この一冊で企業はよみがえる 旅のことならあっぷる旅行

関西経営コンサルタントの雄 藤原雄一郎の経営最前線シリーズ ビジネスノウハウ満載

この一冊で企業がよみがえる

第五章 企業再生の実際を学ぶ

「理屈だけでなく実際を」の声に応えて松下の中村改革をとりあげます。本章では「あなた自身の目」で松下の中村改革を評価出来るように、改革の着手からの経過をまとめて見ました。中村改革をひとつの生きた事例として、あなた自身が毎日の新聞・雑誌の中から松下の経営を見つめながら、中村改革の評価をあなた自身で行ってください。

042 従業員が会社を買い取る

百以上あった事業部や兄弟会社を統合再編により十四の事業ドメイン(分野)に大くくりすることによって、今までの組織の壁に阻まれていたムダ取りが容易になり、経営にスピードが出てきました。

例えば自動車に搭載するカーナビやカーオーディオなどカーエレクトロニクス製品は従来松下電器産業本体や、松下通信工業、九州松下電器、松下電子部品に分散していましたが、これらの会社を完全子会社にして組織を一本化したために、事業の重複も解消され格段に意志決定が早くなり、強力なリーダシップのある決断が出来るようになったと高く評価されています。

またDVDレコーダの「ディーガ」や薄型テレビの「ビエラ」などデジタル家電での松下の躍進はめざましいものがあります。これもオーディオ・ビジュアル関係を統括する事業ドメインの発足により、従来事業部ごとに別々であった商品戦略を統一し、社内の技術の一本化が可能になった成果であることは明確です。

このような華々しい成果の陰にリストラも着々と進んでいます。それはモーター事業です。縦割りの家電用、産業用などの事業部に加えて要素別の開発、製造、営業部門によるマトリックス組織になっていたため、運営が複雑で意志決定が明確でなく、責任の所在が不明確でした。

このような組織を単純な形に再編成すると共に、付加価値の高い製品を除き中国生産にシフトすることにしました。その結果国内主力工場である武生松下電器(福井県武生市)とナショナルマイクロモータ(鳥取県米子市)を閉鎖しなければならなくなりました。

二つの工場で約千人の従業員の雇用をどうするか散々悩んだ結果が「従業員による企業買収」という思い切った手段でした。経営幹部が自腹を切って出資し、松下から工場や設備の貸与を受けて松下の下請として雇用を守る手段に出たのです。このようなことは従来の松下では考えられないことです。新しい会社が成功することを祈りたい気持ちです。

このような経過をたどり、中村社長の強力なリーダシップで聖域である事業部制を破壊したのち、新しく誕生した十四の事業ドメインには大幅な権限委譲を行い、自ら考えて生き延びる組織へと脱皮しつつあります。


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