する販売店に手厚いサポートをすることに切り替えたのです。
その顕著な例が研修会です。従来研修会と言えばメーカ丸抱えで食事などの接待とお土産が常識であったのを、有料でバンバン店主を叱りつける本物の研修会に切り替えました。名付けて「プロショップ道場」です。意欲のある販売店主は自腹を切って参加し、外部講師から厳しい指導を受けます。
目標は「三年で売上高一・五倍、利益二倍」で徹底的に地域密着のローラ作戦を展開し顧客の開拓に意欲を燃やすように指導します。今までのように全国ナショナルショップ一斉に展示会を開いて松下が高額な広告費用を負担する「TVによるCMでお客を呼び込む展示会方式」も廃止して販売店がこまめな日常活動を通じて売上を増大する方法に切り替えました。
このような方法で売上不振の販売店は切り捨てられることになります。そして生存競争に生き残った優良な販売店にはリベートや資金援助を与える「スーパー・プロショップ」の称号を与えて優遇する策に出ました。現在五千店ですが七千店まで増やす計画です。
結局「共存共栄でみんな仲良くガンバロウ」の姿勢でやってきたナショナルショッップ一万九千店を「努力する店のみ報われる」スーパー・プロショップ七千店への絞り込みをするという大胆な政策変換です。改革の行方を注視したいと思います。
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